バンドリ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

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さよひひひな

暗め

一期時空


追記:pixivに投稿したら男子に人気なランキングに入りました。嬉しかったです。感謝。ハーメルン民の方は見てないと思うけど。



幸せになるために(さよひな)

 

 

「もう私にかまわないでって言ってるでしょう‼」

 

ガタン!

 

おねーちゃんが力いっぱいたたきつけた戸が、あたしの目の前で断絶の音を立てた。

 

空気を通じて伝わった波が、鼓膜と胸に突き刺さった。

 

すがるように、おやすみ、おねーちゃんと吐き出した。

本来なら並んでいるはずの部屋が、1メートルしか離れていないドアが遠い。

 

 

たどり着いた自分の部屋の扉を開いて、音が立たないように閉めた。

 

 

心がぎゅうーっと締め付けられる。とくんとくんと何かに頭をたたかれ続ける。

 

我慢できなかった。どうしようもなかった。

 

あたたかさが頬を伝って落ちた。

 

辛かった。なにもしていないのに、何もできないことが嫌だった。

 

ただ存在していることが嫌で、何もしていないのに嫌で、

 

だから

 

 

「…死にたいなぁ」

 

 

そうつぶやいた。

 

この世界から消えてしまうことができたら、あたしが原因でおねーちゃんを煩わせることもないし、おねーちゃんが好きでも怒鳴られることなんてない。

 

 

「死にたい」

 

 

免罪符のようにそう呟けば、悲しさが薄れていくような気がした。

言葉にすれば楽になる気がした。

 

 

おねーちゃんに話しかけるたびにその言葉をつぶやいていたような気がする。

 

それでも、誰かには聞かれないようにした。

 

この言葉は、あんまり他の人に聞かせるようなものじゃないから。

 

 

おねーちゃんと仲良くしたい。笑いたい。そう願うたびに達成できなくて、願いがかなわないことが嫌で、つぶやいて、

 

 

やっとこの言葉をつぶやかなくなったのは、おねーちゃんと大切な約束をしたあの日。勝手にやめないと誓ったあの日。

 

あたしが少しずつ幸せになり始めた日。

 

 

 

 

 

 

 

________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしが願い事をした七月。勇気を出して誘ったあのとき。

 

おねーちゃんには断られてしまった。

 

「あたしは、おねーちゃんと行きたいのになぁ……」

 

どうやったら、おねーちゃんにうなずいてもらえたのか

そうやって思考を巡らせたとき、あたしは何かを言おうとしていた。

 

何を言おうとしていたのかは自分でもわからなかった。

 

 

雨宿りに駆け込んだファストフード店。雨が上がって歩き出して、願い事を綴ったあの日。

 

おねーちゃんと仲良く過ごせますように。

 

2人で天にささげた願い。

 

 

天に祈った願いはかなったのだろうか。

 

そういえば、なんで七夕に願い事をするんだろう。

 

わからないけど、願いはいい方向に作用したんだと思う。

 

 

おねーちゃんは笑ってくれるようになった。あたしに向けて、笑いかけてくれるようになった。

 

一緒にテレビを見ないか誘ったり、クッキーを食べたり、一緒にお出かけしたり。

 

 

でもあるとき、おねーちゃんの練習やあたしの収録が重なって、何日もあまり会えなくて、一緒に何かをできないときがあった。

 

それでも夜、テレビを見ていたおねーちゃんを見つけて、許可を得て久しぶりに隣に並んだ。

 

テレビが映していたのはテーマパークの特集で、そのテーマパークで行われている野外演奏が取り上げられていた。

 

おねーちゃんとそれを見つめて、しばらくしてテレビはアトラクションとコラボした音楽の話になった。

 

キラキラ輝く笑顔。華やかな日差しとはじける色彩。

 

 

「…おねーちゃんと行きたーい」

「…時間があったら、いいわよ」

 

おねーちゃんはあたしの言葉を拾ってくれた。

 

一緒に行くことへの承諾もしてくれた。

 

 

あたしは頭の中に学校とPastel*Palettesでの予定を浮かべた。それにちょっとだけ聞いたおねーちゃんの予定を重ね合わせると…残念だけど、都合のいい日は一か月と一週間向こうの日曜日だった。

 

何も考えないうちに、私の口が開いた。

 

 

 

「      」

 

 

 

つぶやいてから、理解にいたるまで。おねーちゃんのほうが早く気づいた。

 

 

「ひ、日菜…いま、あなた、」

「あ、あれ、あたし今なんて」

 

口元を抑えようとして、テレビの画面から強引におねーちゃんのほうへ向き直らされた。

 

「日菜、あなた学校で何か、」

 

 

「ちがう、違う違う、あたしそんなこと」

 

 

あたし、今幸せなはずなのに。

 

 

とまってしまいそうな頭で考えた。

 

おねーちゃんとテーマパークに行きたいって願った。

 

それが、叶ったはずだった。

 

あたしたちの都合でなかなか行けなくて、でもおねーちゃんと一緒に努力をするのなら。そう思うはずなのに。

 

「あたしは…」

 

ぴくん。

 

小さく体が震えた。

 

いたわるようにようにおねーちゃんは抱きしめてくれる。

 

遮るものはない。あたたかさは地に落ちることなくあたしを包んでくれた。

 

そのはずなのに

 

 

思い通りにならない。

 

おねーちゃんと掲げた願い。一緒に努力して叶えていくはずの願い。

 

日程を合わせる相談ができるはずだ。あたしの仕事もなんとか融通が利くかもしれない。テストの勉強や台本を覚えることなら、詰め込んだら、あたしならできるはず。

 

なのに

 

おねーちゃんと努力することさえ

 

願ったはずなのに

 

仲良くなれるようにって。

 

一緒にいたいって。

 

なのに

 

 

 

死にたいなあ

 

 

 

 

あたしの体は、よくない言葉を覚えてしまっていた。

 

 

教えたのは、あたしだ。おねーちゃんから受け取って、あたしが言葉に『してしまった』感情。

 

口からこぼれ出るほどに。

 

意識しなくても発してしまうほどに。

 

 

その言葉はあたしに染みついていた。

 

 




短め

死にたいって言った日菜ちゃんの話

紗夜さんも死にたいって思ったりするんですかね。想いって伝わったりしますよね。



長め

死にたいって言い続けたらそれを覚えてしまった日菜ちゃんの話。

作者の実体験から生まれた何か。

初めの死にたいは、明日の仕事めんどくさいなとかそういう死にたい。
失敗に気づいたのは燐子ちゃんを書いてたとき。楽しい推敲と試行錯誤なはずなのに死にたいなぁってつぶやいてしまってすっごく興奮した。

皆さん、言葉には意思を侵食する力があるので軽々しく口にしないようにしたほうがいいかも。



蛇足。



ろぜりあのオフィシャルピアノスコアが発売されました。ふぁーすとアルバムとRの楽譜が載ってる。
買いました。
練習するのは楽しい。弾ける音符が数小節重なって曲になるとハッピー。

な、はずなのに時々死にたいって口にしてしまったり。




蛇足2

紗夜さんのストーカーみたいな女の子の話がもうすぐ上がります。
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