誤字確認してません。
「氷川さん、おひる一緒に食べない?」
私は右手に持ったコンビニの袋を掲げた。左手は前髪のあたりを触って、少しだけかきあげる。
「…いいですよ」
緑の氷川さんは比較的穏やかに了承してくれた。
「えっと…あの場所でいい?」
「いいですよ」
氷川さんは同じような調子で繰り返した。
机の横のカバンからおそらくお弁当が入ったつつみを取り出して、立ち上がる。
「えっとさ、氷川さん」
「どうかしましたか?」
廊下に出て、歩きながら、できるだけ直視を避けていた氷川さんの目を少しだけのぞいた。
氷川さんに怯えのような感情は見えない。緑色の目は揺れることなく私をみつめている。
それが、少しだけ、あたしは気に食わなかった。
だってあんなに滾る赤を。人間らしく揺れる緑を魅せられたのに、見せてくれないなんて、
許せるわけ、ないじゃないですかぁ。って。
すぐに私は目を閉じた。きっと今は赤くなってしまっているから。
息を吐き散らせば、すぐにみなぎっていた感覚が消える。
それでも少しだけ揺れてくれたらいいなと思って、お弁当を持っていないほうの氷川さんの手を握った。
氷川さんの手は揺れたりしなかった。ただ、何もせず握らせてくれた。
「ねえ、氷川さん…氷川さんは私のこと、どう思ってるの、かな」
問いかけてすぐ、私は手を放して逃げた。階段に向かって先に歩き出す。しりたいけど、知りたくなかった。
「…きらっては、いませんよ。気を使ってくれているのはわかります。赤目にした責任も私にありますし」
屋上への階段を上り始めたあたりで、指先が私のノドに絡みついた。
「それに、すごくいい味がしますから」
ひとつひとつの指の形がしっかりと伝わる。筋肉があるところは反発し、気管のあたり、柔らかいところには沈みこんでいく。
「―氷川さんのためにがまんしてたのに、どうしてご主人さまはあたしを引きずり出しちゃうんですかぁ…」
爪が素肌を貫通しない程度の力を保ったまま、私達は屋上の扉の前までたどり着いた。
「…でもまあよかったです、ご主人さまにききたいことがぁっ…!、っぁん、んっぃ…」
お願いを聞いてくれて、やさしくしてくれた1回目
お願いを聞いてくれて、恐る恐るしてくれた2回目
「あるのにぃ…」
一瞬のうちにせなかから抱かれ、3回目。
深く、気遣いなどなく、牙が突き立つ。
声を出し喘ぐたびに牙の位置が揺れ、無遠慮な傷が痛み、それがまた快楽のタネになって埋没させられる。
「っおいしい、ですかぁ?」
ぼやけた声に返事はない。
はーとがどきどき暴れてくるしい。
くらくらして、ひらきもしないドアノブに縋った。
「…ぃやぁ♡」
首から牙が抜け、抱かれた腕の支えがなくなって、ドアノブを握ったまま私の体は床に座り込んでしまう。
短くちぎれる息を何度も吐いた。それでもなかなか滾る感覚は消えない。
うなじにぽつりとしずくが垂れた。
――――――――――――――――――――――――――――
「私、この前座敷童ちゃんと知り合ったんですよ」
パンと一緒に買ってみたトマトジュースをすすりながら氷川さんに聞いてみた。
「新人の吸血種だって言ったら、カッコイイって言ってくれたんです。私、何かそれっぽいことできないかなって」
緑の氷川さんは少し悩むようなそぶりをした後、箸を持っていないほうの手を私に向けた。
「爪と牙は、ご存じですよね。では、そのエネルギーはどこから持ってきたのか?という話になります」
氷川さんの口元を見てみるが、はみ出るほどの牙は今は見えない。
「私は、血を吸います。でも、血自体のカロリーはさほど多くもない。『血を吸う』という行為が私を吸血種たらしめ、『吸血種である』として、当然のように力を使います」
確かに物理的な事象としてこの世界に変化を加えている以上、どこからかエネルギーが必要になるはずなのだ。だけど、
氷川さんは私に向けた手を小さく揺らし、爪を長く鋭く伸ばした。
「物理に従わないエネルギーは、私たちの理にのみ従います。…まあつまりは」
一時だけ氷川さんの目が赤く輝き、廃部に黒い翼が膨れ上がる。
氷川さんは、確かに「飛べない」と言っていた。つまりは翼を存在させることはできても飛ぶための物理的な条件を達成していないのだろう。
「それっぽいことだけなら、イメージさえあれば大抵できますよ」
代償は必要ですが。と、羽をまき散らしながら氷川さんが呟いた。
―――――――――――――――――――――――
「すみれさん、こんにちは!」
声が聞こえたのでSNSアプリを起動させたスマートフォンから顔を上げた。
今日は赤とフリルが目立つあこちゃんと、童貞どころか私の純情も狩り殺せそうなクラスメイトがいた。かわいい。うつくしい。
駆け寄ってきたあこちゃんを抱きとめた。
今日は先日友達になったあこちゃんと、その友達とNFOなるものをやるのだ。
家にパソコンあったらボイチャつないでやってもいいんだけど、パソコンないし初心者だしで、ネットカフェの個室ブースを使って教えてもらいながらやることになった。
「こんにちは、あこちゃんと…えー」
呼びかた、どうしたらいいんだろう、と一瞬詰まって空白はよくないよねーとあこちゃんを撫でながら次の句を次いでおく。
「燐子ちゃん、でいい?」
「えっと…はい、…それで」
彼女と話すのは何気にレアイベントだ。挨拶程度ならするんだけど、それ以上はあんまり話さない。きれいだなーと思って見ることはあるんだけど。
そんな彼女がいるということは、今日はあこちゃんに氷川さんに教えてもらったそれっぽいコトを見せてあげられないということだ。…またおうちでかな。
ネカフェに向かって、間にあこちゃんを挟んで歩いていく。あんまり仲良くない人との距離感を図りかねているっていうのと、家族みたいな構図がちょっぴりうれしかったから。
「燐子ちゃんのウィザードって火力より?バフより?」
「えっと…一応火力に寄せてます」
さっきまでとは違ったはっきりとした言葉に返事をして、ジョブの一覧を見る。
「あこちゃんのネクロはメジャーなデバフより?」
「はい、そうです!」
なんとなくバランスを考えるなら前衛できてサポートもできるようなキャラがいいんだけどなー。
「道化師」というジョブが拡張性あって良さそうなのでそれにしよう。
名前は…ヴィ―オにしとこ。キャラメイクは初期顔でいいや。性別はどっちでもいいけど道化師メインでやるなら♂かな?
ジョブ熟練度を上げるとできることが増えていくから、あとはプレイヤースキル次第でなんとでもなるらしい。はじめのうちは物理スキルで固めるのが定石だそう。
「一応準備できたよー」
検索枠にカタカタ打ち込んであこちゃんと燐子ちゃんのいるルームにキャラクターを出現させた。
じゃあこれからやりましょう!とあこちゃんが表示させたクエストを受ける。パーティーメンバーを確認すると燐子ちゃんのキャラがヒーラーになっていた。安心して迷惑かけよう。
「やばい…地雷してる…」
前衛職じゃないあこちゃんが単純な余ダメージ量でヘイトを引き、燐子ちゃんが地に伏した私のキャラに蘇生をかけている。
パッシブスキル「褐色の刃」でダメージ値に応じた回復が発生しているはずだし装備している短剣という武器種は無敵時間の多さを売りにしているはずなのに、操作が追い付いてない。
プレイヤースキルの足りなさを実感しながら復帰したキャラのスキルウインドウを開いて……。あ、死んだ。
「す、すみれさん…」
「いや、ごめんなさい…」
蘇生魔法のクールタイムを冷やしながら燐子ちゃんが放った魔法が小サイズボスにあたり、HPバーを削りきった。
「ごめんなさい…」
「すみれさんのせいじゃありませんよ、初心者ですし、」
あこちゃんが慰めてくれた。燐子ちゃんより言葉の隙間が長かったことは見逃していないが。
「れんしゅう…つきあってください、おねがいします…」
あれから時間がたったのだが、あこちゃんはほかの用事があるので早めに帰らないといけないらしい。
悔しかった私は燐子ちゃんに懇願して手元を見てもらいながら教えてもらうことにした。
「…すみれさん、キャンセル使わないんですか?」
「え、キャンセル効くの?」
どうやら私が弱かった理由は早々に見つかったようだった。突進技を撃った後、後隙を無視して別スキルを連打してみるとモーションを上書きするようにキャラクターがそのスキルを繰り出す。
「短剣は回避にもキャンセルできて、それを使わないとあんまり…」
「…うへえ」
キャンセル猶予を探ってみたら10とちょっとくらいのフレーム有りそうだった。回避はもうちょっとディレイが効くらしい。
「でもこれ、追いつかなくない?次のスキルとか」
「…設定からスキルをFキーで使えるようにするのが一般的です」
まじか、そんなのもあるんだ。
設定を開くとマウス感度(マウスでのカメラ移動に影響する)やスキルのクールタイム表示の方式、キーコンフィグとかたくさんある。
「デフォルトだとマウス感度が低いので、大体8~10くらいにしてます。クールタイムはパレット表示がメジャーです。ラグがあったときでも対応しやすいので。視点移動はテンキーに当てはめる人も多いです。カメラのマウス操作は環境によってブレがでるので使いたくないらしいです。」
燐子ちゃんの口からあふれ出した情報量に困惑しながらも適当に設定しなおす。
マウス操作じゃなくてキーボードからの入力でカメラを動かして、Fキーのショートカットからスキルを出すようにしてプレイしてみると、
「え、NFO神げーじゃん…」
敵モンスターのブレスを無敵時間のついた突進技で抜けて、単発ヒットの突き技にキャンセル、アクションスキルにもカウンター技やバックステップ切りなど優秀なのがそろっていて、まとわりつきつついなしたり回避、これでまだ拡張性があって特殊効果ついた技もっと振れるとかマジ神げーでは。
「NFO神げーじゃん…」
おんなじことを呟いて燐子ちゃんのほうを見てみる。彼女は沼に引きずり込む獲物を見つけたオタクのような表情をしていた。
―――――――――――――――――――
ジョブのレベルが一つ上がって空いたスキル枠に何を突っ込むかわくわくしたところで、いい時間なので今日はおしまいに。
アカウントの情報をスマホにメモしてログアウトしたことを確認して、次の休日にパソコンを買いに行こうと決めた。回線はお父様が契約したのが残ってるしお金も十分ある。
「燐子ちゃ『黙ってください』
連絡先交換してくれない、という言葉は彼女の言葉によって支配された。
『そのまま、動かないでくださいね』
言霊の通りに体まで縛られる。
燐子ちゃんの吐息が頬をくすぐると、ぬくもりに痺れる。握られた肩がいたい。
『大丈夫です、すぐにすみますから』
意識は縛られていないのでとっさに目を赤く、氷川さんから教えてもらった通りにイメージを膨らませ…よくゲームにあるレジストを思い浮かべる。
赤目の力に押し流されるようにして拘束がとけた体を動かして、すぐに目の前の燐子ちゃんの体を突き飛ばした。
「燐子ちゃん、なにするの⁉」
「…精神を高揚させることがトリガー?…なら、……『もっと興奮してください、ただし、それを向ける先は…』」
燐子ちゃんは、自分の胸元を覆うワンピースタイプの服の布地をつかみ、乱雑にずらす。
彼女の行動に従って、身体と視線がその位置に吸い寄せられる。さっきと同じようにレジストしようとするが…
『あなたが見るのは、こっちですよ』
力を行使するために必要な意識まで、彼女の体に吸い寄せられる。
汎用性があるスキルなら、スキル自体を封印してしまえばいいということだろう。
『こんどこそ、抵抗しちゃダメですよ』
私が突き飛ばして空いた距離を、彼女からつめることはしない。引き寄せられた私の体が勝手に空間を縮めていく。
『そう、いいこ。そのまま食べさせてちょうだい』
燐子ちゃんは包容力のある体を揺らし、歪めて微笑んだ。
彼女が施したスキル封印は、いわばメニューから強制的にターゲットにカーソルを合わせるコード。しかしそれは、彼女を対象にならカーソルを合わせられるということで、直接危害を加えることなら、なんとか意識を集中させる余地はある。
「…でも、その程度じゃどうにもならないですよ」
しかしやっとの思いで構築した拘束のイメージは彼女が体を動かしただけで振り払われてしまった。
「…観念してください」
彼女に触れてはいけない。一度燐子ちゃんに触れてしまえば…もう離れられないような気がした。
一時しのぎにもならない抵抗として、彼女の体を遠ざけるようにイメージを構築しようとする。しかし、彼女に惹かれているという状況ゆえか、力自体が構築されなかった。
『かわいいこ』
意識を通さないと何もできない私と、意識を扱う彼女。
ゲーム的に表すなら、負けイベントレベルの相性の悪さだった。それに勝つには事前準備が必要、でもそれは許されなかった。
伸びた私の手が彼女に。
彼女は一体、なんなんだろうと頭の片隅で考えて、すぐにその意識も消えた。正確には燐子ちゃんの体を求める意識に押しつぶされた。
もう数瞬で、指先が彼女に触れる。ああやっと、というところで。
私の体は地面に膝をついた。
「……自分の意識を落とした?でも惹いているからそれは…」
私の体から、私の体を操っていた拘束、赤目による熱、そして単純に体を動かそうという気力が抜け落ちた。いや、そもそもの意識が失せかけていた。
身体を支えることすらままならず、触れたくなかった彼女の体に倒れこんでもすがることすらできず、物理的な法則に従って落ちるところまで落ちる。
「……すみれ、さん?すみれさん?」
呼吸をする気力すらわかなくて、だらしなく開いた口からかろうじてわずかな換気があるだけ。眠気を瞼が落ちてくると表現することがあるが、閉じきることすらできなかった。
ただひたすらに、
のどがかわいた
「 」
「 」
『 』
「 」
ろうそくのようにしずかに燃え尽きた意識が再び自らの力で燃えることはあり得ない。
その灯を消したくなければ、継ぐ必要がある。
それをしてくれたのは彼女だった。
薄く開いた視界いっぱいに広がる燐子ちゃんの顔、柔らかさすら感じることができない唇から生命力のようなものが伝わってくる。
きっと彼女のエネルギーはそれなんだろう。
しかし…私たちのエネルギーはそれじゃない。
きえかけたろうそくにライターのオイルをかけても、それはその場しのぎにしかならない。
勝手に伸びた牙が燐子ちゃんの唇に突き立った。
とろりと、ポタージュスープより濃い何かが私の唇の間に染み込んだ。
飢餓状態にあった私の体はわずかな液体からエネルギーをしぼりとり、
飢餓状態はスパイスとなりその液体の味を何倍にもひきたて、
「りんこちゃん、…なんでこんなに、おいしいの」
動くようになった体は燐子ちゃんの肢体を抑え込み、喉笛に強引にかみつき、あふれ出した血を啜る。
鉄分の香りしかしないはずなのに、どうしてとても豊潤で、
噛みつかれた燐子ちゃんの体は快感に打ち震えている。
ここは個室であって、防音性能も高くて、
この行為を止めるものは何もない。
私の体は思う存分にエネルギーの補給を続ける。
―――――――――――――――――――――――――――――
なんども土足で踏みしめられた床に転がった彼女の体を見下ろした。
吸った血の量はさほど多くはない。顔色が悪くなっているということはなく。燐子ちゃんは赤らめたほほで熱い息を吐いている。
すったのはあたしであったのに、彼女自身にも生命力のようなものが満ちていた。
赤いめで彼女をのぞき込む。
「…あなたは、なんの種族なんですかぁ?」
「……サキュバス…です」
片腕で目元を隠したまま、抑え込まれた呼気の隙間から言葉がもれた。
有名な悪魔の一種である種族。その伝承はいくつかの源流があるが、誘惑を使うのなら話が早い
「そっか…じゃあ、肌を重ねてたから、燐子ちゃんも元気になったんですねぇ」
ふさがりきっていない、くぼみのようになった傷跡に小指の先を差し込む。
「ん、ふぅんん!」
悲鳴とも嬌声とも取れる声を発し、もだえるカラダ。
床に転がっていたトートバックから燐子ちゃんのスマホを取り出し、彼女の指をつかんで指紋でロックを解除した。有名なSNSアプリを起動し、勝手に私のIDを打ち込んで、友達に追加した。
私のスマホに適当に文字を送ると、ぽこんと軽やかな音が鳴る。
そのスマホを、震えている燐子ちゃんの手に握らせた。
「また、遊ぼうね、燐子ちゃん」
「…NFOで、ですか、それとも…」
ぽそぽそと言葉を紡いだ彼女の唇を、自分の唇で抑え込んだ。
ぺろりと舐めて、離れる。
「どっちも。…NFOも、たべあいっこも」
ピンク色の谷間に指を這わせる。
ぷにぷにした感触を楽しんでいると、クレバスから湿った芽が伸びてきて、私の指をなめ上げた。
「おねがい、します」
短め
燐子ちゃんとたべさせあいっこしたいしたべあいっこしたい
長め
鬱とスマブラとガール・カフェ・ガンでやばかったけど投稿。
つぎはセイレーンか猫又で迷ってる。
初期構想が猫又なんでそっちで通すんだけどセイレーンがおいしすぎて。
ベヨネッタのコンボ安定させたりイーコスちゃん育成したりしてるので他に関してはちょっと手が回ってない
蛇足
ヴィ―オ は すみれをなんかの言語に訳して簡略化した
何の言語化は忘れた。ロシアかフィンランドじゃなかったかな