小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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林間合宿の夜 パート3

 ──緑谷視点

 

 

 

 八木さんと会った後、障子くんの協力で暴走した常闇くんを近くにいたかっちゃんと轟くんの所まで誘導。

 暴走ダークシャドウの圧倒的な力でかっちゃん達が戦ってたヴィランを撃破し、かっちゃんの爆発と轟くんの炎で常闇くんの暴走も静められた。

 ダークシャドウは光が弱点で、闇が濃ければ濃いほど強くなるけど制御が難しくなるらしい。

 言われてみれば、体育祭の時も八木さんのダークネス・スマッシュを食らってパワーアップしてた。

 

 その後、ヴィランの狙いと思われるかっちゃんをその場に居合わせた僕、障子くん、常闇くん、轟くんの四人で施設まで護衛する事にした。

 途中で麗日さんと蛙吹さんに合流した時、

 

「その爆豪ちゃんはどこにいるの?」

 

 蛙吹さんの一言で、僕らはとんでもない事に気づかされた。

 

「何言ってるんだ。かっちゃんなら後ろに……」

 

 そう言って振り返った後ろに、かっちゃんの姿はなかった。

 それどころか常闇くんの姿すらない。

 この非常時に誰も油断なんてしてなかったのに。

 僕らは、いとも容易く欺かれた。

 

「彼なら、俺のマジックで貰っちゃったよ」

 

 突然聞こえて来た声。

 声のした方に目を向ければ、木の上に立つ仮面を被った男の姿が。

 

「こいつぁ、ヒーロー側(そちら)にいるべき人間じゃあねぇ。もっと輝ける舞台へ俺達が連れてくよ」

「!? 返せ!!」

 

 手の中で二つの玉みたいなものを弄ぶ新手のヴィラン。

 そいつに向かって、僕は思わず叫んでいた。

 

「返せ? 妙な話だぜ。爆豪くんは誰のモノでもねぇ。彼は彼自身のモノだぞ! エゴイストめ!」

「返せよ!!」

 

 おどけるように、馬鹿にするように喋るヴィラン。

 かっちゃん達がいなくなった、あいつの言葉を信じるなら既に奪われたという焦りもあって、自分の口調が荒くなってるのを感じる。

 

「どけ!」

 

 轟くんが樹上のヴィランに向けて氷結攻撃を繰り出す。

 でも、ヴィランは簡単にかわしてまた語り出した。

 

「我々はただ凝り固まってしまった価値観に対し、それだけじゃないよと道を示したいだけだ。今の子らは価値観に道を選ばされている」

 

 そんなのただの詭弁じゃないか!!

 

「わざわざ話しかけてくるたぁ……舐めてんな」

 

 轟くんが独り言のようにぼやく。

 その顔には隠しきれない焦りの表情が浮かんでいた。

 

「元々エンターテイナーでね。悪い癖さ。常闇くんはアドリブで貰っちゃったよ。君らがさっき相手してたムーンフィッシュ、歯刃の男な。アレでも死刑判決控訴棄却されるような生粋の殺人鬼だ。それをああも一方的に蹂躙する暴力性。彼も良い(・・・・)と判断した!」

「この野郎!! 貰うなよ!!!」

「緑谷、落ち着け!」

 

 障子くんに言われて、何とか冷静になろうと努力した。

 その間に轟くんが再び氷結攻撃を、しかも、今度はかなり大規模なやつを繰り出した。

 でも、ヴィランはそれすらかわす。

 

「悪いね。俺ァ逃げ足と欺く事だけが取り柄でよ! ヒーロー候補生なんかと戦ってたまるか! ───開闢行動隊! 目標回収達成だ! 短い間だったが、これにて幕引き!! 予定通り、この通信後5分以内に回収地点へと向かえ!」

 

 ヴィランは僕らにではなく耳元を押さえながら、多分通信機に向かってそう言った後、一目散に逃げ出した。

 ダメだ!!

 行かせちゃダメだ!!

 

「幕引きだと……!? させねぇ!! 絶対逃がすな!!」

 

 轟くんに言われるまでもなく全員が追跡を選択した。

 でも、ヴィランは逃げ足が取り柄と言うだけあって、まるで空を走るように木々の上を走り抜けていく。

 八木さんや飯田くん程じゃないけど速い!!

 個性によるスピードじゃなくて、純粋に体の動かし方が上手い!!

 

「ちくしょう速ぇ! あの仮面……!!」

「魔美ちゃんか飯田くんいれば……!」

 

 思わず弱音を吐きたくなる気持ちもわかる。

 でも……!

 でも……!!

 

「諦めちゃダメだ……!! 絶対に……!! 追いついて……取り戻さなきゃ!!」

 

 ヒーローが助ける事を諦めるなんて……!! そんなの絶対にダメだ!!

 考えろ!

 今の僕はほとんど足手まといの怪我人だ。

 だったら考えろ!

 この状況を打開する策を!

 考えるのはお前の得意分野だろ緑谷出久!!

 

「! 麗日さん!! 僕らを浮かして!! 早く! そして浮いた僕らを蛙吹さんの舌で思いっきり投げて! 僕を投げられる程の力だ! 凄いスピードで飛んで行ける! 障子くんは腕で軌道を修正しつつ僕らを牽引して! 麗日さんは見えてる範囲でいいから奴との距離を見計らって解除して!」

 

 これが今の僕が考えられる最善策。

 冷静になれてないのは自覚してる。

 もっと良い策があるかもしれない。

 でも、今この瞬間で考えられた作戦はこれしかない!

 

「成る程、人間弾か!」

「待ってよデクくん! その怪我でまだ動くの!?」

「……お前は残ってろ。痛みでそれどころじゃあ……」

 

「痛みなんか今は知らない……!! 動けるよ……!! 早くっ!!」

 

 僕はまだ動ける……!

 だから……行かなきゃ!!

 ここで動かなきゃヒーローじゃない!!

 

「……! デクくん、せめてこれ!」

 

 そう言って麗日さんが折れた腕に応急措置をしてくれた。

 

「いいよ! 梅雨ちゃん!」

「必ず二人を助けてね」

 

 そして麗日さんの個性によって重さがなくなった僕らは、蛙吹さんの舌で投げられてもの凄いスピードで飛翔した。

 

「おおおおおおおおおお!?」

 

 恐怖を感じる程のスピードのおかげで、僕らは前を走る仮面のヴィランに追いついた。

 そして、その背中に突撃。

 そのまま地面に叩きつけて押さえつけた。

 やった!!

 

「知ってるぜこのガキ共! 誰だ!!」

「Mr.、避けろ」

「! 了解(ラジャ)!」

 

 けど、僕らが着地した場所にはもう、他のヴィランがいた。

 仮面のヴィラン以外に三人。

 その内の一人が僕らに手を向けて──青い炎を放って来た。

 

「うあ"!!!」

 

 仮面のヴィランごと巻き込むような火炎放射。

 それが僕の右腕を焼いていった。

 熱い!! 痛い!!

 限界を超えた痛みで、一瞬意識が飛びかけた。

 そこに新手のヴィランが襲いかかって来る!

 

「トガです! 出久くんだよね! 血まみれでカッコイイです! もっと血出てた方がもっとカッコイイよ出久くん!!」

「はぁ!!?」

 

 意味不明な事を言いながら、トガと名乗ったそのヴィランは僕にナイフを振りかぶってきた。

 それは何とか障子くんが防いでくれたけど、これだと仮面のヴィランを押さえる人がいない!

 仮面のヴィランはどうやってか知らないけど、さっきの炎を避けてたみたいで、普通に歩いて炎を放ったヴィランの方に向かっていた。

 ヤバイ!!

 

「二人とも逃げるぞ!!」

 

 僕が何とかしなきゃと焦っていた時、突然障子くんがそう言い出した。

 何を!?

 

「今の行為でハッキリした! 個性はわからんが、さっきお前が散々見せびらかした───右ポケットに入っていたコレ(・・)が、常闇、爆豪だなエンターテイナー!」

 

 そう言う障子くんの手の中には、さっき仮面のヴィランが持ってた二つの小さな玉が握られていた。

 凄い!!

 

「障子くん!!」

「ホホウ! あの短時間でよく……! さすがに六本腕! まさぐり上手め!」

「っし! でかした!!」

 

 それを見た僕達は急いで撤退を始めた。

 轟くんも相手してたもう一人のヴィランを振り切って走り出す。

 

 でも、その行く手に、黒いモヤが現れた。

 こいつ、USJの時の!!

 

「ワープの……!」

「合図から5分経ちました。行きますよ荼毘」

「ごめんね 出久くんまたね!」

「待て。まだ目標が……」

 

 そうしてヴィラン達もワープゲートに飛び込んで撤退して行く。

 でも、かっちゃん達は取り戻した。

 撤退してくれるんなら、僕らにとっては好都合だ。

 

 好都合の……筈だった。

 

「悪い癖だよ。マジックの基本でね。モノを見せびらかす時ってのは───見せたくないモノ(トリック)がある時だぜ」

 

 後ろからそんな不吉な言葉が聞こえた。

 そして、障子くんが持ってた玉から、氷の破片が出てきた。

 

「ぬっ!!?」

「氷結攻撃の際にダミーを用意し、右ポケットに入れておいた。右手で持ってたモンが右ポケットに入ってんの発見したら、そりゃー嬉しくて走り出すさ」 

 

 圧縮して閉じ込める的な個性か!?

 だとしたら、かっちゃん達はまだあいつが持ってるって事になる!!

 

「くっそ!!!」

 

 慌てて走り出すも、仮面のヴィランはもうワープゲートに消えていくところだった。

 おどけた態度でお辞儀をしながら、去って行く。

 僕の力じゃ、もう届かない!!

 ちくしょう!!!

 

「そんじゃー、お後がよろしいようで……」

 

「よろしくないね」

 

「なッ……!?」

 

 その時、後ろから猛スピードで現れた誰かが、仮面のヴィランを殴り飛ばした。

 ヴィランの仮面が砕けて、口の中に隠していた二つの玉が宙を舞う。

 あれは……!

 

「言ったでしょ。直ぐに戻って来るって」

「八木さん!!」

 

 最強の助っ人がこのタイミングで来てくれた!!

 

 でも、八木さんの登場は少しだけ遅すぎた。

 事態はもう終局寸前。

 八木さんですらひっくり返せない程に、どうしようもないところまで来ていた。

 

 仮面のヴィランが吐き出した二つの玉は、片方が僕らの方へ、もう片方はワープゲートの中に消えて行った。

 発動者が気絶でもしたのか、個性が解除されて玉の中から常闇くんが現れる。

 でも、もう一つの玉は、かっちゃんはワープゲートの中に消えてしまって、もう追えない。

 

 

 

 そしてワープゲートは、仮面のヴィランを殴る為に接近していた八木さんまでも巻き込んで閉じた。

 

 

 

 近くからヴィラン達の気配が完全に消えた。

 でも、そこにはかっちゃんも八木さんもいない。

 僕らは、クラスメイト二人を連れて行かれてしまった。

 

 

 

 僕らの楽しみにしていた林間合宿は、最悪の結果で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 大怪我した後も必死の抵抗を見せた脳無に何とかトドメを刺し、ちょうど近場にいた使い魔に見張りを任せて、私は常闇少年が暴走していた所へと戻った。

 しかし、そこにはもう誰もいなくて、常闇少年が暴れたと思われる破壊の痕跡を辿っている内に、凄い焦った様子の麗日少女と蛙吹少女の二人と遭遇した。

 

 二人から常闇少年と爆豪少年が拐われて、それを緑谷少年達が追って行ったという大雑把な説明を受けた私は、彼らが飛んで行ったという方向に全速力で飛んだ。

 

 そうして駆けつけてみれば、ヴィラン達はもう撤退寸前。

 とりあえず麗日少女から聞いた誘拐犯の特徴「仮面つけたヴィラン」という情報を頼りにそれっぽい奴をぶん殴ったけど、その後、撤退の為に来ていたらしい黒モヤのヴィランはとんでもない愚行に出た。

 

 なんと、私がワープゲートの中に侵入したにも関わらず、お構い無しにゲートを閉じたのだ。

 ゲートを潜った先はバーのような場所。

 ここがヴィラン連合のアジトなんでしょう。

 そこには結局逃げ切れなかったらしい爆豪少年の姿もあった。

 

 これ、一応私も誘拐されたって扱いになるんだろうか?

 まあ、関係ないか。

 私という特級の爆弾を自ら招き入れた時点で、こいつらの運命は決まった。

 

「さーて。私が楽しみにしてた林間合宿を荒らしてくれたんだ。お前ら全員、覚悟はできてるよね?」

 

 全員サンドバッグの刑だ。

 心行くまで殴り倒してやろう。

 

 ヴィラン達は私に警戒の眼差しを向けながら、構えをとった。

 

 私もまた個性を発動し、嗜虐的な笑みを浮かべながら戦闘態勢に入ったのだった。

  




夏の林間合宿編 終了!
大分はしょったな……。
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