噛ませ犬のクラフトワーク 作:刺身798円
やはり、どうしてもグロテスクな表現が混じってしまいます。
もしも拙作について、タグを変えるべきなどのなんらかの意見がありましたらそちらにお願いします。
「おいおい、イアン。俺たちはイタリアに向かっているんじゃあ、なかったのか?」
「イタリアと見せかけてのー、スペイン!人生、思い立ったが吉日だよ。なあに。忘れ物をしてしまってね。オリバーからの情報のことを、すっかり失念していた。」
「情報?」
スイスのユーロエアポートで、チョコラータはイアンに疑問を呈した。
イタリアに向かうはずが、なぜかスペイン行きの搭乗口へと向かっている。
「兵法の基本は、弱いやつ、弱点を持つやつから、結託されないうちに各個撃破だ。オリバーから、スペインには厄介な頭脳がいるとの情報が入ってきている。頭脳が手足と結託して本領を発揮する前に、ちょっとちょっかいをかけてみよう。」
イアンが、空港の搭乗口を進みながらチョコラータに返答した。
「………お前、あのイワシ野郎を案外信用してんのな。」
「あの男は、私には逆らわない。優しすぎるのだよ。馬鹿には馬鹿の、愚者には愚者の使い道がある。」
「お客様、ゲートで探知機が反応致しましたので、少々こちらに来ていただいてもよろしいですか?」
空港の保安検査場で、チョコラータを挟みこむように二名の体格の良い空港の保安検査員が近付いてきた。
「おい、イアン!一体どういうことだ!」
「あっはっはっは。さあね。私にも、わからない。君のあまりの危険さに、空港の危険物探知機がついつい反応してしまったのではないか?なかなかに有能な探知機だな。」
チョコラータは、検査員に別室に連れ込まれていった。
別室に連行されたチョコラータは、すぐさま戻って来た。
「おい、やり過ぎるなよ。死体が見つかったら、フライトが中止されるおそれがある。」
「そんなことはわかってる。」
チョコラータは憤慨し、二人は連れ立って飛行機に搭乗した。
「ところでよ、結局あのリュカとか言うフードの男は、一体何者だったんだ?お前たちはなんのためにアイツを拘束してたんだ?」
「仲間だよ。まあ君よりも先に生まれた、君と同類なのだがね。彼は納得済みで、拘束されていたのだよ。そうしていないと、衝動的に行動を取ってしまう。私たちの存在が、明るみに出る。それはまだ時期尚早だ。」
イアンは、楽しそうに笑った。
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フランシス・ローウェンの名前をヨーロッパ裏社会が知ったのは、一つの事件によるものだった。
リヨンの無差別爆弾魔事件。
最初に事件の被害を受けたのがフランスのリヨンだったため、一連の事件にその名称が付けられた。
それが暗殺の鬼才、怪物ローウェンの幕開け。
その事件の大まかな内容は、社会を守護するべき裏社会の暗殺チームのリーダーが、世間を恐怖のドン底に陥れる爆弾魔であったということだった。その事件が最初に起こったのは十年以上前であり、当時のフランス、ラ・レヴォリュシオンの暗殺チームのリーダーは、リュカ・マルカ・ウォルコットという名前の男だった。
リュカの実力は裏社会で知れており、しかしいつまでもフランスで頻発する爆弾魔事件の首謀者暗殺を完遂させられない暗殺チームに不信感を抱いたラ・レヴォリュシオンは、独自に腹心の配下を使って爆弾魔の正体を追跡することとなる。
暗殺チームの人員は、社会に身を捧げた高潔な人物である必要があるのだが、彼は社会を乱す爆弾魔だった。稀にこういうことが起きる。
ラ・レヴォリュシオンが調査に差し向けた腹心の配下は有能な探知を行うスタンド使いであり、彼女に爆弾魔の正体を調査させたラ・レヴォリュシオンに激震が走ることとなる。
リュカの手法は杜撰なものであり、先行させた部下に小型の爆弾を爆破させる。そして現場に到着したリュカが、さらに大規模な爆破を引き起こす。たったそれだけなのだが、リュカという人物に対する信頼が、ラ・レヴォリュシオンの目を曇らせた。リュカは裏でイアン・ベルモットたちと繋がっており、その筋で使い捨ての木っ端の配下を融通されていた。
リュカのスタンドの能力の詳細がほとんど知られていないのも、問題だった。
リュカのスタンドはセミの幼虫を二足歩行にしたような見た目をしており、口腔のストローを対象に刺すことによって暗殺する。その能力は、ストローを刺して対象の内部をかき混ぜ、対象から簡易の時限爆弾を創り出して発火物質を流し込んで爆殺するという能力だった。その能力は無機物にも適用され、リュカはどこにでもある建造物から空手で強力な爆弾を創り出すことも可能だった。リュカが暗殺した遺体は能力の加減がされており、外見は綺麗に保たれていて解剖しない限りは死因が何であるのか判別不能だった。
いつまでも爆弾魔の暗殺を完遂させられない暗殺チームに業を煮やしたラ・レヴォリュシオンは、ボスの腹心の部下である相手の感情を色で感知することのできる探知タイプのスタンド使いに隠密で独自の調査を命令した。彼女の名前は、ヴィオラート・レンハイム。
彼女は、当時結婚を前提に付き合っていた強力なスタンド使い、フランシス・ローウェンに協力を依頼した。そもそもローウェンは、もともと暗殺チームに所属する予定は皆無だったのである。彼女はラ・レヴォリュシオンの親衛隊長で、ボスの一人娘であり、彼女の娘婿となる予定のローウェンはいずれ組織のボスとなるはずだった。
協力を依頼されるや否や、ローウェンは彼女に一人の人間の徹底した追跡を依頼した。
そもそもの前提がおかしい。
死を厭わずに戦う暗殺チームのリーダーも爆弾魔も、両方共に生きている現状が異常だ。お前たちの目は曇っている。
ローウェンは事件の情報を得るや否や、即座に事件の中核を看破した。
『ヘイ!いっぱしに、殺し屋気取りか?小僧風情が、粋がりやがって。』
『お前は、赦されざる者だ。罪状は、無差別大量殺人を筆頭にその他多数。………とても赦されるものではない。その罪で、俺が処刑を執行する。』
天頂に三日月を頂くある日、彼らは激突した。
赤毛の高身長の男と、スキンヘッドで頭部と眼球にタトゥーを入れたフードの男。
ローウェンの彼女もラ・レヴォリュシオンも、ローウェンを止めようとした。
何しろ相手は、百戦錬磨で裏社会に名を轟かす強者なのである。
ラ・レヴォリュシオンは恥を忍んで、同盟組織に頭を下げて頼み込んで爆弾魔の討滅作戦を組もうとしていた。
『やめろ!ローウェン!!!無謀だ!』
『無茶をしないでッッッ!!!』
しかしその時には、すでに事件は終息していた。戦いの過程は、生きている者のみが知る。
結果として、温厚で能力がありいずれ組織を受け継ぐはずだったローウェンは、今現在闇の深奥にいる。
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「ふざけやがってッッッ!!!市街地のど真ん中で、いきなり遠慮会釈なしの
メロディオは高速ヘリの中で、ブチ切れて柔らかな髪を掻き乱した。
普段は温厚な道化の形相は阿修羅へと変貌し、隣に座る部下のレノは恐々としている。
「おい、同盟内に救援の要請は送ったか!」
「はい!危険レベル2で周辺諸外国に援軍要請を送っています!」
「レベル3で送れ!返事は?」
「イタリアのパッショーネが、即座にこちらに援護に向かうとの返答です。フランスは、今現在手が離せないとのこと。イングランドは、海を越えて暗殺チームの派遣の準備を行なっています。その他近隣諸国は、スイス暗殺チームの消息不明に危機感を覚えて、現時点では尻込みして守りを優先させている状況です!」
「了承した!!!」
カタルーニャ高空の夜景を一望できるヘリの中で、メロディオは地上の惨状にほぞを噛んでいた。
いきなりカタルーニャの繁華街を中心に、人間を捕食するカビが爆散したのである。何者かの意図が働いているのは、明白だった。
カビは死体を中心に広がり、低所に向かうと一気に繁殖して人間を喰い殺す。スペインで二番目に巨大な都市で、夜間に唐突な緊急警報が不吉に鳴り響き続けた。
「レノ、札はいくつ持っている?」
「ベロム、マニシェ、ロジェ、クラン。近距離で戦える訓練済みのスタンド使いは、以上です。」
「わかった。札を全投下しろ。」
レノが四枚の木札を高空から投下し、スタンドを発動する。
それがヘリから地面に落下し割れると同時に、木札は機関銃を抱えた屈強な四人の男へと変化した。
一人の男の胸ポケットに無線が忍ばせてあり、そこからメロディオの声が辺りに響いた。
『お前らぁぁぁぁぁッッッ!!!我らが同胞を無差別に殺傷する、カビを操るスタンド使いがその近隣に潜伏しているッッッ!!!低所に向かうと、繁殖するやつだ!お前らはそっから高所に向かってローラー作戦で、虱潰しにそいつを探し出して、死んでも殺せ!!!!挨拶も遠慮も会釈も慈悲も要らない。生まれてきたことを後悔する間も無く、一秒でも早く細胞片も残さずに蜂の巣にしろ!!!我らが同胞の痛みを、知らしめろッッッッ!!!!!!』
メロディオが大声で叫んだ。
バルセロナのグラシア通りで、戦端は開かれた。
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「ヴィリー、周辺の様子はどうなっている?」
「半径百メートル内に警戒色が二十四つ、危険色が十二、通常色は無しだ。」
フランシス・ローウェンが傍に控える女性に聞き、彼女は返答した。
女性の傍には、悪魔を模した黒く滑らかな美しいスタンドが控えている。
黒いスタンドは腕に付属したレーダーを覗き、周囲に赤の点が二十四と黒の点が十二あることを確認した。危険色の黒は犯罪を犯した人間が陥りやすい精神状態だが、近場で複数の爆破事件が起きた現在、恐怖や錯乱により危険な精神状態にある人間が複数存在したとしても何ら不思議はない。
「じゃあ、その危険色の中に敵が混じってるんすかね?」
「そうとも限らない。稀に人間以外のスタンド使いも存在するし、息を吸うように通常の精神状態で殺人を行う人間も中には存在する。レーダーを過信してはいけない。今現在進行中の連続爆破事件を考えれば、一般人の精神が警戒色に染まっていても、なんら不思議はない。それよりも。」
パリの路地で三日月を背景に、黒い
中央に赤毛で高身長のフランス暗殺チームリーダーのフランシス・ローウェンが、両脇に副リーダーの金髪セミロングの女性、ヴィオラート・レンハイムとそこそこの実力を持つ暗殺チームの一員、茶髪の若者ランド・ブリュエルが控えている。
彼らが動いた理由は、彼らの組織がパリ周辺に所有するビルが次々と爆破されたことに端を発する。
「………やつは、十年以上も前に死んだはずだ。」
ローウェンに向かって、ヴィリーと呼ばれた女性がつぶやいた。
「確かに俺が殺した。死体も確認している。しかし模倣犯と言うには、あまりにも手法が似通っている。巨大な建築物を下準備も無しに次々に爆破出来るのは、奴ぐらいだ。」
「奴とは?」
若いランドが、ローウェンに尋ねた。
「リヨンの爆弾魔。前任のラ・レヴォリュシオン暗殺チームリーダー、リュカ・マルカ・ウォルコットだ。お前も暗殺チーム所属なら、名前くらいは聞いたことがあるだろう?」
三人はパリ近郊の路地を駆けて、探索を続けた。
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「指令を出す!気を引き締めろッッッ!!!」
夜間に、唐突にグイード・ミスタ副長に呼び出された。
ミラノのパッショーネ支部内で、暗殺チームの人員に緊張が走った。
「指令を。」
サーレーが、一歩前に出た。
彼は黒いコートに黒いマフラー、全身黒ずくめの格好をしており、背後に控えるマリオ・ズッケェロ、ウェザー・リポート、ホル・ホース、アルバロ・モッタも同様の格好をしている。暗殺チームの仕事着だ。彼らは闇に紛れて、速やかに刑を執行する。
「スペイン、アルディエンテより、パッショーネに緊急救援要請が入った。危険度レベル3、カビを使うスタンド使いが、バルセロナで無差別に大量殺傷事件を起こしているとの情報が入ってきた。」
ミスタはサーレーにそう告げると、少考した。
「何か?」
「………ただの偶然だと思うが、俺たちも以前ローマでカビを使うスタンド使いと戦った経験がある。」
「それは………。」
グイード・ミスタは、かつてディアボロと対決する最中に、ローマでチョコラータと対峙した経験を持つ。
「………そいつだったらやりかねないという、嫌な信頼がある。そいつも邪悪をそのまま人間の形にしたような奴で、ローマで無差別に大量殺人を行なった。………かなりやばい案件の可能性が高い。お前たちの久々の本業だ。気を引き締めろ。」
「はい!!!」
「万が一のため情報だけは渡しておく。もしも俺たちの知る男であれば、死体を媒介にして低所に進むほど繁殖するカビを操るスタンド使いだ。………躊躇なく殺せ。欲をかけば死ぬことになる。遠慮会釈、事件の背景などを探る必要はない。それは俺たち上層部の人間の仕事だ。」
グイード・ミスタの瞳に静かに漆黒の殺意が宿り、それはそのまま暗殺チーム全体に伝播する。
闇に潜む殺し屋集団は、殺意と共に極端に戦闘能力が跳ね上がる。
それは決して愛や勇気、夢、希望などといった綺麗なものでは無い。
本物の殺意に抗えるのは、殺意以外には存在しない。
「………指示を出す。パッショーネが、スペインに高速ヘリを飛ばす。向かうのは、サーレーとホル・ホース。サーレーが、現地のリーダーを務める。現地組織、アルディエンテと連携して、事件を終息させろ。ズッケェロ、ウェザーはパッショーネに残って俺の指揮下に入れ。有事に備えてイタリアの防衛を担当する。モッタは俺たちに同行して、俺の指示を聞いて行動しろ。以上だ。サーレー、ホル・ホース、向かえッッッ!!!」
「了解ッッッ!!!」
「あいよ。」
黒いコートを翻して、サーレーとホル・ホースはスペインに向かった。
◼️◼️◼️
「ふざけんなよッッッ!!!スタンド使い同士の
肩に拳大の穴を開けて、大量の血液を流しながら、チョコラータはテンパってオネエ言葉になりながら大声で叫んだ。
叫ばないと、痛みで気絶しそうだ。
さほどパワーのないチョコラータのグリーン・デイでは、乱射されるサブマシンガンの銃弾を弾き返せない。
投下された四枚の木札と入れ替わりで現れた四人の殺し屋は、ローラー作戦でバルセロナのグラシア通りの周辺を探索するうちに、カタルーニャ広場の高台で気持ちの悪い笑顔でスタンドと共にニヤける一人の男を見かけた。それを最初に見かけたロジェという名の男が、無線を使用して仲間を隠密で高台周辺に集め、四方から高台で高みの見物を洒落込む男に対してサブマシンガンで斉射を行なった。
「下に落ちたぞ!手榴弾を放り込め!!!」
「ゲッッ!!!」
止むことの無い弾幕の中、一人の男が遮蔽物に隠れるチョコラータに対して爆破命令を下した。
「ふざけんなッッッ!!!んなもん食らってられっか!!!」
チョコラータはその場を必死で逃げ出し、四人の男たちは猟犬のような統率の取れた動きでチョコラータを追い詰めてくる。
「クソッッッ!!!下に行きやがらねえッッッ!!!私の能力が分析されてやがるッッッ!!!」
男たちはチョコラータのカビの情報を分析し、チョコラータがスタンドを解除して低所に逃げ出さないように回り込んで退路を塞いでサブマシンガンの斉射を続けた。
『おらぁぁぁぁぁッッッ!!!そのクソカビヤローを仕留めた奴には、私から直々に褒美をくれてやるッッッ!!!怯むな!!!死体が残らないほどに鉛玉をブチ込んでやれッッッ!!!』
無線からメロディオの檄が周囲に響き、男たちの士気が上がった。
銃弾はますます激しく撃ち込まれ、時折放られる手榴弾にチョコラータの着ている服はボロ雑巾と化した。
チョコラータの右側頭部をサブマシンガンの尖った銃弾が掠め、チョコラータは出血した。
「クソッッッ!!!容赦しやがらねえ!!!イアンのヤローは、一体何をやってやがるッッッ!!!」
チョコラータは糸で傷口を縫い付けながら、カビで傷口を塞いだ。
チョコラータはイラついて愚痴をこぼした。
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「待っていた。さすがにお前は役にたつ。」
カタルーニャ広場が一望できる建物の一室で、イアンは笑い、オリバーは一人の少年をイアンに引き渡した。
「ほらよ。言われていたものだ。それにしてもチョコラータのやつ、随分とハッスルしてんなあ。」
「楽しそうで、何よりだ。さて、こちらもとりあえずの手駒は揃ったか。」
赤ん坊のディアボロとヴィネガー・ドッピオ、そして彼らより年嵩の少年が一人。
「それにしても、やはり私の手腕は素晴らしい。だから言っただろう。」
「カビは死体には生えない。カビは人間にしか寄生しない。まあおかげで助かったっちゃあ、助かった。」
イアンは笑いながら、異界の窓から外の様子を眺めた。
「それにしても、スペインの暗殺チームは思っていたよりもやり方がずっとエゲツないな。チョコラータが頑張って逃げているのが笑える。ブハッ、あれ見ろよ。あのチョコラータが、汗だくになって走り回ってるぞ!走れー、走れー、チョコラータ!明日に向かって、走れー!」
「スペインは、情報があまり入ってこなかったからな。」
イアンが爆笑して、オリバーが返答した。
各国の暗殺チームの情報は、リュカの古い情報を元にオリバーが潜入して収集した。
スペインの暗殺チームの情報は秘匿が徹底されていてなかなか入手できず、オリバーがディアボロの配下として潜入した際に偶然手に入った情報を元に襲撃を行った。
「さて、チョコラータよ。お前はお前のままでいられるか?それとも
夜が更けるたびに、狂人たちは劇に興じる。
今宵の主役は、リュカとチョコラータ。二本立てで、お贈りしようか。
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「通行は?」
「誰も通していません。」
「わかった。ご苦労。」
時間は夜間のおよそ十時半。
セーヌ川のほとりの街角に立つ重装備で武装した男から、ローウェンは報告を受けた。
武装した男は、ラ・レヴォリュシオンの親衛隊の一員だ。
法王ローウェンの異名は、彼を知るラ・レヴォリュシオンの上層部では絶大な効力を持つ。
ラ・レヴォリュシオンの親衛隊からしても、彼は畏敬すべき人物だ。
何しろ親衛隊の元リーダーが、今現在彼の忠実な副官なのである。
歴史ある組織ラ・レヴォリュシオンは、爆弾魔を輩出して斜陽を迎えた。
今現在組織は、フランシス・ローウェンの強烈なまでの威光に支えられている。
弱っているラ・レヴォリュシオンに他の組織が手出しを出来なかったのも、一重にその威光が原因だった。
「爆破された直後にパリ近郊の各区画に人海戦術で交通規制を敷き、どこからも不審者の目撃情報が上がっていない。高確率で、奴はこの区画内にいる。」
「………建物内部ね。」
ヴィリーの言葉に、ローウェンは首肯した。
「厄介だ。なんらかの罠を張って待ち受けている可能性が高い。」
「対象区画内の感情の反応数は、全部で八十六。手分けして探す?」
ローウェンは、現状取れる手立てを思考した。
「それは危険だ。奴はお前たちでは相手にならない。」
「………私たちも暗殺チームに全てを捧げているのよ。」
「暗殺チームに避けられない犠牲は付き物だが、自分たちから無意味に死地に赴くのは感心しない。生きることに執着することを忘れれば、今日死ななくとも先は長くない。」
どう行動すべきか、非常に悩みどころだ。
個人でバラけて捜査すれば、ローウェン以外は一人ずつ消されていく。かと言ってまとまって捜索しても、奴の爆弾という能力の特性上、全員まとめて一網打尽される可能性が消せない。
探し人である以上、探知能力を持つヴィリーは外せない。時間をかけるほどに、相手に対応する時間と選択肢の幅を与えることになる。
「………俺が片っ端から探知箇所を捜索する。お前たちは誰とも接触するな。ランドはヴィリーの護衛だ。奴はお前たちには、少々荷が勝ちすぎる。二人で組んで、遠巻きにして敵の逃走経路を予想しろ。決して敵と相対せずに、敵が逃走したら逃さないように追跡を行え。」
「
「いいな、絶対に戦うな。見つからないように追跡しろ。万が一見つかったら、脇目も振らずに逃げろ。」
ローウェンが単騎で周辺の捜索に向かい、二人はローウェンの影に徹した。
◼️◼️◼️
「ふざっけんなッッッ!!!アイツらどこまでやりたい放題やるつもりだ!!!」
射線がさらに二つ増えた。
人員が二人増員され、六ヶ所からコンクリートの遮蔽物に隠れるチョコラータにサブマシンガンの弾が乱射された。
コンクリート片が飛び散り、チョコラータの頬を切った。チョコラータは銃弾の直撃を喰らわないように、必死に遮蔽物に身を隠しながら移動して逃げ回っている。とっくにスタンドを行使する余裕など無い。
「セッコさえ、セッコさえいりゃあどうにかなんのに!クッソがああッッッ!!!」
チョコラータの顔は真っ赤になり、汗と鼻水が石畳に飛び散った。
一つの銃弾がチョコラータのふくらはぎをかすめ、チョコラータはつんのめった。
「痛えッッッ!!!」
わずかにチョコラータの動きが鈍ったすきに、兵士の一人がチョコラータの隠れている場所に向けてスタングレネードを投げ込んだ。
「あ、これほんとにやばいやつだ。」
至近距離で閃光弾が炸裂し、強烈な音と光にチョコラータの五感はしばらく効かなくなった。
「うえええッッッ!!!」
乱射される銃弾に、左足の膝から下を吹き飛ばされた。
目が見えず音も聞こえず、大量に流血し、片足が消し飛ばされた。スタンドを行使する余裕はない。
「あ………。」
薄ぼやけてわずかに光が戻ってきた視界に、目前でMk.22を構える阿修羅の姿が映っていた。
「イアン、イアン!どこにいる!私を助けろ!!!あえっっっ!!!」
「………。」
人影は無言でチョコラータの頭部に向けてありったけの銃弾を連射し、頭部が吹き飛ぶと同時にチョコラータの下半身は痙攣し、肉塊となって地面に溶けて消えていった。
「姉貴、お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
メロディオのそばに、コワモテの兵士たちとレノが近寄ってきた。
「この程度のカスに、ルーベルクがやられるとは思えん。動機も目的も不明のままだ。レノ、組織の人員を片っ端から叩き起こして被害状況の確認と事件の背景の洗い出し、周辺の捜索を行え!」
「了解致しました。」
レノが下がると同時に、メロディオは部下に怒鳴り散らした。
「テメエら!!!全員揃ってその股間についているものは、飾りかッッッ!!!吹き飛ばすぞッッッ!!!この程度のクソカビヤローに、スペインの暗殺チームがいつまでもコケにされたままでいるな!!!初撃で仕留めろ、この下手くそッッッ!!!役立たずの雑魚どもがッッッ!!!」
「すみませんッッッ!!!」
「すみませんッッッ!!!」
メロディオは怒鳴り散らした。
四人の兵士たちは揃って股間に付随しているブツが縮み上がり、メロディオに敬礼した。
「わかったらさっさと周辺の捜索を行え!!!今すぐだッッッ!!!走れッッッ!!!」
四人は慌てて、蜘蛛の子を散らすように周辺の捜索へと向かった。
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「あっはっはっはっは!笑いが止まらん!チョコラータが、ベソをかきながら助けを呼んでるぞ!」
イアンが笑いながら、部屋の窓からチョコラータを指差した。
「おいおい、馬鹿笑いしてる暇があんのか?アイツらすぐにでもここにやってくるぜ?」
オリバーが、笑い続けるイアンに忠告した。
「そのためにこいつがいるんだろう!さあッッッ!!!」
イアンのスタンドが、スタンドを発現させるウィルスを内包した注射針を取り出した。
「見ろッッッ!!!アレが、役立たずのチョコラータの成れの果てだ!!!お前は私の手駒として、私の望み通りに踊れるか?役に立つチョコラータを、演じることができるかッッッ?」
オリバーが連れてきた少年は、頷いた。
スイスの研究室で三人のチョコラータを戦闘させている最中、イアンは新たなチョコラータを生み出していた。同じ場所に同じ人間がいれば殺し合いになるのなら、隔離しておけばいい。彼は時間差を置いて生み出した、チョコラータに何かあった時のスペアだ。何かあるのが前提なのだが。
スタンドは一人一体。チョコラータのスタンドは、カビを操るグリーン・デイだ。
「さあ、私の命じた配役をこなしてみせろ、チョコラータッッッ!!!」
「あっ、あっ、ああッッッ!!!」
イアンのスタンドの執刀医が少年に注射を刺し、注射を刺されて恍惚とした表情の少年の背後に新たにグリーン・デイのヴィジョンが浮かび上がった。
「さあ!お前たちは、狂気の夜を越えられるか!!!スペイン暗殺チームよッッッ!!!」
イアン・ベルモットは両手をすくめて、楽しそうに笑った。
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セーヌ川のほとりに建った暗く静かな工場跡地に、冷たい殺気が充満していた。
周囲にコツコツと乾いた靴の音が響き、赤毛の男の瞳には漆黒の殺意が渦巻いている。
「………どこにいる、姿を現せ!!!」
ヴィオラートが感情を探知する中で、当該区画内でたった一つだけ常時移動を続ける点が存在した。
「………ッッッ!!!」
ローウェンがその点に不審を抱いて目星を付けて追跡すると、そこはセーヌ・サン・ドニに存在するオモチャの廃工場だった。
「待てッッッ!!!」
工場内に潜むフードを被った男は、ローウェンの姿を見るなり工場内を慌てて逃げ出した。
ローウェンは素早く男の後を追った。
「………ッッッ。」
工場内を薄い雲が覆い、気温が低下し床は凍りつき、それに足を取られた男をローウェンは速やかに追い詰めてゆく。
「どこだ!奴はどこにいるッッッ!!!」
目の前で逃げ出した男は、逃げ足の遅さからリュカである可能性は低い。ほぼ間違いなく囮だ。
それでもローウェンは慎重に男に近付いていく。男がなんらかの情報を持っているかもしれないし、リュカにメッセンジャーとして使われているのかもしれない。もしかしたら本物で、気を抜いた隙にブッスリという可能性もある。
「お前は………。」
ローウェンは、男を知っていた。
男は、いつも組織のそばの路地裏で物乞いをしていた名物男だ。ローウェンは見かけるたびに、空き缶に小銭を放っていた。
「ムー、ムー!!!」
男の口は糸で縫いつけてあり、喋れないようにされていた。
ローウェンは、男に近寄った。
「ブググアババイアアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!!!!」
「何ッッッ!!!」
ローウェンが男に近寄った途端、男は縫い付けられた口から奇声を発して膨れ上がった。
ローウェンが危険を感じて一歩下がった途端に、男はその場で血肉を撒き散らして破裂した。
そして、次の瞬間地面が激しく揺れた。
工場のアスファルトでできた床が膨れ上がり、強震度の揺れを伴い、地面が爆弾と化して炸裂した。
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状況相関図
メンバーは、先頭がリーダーで二番目が副リーダー
イタリア、パッショーネ暗殺チーム
メンバー
サーレー、マリオ・ズッケェロ、ウェザー・リポート、ホル・ホース、アルバロ・モッタ
状況
サーレーとホル・ホースが、スペインに援護に向かっている。その他の人員は、有事に備えてイタリアの守護に回っている。
スペイン、アルディエンテ暗殺チーム
メンバー
ジェリーナ・メロディオ、レノ、ベロム、マニシェ、ロジェ、クラン
状況
スペイン、カタルーニャ州バルセロナ県グラシア通りで、チョコラータと交戦。
フランス、ラ・レヴォリュシオン暗殺チーム
メンバー
フランシス・ローウェン、ヴィオラート・レンハイム、ランド・ブリュエル
状況
フランス、セーヌ・サン・ドニ区の廃工場で、リュカ・マルカ・ウォルコットと交戦。
狂人たち
メンバー
イアン・ベルモット、オリバー・トレイル、リュカ・マルカ・ウォルコット、量産チョコラータ、ディアボロ、ヴィネガー・ドッピオ
状況
チョコラータがスペインでメロディオ率いる暗殺チームと交戦して死亡、グリーン・デイを操る新たなチョコラータがイアンによって生み出された。リュカはパリでフランス暗殺チームリーダー、ローウェンと交戦開始。ディアボロとドッピオは現状赤ん坊で、イアンとオリバーは高みの見物をしている。