〜天羽奏side〜
比企谷が、捕まったと報告を聞いたあたしは急いで弦十郎のダンナに経緯を聞こうと部屋を飛び出て司令室に向かっていた。
「はぁはぁあいつがなんであんなことをしたのか絶対に聞き出してやる」
全速力で走りながら必ず理由を聞き出してやると意気込んでいた。
ようやく司令室に辿り着き、一息ついて中に入った。
すると中にはダンナや了子さん、他の人たちも概ねそろっていた。
だが、ダンナ達の顔色はあまり良くない。
「ダンナ‼︎あいつはなんて言ってやがるんだ‼︎」
事情を知っていそうなダンナを問い詰める。
「奏か…、実は彼は昨日俺たちが止めに行った時にはあっさりと捕まったのだ、それまでの行動が嘘のようにな。そして、そのままヘリで移送されたのだが、特に行動の理由などは話していないそうだ。」
それに、政府はそんなことよりも民衆の不満を抑えるので精一杯だそうだ。
「これを見てみろ」
ダンナが見せてきたのは昨日の新宿での惨劇だった。
「幸い死者はいなかったが、新宿の建物の3割が被害を受けたそうだ。国民達が事態の詳細を求めて国会に押し寄せてきている。呪具のことは明かせないのは当然として、ここまでの事態をどう収束させるべきかそれが今の一番の問題だそうだ。」
俺と了子君も監督責任として上に呼ばれているそうで今から向かうそうだ。
なら、あたしも…
「ダンナ‼︎あたしも連れて行ってくれ、あいつにはどうしてあんなことをしたのか直接聞きたいんだ。」
「いや、しかしだな…彼に会うことは今はできないと思うぞ」
ダンナはあたしを連れて行くのを渋っているようだが、あたしもここは引けない。
ダンナが考え込んでいると了子さんが
「いいじゃない、連れて行くくらい。それに種類がちがうとはいえ同じ適合者なのだから上も少しは意見を聞きたくなるかもしれないわよ」
「……うむ、わかった連れて行こう。すぐに準備をしろ奏」
了子さんからのナイスアシストによりついて行くことに許可がおりた。
この後、すぐに上の連中のところに向かった。
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「ふぁ〜〜ねむ」
「こら奏真剣に考えろ、この議論の結果によって彼のこれからの処遇が決まるんだぞ」
「わっーてるって、でもさっきからずっと同じことの繰り返しじゃねえかよ」
「それは仕方ないのよ奏ちゃん、それほど今回の件は慎重に進めないといけない議題なのに、時間がないんだもの」
そんなに早く結論はでないわと了子さんが言う。
あたし達は国のお偉いさんに呼ばれて来てみれば先程から、何時間も同じ内容を繰り返しており、一片の進展も見えない。初めの方は緊張していたあたしも何時間もやっていれば少々飽きて来ていた。いっそのことをこっそり抜き出して、比企谷にでも会いに行こうかとなんど思ったことか。
しかし、それでも動かないのはこの会議の終わりがそのまま彼のこれからが決まるものになるからだ。
内容としては、民衆の不満を取り除くために彼を公開処刑にしようとする人たちと、これ以上被害を出さないために一生幽閉しようとする人たち、最後に彼をこれから先の技術の発展の為のモルモットにしようとする人たちの3つに分かれている。
互いが互いの意見を押し付け合い一向に進まない、何か大きな後押しがない限りは進みそうにない。
ちなみにあたし達は3つ目の技術の発展に賛成している。これなら了子さんが、おそらく面倒をみることになるだろう。なぜなら、シンフォギアも作り出した彼女にならきっとさらなる発展のために今回の件も回ってくるだろう。
そうすれば他の2つよりもまだ人道的な扱いになるだろうと考えたのだ、ダンナと了子さんが。あたし?あたしに頭を使うのは専門外だ、体を動かすのが専門だからな。
すると何時間も続いた会議にも終止符が打たれようとしていた。
「ねぇ皆さま方彼の件ですがもう一度私たちに任せてくださいませんか、今回の件の被害よりもさらなる研究成果を上げることを誓いますわ」
了子さんの一言で周りの空気が一変した。
この後、了子さんの意見に乗った研究に賛成している人たちの後押しもあり、なんとかあたし達の意見を押し通すことができたが、払った代償も大きい。
まず、彼は新宿での一件で死んだことにし、彼を了子さん直轄の部下もといモルモットにする、この際彼の自由行動は許可されず常に監視とともにあること、暴走の傾向が見られるようなら監視の手により処分することを決定した。
それと、監視の白羽の矢はこのあたしに立ったわけだが、それによりあたしはコンサートの一件で死んだことになり、ツヴァイウイングも解散するようにとのご命令だ。
なぜなら、彼をそばで見張りなおかつ殺せるほどの力を持つのは翼とあたしの2人だけだ。なら、復讐のためだけに生きてきたあたしが適任だろう。
あたしとしてはもう少し翼と歌っていたかったが、翼にこの役目をさせるわけにはいかない。翼にはあの輝くステージにまだいてほしい、これは単なるあたしのわがままだ。
細かい処理はダンナに任せてあたし達は比企谷の引き取りの手続きに向かった。
数日後、あたし達は柵の前にいた。比企谷の引き取り手続きが終わり、ようやく迎えにこれた。
ガラガラと音を立てて開く柵の中には拘束具にぐるぐる巻きにされた彼が椅子にくくりつけられていた。
彼の顔色は悪くこの数日でどのような扱いを受けたのかは想像にしやすい。
音に反応して、彼はこちらをみる。
「よお、コンサート以来だな比企谷、元気にしてたか。」
なるべく明るく話しかけてみるも彼の反応は無い。とりあえず一刻も早くこの場所から出した方がいいと思い。了子さんにお願いして鍵を外してもらう。
彼をニ課に運ぶ車の中で軽く了子さんが彼の体を見ていたが体のいたるところに痣があるのとろくな物を食べさせてもらえなかったらしく栄養失調らしい。
彼の行動のせいとはいえ、ここまでの扱いは流石のあたしでも酷すぎる。
彼は今回の件により人権の剥奪、彼の行動の責任は全てニ課が負うことになっている。ここまでの条件を全て飲むことにより、彼の再びの保護を認められたのだ。
そして、あたしと比企谷それに了子さんだけの独立機動部隊としてニ課の所属になるらしく、業務もほとんど変わらないがそれにプラスして呪具の研究成果を上げなければならないらしい。基本仕事の指示は全て了子さんから出るらしく、緊急の場合のみダンナに指揮権が渡るらしい。
スヤスヤとベッドで眠る彼を見ているとこれからの事はなんとかなりそうなのが不思議に思えてくる。
「目が覚めたら、なんであんなことをしたのか絶対に話てもらうからな」
眠っている彼にそう告げあたしは部屋を出た。
読んでいただきありがとうございます。それではまた次回お会いしましょう。