私は私を許さない   作:如月 刹那

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お待たせいたしました。まだ最終回ではございません!次は少し遅くなるかもしれません。

では、ごゆっくりとお楽しみください。


私は私を許さない:迷

 

「はぁ…………」

 

カドック・ゼムルプスは溜息を吐いた。考えていることは、勿論奴の……藤丸立香のサーヴァントについてだ。

 

奴のサーヴァントは、奇しくも自分のサーヴァントと同じアナスタシアだった。いつ召喚したのか、それが分からない。この異聞帯に来てから召喚したのだろうか。

 

いや、それはない。少なくもあいつらの間には、確かな信頼関係が見えた。少ない言葉だけで、相手の意思を汲み取り、こちらを明確に攻撃して来た。それに……。

 

「なぜ、あそこまで怒っていたんだ……。あっちのアナスタシアは、カルデアにいた時期が長いのか?」

 

奴のアナスタシアは不意打ちでカドックを狙って、殺意を剥き出しにして、宝具でこちらを圧倒してきた。あの殺意は尋常じゃないレベルだった。

 

「……ック、……ドック、……カドック。ねぇ、聞いてるのかしら?私のマスター?」

 

「……っ!いつの間に、横に来ていたんだ」

 

「あら?私に気付かないなんて、凍らせたくなるわよ。それで、何を考えているのかしら?」

 

「ああ、やつのサーヴァントについてだ」

 

アナスタシアは、そのことを聞いた瞬間に嫌そうな顔をした。あれだけ、自分に……汎人類史の自身に、追い詰められたのをよく思ってないようだ。

 

「それについてなら、マカリー司祭が調べてくれたみたいよ」

 

「勿論だとも。今から説明しよう」

 

アナスタシアに続いて、マカリー司祭もいつの間にかに立っていた。アナスタシアはともかく、こいつは、いつ来たんだ。

 

「まず、カルデア側のアナスタシアについてだが……あちらの皇女はどうやら、藤丸立香が最初に召喚したサーヴァントのようだ。仲もかなり良好。ここまで言えば、分かると思うがね」

 

「カルデアの連中を殺したからか?」

 

「それだけではないでしょう。元の私なら、そこまで長く過ごしていれば、家族の様な信頼性を築けていたと思うわ。きっと、家族を失うのは辛いですもの」

 

今でこそ、ヤガの精神性などが埋め込まれ、家族の顔さえ思い出せないほど変質しているアナスタシアだが、アナスタシア自身が言うんだ。あちらのアナスタシアは、そう言う存在だと考えたほうがいい。

 

「それに加えて中身こそ違うものの、同じ存在に殺されたのだからね。霊基が変質しかけているのも頷ける」

 

「霊基が変質だと?そんなことがあり得るのか?」

 

「ふむ、ないとは言いきれない。私にとっては馴染みのある霊基だったのでね。———あの泥と良く性質が似ているよ。最もアレは災厄を齎らすものだから、比較対象としては弱いがね」

 

「マカリー。アンタは何を言っているんだ」

 

「いや、こちらの話だ。気にしないで、忘れてくれていい」

 

馴染みのある霊基?泥?聞き覚えのないことだが、今はそんなこと気にしている場合ではない。とにかく、あちらの戦力にこちらの想定外のものが加わった。それを考えて動かなければならない。

 

アナスタシアを必ず、皇帝(ツァーリ)にするために。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ。可愛い寝顔」

 

アナスタシアは寝ている立香に膝枕をして、頭を撫でながら呟いた。あの後、こちら側のサーヴァントに説明などしたり、叛逆軍等が壊滅したりしたが、全て些細なことだ。

 

自分の中で、そう考えるものの立香に無茶な重荷を背負わせていないかと改めて思った。

 

自身のマスターは優しい人だ。だからこそ、今回のことで私だけの味方になってくれると言ってくれたが、普通なら死にゆく人を見捨てることのできない人でもある。

 

きっと他の人をいくら犠牲にしようと、敵であるクリプターを殺すことになっても、立香は復讐鬼となった私についてきてくれる。けれども心の奥底では、立香は罪悪感で縛り付けられる。

 

罪のない人を犠牲にすること、壊れていく私を止められないこと。その全てがのしかかる。立香も共に壊れていく。寄り添ってくれることに嬉しいと思う反面、私のせいで摩耗していく姿を見ていられなくなる。

 

クリプターを逃した時に、次は必ず殺すと私は言った。立香は私がしたいように頑張ると言ってくれた。でも、私の言葉に返答するのに間があった。アナスタシアはこれ以上、立香と一緒にいていいのかと迷いが生まれてしまう。

 

「2人共、部屋にいたのね、立香君はお休み中かー。まあ、もうすぐクリプターとの決戦だしね。休める時に休まないと」

 

部屋のドアが開いて、武蔵が入って来た。彼女とはカルデアでも付き合いがあった。まあ、ほぼカルデアに留まってることはなく、外に出ていたが。

 

「私達2人の空間を邪魔されたくないのだけれど?無粋なのでは、武蔵?」

 

「うんうん、マシュちゃんとの話は終わったからねー。次はこっちかなーって。大丈夫?アナスタシアちゃん、無理してるでしょ」

 

「……そういうところは鋭いのね。恋愛に関しては疎いのに」

 

「そ、それは関係ないのです!とりあえず、私が相談に乗っちゃうよー」

 

「なら、お言葉に甘えるとします」

 

私は立香に聞いたこと、別の自分がカルデア崩壊に関与してること、召喚されてから起きた出来事を話した。

 

「うーん……難しい問題ね。立香君に違和感あると思ったらそれみたいね」

 

「今はこうして落ち着いて話していられますが、あの2人……特にあちらの私を見かけたら、溢れる憎悪が抑えられなくなるのです」

 

「まるで復讐者(アヴェンジャー)ね、それ」

 

「まるで、ではないのでしょう。霊基が変質して来ていることは、自分が1番よく分かってるわ」

 

煮え滾るほどの憎悪。カルデアにも何人か復讐者はいたが、これほどのものを抱えていたのだろう。復讐者の憎悪は、その対象を消しても決して晴れることはない。それがよく分かる感情だった。

 

「こうやって葛藤してるくせに、私は立香が一緒にいてくれることを嬉しく思うのです。既に破綻してるのよ」

 

「いや、それは私が同じ立場に立ったとしても、一緒について来てくれる立香君のことは嬉しく思うかなぁ?なんせ根っからの無法者ですから!まあ、復讐って理由では戦わないけどね!」

 

「それは復讐しようとしている、本人を目の前にして言うことかしら?なんにせよ、次に会ったら最後、殺すか殺されるかの戦いになるでしょう。生かすなんて選択肢はハナからありません」

 

「それで納得できるかは貴方次第よ、アナスタシアちゃん。どちらの選択を選ぶかで、きっと結末は大きく変わる。貴方が納得できる最後を選びなさい」

 

そう言って、お節介なお侍さんは部屋から出て行った。今の私にここまで言うなんて貴方くらいよ。

 

———どちらかを選ぶ……か。私は結局、どうしたいのかしら。

 

 

 

 

 

 

夢を見た。銃で殺され、バラバラにされ、魔眼(ヴィイ)を通じて、兵士達に恨みを抱いた少女(アナスタシア)。その最期は悲しいものだった。

 

視界が暗転する。

 

次に映ったのは、一面が炎で包まれた街。これから一緒に歩んでいく、マスター(立香)との初めての出会い。これまでの特異点での旅路。色々なサーヴァントや、支えてくれたスタッフとの触れ合いはとても心が暖かくなるものだった。

 

いつまでも、この幸せが続きますように。

 

再び、視界が暗転する。

 

なぜ?なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ———。

 

……なぜ皆は、私をそんな目で見るの?マスターは目を逸らすの?別の私は私の大切な者達を奪ったの?

 

あぁ……私の中にドス黒い感情が湧き上がる。自分が殺された時以上の闇に支配される。悲しみ、憎悪、殺意。溢れるのが止まらない。

 

私の心が、霊基が変質していくのが分かる。もう誰も手を取らないで。こんな醜い私を見ないで。

 

立香が追いかけて来てしまった。私の大切なマスター。もういいの。私は失いたくない。こんな、私といては駄目。

 

それでも立香は手を取ってくれた。私のことを好きだと言ってくれた。差し伸べられた希望に縋り付く。それで立香が壊れていくと知りながら。

 

とても嬉しい。それと同時に悲しい。

 

あぁ、どうか私のことを止めないで(止めて)———。

 

意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

瞼を開けると、目の前にはアナスタシアの顔があった。優しい微笑みでこちらを見ている。頭には柔らかい感触があり、どうやら膝枕をしてくれているようだ。更に頭を撫でてくれているけど、流石に恥ずかしくなり、自身の顔が赤くなるのが分かった。

 

「何してるのさ……」

 

「あら?恋人同士ってこういうことをするものでしょう?寝顔を見れたし、私は満足よ?」

 

「いやぁ、まあ、うん。確かにこういうことはするかもね?」

 

「それはそれとして、魘されていた様だけど、何か悪い夢でも見てたの?」

 

「……本当は何を見てたかは、ナースチャが1番よく分かってるんだよね?ナースチャの夢を見てたよ」

 

「マスターはサーヴァントのことを夢を介して見るとは聞いていたのだけれど、何もこのタイミングじゃなくてもいいとは思ったのですけれど」

 

「それは俺に言われてもなんともできません!……何度も言うけど、俺はナースチャの味方だから。ナースチャが、どんな道を行こうともついてくよ」

 

「ええ、分かってるわ。私もどんなことがあっても、貴方は守りきってみせます」

 

『はいはーい。お二人さんに連絡だよ。もうすぐ首都近辺にシャドウボーダーが近づける限界だ。心身ともに準備しといてねー。…………あと、無茶だけはしないでね。それは私達も望んでいないからさ!』

 

ダヴィンチちゃんが、アナウンスと共に心配をしてくれた。俺とナースチャが、どうなるかは分からない。きっと、その時になるまで。

 

「さあ、マスター行きましょう」

 

「ああ、この異聞帯での最後の闘いだ」

 

 

 

 

 

壊れた歯車は支え合う。

 

動き続けるか、崩壊するか。

 

———それは最後になるまで誰にも分からない。




ギル祭だ!ボックスガチャだ!こんにちは。作者の如月刹那でございます。

この話とは関係ないですが、やっと待ちわびたボックスガチャですよ!これで当カルデアサーヴァント達のスキルレベルが上げられる……。ついでにまた高難易度があるみたいですしね。呼符が欲しいです。

では、今回のお話の解説を。

カドックとアナスタシア、つまりクリプター組は汎人類史アナスタシアがいつ頃からいるのかを知らないという形にさせていただきました。てか実際、多分知らないと思います。あと今回のお話で、薄々勘付いた方もいるかもしれませんが、麻婆臭い方はラスプーチンではあるけど、ラスプーチンではありません。まあ、そんな感じの発言もしてましたし、思い切ってそれっぽい形としました。

次にアナスタシアと藤丸立香について。

アナスタシアは別にカドックと異聞帯アナスタシアを殺すことに躊躇いはありません。あくまでその2人を殺すことによって、藤丸立香という人間が壊れることを恐れています。ただでさえカルデアが他の自分によって壊滅したのに、更に藤丸立香が自分のせいで壊れて、これから歩んでいく先の人生を危惧しております。

藤丸立香は何度も言うように普通の人間です。人が死ぬのを見るのは嫌だし、殺すのも嫌。なるべく見捨てたくもないし、さりとて見捨てる時はその決断を下せる。そして何より大切な人を支えたい。
こんな人間だと私は思っております。この感情がごちゃ混ぜになって、躊躇いを生んでいます。

アナスタシアの意思を尊重したいけど、なるべくなら殺したくはない。だけどそれはアナスタシアを心から支える人がいなくなるのでは?と葛藤しています。恐らく立香が個人の正義の味方化したら前回言った通りになると思いますけどね。

さて、恐らく次で最終回になると思います。結末がどうなるかはご期待ください!ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

質問等あれば、どうぞジャンジャンしてもらって構いません。誤字脱字報告もしてくだされば、すぐに修正させていただきます!

では次回もお楽しみに!
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