オリキャラ視点
私は、眠れなかった。
高校生になって、実家から遠い学校に行くことになって、狭いけどちょっと綺麗な部屋で一人暮らし。
一人の部屋で眠るたびに、何かに呑まれるようで、暗くて溺れるみたいに。
ひどい悪夢で何度も目を覚ました。
浅い眠りを途切れ途切れに、1日に数回だけ。
学校に通い始めてから、悪夢の、眠れない原因がわかった。
寂しがりの、極致なんだと思う。
シャープペンシルがルーズリーフを引っ掻く音。教科書を捲る音。小さな話し声。笑い声。
あたたかい、人の音。その中では、優しい睡魔さんが訪れてくれた。
しばらく経てば、私はからかいと親しみを込めて『眠り姫』なんて呼ばれるようになった。
学校で寝て、友達と遊んだり防音性のないネットカフェの個室で1時間だけ寝たりして、家に帰って夜中に勉強をした。
健康的ではない生活ではあるが、その日常はよく馴染んだ。
楽しかった。
高校を出てからどういった生活をするかなんて、考えることもないくらいに。
さて、一年生の期間は順調に過ぎ去った。
友達ができたり、行事ごとが楽しかったり、睡眠も(学校で)しっかりとれたので、春休みのような悪夢の時間ではなかった。
そして、二年生になった。
二年生、B組だ。
クラスの顔ぶれも変わった。
1番私にとって重要だったのは、青い髪の風紀委員さんが一緒の教室になったのだろう。
授業が始まってすぐうとうとしだした私を見て、どこからか『眠り姫』という呼び名まで聞いて来た。
授業中に眠りこけて部活もせずに帰ってを繰り返して、それで一学期の初のテストでそこそこいい点を取っていたのが気に食わなかったのだろう。
順位が発表されて、風紀委員さんの名前の下に私の名前があったから、余計に気になったのかもしれない。
テストが終わった頃から、風紀委員さん『氷川紗夜』さんは、私の生活態度について、構ってくるようになった。
もちろん間違っているのは私だ。
正しいのは氷川さんだ。
だから、授業中には寝ないようにした。
夜中に勉強するのをやめて、眠ろうとした。
眠れるはずもなかった。そんな状態で授業を聞いて、なにかが身につくはずがなかった。
学校で寝ることを根本に置いた私の生活はぐちゃぐちゃになってしまった。
そしてある日ついに、決定的にぶっ壊れた。
体育の時間にふらふらぱたん。
____________________
ふらふら、と、実際に体が揺れた。予兆というものはなかった気がする。
体育館での授業だったのは幸か不幸か。こける時に手で庇えたので外傷と言うほどの傷はない。
1番に気づいてくれたのも、助けてくれたのも氷川さんだった。
意外、ではなかった。それだけ、私の事を見ていたのだろう。
大丈夫だと言ったのに、強引に、優しく、保健室へ連れていかれた。
保健室に、先生はいなかった。だけれども氷川さんは私をベッドに寝かせた。
氷川さんは、やはりというか倒れた理由を聞いてきた。
「…ひとりじゃ、ねむれないんです」
は、と小さな声。疑問か感嘆か呆れか。
「誰かが側にいることを感じられれば、ちゃんと寝られたんです」
「…だから、学校で?」
「はい」
視界には、一度も眺めたことのなかった保健室の天井がうつっている。
氷川さんの顔は見えない。
「でも、ダメでしたね。ちゃんとお医者さんに診てもらいます。お薬は、あんまり好きじゃないんですけど」
「…そうですか」
氷川さんの顔は見えない。
「氷川さん、手、握ってくれませんか」
見えない氷川さんに向かって手を伸ばした。
「氷川さんを、感じさせてください」
氷川さんの顔は見えなかった。
温もりは感じられた。
蛇足
キャラ同士の話をpixivにも投稿したら反応ありすぎて心が折れそう