戦場に彼女の唄が鳴り響く、元ツヴァイウイングの片翼の天羽奏が奏でる戦場の歌が…
槍で彼女からの一撃を防いだ奏さんは、俺から離れ俺を襲った張本人に体を向ける。
「で、あんたが翼と八を痛めつけてくれたクソったれか?」
「あ?……ああそうだよ、青い髪のやつとそこで転がってるやつをぶっ倒したのはこのあたし様さ」
名前を聞いた時は一瞬誰のことかと考えていたのか、少し間があったがすぐに奏さんに向けて武器を向ける。
「…それとなあたしにはクソったれじゃなくて雪音クリスって名前があるんだよ‼︎」
そう言いながら奏さんの方にネフシュタンのムチを振るう。
彼女のムチは先ほどとは比べようもないほどの速さで標的である奏さんの方へと向かう。
奏さんは気づくのが遅れ、一瞬のタイムロスが生じる。
槍を手に取り構えようとするが、それよりも早く彼女のムチが奏さんを襲った。
直撃だった。
彼女はろくに構えも取ることなく、彼女の一撃をくらった。
「あははははは、まぁもう死んじまった奴には名前なんて関係ねぇか」
辺りには直撃した際に舞い上がった砂煙が充満しており、完全に手応えがあったのか彼女は勝利の愉悦に浸っている。
俺はそんな彼女を見て哀れに思っていた。俺たちの中で一番強い奏さんがこの程度でくたばると思っているのか?
そんな中で砂煙の中から人影が現れる。
「おいおい、勝手に人を殺さないでくれねぇかな、あたしはこの通りピンピンしてるんだからさ」
答えはNOだ
砂煙から現れたのは先ほどと全く同じで傷1つ付いておらず、元々白かった部分が阿修羅丸との融合で黒く染まったガングニールを纏った奏さんだった。
「な⁉︎お前あたしの一撃をくらってなんで立っていやがる‼︎」
敵さんも傷1つ負っていない奏さんを見て動揺しているようだが、単純な話だ。
「そんなもん、あんたの一撃があたしのガングニールに傷1つ負わせられないへなちょこだったんじゃないのか?」
そう単に雪音クリスの一撃は奏さんのガングニールを打ち破る程の威力がなかった、ただそれだけの話だ。
「んだとコラァ‼︎あたしに喧嘩を売るなんて100万年早いんだよ‼︎」
彼女は先ほどよりも思いっきりムチを振るう。
だが奏さんも先ほどとは違い黒い槍を待ち構えて迎撃態勢をとる。
そして彼女のムチと奏さんの槍がぶつかる。
ガギンと激しい武器と武器とのぶつかり合う音が辺りに響き渡る。
俺が見た中で一番早かった一撃を奏さんは余裕そうな表情でいなしてみせた。
「おいおい、この程度か?ならとんだ期待外れだな」
奏さんも翼さんをやられているせいか、相手をかなり煽っている。
いつもならこんな茶番など行わずノイズを迅速に倒しているが、よほど腹を立てているらしい。
「っ!!ふっざけんな‼︎あたしが期待外れだと…違う違う違う違う…」
奏さんの言葉に何か引っかかったのか彼女の様子がおかしい。
頭を抑え何かから、怖がるように身を守っている。
体は小刻みに震え顔色も先ほどより若干青い。
「あたしは、あたしはぁぁぁぁぁぁ!!」
急に叫んだと思うと再び奏さんへとムチを振るう。
そして、それを奏さんがいなしているが、先ほどより段々と速度を上げてきている。
先ほどの余裕そうな表情も今はなく、真剣な表情で彼女の攻撃を捌く、左へいなし、右へと受け流す。二本のムチを左右にさばいていくが、流石は完全聖遺物といったところか受け流されたムチが当たった場所への被害がとんでもない。
今や奏さんが立っている周りはムチの衝撃で凸凹に凹んでいる。
流石にこれ以上好きにさせると後が大変になりそうだなんて思っていると
「こりゃ、藪をつついて蛇を出しちまったかな、初めから全力でやっとくべきだったか、あぁクソ失敗しちまったなぁ。こりゃ思ったらよりもめんどくさいことになりそうだ」
一向に攻撃の手を緩めることのない雪音を見てそう呟く奏さん。
彼女は幾度塞がれても即座にムチを振るうことによって、奏さんの身動きを塞いでいるのだ。彼女なら避けることも可能だが、彼女は多分彼女の後ろにいる俺のことを気にしているのだろう。
彼女が避けた場合その後ろにいる俺に当たる可能性がある。もし当たった場合先ほどの手加減された一撃でも俺のガングニールはボロボロだった、なら、今半狂乱でムチを振るっている一撃が当たれば最悪死ぬ可能性がある。
だから、彼女はこの場を動けないのだ。くしくも二年を経てまたあの時と同じような場面に陥っているというわけだ。
二年前のコンサート彼女が俺をノイズから守ってくれたあの時と…
だが、二年前と違うことは、奏さんは雪音には負けないということだ。
昔とは違い、今の彼女の力は
今の彼女は元々正規適合者である風鳴翼をも凌ぐ力を持つ。
それが、例え完全聖遺物相手であろうと負けるはずがない。
彼女が力を欲した理由その経緯から今までを知っている俺は彼女が負ける姿が想像できない。
ただの気持ち悪い理想の押し付けであるが、血反吐が出るような訓練を経て改造があり、その全てを喰らい尽くしてきた。
ならば、たかだかネフシュタンに適合しただけの少女など彼女の敵ではない。
そして、俺も…二年前とは違い確かな力を持っている。阿修羅丸という呪われた力を。
だから…
「八‼︎」
ああ、分かっている、彼女が言おうとしていることはだがら…
「行け‼︎」
「おう‼︎」
刹那奏さんは雪音からの攻撃を避ける。
そしてその後ろにいる俺へと向かってくる。
このまま何もしなければ確かに直撃するが…
「ずっと寝たままでいるわけねぇだろうが‼︎」
阿修羅丸で彼女の一本目のムチを受け止める。
ものすごい威力で俺の足は思いっきり後ろに押し出される。
刀を握っていた手は痙攣が止まらず、阿修羅丸に関してはヒビが入っている。
二本目のムチは防ぎきれず、後方へと吹き飛ばされる。
阿修羅丸は手元から弾き飛ばされ後方へと吹き飛ばされる。
ガングニールも限界だったのか今の衝撃で変身が解除される。
次の一撃が来れば間違いなく、俺は死ぬだろう。
だが、まぁ来ればの話だが
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
槍の矛先から強烈な風が巻き起こり巨大な竜巻を纏いながらそれを彼女目掛けてぶつける。
【LAST∞METEOR】
竜巻を纏った一撃は彼女を倒せはしないが痛手を負わせられる威力だと俺は思った。
だが、彼女は先ほどの一撃を受けて気を失っていた。
ネフシュタンの鎧もボロボロに砕けていたが、驚くべきことに再生を始めたのだ。
ネフシュタンの鎧は徐々に回復していき、やがて元に戻った。
鎧は戻ったが、纏っている本人は気を失ったままだ。
今がチャンスだと思って、奏さんに捕まえるように頼む
「奏さん今なら、奏者が気絶している今なら捕まえられます。」
奏さんに向け歩いていると奏さんから静止の声がかかる。
「待て‼︎八は何があってもいいように離れてろ、あたしが行く。」
こちらにくるのを止め、彼女の元へと歩く奏さん。
だが…
「奏さん後ろだ‼︎」
突如どこからともなくノイズどもが現れだした。
そしてそれは一直線に奏さんに向かっていた。
俺の声に反応して奏さんは後ろに迫っていたノイズを槍で消しとばす。
だが、消しとばしても消しとばしても現れてくるノイズに対して違和感を覚える。
それはなぜか奏さんではなく敵である彼女に向かっているような。
そして、奏さんの猛攻をかわした一体は奏さんではなくその後ろにいる雪音クリスの元へと向かう。
「やばっ」
彼女はまだ気絶しているのかノイズの接近に気づく気配はない。
「くそ仕方ねぇ、まだ聞きたいことも聞けてないし、ここで助けるのはそのためだ。」
自分自身にそう言い聞かせ阿修羅丸の元へと体にムチを打ち取りに行く。
そしてそのまま阿修羅丸を彼女の元へと放り投げる。
阿修羅丸が彼女の元へと届いた瞬間彼女は消えた。
そして、彼女の消失を確認した瞬間俺の意識は薄れていった。
流石に限界だったらしく、身体中から悲鳴をあげる痛みがでてくる。
「後は…頼みます奏さん…」
そして、完全に俺は意識を失った
それではまた次回