噛ませ犬のクラフトワーク 作:刺身798円
本編のシリアスや設定を一切あさってに投げ捨てた、作者の趣味全開のギャグ番外編です。
読む時は、〝覚悟〟をして下さい。
あなた…『覚悟して来てる人』…ですよね。
作者の趣味と自己満足によるクソみたいな落書きだったとしても、仕方ないから読んでやろうかという覚悟を……。
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Titolo 『裏側』
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「ミスタ、どう思いますか?」
ネアポリスの図書館で、ジョルノが問いかけた。
ミスタは長机に座り、顎に手を置いてしばし思考したのちに返答した。
「……アリだな。二人は確かに素行の悪い社会のゴミだが、それでも殺人に一切の忌避感を抱かないようなゲス野郎じゃあねえ。」
「……なるほど。確かにそれは僕も少し考えていました。……船の上で僕たちを襲撃してきた方。」
「マリオ・ズッケェロだな。」
「ええ、奴は僕たちのそのほとんどを無力化したにも関わらず、誰も殺さなかった。」
ジョルノは頷いた。
「その通りだ。人質にとって情報を搾り取るために脅すのなら、一人生かしておけば十分だ。その方が俺たちに対して、本当に殺すという明確な脅しになる。」
「ええ。」
「それに俺が戦ったサーレーの方も一緒だ。アイツは近接に強いスタンドを持ちながら、自らの手を汚すのを躊躇っていた節がある。あの時に奴が明確な殺意を持って俺を襲っていたら、俺に勝ち目はなかったはずだ。」
「……前任の暗殺チームは、ディアボロが粗末に扱ったせいで、殺人以外に糧を得る手段がなかった。」
「結局、例の役職の後釜は誰にするかまだ決まっていないんだろう。アイツらならば或いは……。」
「……弱者に任せるわけにはいかない。かと言って人格に問題がある人間に任せるのも話にならない……。スタンドを使った犯罪に対する抑止という意味合いでも、暗殺チームは必要だ。抑止力が弱ければ、人の悪徳はどこまででも膨れ上がってしまう。粗末に扱えば、ディアボロのパッショーネの暗殺チームの二の舞になってしまう……。難しい。」
ジョルノとミスタはしばし黙り込み、思考した。
「……ならば一から丁寧に育て上げるしかないだろう。俺だって組織の重鎮がいつまでも汚れ仕事担当というわけにはいかねえし、ムーロロにももっといくらでも良い使い道がある……。俺たち裏社会の住民は、多少素行に問題のある人材だったとしても、うまく扱っていけないようじゃあお話にならねえ。」
「……ええ、そうですね。あなたもそう考えるのならば……。」
「とりあえず当面は俺とムーロロが共同で穴を埋めて、その間にアイツらの意識を変えさせるのがベストだろう。」
こうして、二人に白羽の矢が立った。
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Titolo『クラフト・ワーク・イン・杜王町』
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「カニみたいな髪型しやがってッッッ!!!茹でて食うぞコラアッッッ!!!水族館に寄付するぞドラァッッッ!!!」
「ああん?軍艦風情が、面白いことを抜かしやがるッッッ!!!頭の上に、鳥の巣を固定して指差して笑ってやろうかッッッ!!!」
ここは、超時空杜王町。
ここは本編では起こりえない事態が起こる、完全なる番外編である。
ここでは今現在、東方仗助とサーレーが顔を突き合わせてメンチを切り合っていた。第一次チンピラ、ヤンキー戦争の勃発である。
「テメー、よくも言ったな!いい度胸だ。その顔面を、髪型と同じギャグにしてやるよ!吐いた唾は、飲み込めねえぞッッッ!!!」
「俺に戦いを挑むってか?テメーこそいい度胸してんじゃあねえか!テメーの髪の毛を固定して、一生その髪型のままにしてやるよ!年取ってから、恥を掻くんだなッッッ!!!」
「……なんて言うかなあ。」
「……お互いに相棒がバカだと苦労するんだな。」
仗助の友人、虹村億泰とサーレーの相棒、マリオ・ズッケェロは互いに同情し合っていた。
「オラ、喰らえっっっ!!!」
「ウラ、ウラ、ソリャ!!!」
番外編で完全なギャグのはずなのに、彼らの怒りは沸点を超えて戦闘が始まってしまった。
ズッケェロと億泰はどうしたものか困惑している。
「お前たち、そこまでにしたまえ。番外編くらい、みんなで仲良くしようじゃあないか。」
「「ポルナレフさんッッッ!!!」」
そこに一人の男が仲裁に現れた。二国間の争いには、調停する国が必要である。
そう、みんなのアイドル、ポルナレフさんである。ポルナレフの髪は天を衝く威容をなし、その髪の銀色は神秘さを醸し出し、それはサーレーと仗助にとっても尊敬と憧れの的であった。
ポルナレフはサーレーと仗助にとっても、アイドルだったのである。
彼らのしょっぱい髪型の個性は、ポルナレフの前ではあってないようなものである。
「ほら、そこまでだ。握手して、今回は戦いはなしにしよう!」
「「はいッッッ!!!」」
アイドルの言うことは絶対である。番外編なだけに、仗助の性格も都合よく若干マイルドに改変されていた。
仗助とサーレーは、嫌々ながらも和解して握手した。
別の日、彼らはまた違うことで揉めていた。第二次チンピラ、ヤンキー戦争の開幕である。
「最強は、承太郎さんに決まっているだろうがッッッ!!!」
「いーや、確かに承太郎さんが強いことは認めるが、最強はウチのボスのジョジョだッッッ!!!」
どちらが最強か論争である。
百人いれば百通りの意見があり、本人の最強は本人が内に秘めていればいい。それを口にしてしまうと、時に不毛な議論へと発展する。
「承太郎さんはっ、あらゆる敵を打ち倒す無敵の戦士だッッッ!!!」
「ウチのボスは、生命を司る伝説のスタンド使いだッッッ!!!」
「まーた始まった。コイツら相性悪いのな。」
「似た者同士なんじゃあねーか?てゆーか、ボスを勝手に伝説にすんなよな。」
ズッケェロと億泰は、今回も生暖かい目で遠巻きに見守っていた。
論争は白熱し、あわや戦闘に発展しようかというその時、彼はまたもや現れた。
そう、みんなのスーパーアイドル、ポルナレフさんである。
「オイオイ、落ち着けよ、オメーら。」
「「ポルナレフさんッッッ!!!」」
「確かに最強が誰かはオメーらも気になるだろう。俺だって気になる。……だが、決して忘れちゃあいけねえ。最強と呼ばれる奴らだって、決して一人で戦ってきた訳じゃあねえ。時に屍を超えて、時に苦難を乗り超えて、そいつらは仲間と共に強者へと成り上がった。そいつらが戦い続けて必死に守ろうとした平穏を、お前らが乱すのか?」
「「すみませんでしたッッッ!!!」」
人格者であり、承太郎もジョルノもその両方を深く知るポルナレフさんにこう言われてしまっては、彼らも閉口せざるを得ない。
仗助とサーレーは、またもや嫌々ながら握手した。
また別の日、彼らはまたもや違うことで揉めていた。
「トニオさんはッッッ!!!イタリアの人材だッッッ!!!故郷に戻って、イタリアに貢献するべきだッッッ!!!」
「いいや、トニオさんを料理人として育てた上げのはズバリ杜王町だッッッ!!!トニオさんは杜王町の貴重な人材だッッッ!!!」
「これには俺も参戦せざるを得ねーな。こんな美味い料理を作る料理人、パッショーネのお抱えにするべきだろう!」
「ふざけんな!トニオさんがいなくなれば、俺は杜王町で一体何を楽しみにすればいいんだッッッ!」
「オウ、皆さん、落ち着いて下さーい。」
そう、トニオさん争奪戦である。
杜王町に住む彼らの推薦により、リストランテ・トラサルディーに足を運んだサーレーは、本場イタリアから逃げ出したトニオさんを小馬鹿にしつつ皿に手を付けた。そのあとは皆様も予想の通りである。
うんんんまぁぁぁぁぁーーーーい。
今回ばかりは今まで傍観に徹していたズッケェロと億泰も参戦している。
譲れない戦い、大惨事チンピラ、ヤンキー大戦である。今回の戦いは、二国間の争いに収まらない。
「トニオさんはイタリアの財産だッッッ!!!!」
「いいや、違うね。トニオさんは杜王町の人間国宝だッッッ!!!」
「トニオさん、イタリアに来なよ。俺が裏社会のボスに推薦するからさ。」
「ふざけんなッッッ!!!こんな素晴らしい料理人に店を持たせなかったイタリアなんぞに、トニオさんが帰るわけねえだろうッッッ!!!」
「オウ、皆さん。お気持ちはありがたいでーす。」
彼らの議論は今までで一番白熱し、あわやトニオさんの店で乱闘になろうかというその時、彼は現れた。
そう、みんなのポルナレフさんである。
「お前ら、落ち着けよ。」
「そんなこと言ったって、ポルナレフさんッッッ!!!」
「今回ばかりはアンタの言葉でも、納得できねえぜッッッ!!!」
「そうだぜ。トニオさんは、イタリアの財産だッッッ!!!」
「トニオさんは、渡さねえッッッ!!!」
止むことのない彼らの戦意に、ポルナレフは少し考えて一つの提案をした。
「トニオさんはズバリ、フランスに来ればいいんじゃないかな?」
「「「「いや、それだけはないっす。」」」」
四人の心は、初めて完全に一致した。
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Titolo『ミューミューの苦悩』
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私の名前はミュッチャー・ミューラー、通称ミューミューだ。
アメリカ、フロリダ州在住の花も恥じらう乙女。年齢?フフッ、女性に年を聞くのは野暮ってものだが、敢えて答えるのならば、永遠の18歳だ。
ホワイト・スネイクに金で従って(こいつに関しては本当になぜあんなにも怪しいホワイト・スネイクに従っていたのか理解不能だったので、わかりやすい金という設定になりました)いたのだが、人生の転機が訪れて、今の私は平和祈念公園の管理人業務を生業としている。将来金を貯めて若いツバメでも囲おうと思っていたのだが、おじゃんになってしまった。
まあそれは仕方ない。私に問題があった。まさかホワイト・スネイクがあんなゲス野郎だったとは……。
まあそれは終わったことだ。それはさておき……。
最近の私には、悩みがある。
「ミューミューの姉御、どうしましょうか?」
「姉御!」
「ミューミューの姐さん!」
最近アメリカ裏社会の強面どもに、姉御とかふざけた呼ばれ方をされるようになってしまったのだ。
おかしいだろう!こんなにも可憐で清楚な私が、裏社会の姐さん?クソが!世の中間違っているだろうが!強面共に姉御なんざ呼ばれたら、男が寄り付かなくなってしまうだろうが!私の美貌が持ち腐れになるだろうが!
……なぜ、か。
なぜこうなってしまったのか、その理由は全てわかっている。
「ミューミュー姐さん、ちっす。元気?」
「……ああ。」
こいつだ!この憎きクソ女、空条徐倫が私のことを遊び半分で姐さんとか呼ぶせいで、徐倫を慕う強面どもも私を姉御と呼ぶようになってしまったのだ!さっき声をかけてきたのは、確かリキエルとかいう名のやつだったか……?
この女、私が嫌がっているのをわかってて楽しんでいやがる!オイ、にやけんな!
「じゃあ私は用事があるから、またね。」
……わかっている。
あの女、結婚間近の男に逢いに行くつもりだ。チクショウ!私にも下半身だけでいいから半分寄越しやがれ!
だいたいおかしいだろう!なんでよりによって主人公が貧乏なチンピラの殺し屋なんだ!?そんな殺伐とした話より、この美しい私の華麗なる男性遍歴を書き綴った方が、よほど人気が出るに決まっているだろうが!私の金があって若くてイケメンな男とのラブ・ロマンスの方が、読んでいて楽しいに決まっているだろうが!ようやくヒロインとして私の美貌が脚光を浴びると思ったら、展開に都合のいい端役かよッッッ!ちっとは考えやがれ!
クソが!おい、誰だ今鼻で笑った奴は?ちょっと前に出ろ!
私のジェイル・ハウス・ロックの必殺の肘鉄でボコボコにしてやろうか?
「チッ。」
「ミューミューさん、道を尋ねられたお客様が。」
「ああ、すぐ行く。」
祈念公園の管理人室に尋ね人だ。……恐らくは墓を探しているのだろう。公園には無数の墓碑がある。
ミューミューがミラションに呼ばれた先には、白髪混じりの老人がいた。そこそこの年配の方だった。
「すみません、場所をお尋ねしたいのですが?」
「ええ。どなたをお探しに?」
……いつも気が重くなる。
老人はポツリとミューミューに話しかけた。
「……息子はグリーン・ドルフィン・ストリートの服役囚で、世間様に顔向けができない人間でした。しかしそれでも、私にとっては大切な息子でした。」
「……お悔やみを申し上げます。」
こんな時にいつも思う。
私さえしっかりしていれば、刑務所の悲劇は防げたのではなかろうか?
相手の目論見もわからないのに、得体の知れない相手に利につられて従うべきではなかった。
……最近、罪悪感による白昼夢を見ることがある。ふとした瞬間に、惨状がフラッシュバックしてくるのだ。
もしもの話はわからない。
ミューミューがホワイト・スネイクに逆らっていたら、消されていた可能性も高い。
ディスクだけを奪われて記憶を弄られていた可能性もある。
それでもミューミューは時折、何気ない一日が忘れられない一日になる。
今の彼女には徐倫やミラション、グェスといった友人たちが救いだった。
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Titolo『ペッシ先生のかませ犬講座』
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サーレーは海を眺めていた。心が落ち着く。
ここは見覚えがある。そうだ、確かサーレーが死にかけた時に辿り着いた、カプリ島の光景だ。
サーレーは波止場で心地よい波の音を聞きながら、自分がなぜここにいるのかに思いを馳せていた。思い出せない。
その時、サーレーの眼前に一人の男が現れた。その男はパイナップルのような髪型をしていた。
なぜそんな不思議な髪型をしているのだろうか?サーレーは自分のことを棚に上げた。
そして、男はおもむろに語りだす。
「おい、テメーよぉ。かませ犬だなんだって銘打っちゃあいるが、実際にはテメー、本編で大活躍してるじゃあねえか。そんなんじゃあ、テメー、かませ犬失格だぜ?」
「は?」
「いーか、よーく覚えておけ。主役の陰に名脇役がいるのと同様に、かませ犬が居てこそ初めて強者が輝くんだ。……かませ犬ナメんな!それをなんだ、テメー?やれ処刑人だ、やれ猟犬だ。かませ犬の何たるかを誤解しているとしか思えねー。厨二病っぽくカッコつけてばっかりじゃあねーか。そんなんじゃあテメー、かませ犬失格だぜ?」
男の言葉は意味不明で、何を言ってるのか理解出来なかったが、サーレーはなぜだかその男の言葉を聞かないといけないような気がした。
「ペッシ先生のかませ犬講座だ。ここから先は、このプロの
「何?」
「これさえ覚えておけば、お前もかませ犬の端くれくらいは名乗ることができる。覚えておいて、損はないぜ?」
サーレーは黙って、男の言うことを聞いた。
「Lesson ,1 、まずは叫び声だ。ギャヒイィィィーーーーーッッッ!とかギニャァァァーーッッッ!、とかが有名だな。何か個性的な叫び声を、かませ犬は持っておくべきだ。」
「……叫び声?」
「ああ。予想もしない攻撃を食らった時や、勝ち目がなくなったときなんかに独特の叫び声さえ持っておけば、たとえやられたとしても一端の芸人として読者方の記憶には残ることになる。」
「……芸人?」
「ああ。……悪には二通りの悪がいる。どうしようもなく不快で嫌悪しか催さない、いわゆる吐き気を催す邪悪ってやつと、なぜか許してやってもいいかな、という気になる悪だ。この業界で生き残るには、笑いを取れないとやっていけねえ。」
サーレーには男の言うことは意味不明だったが、なぜだか従わないといけない気がした。
「グエエエッッッ!!!」
「駄目だ。普通だ。」
「ビエエエエエッッッ!!!」
「少しはマシになったが、まだぬるい。」
「ギャッッピイイイイイイイッッッッ!!!」
「フン。まだまだ照れが見えるが初回ということで、今日はこの辺で勘弁してやろう。Lesson,2、次は顔芸だ。」
「顔芸?」
「ああ。これは保持者が少なく、持っていればほかのかませ犬と比べても一線を画した存在感を醸す事が可能だ。」
ペッシはそうゴチると、冷や汗を流して目を見開き、半開きの口元に手を置いた。
それはさほど大きな表情の変化ではなかったが、ペッシの奇妙な髪型と相まってなんとも言い難い味を出していた。
「まあ、こんなところだ。かませ犬の中には他とは一味違う個性を出すために、便器を舐めた奴さえもいるらしい。……かませ犬の道は実に奥が深い。今日はもう時間がないから講義はここまでだが、お前が研鑽を積んで、一人前のかませ犬となることを祈っている。」
「はい、ありがとうございましたッッッ!!!」
部屋の中に朝陽が差し込み、サーレーは目を覚ました。
サーレーは布団の上であくびをして、コーヒーを沸かしに水場へと向かった。
……なんでこんなわけのわからない夢を見たんだろう?
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Titolo『ジョルノ・ジョバァーナの天敵』
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「ハァ、ハァ、ハァ……クソッ!!!」
ジョルノ・ジョバァーナはミラノの路地裏を、必死に逃げていた。
敵が現れたのだ。ジョルノにはどうにも出来ない、強大すぎる敵が。ミスタとはすでにネアポリスで二手に分かれて逃走していた。
ジョルノもミスタも敵から逃げ出すしか、手立てはなかった。
ジョルノはネアポリスを飛び出て、列車に乗って、有事の際の避難場所へと向かっていた。
もうすぐだ。もうすぐで避難場所にたどり着く。そこにさえたどり着けば、もう安心だ。
ジョルノは震える足を叩いて、必死に避難場所へと飛び込んだ。
「ボスッッッ!!!何事ですかッッッ!!!」
「……敵だ。済まない、しばし僕を匿ってくれ。」
サーレーとズッケェロが、店に慌てて飛び込んできたジョルノに驚いて席から立ち上がった。
避難場所とは、サーレーたちが普段たむろしているスポーツバーであった。
「敵ッッッ!!!」
サーレーとズッケェロは緊張した。
強大なボスが逃げ出すしかない敵とは、一体どれほど強大な相手だというのか?
二人は警戒して、臨戦態勢を整えた。
そのときスポーツバーの扉が開き、ジョルノは必死にテーブル席の下に飛び込んで隠れひそんだ。
サーレーは慌てて敵の姿を確認した。
「あんたたち、ジョルノ様をお見かけしなかった?」
……シーラ・Eだった。敵?
ジョルノが必死にテーブルの下で喋るなのジェスチャーをしている。
「……何があったんだ?」
「……そうね。アンタたちにも話して協力してもらった方がいいかもしれない。」
シーラ・Eはそう呟くと、写真をテーブルの上にばら撒いた。その中には、歌手のトリッシュ・ウナの写真も混ざっていた。
「組織の運営を考えれば、そろそろジョルノ様にもお世継ぎが必要だわ。正室でもいいし、お妾でも構わない。とにかくいざという時に、パッショーネの巨大な地盤を引き継ぐ人間を決めておかないと、あとあとの争乱の種になるのよ。今のジョルノ様はモテるくせに、なぜか女っ気が一切ないわ。ジョルノ様をお見かけしたら、アンタたちからも言ってちょうだい。」
シーラ・Eはそれだけ告げると、スポーツバーを去っていった。
「……行ったか。」
ジョルノがテーブルの下からひょっこりと顔を出した。
「いや、ボス……俺が言うのもなんですが、いい加減結婚した方がいいんじゃないすか?」
「サーレー……君ならわかってくれると思ったのに……同じ独身の君なら……。」
「いや、俺はボスと違ってモテないんす。好きで独身なんじゃなくて、結婚したくても相手がいないんですよ?」
「!?」
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Titolo『神父様たちの日常』
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今日は神父様であるプッチさんは、友人であるエジプトのディオ様のお家に遊びに来ていました。
そんな彼らの日常の会話を、少し聞いてみましょう。
「やあ、ディオ。久々だね。」
「ああ、プッチ。よく来てくれた。私は嬉しいよ。」
二人はいつも、仲良しです。
二人はディオ様のお部屋で、いつものように仲良く歓談をしていました。
「何か飲むかい?搾りたての生き血ならあるけど?」
「ディオ、私は人間だよ。そんなもの飲んでも、美味しく感じないに決まっているだろう?」
「フフッ、それもそうだな。」
そしてしばし歓談したのちに、会話はおかしな方へと向かっていきました。
「ディオ、君だけだよ。私の悩みを理解してくれるのは。」
「私……だけ……?」
プッチ神父の言葉に、ディオ様は唐突に怪訝な表情を浮かべました。
「どうしたんだい?」
「……そういえばプッチ、君が私の部下と話しているところを見たことがないが、君は私以外の友人はどうしているんだい?私は確かに君の友人だが、吸血鬼だよ?そもそもの種族が違うんだ。人間の友人はいないのかい?」
「君以外に友人はいらないさ。」
プッチ神父のその言葉に、ディオ様は冷や汗を流して驚愕の表情を浮かべました。
「どうしたんだい、そんな嫌そうな表情をして?」
「プッチ、悪いことは言わない。私以外にも友人を作ったほうがいい。」
「……どうせ他の人間は私の願いを理解してくれないさ。世間の奴らは馬鹿ばっかしだ!!」
ディオ様とプッチ神父の間に、気まずい空気が流れました。
「……確かにそうかもしれないが……君が困った時に助けてくれる友人は少しくらいはいたほうがいいんじゃないか?」
「君だけがいてくれれば十分だよ。私には君だけがいてくれればいいさ。」
ディオ様はその言葉にお尻をおさえて、プッチ神父から距離をとりました。
プッチ神父のその言葉は、ディオ様には恋人へのささやきに聞こえたのです。
「ディオ、なんで急に離れたんだい?」
「近寄るなッッッ!!!ボッチがッッッ!!!」
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Titolo『ウェスとフランシス』
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フランスの裏社会が経営する、パリの裏路地にひっそりと建つ教会の懺悔室の一角で、彼らは対面していた。
赤毛のカソックを来た男と、帽子を被ったスマートな男。一人の名はウェザー・リポート、もう一人の名はフランシス・ローウェン。フランシスは、普段は教会の神父だった。
ウェザーは、静かにフランシスに語りかけた。
「……知らなければよかった。俺は大罪人だ。」
「何があったんだ?」
「記憶を取り戻した。……俺は、妹を死なせた赦されざる罪人だった。」
フランシスは、頷いて話の続きを促した。ウェザーは俯いてことのあらましを語った。
フランシスはそれを黙って頷きながら聞いていた。
「仲間や友人たちは、俺に罪は無いと言ってくれている。だが、憎しみが抑えられないんだ。妹を殺した自分の愚かさにも、その原因を作った、死んだ兄エンリコ・プッチに対しても……。」
「そうか……。」
「教えてくれ!!!俺はどうしたらいい!!!苦しいんだ!!!お前は俺を裁いてくれないのか!!!!」
「……人間が人間を裁くということが、そもそも傲慢なんだよ。それでもその行為が必要となる時が、時に存在する。」
フランシスは教会の荘厳なステンドグラスを見上げて、会話を続けた。
「この教会は、フランチェスコ修道会を模倣して作られている。フランチェスコとは俺の名前の由来にもなった聖人、アッシジの聖フランチェスコ、お前たちイタリアから生まれた聖人だ。イタリアの守護聖人であり、ヨーロッパ人であれば誰でも知っている著名人だ。」
「……ああ。」
「フランシスは、英語圏の発音だ。フランスではフランソワと発音する。俺は、生まれつきのフランスの人間ではない。」
フランシスは首元の十字架をいじった。
「社会とは、矛盾を含んでいる。子殺しとは忌まわしい行為だが、いつも世界のどこかでは起こっている。……怖かったよ。もう二十年も前の話になるな。俺のことを少し話そうか。」
「……。」
「幼い頃の話だ。俺には兄がいた。他の奴がどうしてるのかは知らないが、多分普通の兄弟だった。ある日兄は自宅のベランダから転落して死に、子供ながらに俺には何か恐ろしい事が起こっていることだけがわかった。でも、どうしていいかわからなかったよ。震える日々が続き、ある時突然一人の男が家にやってきて、俺は他の家に引き取られた。」
「……。」
「大人になってから全てを知ったよ。俺の兄は、ケチな小銭目当てで自分の親に殺されたらしい。俺の親はどうやら、以前から裏社会に睨まれていたようだ。それで俺の兄が死に、不審に感じた裏社会が調査して俺の親は赦されざる者だと判断されたというわけだ。若い俺は知らない家に引き取られて、荒れた。小学校にも行っていない、バカなガキだ。気が付いたら、どっぷりと裏の住人だ。どこをどうやってフランスに流れ着いたのかも、今となっては曖昧だ。」
「……。」
ウェザーは、泣いていた。
「俺は乱暴者だったが、それでもフランスの裏社会は辛抱強く俺を窘めてくれた。俺は悩み、迷い、考えた。バカなりに考え抜いた末に最後に残った感情は、乱暴者の俺を見捨てなかったフランスの裏社会への恩と愛情だった。裏社会の暗殺チームは、そのほとんどがスネに傷を持つ人材だ。」
「……。」
「口さがない人間は、裏社会が俺に優しくしたのは俺のためではなく社会で使い捨てる人材を作るためだったと、きっとそう言うだろう。だがそれは、事実であったとしても、決して本質ではない。裏社会が俺をどう考えているかではなく、俺が裏社会をどう感じたかが大切なんだ。……俺もお前も、解決できなかった社会の矛盾に人生を狂わされた人間だ。お前の悲劇の原因となった、人種差別も社会の矛盾と言えるだろう。たとえ傷の舐め合いと罵られても、クズの庇い合いだと糾弾されても、俺はお前に生きていて欲しいよ。俺は友人を手にかけたくない。それが今の俺の素直な感情だ。」
「……。」
「俺にも、月並みなことしか言えない。俺はお前の問題を解決できないし、お前の悩みを聞くだけしかできない。お前の問題は、お前が解決する他はない。生ある者は皆すべからく死すために生きている。それでも俺はお前に今はまだ生きていて欲しいし、お前には俺の他にも友人がいるだろう?」
「……ああ。」
「知らなければよかったとしても、死にたいほどに苦しんだとしても、お前はお前に残された物を忘れるべきではない。神は人の悩みを解決できない。それを聞くだけだ。」
「……。」
「いつかお前が赦される日が来ることを心より願っているよ。神は、人の中にのみ住む。お前が自身の心と対話を続けることだけが、お前が赦される日が来る可能性だ。時間が人の心の傷を癒すというのは、つまりはそういう意味合いだ。それまでは俺たちは、お前のささくれた心の傷を見えないように誤魔化すことしかできない。」
「……そうか。」
「すまないな。悩める友人にこの程度の月並みなことしか言えない。神父失格だな。」
「……いや、話を聞いてもらえただけで少し気が楽になったよ。」
ウェザーは、懺悔室を立った。
「俺は、お前が幸せな人生を歩むことを心から願っているよ。」
フランシスは慈愛に満ちた眼差しで、去りゆくウェスの背中を見送っていた。