小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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ショッピングモールに行こう!

 期末テストが無事終了し、ホームルームの時間。

 クラスの一角が重苦しく悲しみに満ちた雰囲気に支配されていた。

 

「皆……土産話……っひぐ……楽しみに……うう……してるっ……がら!」

 

 実技試験をクリアできなかった一人である芦戸少女が泣きながらそう言っていた。

 試験をクリアできなかったのは二組。

 芦戸少女と上鳴少年のペアと、切島少年とおへそレーザーの少年、青山少年のペアだ。

 彼らは赤点を確信し、それによって林間合宿に行けずに学校で補習地獄の未来を思って絶望していた。

 青山少年だけはいつものポーカーフェイスだったけど。

 ああ、いや、やっぱりちょっと頬が引きつってるわ。

 ポーカーフェイス保ててないわ。

 

「ま、まだわかんないよ! どんでん返しがあるかもれないよ!」

 

 そう言って緑谷少年が慰めるも、

 

「試験で赤点取ったら林間合宿行けずに補習地獄!! そして俺らは実技クリアならず!! これでまだわからんのなら貴様らの偏差値は猿以下だ!!」

「えええ!?」

 

 逆ギレした上鳴少年が叫ぶ始末。

 これは放置するのが最善だな。

 

「わかんねぇのは俺もさ。峰田のおかげでクリアはしたけど寝てただけだ」

 

 そう言う瀬呂少年は自分が赤点を取る可能性もあると思っているのか、赤点確定組に対してなんか優しかった。

 

「とにかく、採点基準が明かされてない以上は……」

「同情するなら、なんかもう色々くれ!!!」

 

 その優しさもやさぐれまくってる赤点組には届かなかったみたいだけど。

 やっぱり放置が一番って事だね。

 彼らとはしばらく目を合わせないようにしよう。

 

「予鈴が鳴ったら席につけ」

 

 そして、ここで相澤先生が登場。

 そう、予鈴はとうに鳴っていたのだ。

 それを聞いている余裕が赤点組になかっただけで。

 

 そんな赤点組も相澤先生の言葉には逆らわず、重い足取りで席についた。

 

「おはよう。今回の期末テストだが、残念ながら赤点が出た。したがって──────林間合宿は全員行きます」

「「どんでん返しだぁ!!!」」

 

 赤点組が喝采を上げた。

 重苦しい空気が一気に霧散していく。

 まさかの大逆転が来たね。

 いやぁ、良かった良かった。

 めんどくさい事にならなくて。

 

「筆記の方はゼロで、実技で切島、上鳴、芦戸、青山、あと瀬呂が赤点だ」

 

 あ、やっぱり瀬呂少年も赤点か。

 ドンマイ。

 

「今回の試験、我々ヴィラン側は生徒に勝ち筋を残しつつどう課題と向き合うかを見るように動いた。裁量は個々人によるがな。でなければ課題云々の前に詰む奴ばかりだっただろう」

 

 あー。

 そういえば13号先生も最後、走り抜ける麗日少女に何もしなかったっけ。

 流星群の吸引を止めるなりして強引に麗日少女を吸い寄せる事もできなくはなかっただろうにしなかった。

 まあ、その場合は私が飛びかかるというプランBに移行するだけだったけど。

 

「本気で叩き潰すと仰っていたのは……」

「追い込む為さ。そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点取った奴こそここで力をつけてもらわなきゃならん。合理的虚偽ってやつさ」

「ゴーリテキキョギィイー!!」

 

 わあい! と赤点組が両手を上げて喜んでいる。

 青山少年のポーカーフェイスもちょっとだけ緩んでいた。

 

「またしてやられた……! さすが雄英だ! しかし! 二度も虚偽を重ねられると信頼に揺らぎが生じるかと!!」

「わあ。水差す飯田くん」

 

 飯田少年は真面目だなぁ。

 良いじゃん。

 空気が明るくなったんだから、もうそれで良いじゃん。

 

「確かにな。省みるよ。ただ全部が全部嘘って訳じゃない。赤点は赤点だ。お前らには別途に補習時間を設けてる。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツイからな」

「………」

 

 赤点組の顔が再び暗くなった。

 この短時間でそんなにテンション上げ下げしてて疲れないのかね?

 

「じゃあ合宿のしおりを配るから後ろに回してけ」

 

 その後、合宿の大雑把な説明を受けてホームルームは終了した。

 

 

 

 そして、放課後。

 

「一週間の強化合宿か!」

「結構な大荷物になるね」

「暗視ゴーグル」

「水着とか持ってねーや。色々買わねぇとなぁ」

 

「あ、じゃあさ! 明日休みだし、テスト明けだしってことで、A組皆で買い物行こうよ!」

 

 林間合宿の準備について色々話し合っていたクラスメイト諸君は、葉隠少女の提案で明日ショッピングに行く事が決定した。

 ショッピングかー。

 何気にパパ以外と行くのは初めてだ。

 結構楽しみだなー。

 でも……

 

「おお! 良い! 何気にこういうの初じゃね!?」

「おい爆豪、お前も来い!」

「行ってたまるか。かったりぃ」

「轟くんも行かない?」

「休日は見舞いだ」

「ノリが悪いよ! 空気を読めやKY男子共ォ!!」

 

 そんな感じで爆豪少年と轟少年は不参加となった。

 人にはそれぞれ都合ってもんがあるんだ。

 強制は良くないぞブドウ頭。

 

「魔美ちゃんはどうする?」

「残念ながら私も駄目だな。最近の私は有名になりすぎた。プライベートで視線を集めるのは好きじゃないんだ」

「そっかー……。そういえばそうだったね。残念」

 

 話しかけてきた麗日少女に事情を説明してお断りの旨を伝えた。

 そう。こればっかりは仕方ないんだ。

 

「だから、変装して後から合流するよ」

「あ、そういう感じか」

「そういう感じだ」

 

 という訳で、私は職場体験から戻って来た時にも使った地味ルックで後から合流するという事になった。

 なんで変装してるのに後から合流するのかというと、クラスメイト諸君もまた、雄英体育祭に出たおかげでそこそこ顔を知られてるからだ。

 全員が固まってる所に一緒にいたら、雄英繋がりで変装がバレる可能性がある。

 それはいただけない。

 

 全員の買いたい物が一緒な訳ないんだから、どうせ現地に着いたら一旦バラけるんだろうし、合流するのはその後で良い。

 雄英生と一緒でも、数人程度なら友達の友達みたいな感じで通行人にはバレないだろう。

 完璧なプランだ。

 

 そうして私は人生初となる友達とのショッピングに心踊らせていた。

 

 

 

 そこでちょっとした騒動が起きるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──死柄木視点

 

 

 

 俺は今、デカいショッピングモールに来ていた。

 今はアジトに居たくない。

 外を出歩きたい気分だったんだ。

 

 

 ついさっき。アジトにとある連中がやって来た。

 ヴィラン連合に入りたいって連中だ。

 そいつらが闇のブローカーの紹介で来た。

 

 人数は二人。

 一人はヒーロー殺しになりたいだの、殺したいだのと、訳わかんねぇ事言ってる破綻JK。

 もう一人はヒーロー殺しの意志を全うするとかほざいてやがった全身火傷野郎。

 どいつもこいつもヒーロー殺し。

 ステインステインと喚きやがって。

 心底イラつくぜ。

 

 だからアジトを出て来た。

 今はあそこに居たくない。

 外を出歩きたい気分だったんだ。

 

 

 そうして何となく人混みの方に歩いて来てたどり着いたショッピングモール。

 道行く連中は皆ヘラヘラと笑ってやがった。

 気色悪い。

 隣の奴が簡単に人を殺せる個性(凶器)を持ってるかもしれないんだぞ?

 それを振りかざすかもしれないんだぞ?

 なのに何で笑って群れていられる?

 

 見てみろよヒーロー殺し。

 お前がどんな思いで人を殺そうが、大多数の人間は対岸の火事と、いや、そうとすら思っちゃいないぞ。

 どこで誰がどういう思いで人を殺そうが、こいつらはヘラヘラ笑って生きてるぞ。

 

 一方で、お前の思いとはおよそ程遠いところでお前のシンパが生まれてる。

 

 何なんだ?

 やってる事は同じだろう。

 俺も、お前も、結局気に入らないものを壊していただけだろう?

 何なんだ?

 一体何が違う?

 

 

 そんな鬱屈とした思いで歩いていると、ふと見覚えのある顔を見つけた。

 雄英の餓鬼の一人だ。

 USJで俺に殴りかかってきた奴。

 先生が警戒しろと言っていた奴らの一人。

 そして、あの糞餓鬼やオールマイトと一緒にいた奴だ。

 

「お茶でもしようか。緑谷出久」

 

 気づけば話しかけて、その首筋に手をかけていた。

 

「自然に、旧知の友人のように振る舞うべきだ。決して騒ぐなよ? 落ち着いて呼吸を整えろよ。俺はお前と話がしたいんだ。それだけさ。少しでもおかしな挙動を見せてみろよ? 簡単だ。俺の五指が全てこの首に触れた瞬間、喉の皮膚から崩れ始め、一分と経たないうちにお前は塵と化すぞ」

 

 俺の個性は「崩壊」。

 五指で触れたものを塵にする個性だ。

 その内の四指を緑谷の首に当てて脅しをかける。

 話がしたいだけってのは本当だ。

 いや、話したいというより、自分とは全く違う視点からの意見が聞きたかったのかもしれない。

 

「こ、こんな人混みでやったら、すぐにヒーローが……ヒーローが来て捕まるぞ……!」

 

 こんな状況でも気丈に脅しをかけてくる緑谷。

 でも、それは脅しとして弱いぜ。

 

「だろうな。でも見てみろよ。いつ誰が個性(凶器)を振りかざしてもおかしくないってのに、あいつらは何で笑って群れている? 法やモラルってのはつまるところ個々人のモラルが前提だ。する訳ねぇと思い込んでんのさ」

 

 だからさぁ。

 

「捕まるまでに20……いや30人は壊せるだろうなぁ」

 

 そうなったら痛み分けだ。

 だが、そもそもヒーローって奴らはそんな選択を選べない。

 守るものが多いもんなぁヒーローは。

 クソ下らないぜ。

 

「話って……何だよ……」

「ハハハ。良いね。せっかくだ。腰でもかけてまったり話そうじゃないか」

 

 案の定緑谷は折れて俺の要求を受け入れた。

 さすがヒーローの卵。

 かっこいいねぇ。

 

 緑谷を連れてショッピングモールのベンチに座る。

 そして俺は、愚痴を吐くように話を始めた。

 

「だいたい何でも気に入らないんだけどさ。今一番腹が立つのはヒーロー殺しさ」

「……仲間じゃないのか?」

「俺は認めちゃいないが世間じゃそうなってる。問題はそこだ。ほとんどの人間がヒーロー殺しに目が行ってる」

 

 あの糞餓鬼に負けて刑務所にぶち込まれた負け犬のくせに。

 

「雄英襲撃も、保須で放った脳無も、全部奴に喰われた。誰も俺を見ないんだよ。何故だ? いくら能書き垂れようが、結局奴も気に入らないものを壊していただけだろう?」

 

 俺と同じの筈だ。

 なのにこんなにも違う。

 何故だ?

 

「俺と何が違うと思う? 緑谷」

 

 俺はずっと自分の中でどうしても答えが出なかった問いを緑谷にぶつけた。

 自分とは正反対の視点を持ったこいつの答えが、何かしらのヒントになる事を期待して。

 

「何が違うかって……?」

 

 俺の問いに、緑谷は冷や汗を流しながらも答えた。

 

「……僕は、お前の事は理解も納得もできない。……ヒーロー殺しは、納得はしないけど、理解はできたよ。……僕も、ヒーロー殺しも、始まりはオールマイトだったから」

 

 …………オールマイト。

 

「少なくとも、あいつは壊したいが為に壊してたんじゃない。……やり方は間違ってても、理想に生きようとしてた……んだと思う」

 

 …………………………そうか。

 

「ああ……。何かスッキリした。点が線になった気がする。何でヒーロー殺しがムカツクか。何でお前やあの糞餓鬼が鬱陶しいか。わかった気がする」

 

 

 

 

 

「全部、オールマイトだ」

 

 

 

 

 

 俺は思わず嗤っていた。

 口角がつり上がって、歪な笑みを浮かべていると自覚できる。

 

「そうかぁ……。そうだよな。結局そこに辿り着くんだ。ああ! 何を悶々と考えていたんだろう俺は……!!」

 

 興奮で手に力が入る。

 首を絞めるような形になった緑谷が小さく悲鳴を上げるが、それも気にならない。

 

「こいつらがヘラヘラ笑って過ごしてるのも、オールマイト(あのゴミ)がヘラヘラ笑ってるからだよなぁ! 救えなかった人間などいないかのように、ヘラヘラ笑ってるからだよなぁ!!」

 

 救えなかったくせに!!

 俺を助けてくれなかったくせに!!

 

「ああ! 話せて良かった! 良いんだ! ありがとう緑谷! 俺は何ら曲がる事はない!!」

 

 皮肉なもんだぜヒーロー殺し。

 対極にある俺を生かしたお前の理想、信念、全部俺の踏み台となる。

 

 

「デクくん?」

 

 

 と、そこでどっかで見た事あるような餓鬼が緑谷に話しかけてきた。

 そいつはどうでも良い。

 問題はその隣にいる奴。

 眼鏡をかけて髪型を変えてるが、俺が見間違える訳がない。

 

 ヒーロー殺しと同じくらいムカツク奴がそこにいた。

 

 糞餓鬼は、俺に冷たい殺気をぶつけていた。

 ハハ。ヒーローの顔じゃねえな。

 

「お友達……じゃない……よね……?」

 

 もう一人の餓鬼が話しかけてくる。

 

「手、離して?」

 

 糞餓鬼は動かない。

 ただ物でも見るような目で俺を見るだけだ。

 それを見ながら俺は──

 

「連れがいたのか。ごめんごめん」

 

 緑谷の首から手を離した。

 

「じゃあ行くわ。追ったりしてきたら、わかるよな?」

 

 緑谷に、というより糞餓鬼に対してそう言いながら、俺は人混みに紛れるように歩く。

 首絞めから解放された緑谷がゲホゲホと蒸せる声が聞こえる。

 もう一人の餓鬼が緑谷を心配する声が聞こえる。

 それに紛れて糞餓鬼の声も聞こえた。

 

「そうだね。リスクに対してあんたの身柄一つじゃ割に合わないし、見逃してあげる」

 

 ……チッ。

 本当にムカツク糞餓鬼だな。

 だが、今は機嫌がいいんだ。

 それも気にならない。

 

「待て、死柄木……!!」

 

 意外な事に、立ち去る俺に緑谷が話しかけてきた。

 だが、俺は止まる事なく人混みの中を進む。

 

「オール・フォー・ワンは、何が目的なんだ」

 

 ……驚いたな。

 お前の口から先生の名前が出るなんて。

 やっぱり俺とお前の間には因縁があるらしい。

 

「…………知らないな。それより気をつけとけな。次会う時は殺すと決めた時だろうから」

 

 それだけ言って俺は雑踏の中に消えた。

 そのまま歩いてショッピングモールを出る。

 

『信念なき殺意に何の意義がある』

 

 ヒーロー殺しに言われた言葉が脳裏に蘇る。

 信念も理想も最初からあったよヒーロー殺し。

 何も変わらない。

 しかし、これからの行動は全てそこへと繋がる。

 

 オールマイトのいない世界を創り、正義とやらがどれだけ脆弱かを暴いてやろう。

 

 今日からそれを信念と呼ぼう。

 

「全部、オールマイトだ」

 

 俺は悩みを解消し、軽い足取りでアジトへと戻って行った。

 

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