私、氷川 夕理には、2人の姉がいた。
いつも私のことを、ゆり、ゆりちゃんと優しい声で読んでくれた。
事あるごとに私を気にかけてくれていた。
紗夜姉さんは、Roseliaというバンドでギターをやっていた。
日菜姉さんは、Pastel*Palettesというアイドルグループでギターを弾いていた。
私の大好きな姉さん達。
私が姉さん達を追わなくなったのはいつからだったっけ。
姉さん達が99点、100点を取ったテストで、私はどれだけ勉強したって85点。
スポーツだってどれだけ頑張っても姉さん達には及ばなかった。
スタイルも良くてカッコいい紗夜姉さん。ふわふわ可愛い日菜姉さん。
私は何もかも平凡の域を出ることはなかった。
いつ、私は姉さんに届かないことを知ったのだろう。
いつだって私は姉さん達に届かなかった。
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姉さん達は、私を下に見ていたわけじゃない。
姉としての範疇では、妹の私を気にかけてくれていた。
その関係も、私が高校生になった頃から変わった。
きっと、姉さん達が姉妹の関係以上に仲良くなって、お互いを気にかけることに精一杯だったから。
きっと、今まで私を気にかけていた分もお互いを想いたかったから。
私には姉さん達の関係に割って入ることはできなかった。
私は姉さん達に並ぶことができなかった。
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姉さん達を恨んでいるわけじゃない。
もちろん大好きだった。
大好きだったから、置いていかれたくなかった。
大好きだったから、届かないのが、並べないのが嫌だった。
「…姉さん」
紗夜姉さんの部屋の床に広がる真っ赤な海。
床の上でその海を広げながら、安らかに眠っている姉さん達。
どうしてこうしようと思ったのかはわからない。
どうして現世を手放してしまったのかはわからない。
でも、姉さん達は幸せそうだった。
きっと2人で幸せになったのだろう。
私も幸せになりたかった。
大好きな姉さん達に置いていかれたくなかった。
血だまりの上を、姉さん達へ近づいていく。
私が姉さん達を追うのは、幾年ぶりだろうか。
紗夜姉さんが握りしめたままの包丁を、手の中から拾い上げる。
姉さん達にならって喉を裂くことに決めた。
とても怖かった。でも、追いつけたら姉さん達は褒めてくれると思うから。
私は姉さん達を追いかけて、姉さん達がいるはずの場所へと旅立った。
きっと、優しく迎えてくれると信じて。
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妹を出す意義はそんなになかった