小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

53 / 64
ストックがまた切れた……。


夏の林間合宿!!

 事前に言った通り、私はショッピングモールを訪れるも集合場所には行かずにいた。

 そしたら案の定、「皆、買いたい物がバラバラなので、一旦分かれて自由行動する」という旨のメッセージがラインで来た。

 それを踏まえて適当に誰か探していると、挙動不審な麗日少女を見つけた。

 

「やあ、麗日少女」

「あ、魔美ちゃ……って意外に変装のクオリティ高ッ!?」

 

 私の変装は服装を地味な感じにして眼鏡をかけ、髪型を変えただけなんだけど、与える印象は結構変わるんだよね。

 普段は笑顔な表情をシュッと引き締めてクール系を気取るのがコツだ。

 こうすると眼鏡っ子属性と相まって、本来の私のイメージからかけ離れた、真面目な委員長的な雰囲気を纏う事ができるのだ!

 飯田少年みたいなザ・委員長な感じとは違って、クールビューティーなできる女って感じだ。

 

「それにしても一人かい? ある程度の人数でバラけるって書いてあったけど」

「いや、その……ちょっと色々あってデクくんを置いて来ちゃってね。今から戻るとこ」

「何それ?」

 

 緑谷少年、置き去りにされたのか。

 本当に何があった?

 まあ、これから迎えに行くって言うのなら大した問題じゃないかと思い、麗日少女と一緒に緑谷少年と別れた付近にやって来ると、そこには予想外の奴がいた。

 

「デクくん?」

 

 緑谷少年の首に手を回している不審者。

 その顔には見覚えがある。

 USJの時の手のヴィラン、死柄木弔だ。

 何でこんな所に?

 

「お友達……じゃない……よね……?」

 

 私の頭はショッピングの浮かれ気分からすっかり臨戦態勢へと切り替わり、死柄木の一挙一動を観察していた。

 緑谷少年を殺すようなら、すぐにでも飛びかかれるように。

 

「手、離して」

「連れがいたのか。ごめんごめん」

 

 しかし、私の予想に反して死柄木はあっさりと緑谷少年から手を引き、人混みの中に消えて行く。

 

「じゃあ行くわ。追ったりしてきたら、わかるよな?」

 

 追うか否か一瞬悩んだけど止めておいた。

 何もさせずに迅速に制圧できる自信はあったけど、あいつが私の予想よりも強かったりして被害が出た場合、ちょっとシャレにならない事になる。

 そもそも私は戦闘許可がなければ戦えない学生の身。

 ここは止めとくのが懸命だ。

 

「そうだね。リスクに対してあんたの身柄一つじゃ割に合わないし、見逃してあげる」

 

 それでもオール・フォー・ワンの手駒をみすみす見逃すのも惜しい。

 この挑発に乗ってくるようなら意識が攻撃に切り替わった瞬間を狙ってやろうかとも思ったけど、そんな事は起こらず、死柄木は普通に退散して行った。

 去り際に緑谷少年がオール・フォー・ワンを知ってる事を示唆するような発言をしたのはいただけないけど、それ以外は大きなトラブルもなく静かな幕引きとなった。

 

 麗日少女がすぐに警察に通報し、到着した警察とヒーローによって、ショッピングモールを一時期に閉鎖して緊急捜査が行われるも、その頃には余裕で逃げおおせただろう死柄木は当然見つからなかったそうだ。

 私も目撃者の一人として一応警察署へ連れられて簡単な事情聴取を受けた。

 当然、挑発した事とかは黙っておいた。

 

 こうして私が楽しみにしていた友達との初ショッピングは台無しになりましたとさ。

 おのれ死柄木! おのれヴィラン連合!

 今度会ったらただじゃおかねぇ!

 

 そんな事を思いつつも、その日は迎えに来たパパの車で帰った。

 なんかパパは塚内さんと話があったみたいで、ちょっと待つ事になって更にストレスを感じた。

 おのれ死柄木! おのれヴィラン連合!

 このストレスの借りは必ず返してやる!

 

 

 

 で、休み明けに学校にて。

 相澤先生が改めてショッピングモールの事件を語ってくれた。

 

「────とまあ、そんな事があって、ヴィランの動きを警戒し例年使わせて頂いてる合宿先をキャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなった」

 

「えーーー!!」

 

 そう来たか。

 つまり、行き先がバレてれば襲撃される可能性もあると学校側は判断してる訳か。

 私という知名度も戦闘力も高い戦力がいるのにその決断を下すって、かなり慎重な対応だな。

 ……いや、私は学生だし戦力として計算する訳にはいかないか。

 せいぜいヴィランに対する脅し程度ってところかね。

 

「てめぇら。骨折してでも殺しとけよ」

 

 爆豪少年がそんな事言ってた。

 彼は何を言っているのだろうか。

 堂々と規則違反をやれと?

 

「ちょっと爆豪! 緑谷がどんな状況だったか聞いてなかった!? そもそも公共の場で個性は原則禁止だし!」

「知るか。とりあえず骨が折れろ」

「かっちゃん……」

 

 最終的にただの悪口になったよ。

 ああ、ほら。勝手に騒いだから相澤先生の機嫌も悪くなっちゃってるじゃん。

 どうしてくれんの。

 

 

 

 

 

 そんな感じで合宿先が謎に包まれる事になったけど、それ以降はさして問題も起こらずに時は流れ、ついに一学期が終了。

 夏休みにとびっきりの大事件に首を突っ込む事になったけど、それも無事解決し、林間合宿当日がやって来た。

 

 お泊まり用の荷物を抱えてバスの前に集合する。

 

「え? A組補習いるの? つまり赤点取った人がいるって事!? ええ!? おかしくない!? おかしくない!? A組はB組よりずっと優秀な筈なのにぃ!? あれれれれれぇ!?」

 

 そこでB組のチンピラ少年に絡まれるというアクシデントが発生するも、即座に拳藤少女が手刀で沈めてくれた。

 

「ごめんな」

 

 そう言って立ち去る拳藤少女からは熟練の技を感じた。

 慣れてるんだなぁ。

 

「A組のバスはこっちだ! 席順に並びたまえ!」

 

 そうして今日も絶好調な委員長の号令で車内へ。

 これから始まる林間合宿に心踊らせたクラスメイト諸君と共にワイワイガヤガヤしながらバスは進んで行く。

 

 そして、一時間後。

 バスはなんか不自然に何もないような所に止まった。

 怪しい。

 

「休憩だー……」

「おしっこおしっこ」

「つか何ここ? パーキングじゃなくね?」

「ねぇアレ? B組は?」

「お……おしっこ……」

 

 クラスメイト諸君も状況の怪しさに気づいたのか、ちょっと不信な顔をし始める。

 私は一瞬ヴィランの仕業かと勘繰ったけど、相澤先生がいつも通りの顔してるから違うと判断した。

 

「何の意味もなくでは意味が薄いからな」

 

 そう語る相澤先生からは嫌な感じがした。

 これアレだ。

 いきなり何か来るパターンだ多分。

 

「よーう、イレイザー!!」

「ご無沙汰してます」

 

 そして、いきなり現れた何か。

 猫っぽいコスチュームを着た子連れの二人組に相澤先生は頭を下げた。

 いきなりキャラが濃いけど、この人達が合宿先の関係者かね?

 

「煌めく眼でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

 

 わー。

 斬新な自己紹介だなー。

 いや、これヒーローの登場シーンで使うやつか。

 そうじゃなきゃただの変な人達だもんね。

 

「今回お世話になるプロヒーロー『プッシーキャッツ』の皆さんだ」

 

 良かった。

 ちゃんとヒーローだった。

 変な人達じゃなかった。

 

「連名事務所を構える四名一チームのヒーロー集団!! 山岳救助等を得意とするベテランチームだよ! キャリアは今年でもう12年にもなる……」

「心は18!!」

「へぶっ!!」

 

 緑谷少年がいつもの解説のついでに地雷踏んだっぽい。

 金髪の方の人にシバかれてた。

 女性に年齢の話はタブーってね。

 

 そっちの茶番を気にせず、黒髪の方の人が話を始めた。

 

「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね。あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」

「遠っ!!」

 

 読めた。

 今の一言だけでこれから何が起こるのか何となくわかった。

 

「え……? じゃあ何でこんな半端なとこに……」

「まさか……!?」

「バス戻ろうか。な? 早く……」

 

 他のクラスメイト諸君も不穏な空気を感じ取ったのかざわつき始める。

 だよねー。

 嫌な予感しかしないもんねー。

 

「今はPM9:30。早ければぁ、12時前後かしらん」

 

 やっぱりか。

 もう強化合宿は始まってるって事ね。

 

「ダメだ、おい……」

「戻ろう!」

「バスに戻れ!! 早く!!」

 

「12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」

 

 往生際の悪い皆がバスに向けてダッシュするも、金髪の人がそれを阻止するように回り込み、地面に手を置いた。

 ム!

 あれは土だのコンクリだのを操るタイプの個性の動き!

 

「悪いね諸君。合宿はもう始まってる」

 

 そんな相澤先生の言葉と共に、金髪の人が手を置いた所から地面が隆起した。

 隆起した地面が、まるで土砂崩れのようにクラスメイト諸君を呑み込んでいく。

 

「私有地につき個性の使用は自由だよ! 今から二時間! 自分の足で施設までおいでませ! この『魔獣の森』を抜けて!」

 

 黒髪の人が()に落ちたクラスメイト諸君に向かってそう宣言する。

 魔獣の森って……何そのゲームみたいな名前?

 ちょっと気になるなぁ。

 そんな事を思いながら、私はそれをバスの上から聞いていた。

 

「おい、八木……。なんでそこにいる?」

「そっちの人が地面動かしそうな動きしてたから、咄嗟にジャンプして難を逃れました」

 

 相澤先生が不機嫌そうに、されども仕方なさそうに頭を掻いた。

 私が避けるかもしれないって予想してたなこれは。

 だって、ねぇ。

 制服汚れそうだし。

 

「ねこねこねこ! あなたが噂のオールマイトJr.ね! 将来有望なキティだ事。女なのが残念だわ」

 

 金髪の人が変な笑い方で変な事を言ってた。

 女じゃなかったらどうなってたんだろう?

 ……深くは聞かない方が良いような気がする。

 

「ハア……。まあ、いい。八木、お前も早く行け」

「了解!」

 

 相澤先生のお言葉に、私は塚内さんの真似をしてビシッとした敬礼で返した。

 そして制服の上着を脱ぎ、いつもの上半身スク水姿になって翼を出す。

 

「じゃあ先に行ってますね」

「おい、ちょっと待……」

 

 相澤先生の言葉を最後まで聞かずに私は飛び立った。

 目指すはあの山のふもとの宿泊施設!

 場所確認しながらゆっくり飛んでも3分かからないでしょ。

 お昼抜きはちょっと嫌だし、楽に空から行かせてもらいます。

 

「あ!? 八木ずりぃ!!」

「魔美ちゃんの裏切り者ォ!!」

 

 下からそんな声が聞こえたけど無視。

 君達は頑張ってくれ。

 私は君達の分までお昼ご飯を堪能させてもらうよ。

 まあ、私の無尽蔵な体力を以てすれば、一年くらい何も食べなくても行動に支障はないと思うけど。

 それでも食べた方が良い。

 人間らしい生活は破壊衝動を弱めてくれるからね。

 

 

 

 そんな感じにクラスメイト諸君に心の中で言い訳しつつ、3分くらいで辿り着いた合宿所。

 そこではさっきの人達と似たようなコスチュームを着た緑髪の人とオカマの人がびっくりしながらも出迎えてくれた。

 そこで私がさっきの人達を金髪の人とか黒髪の人とか言ってるのを見て、緑髪の人が全員分のヒーロー名を教えてくれた。

 

 それによると、あの黒髪の美人さんが『マンダレイ』。

 地面を操ってた金髪の人が『ピクシーボブ』。

 名前教えてくれた親切な人が『ラグドール』。

 オカマの人が『虎』だそうです。

 

 ちなみに、オカマの人はオカマじゃなくて、性転換した元女性らしい。

 濃いよ。

 キャラが濃いよ。

 これからは虎さんと呼ばせてもらおう。

 他の人達もヒーロー名で呼ばせてもらおう。

 

 

 

 そうして私が一人おもてなしを受けてたら、一時間くらいして相澤先生達がバスでやって来た。

 

「八木……。お前な……。まあ、来てしまったものは仕方ないが、今度からはクラスと足並み揃えろ」

「イエッサー!」

「ハア……。少しはチームプレイを覚えたかと思えば……」

 

 再びの私の敬礼を見て、相澤先生は疲れたような顔して何処かに行ってしまった。

 まあ、イエッサーと言いつつ、今回と似たような事があったら私は迷わず足手まといを切り捨てるだろうしね。

 相澤先生はその度に指導しなきゃいけない訳だ。

 お疲れ様です。

   

 あと、何故か一緒にいた子供にギロッと睨まれた。

 小動物の威嚇のようで欠片も怖くなかったけど、睨まれた理由がわからない。

 

「ごめんね。あの子ちょっとヒーロー嫌いというか、そんな感じだから……」

 

 首を傾げていたら、マンダレイがそんな感じの事を言ってた。

 これは何か訳ありだな。

 重い話の気配がする。

 

 触らぬ神に祟りなし。

 藪をつついて蛇を出す事はない。

 私は何も聞くまい。

 知らぬ存ぜぬを貫こう。

 

 

 さて。

 後はクラスメイト諸君が来るまで待機か。

 暇だなー。

 

 とか思ってたら、相澤先生が「時間がもったいないから実戦稽古でもしてもらえ」と言い出し。

 私は暇だと思っていた時間をプッシーキャッツの皆さんとの模擬戦に費やす事となった。

 最初は虎さんだけだったけど、私がちょっとだけ個性使って応戦してる内にいつの間にか四対一になっていた。

 

 私の戦闘力を見て大人げなく本気で勝ちにきたプッシーキャッツ。

 さすがにプロを相手に怪我させないように戦うのは私でも難しく、その戦いは最終的にプッシーキャッツの皆さんが「疲れた」と言い出した事によって時間切れで終了となった。

 プッシーキャッツの皆さんはクラスメイト諸君の面倒も見なきゃいけないんだから、ここで体力を使い果たす訳にはいかないもんね。

 私の体力を考えればエンドレスバトルになってただろうし、ここで終わらせたのは英断だよ。

 

 

 そんな模擬戦でも、結局一時間くらいしか時間を潰せなかった。

 クラスメイト諸君はまだ来ない。

 暇だなー。

 

 あまりにも暇だから夕食作りの手伝いとかもした。

 私の女子力を見たピクシーボブが威嚇してきた。

 マンダレイ曰く、結婚適齢期的なやつで焦ってるから許してやってくれとの事。

 若くて美少女で女子力の高い私は嫉妬の対象らしい。

 私は結婚とかに興味ないけど、将来ああはなりたくないと思った。

 同じ独身でも独身貴族を気取れるような女になろうと思った。

 

 

 そんなこんなで数時間が経過。

 クラスメイト諸君はまだ来ない。

 遅い!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。