小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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決戦への序章

 ──オールマイト視点

 

 

 

「己の不甲斐なさに心底腹が立つ……!! 彼らが必死に戦っていた頃、私は半身浴に興じていた……ッ!!」

 

 林間合宿襲撃事件の翌日。

 緊急で執り行われた職員会議の席で、私は自分への憤りでどうにかなってしまいそうな心持ちでいた。

 生徒達の危機に、娘の窮地に、今度は立ち会う事さえできなかった……!!

 私は、USJの時を遥かに上回る自責の念を感じていた。

 

「襲撃の直後に体育祭を行う等……今までの『屈さぬ姿勢』はもう取れません。生徒の拉致。雄英最大の失態だ。奴らは二人の生徒と同時に、我々ヒーローへの信頼も同時に奪ったんだ」

「現にメディアは雄英の非難でもちきりさ。爆豪くんを狙ったのも、恐らく体育祭で彼の粗暴な面が少なからず周知されていたからだね。もし彼がヴィランに懐柔でもされたら教育機関としての雄英はお終いだ」

 

 校長が表面上は冷静を保ってそう言うが、いつもより大分毛並みが悪い。

 多大なストレスがかかっている証拠だ。

 

「八木くんに関しては、状況を聞く限りだと、排除できずに仕方なく連れて行ったという可能性が高いね。だが、彼女の戦闘力を考えれば、拐われた直後に襲撃犯達を制圧していてもおかしくはない。……考えたくはないが、一夜明けて特に音沙汰がないという事は彼女ですら敗北したか、あるいは一緒に拐われた爆豪少年を気にして停戦しているのか……。いずれにせよ彼女を倒せる、もしくは戦闘を躊躇させる程の戦力が向こうにはあるという事になるね」

「……本当に考えたくないですね」

 

 相手はあのオール・フォー・ワン。

 何が起きていても不思議ではない。

 魔美ちゃん……! 爆豪少年……!

 どうか無事でいてくれ……!!

 

『でーんーわーがー来た!』

 

 そうして気を揉んでいた時、私の携帯に着信があった。

 私自身の声を登録した着信音が会議室に鳴り響く。

 私は慌てて席を立った。

 

「すいません。電話が……」

「会議中っスよ! 電源切っときましょーよ!」

 

 マイクに言われて、ちょっと申し訳ない気持ちになりながら、私は会議室の外に出た。

 

「ハァ……」

 

 そして、人目がなくなったせいか、思わずため息をついてしまった。

 自責の念に苛まれながら電話に出る。

 画面に表示された相手の名前は塚内くんだった。

 

「───すまん。何だい、塚内くん」

『今、イレイザーヘッドとブラドキングの二人から調書を取っていたんだが、思わぬ進展があったぞ。────ヴィラン連合の居場所、突き止められるかもしれない』

 

 その言葉に私は思わず耳を疑った。

 そして、一心不乱に塚内くんの話に聞き入る。

 

『二週間前。部下が聞き込み調査で「顔中ツギハギの男がテナントの入ってない筈のビルに入って行った」という情報を入手していた。20代くらいだというので過去の犯罪者を漁ってみるも目ぼしい者はおらず、又、ビルの所有者に確認したところ、いわゆる隠れ家的なバーがちゃんと入っているという話だった為、捜査に無関係だと流していたんだが……今回生徒を拐ったヴィランの一人と特徴が合致した! 事態が事態だ。裏が取れ次第すぐにカチ込む! これは極秘事項。君だから話してる!』

 

『今回の救出、掃討作戦。君の力も貸してくれ!』

 

 塚内くんの話を聞き終えて、私は何とも言えない心地になった。

 拐われた子らを救う機会を得た事への喜びと、決戦に向けた戦意の高揚。

 その二つの気持ちが混ざり合う。

 必ず二人を救い出し、今度こそ奴との決着をつけるという決意が、私の中に完成された。

 

『オールマイト?』

「……私は、素晴らしい友を持った」

 

 そして、その機会を作ってくれた友人に、感謝の気持ちが募る。

 

「奴らに会ったらこう言ってやるぜ……!」

 

 その気持ちに応える為にも、私は力強く宣言した。

 

 

 

「私が、反撃に来たってね……!!!」

 

 

 

 待っていてくれ魔美ちゃん、爆豪少年。

 待っていろオール・フォー・ワン。

 

 私が行くぞ!!!

 

 そうして私は、すぐそこにまで迫った決戦の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──緑谷視点

 

 

 

 襲撃事件から二日。

 僕は病院のベッドの上で両腕にギプスを付けて寝かされていた。

 怪我のせいで僕はこの二日間、気絶と悶絶を繰り返し高熱にうなされた。

 その間リカバリーガールが来て治癒を施してくれたり、警察が訪ねて来たみたいだけど、何一つ覚えちゃいなかった。

 

「洸太くん、無事かな……」

 

 ポツリと、そんな言葉が口から出た。

 そういう事を考える事しか、今の僕にはできない。

 

「あー! 緑谷!! 目ぇ覚めてんじゃん!」

「え?」

 

 そうしていると、A組の皆がお見舞いに来てくれた。

 でも、そこにはかっちゃんも八木さんもいない。

 二人は連れて行かれてしまった。

 

「オールマイトがさ、言ってたんだ。手の届かない場所へは助けに行けない……って。だから、手の届く範囲は必ず助け出すんだ。……僕は手の届く場所にいた。必ず助けなきゃいけなかった……! 僕の個性はその為の個性なんだ」

 

 前に、体力テストの時に、相澤先生に言われた通りになった。

 

『お前のは一人助けて木偶の坊になるだけ』

「体……動かなかった……!」

 

 悔しい。

 自分の弱さが憎い。

 

「じゃあ、今度は助けよう」

「……へ!?」

 

 突然、切島くんがそんな事を言い出した。

 

「実は俺と轟さ、昨日も来ててよ。そこでオールマイトと八百万が話してるとこ聞いちゃったんだよ」

 

 切島くんの話によると、八百万さんはあの土壇場でヴィランの一人に発信器をつける事に成功していたらしい。

 つまり……

 

「……つまりその受信デバイスを、八百万くんに創ってもらう……と?」

 

 飯田くんが苦い顔で確認するようにそう言った。

 馬鹿な事しようとしてる自覚はあるのか、切島くんも難しい顔してる。

 

「これはプロに任せる案件だ!! 生徒(おれたち)の出ていい舞台ではないんだ馬鹿者!!!」

 

 そして、飯田くんは怒った。

 ここは病院なのに、大声で怒鳴った。

 それだけ、切島くんのしようとしてる事が許せないんだと思う。

 普通に考えて危険すぎるし、ルールにも違反してる。

 飯田くんの言い分は圧倒的に正しい。

 でも……

 

「んなもんわかってるよ!! でもさぁ! なんっもできなかったんだ!! ダチが狙われてるって聞いてさぁ!! なんっもできなかった!! ここで動けなきゃ俺ぁ!! ヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ!!」

 

 僕には、切島くんの気持ちが、痛い程良くわかった。

 

「切島、落ち着けよ……。こだわりは良いけど今回は……」

「飯田ちゃんが正しいわ」

 

「飯田が! 皆が正しいよ! でも!! なぁ緑谷!! まだ手は届くんだよ!!」

 

 そう言って切島くんが手を差し出してくる。

 ……冷静に考えて、僕らにできる事なんかない。

 それどころか、下手に動いたらプロの邪魔になる。

 それに向こうには八木さんがいるんだ。

 彼女がどうにもできないような事に対して、僕らが何かできる可能性は限りなく低い。

 

 そう、頭ではわかってる。

 でも、

 

 僕は切島くんの言葉に、激しく心動かされていた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──オールマイト視点

 

 

 

「そうそうたる顔ぶれが集まってくれた。さぁ、作戦会議を始めよう」

 

 作戦に参加するメンバーが揃ったところで、塚内くんの言葉によって会議が始まった。

 

「何で俺が雄英の尻拭いを……。こちらも忙しいのだが」

「まあ、そう言わずに。OBでしょう」

「雄英からは今ヒーローを呼べない。大局を見てくれエンデヴァー。───今回の事件はヒーロー社会崩壊の切っ掛けにもなり得る。総力をもって解決にあたらねば」

 

 塚内くんが総力と言うだけあり、今回の作戦には強力な味方が数多く参加している。

 私に加え、ナンバー2ヒーロー『エンデヴァー』。

 ナンバー4ヒーロー『ベストジーニスト』。

 ナンバー5ヒーロー『エッジショット』。

 ナンバー10ヒーロー『ギャングオルカ』。

 

 更に若手実力派の『シンリンカムイ』、『マウントレディ』。

 プッシーキャッツ随一の武闘派『虎』。

 古豪『グラントリノ』。

 その他、警察の特殊部隊が多数。

 

 大きな戦力だ。

 実に心強い。

 だが、それでも相手が相手だ。

 これだけの戦力を集めて尚、確実に勝てるとは限らない。

 しかし、ヒーローに負けは許されない。

 気を引き締めねば。

 

「俊典。俺なんぞまで駆り出すのは、やはり……」

「『なんぞ』なんぞではありませんよグラントリノ! ……ここまで大きく展開する事態。奴も必ず動きます」

「オール・フォー・ワン……。まあ、小娘が未だに暴れてねぇんだ。既に介入してると見るのが妥当か」

 

 そう。

 魔美ちゃんと奴がぶつかったのならば、今頃大騒ぎになっていなければおかしい。

 逆に奴が連合を切り捨てていた場合、既に魔美ちゃんによって連合は壊滅させられ、近場の警察所にでも連行されている筈。

 現状、そのどちらも起きていないという事は、グラントリノの言う通り、奴の介入によって魔美ちゃんが戦闘を思い留まっているという可能性が高い。

 ならば、膠着状態に陥っていると思われる今の内に連中のアジトを叩く。

 奴に時間を与えてはならない!

 

「今回はスピード勝負だ! ヴィランに何もさせるな!」

 

 塚内くんの考えも私と同じ。

 そして、号令が発せられる。

 

「先程行われた雄英の会見。ヴィランを欺くよう、校長にのみ協力要請をしておいた! さも難航中かのように装ってもらってある! あの発言を受け、その日のうちに突入されるようなとは思うまい! ───意趣返ししてやれ! さあ、反撃の時だ! 流れを覆せ!! ヒーロー!!」

 

 そうして、作戦が開始された。

 ベストジーニスト率いる別動隊が、八百万少女の発信器が示す場所、もう一つのアジトと思われる場所へと向かい、我々は魔美ちゃんと爆豪少年がいる方へ向かった。

 

 決戦の舞台は神奈川県横浜市神野区。

 辿り着いたのは、そこにある寂れたビルの前。

 私は拳を握り締め、決意を新たにした。

 

 

 

 とうに日は沈み、今は星の輝く夜の時間帯。

 そして今、後に悪夢と呼ばれる事になる長い長い夜の決戦が幕を開けた。

 




クライマックスだぜ!!
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