小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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夏の林間合宿!! パート3

「ぎゃああああああ!!!」

「うわああああああ!!!」

「いてえええええ!!」

「クソがぁああああ!!!」

「ひーーー!!!」

 

 なに、この地獄絵図?

 プッシーキャッツプレゼンによる個性強化特訓によって悲鳴を上げるクラスメイト諸君を見た私の率直な感想がそれだった。

 やってる事はとっても簡単。

 ただひたすらに個性を使い続けるだけ。

 言葉にするとこんなに簡単なのに、当人達にとっては悲鳴を上げたくなるような苦行なんだよね。

 

 例えば、上鳴少年の個性は電気を使いすぎると脳がショートして一時的に著しくアホになる。

 この許容上限を底上げする為にひたすら電気を使わされ続けている。

 何? アホになったら個性が使えない?

 大丈夫だ。充電器的な物を用意してある。

 要は電気に体が慣れれば良いんだから、これでひたすら電気を流し続けてやるぜ!

 ただの拷問である。

 

 他にも、切島少年は硬化の個性でより硬くなれるように殴られ続けてサンドバッグになってるし。

 青山少年は下痢になろうともお構い無しとばかりに、レーザーを撃ちまくってる。

 

 轟少年は体力調節に関係する個性という事で熱いドラム缶風呂に入りながら氷と炎を交互にぶっぱ。

 爆豪少年は掌の汗腺が個性の威力に直結するって事で、両手を煮えたぎる熱湯の中に浸け続けてる。

 麗日少女はキャパ超えると平衡感覚に異常をきたして酔うから、球体の中に入って坂道を転がり落ちながら自分を浮かせて酔い耐性の獲得を目指している。

 

 他の諸君も似たり寄ったり。

 結果として阿鼻叫喚の地獄絵図が出来上がっていた。

 途中からB組の諸君も合流して地獄の道連れとなった。

 

 私も最初は彼らに交ざって色々やってたんだけど、いくらやっても疲労を感じず成長の気配も感じられなかった為、現在は個性の成長ではなく制御力を伸ばす方向にシフトチェンジした。

 あれだ。

 多分、私の個性はゲームで例えるならレベル95とか行っちゃってるんだと思う。

 だから、1レベル上げるだけでも合宿の一週間じゃ全然時間が足りないんだ。

 だったら他の課題をやった方が合理的だと相澤先生に言われて、今の形に落ち着いた。

 

 現在、私は悪魔の右腕を解放してパンチングマシンと向き合っていた。

 そしてマシンに向けて必殺技とも言えないレベルの弱いパンチを繰り出す。

 哀れ。パンチングマシンは破壊され、ただの屍となった。

 

 これが私に与えられた課題だ。

 個性を使った上で、適切な力加減ができるようなる事。

 今の私が個性を使ったパンチを特に頑丈でもない人に向けて打った場合、多分死にはしないだろうなぁ、でも大怪我はするだろうなぁ、というすっごい大雑把な感じでしか力の調節がきかないからね。

 極端な話、私に適切な力加減で殴れと言うのは、シャボン玉を割らないように殴れと言っているようなものだ。

 むしろ、良くぞ人を殺さないレベルにまで調節ができたなと自分を褒め称えたいくらいだよ。

 

 でも、このままだと困るというのもまた事実。

 ヴィラン相手ならうっかり力加減をミスって殺しちゃっても良いと思うけど、それを目撃でもされようものなら私は殺人犯だ。

 仕方のない事故でしたという弁論にも限度がある。 

 ヒーローはヴィランを殺す為ではなく捕まえる為に力を振るうのだ。

 とってもめんどくさいルールだけど必要な事なんだから仕方ない。

 そのルールを守る為に力の調節は必要なんだから、頑張って覚えよう。

 

 そんな訳で、私の前に再びパンチングマシンが用意される。

 殴る。

 壊れる。

 うーん……。上手くいかない。

 そもそも、これは一朝一夕にできる事じゃないからね。

 今の力加減を覚えるのにも年単位の時間がかかったんだし。

 根気強くやるしかないか。

 

 再びパンチングマシンが用意される。

 殴る。

 壊れる。

 ぐぬぬ……。これ上手くいかないと地味にストレスが溜まるわ。

 私の体力は無尽蔵だけど、精神的にはちゃんと疲弊するんだから、終わる頃にはぐったりしてるかもしれない。

 ……何回かに一回はおもいっきり殴ってサンドバッグ代わりにしちゃおうかな?

 

 再びパンチングマシンが用意される。

 全力でぶん殴る。

 マシンは木っ端微塵に粉砕され、周囲に爆風が渦巻いた。

 ふぅー。

 ちょっとスッキリした。

 

「おい、八木」

 

 ひぇ!?

 相澤先生の鋭い視線が私を射ぬいた。

 怒っていらっしゃる。

 

「目的忘れてぶっぱしてんじゃねぇ。二度とやるな」

「イ、イエッサー……」

「よろしい。次だ。八百万」

「……はい」

 

 そうして私の前に再びパンチングマシンが用意される。

 八百万少女は相澤先生の指示によって、自分の個性「創造」を鍛えるついでに私にパンチングマシンを提供してくれている。

 他の諸君の例に漏れず、八百万少女の強化方法もまた個性を使い続ける事。

 つまり延々と何かを創り続ける事だ。

 ただ創るだけじゃもったいないって事で、八百万少女はパンチングマシンを創り、私がそれを壊すという協力関係が結ばれる事となったのだ。

 これを協力と言っていいのかはわかんないけど。

 

 ちなみに、八百万少女は最初「パンチングマシン……?」と言って首を傾げていたけど、相澤先生が簡単な構造を説明したら普通に創れるようになってた。

 凄いね。

 

 

 

 そしてPM4:00。

 本日の地獄の特訓終了。

 夕飯の時間だ。

 

「さあ昨日言ったね! 『世話焼くのは今日だけ』って!」

「己で食う飯くらい己で作れ!! カレー!!」

 

 満身創痍のクラスメイト諸君に対して、プッシーキャッツはそんな無慈悲な宣告をした。

 確かに言ってたね。

 私は待ち時間に聞いたし、他の諸君にも夕飯の時間とかに言ってた。

 

「「「「「イエッサ……」」」」」

 

「アハハハハ! 約一名を除いて全員全身ブッチブチ!! だからって雑なネコマンマは作っちゃダメね!」

 

 クラスメイト諸君はもう騒ぐ気力もないのか、自炊しろという命令に粛々と従うだけだ。

 私は肉体的な疲労は皆無に等しいからまだ余裕があるけど、他の諸君はもう色々と限界だろうからね。

 仕方ないか。

 

「確かに……! 災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環……! さすが雄英! 無駄がない! 世界一旨いカレーを作ろう皆!!」

 

 訂正しよう。

 まだ余力のある奴がいたよ。

 飯田少年はこんな時でも委員長だった。

 やっぱり押し付けて正解だったわ。

 

 そうして始まったカレー作り。

 この頃になると、ようやく訓練が終わったという実感が出てきたのか、クラスメイト諸君も結構元気になってきていた。

 あるいは疲労でハイになってるだけかもしれないけど。

 それでも食卓が明るいのは良い事だ。

 

 そしてカレーが完成。

 疲れ果てた上に腹ペコなクラスメイト諸君は、ひたすらカレーにがっついた。

 まるで昨日の焼き回しのようだ。

 

「店とかで出たら微妙かもしれねーけど、この状況も相まってうめーーー!!!」

「言うな言うな。ヤボだな!」

 

 そうなんだよなぁ。

 まるで昨日の焼き回しのような光景だけど、唯一料理の質だけは昨日に比べて遥かに劣る。

 私が一人で作ればもっと美味しくできた自信もあるけど、合宿でそれやる訳にはいかないもんね。

 我慢だ我慢。

 それに不味い訳じゃないんだから文句はないさ。

 

「ヤオモモがっつくねー!」

「ええ。私の個性は脂質を様々な原子に変換して創造するので、沢山蓄える程沢山出せるのです」

「うんこみてぇ」

 

 瀬呂少年の心ない一言によって八百万少女が落ち込んでしまった。

 元凶となった瀬呂少年は即座にしばかれてた。

 当然の裁きだ。

 その理屈だと、私は今日一日うんこを殴っていたという事になってしまうんだぞ。

 食事中にそんな話題は避けろや。

 私はそっと八百万少女の肩に手を乗せて慰めておいた。

 

 そんな感じで合宿二日目は終わっていった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──緑谷視点

 

 

 

「何が個性だ。本当……下らん……!!」

 

 カレーを運んでた時、そんな風に呟く洸太くんの声が聞こえた。

 そのまま何処かに立ち去ろうとする洸太くんの後を、僕はカレーを持って追いかけた。

 洸太くんは施設に戻る訳でもなく山の方に向かって行った。

 なら、きっとご飯も食べてない。

 お腹が空いてると思ったんだ。

 ……それ以上に、昨日マンダレイから話を聞いて、放っておけなかった。

 

 山中の洞窟みたいな場所の前で座り込んでいた洸太くんに、僕は話しかけた。

 

「お腹空いたよね? これ食べなよ。カレー」

「っ!? てめえ! 何故ここが……!」

「あ、ごめん……。足音を追って……。ご飯食べないのかなと思って……」

「いいよ。いらねぇよ。言ったろ。つるむ気などねぇ。俺のひみつきちから出てけ」

「ひみつきちか……」

 

 懐かしいなぁ。

 僕も昔、かっちゃん達と一緒に作ったっけ。

 

「個性を伸ばすとか張り切っちゃってさ……。気味悪い。そんなにひけらかしたいかよ力を」

 

 それにしても、やっぱり随分嫌われてる。

 でも、僕にはそれが酷く痛ましく見えた。

 

「……君の両親さ。ひょっとして水の個性の『ウォーターホース』?」

「……!? マンダレイか!?」

「あ、いや、えっと、ごめん! うん。何か流れで聞いちゃって……。情報的にそうかなって……」

 

 そんな洸太くんを放っておけなくて、僕はマンダレイから聞いた話を切り出していた。

 余計なお世話だってわかってるけど。

 それでも。

 

「残念な事件だった。覚えてる」

「…………うるせえよ。頭イカれてるよみーんな……。馬鹿みたいにヒーローとかヴィランとか言っちゃって殺し合って。個性とか言っちゃってひけらかしてるからそうなるんだバーカ」

 

 そう言う洸太くんは凄く苦しそうな顔をしていた。

 この子は、ヒーローだけじゃなくて、個性や超常社会そのものを嫌ってる。否定してる。

 でも、望んでそうなった訳じゃない。

 悲惨な経験で歪んで、意固地になってるだけだ。

 じゃなきゃ、あんなに苦しそうな顔はしない……と思う。

 

「なんだよ!! もう用ないんだったら出てけよ!!」

 

 何もかもを拒絶してる洸太くんに何か言わなくちゃと思った。

 

「いや、あの、えー……」

 

 でも、何を話せば良いのかわからなくて、僕は咄嗟に自分の事を話した。

 

「友達……。僕の友達さ。親から個性が引き継がれなくてね」

「………………は?」

「先天的なもので稀にあるらしいんだけど……でもそいつはヒーローに憧れちゃって。でも今って個性がないとヒーローにはなれなくて。そいつさ、しばらくは受け入れられずに練習してたんだ。物を引き寄せようとしたり。火を吹こうとしたり」

 

 違う。

 伝えたいのはそういう事じゃない。

 そうじゃなくて。

 

「個性に対して色々な考えがあって、一概には言えないけど……。────そんなに否定しちゃうと、君が辛くなるだけだよ」

 

 ただ、そんな苦しそうな顔をしなくて済むように、君を助けたいだけなのに、こんな事しか言えない。

 

「えと、だから……」

「うるせえ!! ズケズケと!! 出てけよ!!」

 

 ああ。

 完全に怒らせちゃった。

 これはもう、話を聞いてくれそうにない。

 

「……ごめん。とりとめのない事しか言えなくて……。カレー置いとくね」

 

 そうして僕はすごすごと退散するしかなかった。

 僕の力じゃ、僕の言葉じゃ、洸太くんを救えなかった。

 

 オールマイトなら救えたんだろうか?

 

 そんな他力本願みたいな情けない事を考えてしまいながら、僕は皆の所に戻って行った。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──???視点 

 

 

 

「疼く……! 疼くぞ……!! 早く行こうぜ……!!」

「まだ尚早。それに派手な事はしなくていいって言ってなかった?」

 

「ああ。急にボス面始めやがってな」

 

 俺は明かりに照らされた合宿所とやらを眺めながら、イカレ野郎共の言葉にそう返した。

 

「今回はあくまで狼煙だ。────虚に塗れた英雄達が地に堕ちる。その輝かしい未来の為のな」

 

 俺はヒーロー殺しの意志を全うする。

 偽物のヒーロー達を失墜させる。

 

 その為になら何でもやろう。

 本来なら粛清対象でしかないイカレ野郎共とでも手を組もう。

 もしかしたら本物のヒーローに育つかもしれない卵達を潰す事も厭わない。

 全ては必要な事。

 必要な犠牲だ。

 

 俺はまだ見ぬ未来を思って、小さく嗤った。

 





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