小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
何が起こった!!?
演習会場に集まった受験生の諸君は、思い思いの行動で緊張をほぐそうと躍起になっていた。
表面上は余裕ありげに見せて見栄張ってる奴の多い事多い事。
既に合格が決まっていて余裕のある私は、そんな受験生諸君を優越感に満ちた心境で見守っていた。
せいぜい頑張りたまえよ諸君、とか言いたくなるなこれ。
やっぱり、一般入試に来て正解だったな!
で、残念ながらと言うべきか幸いと言うべきか、この会場に知り合いはいなかった。
緑谷少年も不良少年もいない。
不良少年を知り合いとしてカウントするのは微妙なところだけど。
ちなみに、私は生徒数の極端に少ない特別な中学に通っていたので、友達と呼べる相手が緑谷少年以外にいなかったりするんだこれが。
知り合いだったら結構いるんだけど、誰も彼も年上だからなー。
友達とは呼べんよ。
この間、隠れた喫茶店で出会った謎の紳士さんとかなら、年の離れた友人と言えなくもないような気がするけど。
「ハイ、スタートー!」
と、物思いに耽ってたら開始の合図が聞こえた。
マイクさんの声だ。
あの人、試験官もやるんかね?
仕事熱心な事だ。
さて、じゃあ始めるとしますか。
目視できる範囲に仮想ヴィラン……ていうかロボが何体かいる。
最初の標的はあいつらだな。
私は右の掌に意識を集中し、個性を発動した。
「ダークネス・スマッシュ」
私の掌から放たれた極太の闇の光線が、ロボ達を巻き込んで全てを破壊していく。
一応、街中という設定のステージである以上、建物を壊すのはやめた方が良いかなと思ったので、結構手加減して撃った。
それでもロボを木っ端微塵にするには充分すぎる威力だからね。
ちなみに、開始の合図が聞こえてからこの間、僅か一秒弱。
これぞ早業(自画自賛)!!
続けて次の獲物を探すべく、今度は背中に意識を向けて個性を発動した。
「悪魔の翼」
すると私の肩甲骨辺りからコウモリの翼に似た、これぞ悪魔の翼って感じの巨大な翼が生えてきた。
この為に今日の服装は、背中が大きく開いたデザインの物を採用してたのだよ。
男子諸君のエロい視線が鬱陶しかったなー。
緑谷少年に至っては、ずっとあらぬ方向を向いてたっけ。
そんなどうでも良い事を思い出しながら飛行を開始する。
この翼は飾りじゃない。
ちゃんと相応の飛行能力が備わっている。
その気になれば音速を越えるスピードで飛べるけど、そんな事したらソニックブームで辺り一帯が大変な事になるし、
それは普通に嫌だ。
なのでやらない。
スピード違反ダメ。
絶対。
「どうしたあ!? 実戦じゃカウントなんざねえんだよ!! 走れ走れ!! ……って、開始数秒で約一名とんでもねえ事になってんなあ!? 何これ? 無双状態?」
適切なスピード(時速三百キロくらい)で飛行しながら、弱めのダークネス・スマッシュでロボ軍団を破壊して回っていると、マイクさんのそんな声が聞こえてきた。
実況でもやってるのだろうか?
ご苦労様です。
そうして飛び回ってる内に気づいた事が一つ。
これ、思ったよりロボの数が多いわ。
制限時間十分となると、私一人じゃ駆除しきれないかもしれない。
まあ、そうじゃないと私以外の受験生諸君が、涙と絶望の0ポイントで受験を終えてしまう事になるから、別に問題はない。
ないんだけど、せっかく合法的に暴れられるチャンスなんだから、普段使ってない力も使って盛大にやるべきだとも思うんだ。
という訳で、受験生諸君への配慮は星の彼方まで吹っ飛ばして、新たなる力を解放!
「開け! サモンゲート!」
虚空に手をかざし、黒い靄のようなゲートを作り出す。
そして、そこから無数の下級悪魔、使い魔を生み出した。
生み出した使い魔の数は十体。
その姿は、真っ黒な人影に翼と角をくっ付けたようなデザインをしている。
つまり飛べる。
本体の私に比べればクッソ弱い使い魔達だけど、手の届かない場所に派遣するには便利だ。
それに弱いと言ってもロボ軍団よりは遥かに強いから、今回の試験においては充分な活躍が見込めるでしょう。
「総員散開! ロボ軍団を駆逐せよ!」
私の指示に従って、使い魔達は獲物を求めて各方面へと散って行く。
でも実は私はこの能力があんまり好きではなかったりする。
使い魔に任せると、暴れたという実感があんまり湧かないからだ。
でも、まあ、たまには良いよね。
使い魔達を送り出した後も、私自身でも狩りを続ける。
撃ち落とすのに飽きてきたら、降下して拳で殴ったりもした。
拳は個性を解放してないのに、ロボは簡単にバラバラになったよ。
ちょっと脆すぎやしないだろうか?
オワタ式かと思ったよ。
そう思いながらも次から次へとロボを破壊する。
一片の容赦も、欠片の慈悲もなく破壊して回る。
たとえ、お父さんロボットとお母さんロボットが子供ロボットを庇いながら「どうか、この子だけは!!」と懇願してきても関係なく破壊する。
フハハハハハハハハ!!
気分は恐怖の大魔王!!
もしくは究極の破壊神!!
ヒャッハー!!
どこからでもかかってこいやあ!!!
そうして暴れ回っていると、ついにロボットの親玉みたいなのが現れた。
夢の巨大ロボットだ。
あれがマイクさんの言ってた0ポイントヴィランだと思う。
他のロボ共とは明らかに違うし、めっちゃ強くて大暴れしてるっていう特徴が説明と一致してる。
デカさは強さだ!
ああ!
あのロボットを見てると興奮する!
凄く私好みのタイプだよ、あれは!!
だって──
「──すっごく壊しがいがありそう」
私は、自分でも自覚できる程に唇を吊り上げて笑った。
そして笑顔で巨大ロボに突撃する。
誰かに取られる前に。
あれは私の獲物だ。
右腕の個性を解放する。
「悪魔の右腕」
そしてヘドロの時と同じように、右腕が真っ黒に染まり黒色のスパークを放ち始めた。
はち切れんばかりの圧倒的な力が右腕の中に溢れているのを感じる。
私はその右腕で、巨大ロボをおもいっきり殴った。
「デビル・スマッシュ!!!」
全力で振り抜いた拳が、巨大ロボををスクラップに変え、粉砕した。
破壊に伴うとてつもない快感が私の理性を侵食する。
もっと。
もっとだ。
もっと壊したいと、私の右腕が叫んでいる!
「おっと、いけない」
自分が狂いかけていた事を自覚した私は、即座に右腕の個性を解除し、深呼吸して気を静めた。
静まれ! 私の右腕!!
いや、言ってみたかっただけだけどさ。
ヒッ、ヒッ、フー。
よし落ち着いた。
これでもう大丈夫だ。
まったく。
私の個性はこれだからいけないぜ。
帰ったらお薬飲まないと。
「終 了ーーーーーーーーー!!!」
私が落ち着くのと同時に、マイクさんが試験の終了を宣言した。
それを理解した私は、指を鳴らして各地に散っていた使い魔達を消した。
別に指を鳴らす必要はないんだけど、あれだ、演出ってやつだ。
なんかかっこいいじゃん。
そんなこんなで、私の雄英高校一般入学試験は終わりを告げた。
私以外の受験生諸君が獲得したヴィランポイント、ほぼゼロという戦慄の結果を残して……。
うん。
やっちまったな。
だが、後悔はしていない!!
していないぞ!!
◆◆◆
──オールマイト視点
「なんだったんだあれ……」
「0ポイントぶっ飛ばしたのが二人も出たのは、まあ、良しとしよう。でもあの無双蹂躙劇は駄目だろ……」
「ヴィランポイント殆ど独占してましたしね。何者なんでしょうあの女の子……」
「ああ、オールマイトの娘さんらしいぞ」
「「「「マジで!?」」」」
教師陣が先程の試験についての話で盛り上がりを見せる中、私は溜まっていた息を吐き出し、ようやく緊張を解いた。
「フゥー……」
「おつかれ、オールマイト」
労ってくれたのは、試験前にも気にかけてくれた校長だった。
本当にこの人(人じゃないが)は良い人だ。
今回の入試。
結果は予想通りと言えば予想通りの結末に終わった。
魔美ちゃんが盛大に暴れ回ったのと、緑谷少年が前半ガッチガチに緊張しまっくてたのは頭の痛い問題だが、想定していた最悪の事態にならなかっただけでも充分だ。
最悪の事態……魔美ちゃんが暴走するなんて事は早々起こりえないと分かってはいた。
だが、やはり恐ろしいものは恐ろしいものだ。
特に今回の試験は、ロボ相手とはいえ壊しまくるという内容。
それが引き金となって魔美ちゃんが暴走する可能性は確かにあった。
事情を知っている一部の教師陣は、いつでも飛び出せるように警戒していたくらいだからな。
それでも魔美ちゃんの入試参加が許されたのは、ひとえに確認の為だ。
魔美ちゃんの危険性を加味し、本当にそれを自発的に抑えられるのかという確認の為。
医者から許可も出ていたし、そうなる確率は低いと判断されていたからこそ実行された最終確認だったのだ。
それが無事に終わり、私は本当に安心している。
これで、これでようやく、あの子は普通の学園生活を送る事ができる。
雄英による監視は続けられるが、それでも危険人物として狭苦しい学校という名の隔離施設に入れられる事はなくなる。
緑谷少年という後継も見つかり、魔美ちゃんの問題も解決に向かい始めた。
まだまだ問題は山積みだが、それでも運が向いてきたのを感じる。
このまま順調な日々が続いてほしい。
そして、そんな日々を守る為に、私は戦い続けよう。
そんな想いを抱きつつ、私は魔美ちゃんの事で教師陣に質問攻めにされた。
八木魔美子
個性:悪魔
悪魔っぽい事ができる。
例 悪魔の身体能力獲得、闇の魔法っぽいものの発動、使い魔の召喚等。
その副作用として、常時強烈な破壊衝動に襲われる。