小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「脳無!? 何もないところから……! あの黒い液体は何だ!?」
「小娘!! 黒霧は!?」
「完全に気絶させた! こいつの仕業じゃないよ!!」
なのに、脳無は次から次へと出てくる。
こんなに在庫があったのか……!?
「お"!? っだこれ……!? 体が……飲まっれ……」
「爆豪少年!!」
パパの焦ったような声に振り向いて見れば、脳無が出てきた謎の液体と同じものが爆豪少年の口からも溢れていた。
うげ! 気持ち悪っ!!
そして、そのまま溢れて来た液体に包まれて、爆豪少年が消えてしまった。
マジかい……!!
「
「エンデヴァー!! 応援を……!?」
ヒーローの一人が外にいるっていうエンデヴァーさんに応援を頼んだけど、それは無理だろう。
何か、外からも戦闘音がする。
あっちにも脳無が送りつけられたっぽい。
乱戦になってきたな……!
「ぼえ!!」
えずくような声が聞こえて、今度は何だと思えば、ヴィラン連合全員の口から爆豪少年を飲み込んだのと同じ謎の液体が溢れていた。
あれって多分、ワープ系の個性。
てことは……!!
「マズイ!! 全員持っていかれるぞ!!」
「おんのれ!! 私も連れて行け!!!」
パパが死柄木に手を伸ばす。
私は持っていかれるくらいなら死柄木をやっておこうとダークネス・スマッシュを撃とうとしたんだけど、これだとパパに当たっちゃうから慌てて中断した。
くぅ……!
やっぱり連携は苦手だ!
そんな一瞬の躊躇の間に連中のワープは終わり、この場から一人残らずヴィラン共が消えた。
「すみません皆様ァ!!!」
「お前の手落ちじゃないシンリンカムイ! 俺達も干渉できなかった。黒霧の『空間に道を開く』ワープじゃなく『対象のみを転送する』系と見た!」
間違いなくあいつの仕業だ!!
私は脳無を仕留めながら考える。
こんな事ができるなら、何で最初から、私に侵入された時点で使わなかったんだろ?
……いや、目撃者が爆豪少年くらいしかいない状況なら、私は転送される前に死柄木あたりを殺してたかもしれない。
私が本気で殴れば死体も残らない。
隠蔽ができるなら殺ってたかもしれない。
その可能性を考慮したのか。
嘘でも何でもなく、それだけ死柄木が大事って事か……?
「エンデヴァー!! 大丈夫か!?」
「どこを見たらそんな疑問が出る!? さすがのトップも老眼が始まったか!? 行くならとっとと行くがいい!!」
「ああ。任せるね」
エンデヴァーさんとの短い会話を終わらせて、パパがどこかへ行こうとしてるのがわかった。
あいつの居場所を知ってるのか……!
警察の捜査のおかげか?
でも、そんな事、今はどうでもいい。
「パパ。行くなら私もついて行くから」
「魔美ちゃん……」
「止めても無駄だからね。危険だろうが、規則違反だろうが、これでヒーローの資格を失おうが、これだけは絶対に譲れない。この戦いは私の
これは私の信念をかけた戦いになる。
誰が何と言おうと、たとえパパに止められようと、私は行く。
パパはそんな私を見て、困ったような顔をした。
「行け小娘。戦闘許可だ」
そんな私の決心を知ってか知らずか、保須の時みたいにおじいちゃんが戦闘許可をくれた。
背中を押してくれた。
「グラントリノ!?」
「俊典。わかるだろう、止めても無駄だと。今の小娘はお前と同じ眼をしてやがる。それに前にも言ったよな。奴との戦いになるなら小娘の力は必要だと。ここまで来たら腹括れ!」
「……ッ!!」
パパはとびきり苦い顔をした後、それを飲み込んだように真剣な顔になった。
覚悟を決めたらしい。
「……わかった。
「そう来なくっちゃ!」
パパはわざわざ私をヒーロー名で呼んだ。
あいつにも同じ呼ばれ方されたけど、その意味は全然違う。
パパは今この瞬間だけ、私を守るべき対象ではなく、共に戦う一人のヒーローとして見てくれている。
それが何より嬉しい。
「行くぞ!!」
「おー!」
そして、私達はあいつの元へ向かって飛び立った。
ヒーローとして、一人の少年を救う為に。
巨悪を討ち果たす為に。
そして、長い因縁に決着をつける為に。
私達は決戦の場へと赴いた。
◆◆◆
──緑谷視点
恐怖で体が動かなかった。
あの後、皆の制止を振り切って、かっちゃんの救出に向かった僕と轟くんと切島くん。
そんな僕らを監視する為に同行した飯田くんと八百万さん。
発信機が示す場所に辿り着いた僕ら五人は、そこでとんでもないものを見た。
最初に見たのは、ヴィラン連合のアジトと思われる廃倉庫の中にいた、大量の脳無。
それに驚いてる間に始まった、ヒーロー達によるアジトへの突入作戦。
あっという間にアジトを制圧したヒーロー達を見て安心した。
僕らなんかが出る幕もなく事態は終息した。
……筈だった。
でも、その状況は、突然現れた、たった一人のヴィランの手によって覆された。
「せっかく弔が自身で考え、自身で導き始めたんだ。あの子といい、君達といい、できれば邪魔はよして欲しかったな」
何が起きたのかすらわからなかった。
凄い音がして、気がついたらアジト周辺が吹き飛んでいて、ヒーロー達の声は聞こえなくなっていた。
聞こえて来るのは、それを引き起こした男の声だけだった。
振り向く事すらできない。
その男の気迫を受けて、ただ恐怖に震える事しかできない。
圧倒的な恐怖の象徴。
まさか、あれが、あれが……オール・フォー・ワン……!!
「ゲッホ!! くっせぇぇ……! んっじゃこりゃあ!!」
「悪いね爆豪くん」
「あ!?」
そうして僕らが動けないでいた時、突然水が弾けるような音がして、かっちゃんの声が聞こえて来た。
どうやってか知らないけど、突然この場にかっちゃんが現れた。
あんな怪物の前に、たった一人で……!!
助けなきゃと思うのに、震える体は動いてくれない。
その後もバシャバシャという水音が聞こえて来て、何人かのえずくような声が聞こえて来た。
「また失敗したね弔」
弔……。
死柄木が来たのか……!
「でも、決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。爆豪くんもね。君が大切な駒だと考え判断したからだ。いくらでもやり直せ。その為に
怖い。
オール・フォー・ワンの一言一言が、一挙一動が怖くて仕方がない。
だけど……!!
あの時、かっちゃん達が拐われた時、体が動かなくて助けられなかったんだろう!!!
怖いから動けないなんて!!
目の前にいるんだぞ!!
とにかく、動かなきゃ……!!
ここで動けなきゃ、何も……
そうやって動こうとした僕の体を、飯田くんが掴んで止めた。
飯田くんだって怖くて震えてるのに、宣言通り、無謀な事をしようとした僕を止めてくれた。
その必死な顔を見て、少しだけ冷静になる。
そうだ……!
今は、何も考えずに感情だけで動いていい場面じゃない。
勇気と無謀は違うって、破滅的な方法は使っちゃいけないって、教わったじゃないか!!
落ち着かないと……!
「…………やはり来てるな」
オール・フォー・ワンが言ったその一言に、心臓を握り潰されるような感じがした。
まさか……バレた!?
だとしたら、もう打つ手が……!
でも、それは僕らを指した言葉じゃなかった。
突然、背後から轟音が聞こえて来た。
そこでは、オールマイトとオール・フォー・ワンが。
最強のヒーローと、最強のヴィランが激突していた。
「全てを返してもらうぞ!! オール・フォー・ワン!!!」
「また僕を殺すか! オールマイト!!」
二人の攻防の余波が衝撃波となって周囲に拡散する。
ぶつかっただけでこの威力……!
次元が違い過ぎて、僕らにはとても立ち入れない。
「私もいるぞ!!」
そんな誰にも立ち入れないような頂上決戦に、割って入る声がした。
僕のよく知ってる人の声。
もう一人の最強が、頂上決戦に乱入した。
「デビル・スマッシュ!!!」
八木さんの必殺技の余波が、更なる暴風を巻き起こす。
そうして、僕らの見ている前で因縁の対決が始まった。
◆◆◆
パパの攻撃を受け止めてるところを狙って、頭上から放ったデビル・スマッシュ。
それを、オール・フォー・ワンは後ろに下がって回避した。
そして、手加減抜きで放った私の拳が地面に突き刺さり、大きなクレーターと、強大な衝撃波を生み出す。
そんな破壊の嵐の中で、私達は対峙した。
「ずいぶん遅かったじゃないか。バーからここまで5キロ余り。僕が脳無を送り優に30秒は経過しての到着。衰えたねオールマイト。そして君も大した事はないねチャーミーデビル」
言ってくれるじゃないか、この野郎ォ。
ちょっと話してて遅くなっちゃっただけだ!!
断じて私が弱い訳じゃないもんね!!
せいぜい油断してろ! バーカ! バーカ!
「貴様こそ、何だその工業地帯のようなマスクは!? だいぶ無理してるんじゃあないか!?」
パパの言う通り、オール・フォー・ワンは何だか仰々しい黒マスクを付けていた。
あんなの前に戦った時はなかった。
感じる迫力も前より随分弱い。
さしずめ、生命維持装置とかそんなところかね?
「そう言うあんたもちゃんと衰えてるみたいで安心したよ。これなら問題なくボコボコにできそうだ」
「ハハハ。言うねぇ」
お互いに殺気を籠めた言葉の応酬。
それだけで並みの人間なら気絶する程の殺伐とした空気が流れるけど、こんなのは軽い挨拶みたいなもんだ。
すぐに本当の戦いが始まる。
「6年前と同じ過ちは犯さん! 爆豪少年を取り返す! そして貴様は今度こそ刑務所にぶち込む! 貴様の操るヴィラン連合もろとも!!」
そう言いながらパパが突撃した。
私はタイミングを見計らい、とりあえず使い魔を再召喚して爆豪少年の護衛を命じた。
ディザスターモードはまだ使わない。
多分、あれを使ったワンマンプレイより、稚拙でもパパと連携した方が強いと思うから。
「それはやる事が多くて大変だな。お互いに!」
その瞬間、オール・フォー・ワンの左腕が異様に膨らんだ。
その腕がパパに向けられ、そこから強烈な衝撃波が放たれた。
その直撃を受けたパパが周辺のビルを薙ぎ倒しながら吹き飛んで行く。
「パパ!!」
「『空気を押し出す』+『
呑気に語るオール・フォー・ワンに怒りと殺意が沸いてくる。
あの程度でパパが死なないのはわかってる。
それでも、この怒りは破壊衝動によって増幅され、私はオール・フォー・ワンに飛びかかっていた。
「デビル・スマッシュ!!!」
「『転送』+『衝撃反転』!」
そんな私の攻撃を、オール・フォー・ワンはパパに使ったのとは違う技で防いだ。
あのワープする謎の液体がオール・フォー・ワンの目前に現れ、液体の中にいる
しかも、攻撃の威力を全部跳ね返されたみたいに、右腕に大きなダメージが。
それは問題ない。
超再生ですぐに治る。
問題は液体の中にいる
「何、こいつ!?」
そこにいたのは脳無だった。
でも、ただの脳無じゃない。
そいつの触手みたいに伸びた腕が、パンチの為に突き出した私の右腕をがっちりと掴んで拘束していた。
悪魔の力を以てして振りほどけない。
なんてパワーだ!!
「良いだろう。『ハイエンド』と言うんだ。まだ未完成だが、だいぶ君に近い性能を持たせる事に成功した傑作だよ。君は彼と遊んでいるといい。──ハイエンド、任せたよ」
「まマカせ……ま任せロ……」
喋った!?
そして、ハイエンドとやらは私を拘束したまま、凄いスピードで飛んで戦場から引き離そうとしてきた。
しかも、ハイエンドの体内から数体の脳無が飛び出して来て、使い魔とかち合う。
マズイ!!
使い魔の邪魔をされるのもマズイけど、パパと分断されるのが一番マズイ!!
それだけは絶対に駄目だ!!
それじゃ、何の為にここまでついて来たのかわからない!!
ここは出し惜しみしてる場合じゃない!!
「ディザスター・モード!!!」
私の視界が破壊衝動で赤く染まる。
この興奮状態じゃパパとの連携はできない。
でも、それ以前に、まずは
瞬殺してやる!!
私はハイエンドの拘束を力ずくで振り払い、必殺の拳を繰り出した。
「サタナエル・スマッシュ!!!」
USJの時にも使った魔王の一撃がハイエンドに炸裂し、その胴体に巨大な風穴を空けた。
殺しちゃったとか、今は関係ない!
すぐにパパの所に戻らないと!!
でも、私の体は動かなかった。
再び私の体を掴んで来たハイエンドの腕に引っ張られて。
「お……おオお前……ツ強い……強いナ……!!」
ハイエンドが嗤った。
胴体に空けた筈の風穴は、どこにもなかった。
超再生か……!!
それも、かなり高性能な……!!
最悪だ!!
「力を……あア新たナ……おっおっ俺の強ヨサを……試させテくレ!!」
「うっさい!! 黙れ!! レギオン・スマッシュ!!!」
連撃を叩き込んで体中を粉砕してやるも、効果なし。
すぐに再生しやがった。
ウザイ!
そして強い!
USJの時の脳無よりも!!
「クッソォ!!!」
焦りと苛立ちが私の理性を侵食する。
それを必死で抑え込みながら、私は戦いを続けた。