小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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林間合宿の夜 パート2

 ──死柄木視点

 

 

 

「本当に彼らのみで大丈夫でしょうか?」

 

 雄英の合宿先に奴らを送り込んで来た黒霧がそんな事を言う。

 俺はカウンターに肘をつきながら、手元の写真から目を離しながらその質問に答えた。

 

「うん。俺の出る幕じゃない。ゲームが変わったんだ」

 

 俺は自分の中で変わった認識を黒霧に語る。

 

「今まではさ、RPG(ロールプレイングゲーム)でさ。装備だけ万端でレベル1のままラスボスに挑んでた。だから中ボスにすら勝てなかったんだよ」

 

 USJの時は結局糞餓鬼(中ボス)に全部やられ、オールマイト(ラスボス)をろくに戦わせる事すらできなかった。

 

「だから、それじゃいけない。やるべきはSLG(シミュレーションゲーム)だったんだ。俺はプレイヤーであるべきで、使える駒を使って格上を切り崩していく」

 

 正面からぶつかるだけじゃUSJの二の舞だ。

 糞餓鬼もオールマイトも俺にとって格上。

 そう認める事が大事だったんだ。

 そうすれば、ちゃんと適切なプレイングができるようになる。

 

「その為、まず超人社会に罅を入れる。開闢行動隊。奴らは成功しても失敗してもいい。そこに来たって事実がヒーローを脅かす」

 

 そこには糞餓鬼もいるだろうから、最悪全滅って可能性もある。

 先生が足止め用の脳無を用意したが、止められる確率は半々くらいだそうだ。

 だが、糞餓鬼がそれで止まらなかった場合でも、最低痛み分けにはなるとも言ってた。

 なら、それはそれでいい。

 どっちにしろ目的は達成できる。

 

「捨て駒ですか……?」

「バカ言え! 俺がそんな薄情者に見えるか? 奴らの強さは本物だよ」

 

 それこそ、糞餓鬼とぶつかっても逃げる事くらいはできるんじゃないかって思う程には、その強さを信頼してる。

 何も正面から挑むだけが戦いじゃない。

 見つからないように隠れてもいい。

 人質をとって盾にしてもいい。

 そういう事ができるのも、また強さだ。

 

「向いてる方向はバラバラだが、頼れる仲間さ。法律(ルール)で雁字絡めの社会。抑圧されてんのはこっちだけじゃない」

 

 俺は手元の写真に再び視線を戻しながらそう言った。

 そこに映るのは、拘束具でガチガチに縛られた一人の少年の姿。

 彼が今回のターゲットだ。

 

「成功を願ってるよ」

 

 今回の作戦は確かに成功しても失敗してもいい。

 だが、成功した方がより良いのは当たり前の話だ。

 俺は開闢行動隊の健闘を祈った。

 

 

 

 今回の作戦が成功した時。

 この社会に、ヒーローへの信頼に、修復不可能な亀裂が生じた時。

 

 

 

 オールマイトはどんな顔をするんだろうなぁ。

 

 

 

 その苦悶に満ちた顔を想像して、俺は思わず嗤ってしまった。

 そしてワクワクとした気持ちで知らせを待った。

 良い知らせが届く事を期待しながら。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──緑谷視点

 

 

 

 僕は今、フルカウルを使って森の中を疾走していた。

 いつにも増してボロボロになった腕が痛い。

 でも、そんな事は言ってられない。

 僕が動いて一人でも助けられるなら、動かない訳にはいかないんだ。

 

 

 肝試しのスタート地点に二人のヴィランが現れた時、僕はひみつきちにいるだろう洸太くんの救助に向かった。

 洸太くんはひみつ(・・・)きちってだけあって、あの場所をマンダレイ達にすら教えていなかったみたいで、その場所を知るのは昨日洸太くんを追いかけてカレーを届けに行った僕だけだった。

 

 ヴィランと交戦するつもりはなかった。

 むしろヴィランに洸太くんが襲われる前に避難する予定だった。

 でも、僕が到着した時、そこには既にヴィランがいて、洸太くんを襲っていた。

 

 僕はそのヴィランと戦った。

 筋肉を強化するというシンプルで強力な個性を持っていたそいつは、スピードもパワーも僕よりも遥かに上。

 逃げても確実に追い付かれる。

 戦って勝つしか選択肢がなかった。

 

 でも、そのヴィランは僕の想像よりも遥かに強かった。

 体育祭以降封印してた100%スマッシュを使っても倒し切れない程に。

 最後は壊れた腕を更に酷使して何とか勝てたけど、体はボロボロ。

 それでも何とか走って、途中で遭遇した相澤先生に洸太くんを保護してもらえた。

 その相澤先生からマンダレイに伝えろと言われた伝言、「A組B組総員、プロヒーロー『イレイザーヘッド』の名に於いて戦闘を許可する」って話もちゃんと伝えられた。

 マンダレイのテレパスで全員に通達された筈だ。

 

 でも、僕はまだ止まれない。

 洸太くんを襲ったヴィランが言ってたんだ。

 

『そうそう。知ってたら教えてくれよ。爆豪ってガキはどこにいる?』

 

 かっちゃんが狙われてる。

 その情報もマンダレイに伝えてもらった。

 それに八木さんの使い魔が各地に散開してるのも見えた。

 本人だって動いてると思う。

 正直、これ以上僕が頑張る必要はないのかもしれない。

 

 けど、まだ体は動く。

 体が動くのなら何かの、誰かの助けになるかもしれない。

 オールマイトから貰った力、ワン・フォー・オールは誰かを助ける為の力だ。

 その後継者の僕が、痛いから逃げるなんて言える訳ない!

 

「!?」

 

 そうして夜の森の中を走っていたら、黒い手みたいなモノが僕に襲いかかって来た。

 慌てて回避しようとしたけど、こんな時に腕から激痛が走って一瞬動きが止まった。

 

「っあ……!」

 

 直撃を覚悟したけど、僕の体に衝撃は来なかった。

 思わず瞑ってしまった目を開ければ、誰かの背中が見えた。

 顔は見えなかったけど、僕を支える特徴的な形をした腕で誰なのかわかった。

 

「障子くん……!?」

「……その重傷、もはや動いていい体じゃないな。友を助けたい一心か。呆れた男だ……」

 

 そういう障子くんも息を切らして血を流していた。

 僕程じゃないけど、消耗してる。

 それに……

 

「今のって……」

「ああ」

 

 今、僕を襲った黒い腕。

 あの個性には見覚えがあった。

 ヴィランの攻撃じゃない。

 今のは、味方からの攻撃だ……!

 

「ヴィランに奇襲をかけられ、俺が庇った。……しかしそれが、奴が必死で抑えていた個性のトリガーとなってしまった。───ここを通りたいなら、まずコレをどうにかせねばならん」

 

 僕はさっきの黒い腕が伸びて来た方向に視線を向けた。

 そこには、まるで暴走するみたいに蠢く闇の塊と、そこに囚われるクラスメイトの姿があった。

 

「俺から……ッ! 離れろ!! 死ぬぞ!!」

 

 そう言って警告を発して来たのは……

 

「常闇くん!!」

 

 必死の形相を浮かべた常闇くんだった。

 常闇くんの個性は「ダークシャドウ」。

 影っぽいモンスターを体に宿してる個性。

 それが僕に襲いかかって来たって事は、多分、何らかの要因で個性が暴走してるんだと思う。

 出力も普段とは比べ物にならない。

 どう見ても放置するのは危険な状態だ……!

 

 しかも脅威はそれだけじゃなかった。

 

 突然、僕と障子くんの目の前に人影が現れて、障子くんの首を目掛けて、刃物みたいになってる腕を振るった。

 

「ッ!?」

「え……!?」

 

 その人影のあまりのスピードに、僕らは身動き一つとる暇もなかった。

 ただ驚いて硬直していただけ。

 一瞬の内に危機は訪れ……そして去った。

 

 人影に向かって、横から見覚えのある闇の光線が飛来した。

 人影は僕らへの攻撃を中断して、もの凄いスピードで闇の光線を回避し、距離をとった。

 その後もまるでグラントリノみたいに目にも留まらぬスピードで動き続けている。

 

「だーーーーー!!! ウザイ!! とってもウザイ!!!」

 

 そして闇の光線を放ったであろう人物、八木さんが現れた。

 その表情には隠し切れない、隠すつもりもないような苛立ちが浮かんでいた。

 そこにいつもの余裕たっぷりな様子はない。

 八木さんでも手こずるような強敵って事か……!!

 よりによってこんな時に!!

 

「八木さん! アレは……!?」

「見ての通り脳無だよ!! あんにゃろう、正面から来ないで、私以外ばっかり狙って来るんだ!!」

 

 あれ脳無だったのか!?

 速すぎてわからなかった……!

 しかも、八木さんは説明中も脳無の攻撃を防ぎ続けていた。

 完全に僕らが足手まといになってるんだ……!

 

「だから君らには直ぐにこの場を離れてほしいんだけど……常闇少年はどうしちゃったんだ!?」

 

 八木さんはぼやくようにそう言って、チラリと常闇くんに目を向けた。

 その隙を突くように脳無が飛びかかって来た。

 

「チッ!!」

 

 八木さんは舌打ちしながら、本当に苛立たしそうに脳無を迎撃した。

 でも、脳無は八木さんにダメージを与える事が目的ではないみたいで、接触する前に飛び退いたように見えた。

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!」

 

 でも、飛び退いた脳無に常闇くんのダークシャドウが襲いかかった。

 八木さんと違って僕らを守るつもりなんて欠片もない、ただの攻撃。

 その攻撃も速すぎる脳無には当たらなかったけど、ダークシャドウはまるで鬱陶しい虫を叩き潰そうとするかのように激しく攻撃を繰り返した。

 ダークシャドウの標的が完全に脳無に移った!

 しかも、脳無の方もダークシャドウの攻撃を避けるのに必死で僕らへの攻撃が止んだ。

 

「おお!! ナイスだ常闇少年!!」

 

 八木さんがダークシャドウの相手で手一杯になってる脳無に飛びかかった。

 僕の目じゃ速すぎて捉えられない一瞬の攻防の末に、八木さんの拳が脳無に突き刺さる!

 脳無が森の木々を薙ぎ倒しながら吹き飛んで行った。

 まさかの怪我の功名だ!!

 

「手応えあったァ!!! 緑谷少年、障子少年!! 直ぐにあいつ仕留めて戻って来るから、その間、常闇少年を頼んだ!!」

 

 そして嵐のように訪れた八木さんは、脳無を追って飛び去って行った。

 後には僕らと、未だに暴走する常闇くんが残される。

 

「……だそうだが、どうする緑谷?」

 

 障子くんの言葉に、僕は一瞬考えた。

 八木さんなら多分、常闇くんの暴走も静められる。

 それこそ物理的に殴っておとなしくさせる事ができると思う。

 だから、常闇くんを確実に助けたいのなら、おとなしく隠れて八木さんが戻って来るのを待つべき。

 

 ……でも、助けたいのは、常闇くんだけじゃないんだ。

 

「…………ごめん。障子くん」

 

 ごめん、八木さん。

 僕は先に謝って、障子くんに作戦を伝えた。

 ハイリスクハイリターンの、危険な作戦を。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 八百万少女と共に脳無に襲われた後、脳無の行動パターンを読んだりして何とか隙を作り、八百万少女を逃がす事に成功した。

 この辺りにはまだ使い魔を潰して回ってるヴィランがいる筈だから危ないけど、少なくともあの脳無を相手にするよりはマシだろう。

 八百万少女も私の足手まといになってしまってる事を理解してたから、説得は必要なかった。

 

 そして、ようやく心置きなく戦えると思いきや、脳無はしつこく八百万少女を追いかけ回した。

 私が邪魔してそれが不可能だと判断したら、今度は一目散に逃走。

 他の諸君を狙いに行きやがった。

 あくまでも私と正面から戦うつもりはないらしい。

 その徹底した嫌がらせのような戦法には、心底腹が立ったよ。

 

 そうして今度は私が脳無を追いかける側に。

 単純なスピードでは私が上だったんだけど、おじいちゃんと同系列な個性を持ってるだけあって、やたらと小回りがきく奴だった。

 そのせいで中々仕留めきれず、結局、次の足手まといがいる地点まで誘導された。

 こうも正確に他の諸君の位置がわかるって事は、何か探知系の個性も搭載してるのかもしれない。

 

 そうして訪れた場所では、何か我を失った感じの常闇少年が暴れていた。

 個性の暴走か何かか?

 だとしたら親近感を覚える。

 

 そして、近くには障子少年とボロボロになった緑谷少年もいて、案の定脳無は彼らを襲った。

 しかし、ここで嬉しい誤算が生じて、暴走した常闇少年が脳無の相手をしてくれた。

 暴走モードの常闇少年は、そんじょそこらの大物ヴィランよりも強く、私が脳無から守る必要がない。

 それどころか、脳無を引き付けて致命的な隙を作ってくれた。

 

 私はその隙を突いて脳無を殴り飛ばし、緑谷少年達に一言言ってから追撃した。

 殴ってみた感触からして、今回の脳無は本当に機動力特化で、前の脳無が持ってたショック吸収とかの類いは持ってないと見た。

 さっきの攻撃で何本か骨を砕いたから、さすがに自慢の機動力も低下する筈。

 そうなれば、そんなに時間をかけずに仕留められる事だろう。

 

 

 そうして私が脳無にトドメを刺すまでの短い間に、事態は大きく動いていた。

 それもあんまり喜ばしくない方向に。

 

 

 私が事態を把握したのは、取り返しがつかなくなる寸前の事だった。

 

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