勇者たちをイチャイチャさせたい!   作:紅氷(しょうが味)

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ゆゆゆいのストーリーを見直してたら書いてみたくなったので書いてみた。

ある意味イチャイチャ(恋愛)してるからセーフ…?


story─EX「この世界を……」

硝煙と爆風によって辺りに立ち込める土煙。とうとうやってしまったと、どこか他人事のようにそんなことを考えていた。

 

少しして視界が晴れていく。そうしてやはりというか、望んだ結果が目の前の光景として広がっていた。

 

「──これで、神樹の結界に綻びが生じたはず。後は……」

 

俯いて歯を食いしばる。これでいいと、これでいいんだと私は淀んだ瞳を向けてぽっかりと穴の開いた壁に目を向ける。

戦いの果てに手にした『満開』という力。勇者としての力が飛躍的に増大し無数のバーテックスたちを塵の如く薙ぎ倒していく絶大な力を私を含めて勇者部は使用した。

……その結末を知る由もなく。

 

「もうこんな世界なんて滅んでしまえばいい。こんな悲しい世界に希望なんて……」

 

私達の生き地獄は終わらない。だったらいっそのこと……。

 

「────東郷さんッ!!」

「東郷! あんた何やってるのよ」

「……友奈ちゃん、夏凜ちゃん」

 

大声で、私の大切な人の声が耳に届く。振り向くと離れたところに友奈ちゃんと夏凜ちゃんがいた。

きっとこうして溢れ出てくるバーテックスたちを倒すべく馳せ参じたのだろう。

 

「東郷さん! 壁が壊れ……レオ・バーテックスが」

「その壁はね友奈ちゃん……私がやったことなの。私は今からこのバーテックスを神樹様の所へ連れていく」

「えっ!? ど、どうして東郷さん! そんなことしたらこの世界が──ッ!」

「いいのよもう……もう友奈ちゃんが、みんなが傷つく姿を見たくないの」

 

私から出た言葉に友奈ちゃんはとても驚いた顔をしていた。その表情があの人と被る(、、、、、、)。ここに来るまでにあの人の制止を振り切り私はこの惨状を作り出した。ダメ、後悔も何もかも私は置いてきた。もう止められない。()くしかない、と。

 

私はこの世界の『真実』を彼女たちに伝える。壊れた壁の先の真実と共に。

 

「ぐっ……バーテックスがこんなに」

「これで更に壁の範囲を広げればさらに無数のバーテックスが……」

「東郷、やめろ!」

「邪魔を────するな!」

「二人ともやめて!!」

 

『真実』を知ってもなお止めに入ってくる夏凜ちゃんに私は威嚇射撃を行う。しかしまったく動じない彼女は肉薄してくる。

 

「東郷、あんた! 自分がなにやってるのか分かってるの!?」

「分かってるから。やらなければならないの。これを見てしまったからには……」

「だからってこうしていいわけがない! あんたは間違ってる!」

「ならどうしろっていうの! 勇者は満開を繰り返してボロボロになって……いつか大切な友達や記憶を失って………何も分からなくなっても戦い続けて、そうまでしても守れるものなんて……」

 

以前の私がそうだったから。失ったものの悲しみはここで終わらせないといけない。

救わなければ……。

 

「だから私は、生贄としての勇者を救うの。勇者も、この世界も……私が断ち切る」

「……くっ。数が……っ!」

「夏凜ちゃん……! 東郷さん!! この世界が無くなったらやりたいことも出来なくなっちゃうんだよ?! 東郷さん言ってた……祐くんに伝えたいことだって────!」

 

ビクッと肩が跳ねたのが分かる。友奈ちゃんから発せられた一言に決心が鈍りそうになってしまう。

私の機微を悟ったのか友奈ちゃんは言葉を続けていく。

 

「私、ちゃんと知ってるよ? 東郷さん、祐くんのお話するときすっごく楽しそうに話してくれるんだもん。そんな子からその人に『伝えたいこと』があるなんて聞いてその内容が分からないほど鈍感じゃないから! 伝えないまま……言葉にしなくてもいいの?!」

「────めて」

「きっと祐くんも心配してる……だから」

「やめてッ!!!」

「っ!? 友奈!!」

「────っ!!」

 

言葉の続きを遮るように、その時の私は平常心を欠いていたのだろう……照準がブレて友奈ちゃんに砲撃が撃ち込まれる。撃ってからハッと気が付く。大切な人を傷つけたくない……そんなことを言っておきながら私は、自らの手でその『矛盾』をぶつけてしまう。

 

友奈ちゃんは咄嗟の出来事で対処が間に合わず避けるのも防御するのも間に合わない状況だった。夏凜ちゃんが一目散に駆け寄ろうとするがそれでも一歩足りない。

だれもが間に合わない……そう思った時だった。

 

 

「────急いで駆けつけてみればこんなことになってるなんて……大丈夫? 友奈」

「へっ? あれ……??」

 

砂塵が舞い、視界が晴れるとそこには────もう一人の『友奈のそっくり』が友奈ちゃんを抱えて立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに直撃コースだった。私は夏凜ちゃんと同じように威嚇射撃で済ませるつもりだったのだが、友奈ちゃんの言葉に決意がブレてしまった。

けれどその最悪な結果は訪れなかった。友奈ちゃんは助けられてその射線から脱することができたからだ。

 

「……なんで、どうして?」

 

安堵してしまった反面、納得がいかない。

駆け寄ったのは夏凜ちゃんでない。風先輩や樹ちゃんでさえない。私は震える唇を動かして疑問を投げかける。視界が晴れていくと私も夏凜ちゃんも、助け出された友奈ちゃんすら同じ疑問を抱いていた。居るはずがない存在がそこに立っていたから。

見た目はかなり様変わりしている。髪色は赤くなり、その瞳も友奈ちゃんと同じルビーの瞳色。身なりも桜色を基調とした私たちと同じような『勇者服』そのものだ。まるでそこに友奈ちゃんが二人いるかのようだった。

 

「……友奈、立てる?」

「祐くん……だよね? う、うん大丈夫」

「ちょ、ちょっとなんでアンタがいるのよ!? それにその姿って……」

「三好。詳しい事は全部終わったら話すから……とりあえず友奈を連れて離れてくれ。今の友奈は戦えない」

「そ、そんなことないよ祐くん! 私はまだ……って、あれ? 変身が──!」

「ここまで色々と戦い続けてたんだろ? 精神が揺らいでしまったせいだと思う。一旦心を落ち着けた方が良い。三好」

「……絶対あとで話しなさいよ祐樹」

「ああ、後もう一つ頼んでもいい? アイツらの処理を頼みたい」

「あいつ等って……あ、もうあんなにバーテックスが……っ!」

 

祐樹くんが指さした方に何体もの大型バーテックスが神樹に向かいつつある。夏凜ちゃんはそれだけで意図を察して友奈ちゃんを抱えてこの場を離脱しようと動き出す。こういうときの潔さは流石は夏凜ちゃんといったところだ。

 

「今の僕じゃ流石に倒しきれないんだ。だから、頼む」

「……分かったわ、任せなさい。いくわよ友奈」

「ありがとう」

「ま、待って夏凜ちゃ……ッ! 祐くん、東郷さんをお願い!!」

「うん」

 

簡潔に別れを済ませた三人は別れ、残ったのは私と祐樹くんだけだった。離れた位置に相対する私たちの視線がそこで重なる。

 

「どうして祐樹くんがここにいるの? それにその姿……『勇者』に選ばれるのは少女のはずよ?」

「ねぇ東郷。三好ってさ、あいつに似てるよな。あの立ち姿を見たせいか懐かしさが込み上げてきたよ。あともう一人ここに居たらある意味で集結したことになってたかなぁ」

「………? 何を言って」

「ああうん。そうだよね、そうだったな(、、、、、、、、、、、、)……で、キミの質問だけど、僕は所謂『例外』ってやつだよ。今まで逃げていた『唯一の男性勇者』なるものが僕だ。ある人から話を聞いてさ……こうしてキミの前に立った」

 

ある人。その人が誰だとは彼は口にしなかったけどなんとなく会話の前後で察しはついた。私と同じように彼もまた『真実』と向き合おうとしているのかもしれない。

でももう何もかも遅い。壁は破壊し、これから世界は滅んでいくのだから。最後に、彼の顔を見ることが出来たのは幸いだったと思うのは傲慢だろうか。

 

けれど、そんな私とは裏腹に祐樹くんは頭をぽりぽり掻いて苦笑を浮かべていた。

 

「それにしても派手にやっちゃってまぁ……昔からやるって言った時の思い切りの良さがいいのは理解していたけど、まさかここまでしちゃうなんて僕も驚いたよ」

「……怒らないの?」

怒っているよ(、、、、、、)

「……っ!」

 

ピリッと肌に電気が奔ったような感覚を覚える。たまらず砲台を彼に向けてしまったのは反射的であった。

そんな私の行動に彼は未だその場で動かない。でも分かる。構えてはいないけれど臨戦態勢でいることはすぐに分かった。

 

「ここまでキミが追い込まれていたのに何も出来なかった僕に対してだけどね」

「私をここで倒す……つもりね」

「いや、キミを止めに来た。僕はただそれだけのためにここに居るんだよ東郷。大丈夫、バーテックスたちは夏凜が何とかしてくれる」

「……なんで来てしまったの祐樹くん。あなただけは……ここに来てほしくはなかったのに」

「分からない東郷? 僕がどんな気持ちでここにいるのか」

「祐樹くんこそ分からないでしょ。私の気持ちなんて…」

「分かるさ。だって僕はずっと前からキミを見てきたんだから────っ!」

「────っ! 分かってないよッ!!!」

 

遮るように私は声を張り上げて砲台から砲撃を射出する。激情に身を任せた一撃に祐樹くんはようやく構えをとってその拳を振りぬいてその一撃を弾いていた。その徒手空拳も友奈ちゃんと一緒なんだ。

 

「────”一目連”」

 

何かを呟いた祐樹くんの姿が再び変わった。右目(、、)が桜の花弁で隠され、肉体を羽衣のようなモノで覆われた。私が見たこともない姿に一瞬目を奪われる。

パンッ、と拳を突き合わせた祐樹くんの周囲からは台風のような、強烈な風が吹き荒れ始めた。

私は再び距離を置く。

 

「…満開?」

「違う、これは東郷に見せるのは初めてだね。僕の『勇者としての切り札』の一つだ」

「……そう。でも出力的には私の『満開』の方が上のように見えるわ」

「かもね。でもこれでいいんだよ。分からず屋のキミにはこれで十分」

「分からず屋って……っ!!」

 

その言葉に私はカチンときて砲身を全て彼に向ける。どうして、どうしてわかってくれないの?

撃ち出される砲撃の数々は彼の周りに吹き荒れる烈風によって軌道を反らされて回避される。私はすぐにその風の軌道を読み切って新たに砲撃を放つ。そうして縫い目から漏れてきた一撃は祐樹くんの拳が薙いで反らしていく。それらを何度かお互いにぶつけあった。

 

「こうして”喧嘩”するなんて……ふうっ! 初めてだね東郷」

「”喧嘩”じゃない! 祐樹くんだって私たちの実情を知ったでしょ!? 『満開』した後の『散華』によって捧げられた供物はもう二度と戻ってこない。大赦に……神樹に奪われたんだよ? こんなの間違ってる……どうして私たちがこんな目に合わなきゃいけないのッ!」

 

集中砲火を浴びさせるけど、それでもその全てを風で跳び、また薙いで見せた祐樹くんの視線はずっと私にあった。逸らされた砲撃は周りの星屑を巻き込んで爆散していく。

 

「…っ。そうだね。現状『満開』によって『散華』した供物は戻ってこない。だけど、東郷がしようとしていることは、今までのキミを含めたみんなの戦いを無駄にすることになる」

「最初から……無駄だったのよ。祐樹くん…あなたの知る私が記憶を失う前からの戦いもずっと……!」

 

倒しても倒しても、結局バーテックスは蘇る。私達はやがてすべてを失う使い捨ての存在なんだから。

でも、彼の瞳には更なる闘志が宿った気がした。直後に私の頬横に一陣の風が突き抜けていく。目の前の祐樹くんが拳を振りぬいていた。

 

「……東郷も結構煽り上手だね。さすがの僕もカチンと来たかな」

「…っ。未来が無いのに戦う意味なんてない。苦しみから解放されることは……悪いことなの!?」

「そう望むのも、楽で痛みのないところへ逃げたい気持ちも理解できる。でもね東郷、キミがそれを否定してはいけないんだよ(、、、、、、、、、、、、、、、、、、)

 

初めて明確な”怒り”の含まれた感情を言の葉に感じ取った。私は少しだけたじろいでしまう。祐樹くんは跳んだ。いや、翔んでいる。風の波に乗るように彼はそのまま私に近づいてくる。

 

「人は何かを背負って────ううん、キミは彼女たちの意思を受け継いで未来を切り開いていくんだ。それが過去の彼女たちが夢見た『未来』なんだから、『未来』のキミがそれを否定することはしちゃいけない」

「分からない、分からないよ!! 私にそんな希望や尊厳は重すぎて抱えきれない。私たちが救われる方法はこれしかないの! 壁を壊して、世界を終わらせることしか────ないんだぁッ!」

「──ぐぅぅ!」

 

『満開』の力が上乗せされている砲撃に祐樹くんは徐々に押され始める。暴風が彼を守るがそれもすぐに限界が訪れてきていた。押し切れる。そう思って彼の顔を見るが不敵な笑みを浮かべるばかりだった。

 

「一人で抱えられないなら僕が一緒に抱えるよ東郷、僕にもその責任があるんだ。だから、こうしてここに居るんだ」

「責任感や義務感で私の心に踏み込んでこないでっ! もう後戻り出来ないの!」

「やり直すことはできる。間違いなんて誰にだってあるんだから、今日のコレも糧にして次失敗しないように明日を生きていけばいい。辛くても、そうでなくても僕がそばに居るから……これはキミと初めて会った時から変わらない事実だ」

「……っ! どうして」

 

何度ぶつけても倒れない。『力』は私の方が圧倒的なのにどうして倒れてくれないの。やめて、私の決めた覚悟を揺るがさないで。

振り払おうとも私の思考に彼との思い出がまるでフラッシュバックのようにチラつく。

顔を顰めて彼を見ると、なぜか祐樹くんの纏っていた武具にノイズのようなものが走り、明滅を繰り返していた。

 

「……っ、やっぱり自前で発動させると持続時間が短いし、安定しないか。やっぱりあの子のようにはいかない…な。でも『勇者』は気合と根性だ」

「祐樹、くん」

「…キミには帰るべき所がある。その場所を自ら壊すなんて真似は止めてくれ。笑っていられる場所に戻ろう」

「ダメ、やめて……聞きたくない」

 

いつの間にかこんなにも接近されていた。そのことよりも彼から紡がれる言葉を耳に入れたくなかった。

 

「どうしてそんなに私を気にかけるの。今も、昔も……どうしてそんなに優しい言葉を投げかけてくれるの?」

「これが僕の気持ちだから……かな」

「…っ、そんなのありえない」

「なんであり得ないなんて言えるの? 御役目に選ばれていない奴が、神様の理に逆らってまでこの世界に来てるのに? キミに逢いたいが為にここまで来たのに?」

「……みんなの意思や想いを踏みにじってこの世を破壊しようとする人間に普通はそんなこと言わない、から」

 

すぐに走れば届く位置。『満開』の持続時間ももう残りわずか。しかし私はこれ以上銃口を彼に向けることが出来ないでいた。

 

「世界に反逆しちゃう子でも、僕の気持ちは揺がないよ。道を踏み間違えちゃうことがあったら僕が手を引っ張って戻してあげる。それはきっと勇者部の人たちも同じ気持ちだと思う。友奈だってそうさ」

「…っ、ぅ。そんなに優しいことを言わないで。祐樹くんやみんなは強くても私は…あっ」

 

俯いていた頭に温もりが置かれる。今も昔もしてくれていた行為に私は少しだけ顔を上げた。にっこりと微笑んだ祐樹くんの顔が映る。

 

「そりゃあね、一人だとキツイかも。でも人は手を取り合っていける生き物なんだよ。僕の手をとって欲しい。いつだかと同じ、この手をもう一度」

「う、あ、あぁ……」

 

温もりに触れて、大好きな人から優しい言葉を言われたら堪えていたものが溢れてきてしまう。私はそのまま彼の胸に引き寄せられた。

 

「好きだよ東郷。大好きなんだ……だからそんな世界を終わらせるなんて悲しいことを言わないでくれ。生きて、生きて、生き抜いて…そして二人で、みんなで笑い合える世界を作っていこうよ。僕たちにはそうする権利があるんだから」

「祐樹く、ん……祐樹くぅん。うぅ、ひっく……ぁぁ」

「よしよし、いっぱい泣いちゃえ。今は僕しか居ないから」

「私も、ぉ……っ。あなたのことが好き。大好きなの! 例え記憶を失っても、もう一度あなたのことが好きになったの……っ。この愛おしい気持ちを本当は失いたくないっ」

 

私は曝け出す。心中に秘めた想いを彼に。私の気持ちは記憶を失おうとももう一度彼を好きになることができた。これはきっと『心』が忘れずに覚えていてくれたんだ。ううん、例え全て忘れてしまったとしても私は何度だって祐樹くんを好きになる。これだけは神様でも邪魔できないものだって断言できる。

祐樹くんの抱擁が強くなった。少し苦しいけれど嫌じゃない。私も負けじと彼を強く抱きしめる。

 

「……うん、その言葉をもらえて僕も安心したよ。でもまだ終わってない」

「そう、ね。ごめんなさい」

「謝らなくていい。それより……『満開』の時間は平気なのか?」

「…もうすぐ切れると思う。そうしたら私は『散華』による代償を支払わなければいけないわ」

 

なにを失うのか、それは分からない。もしかしたらまたこの記憶を失うことになるかもしれない。でも仮にそうなったとしてもめちゃくちゃにした罰としてはちょうどいいのだろう。

 

私の目尻から再び涙が溢れる。

 

「また全てを忘れてしまったとしても、祐樹くんに何度だって恋をするわ……けど、やっぱり忘れたくない。嫌だ、嫌だよぉ……怖いよ祐樹くん」

「安心して東郷。そんなことはさせないから」

「ゆ、祐樹くん…?」

 

胸に抱いていた私を離すと、改めて彼は私と向き直った。

 

「……まだ何処だろうが失う前なら間に合う。でもそう何度も使えるわけじゃないからそこはごめんだけど、僕に任せてよ東郷」

「なにを、するの……?」

「キミの『不具』を僕が肩代わりする。僕にはそれが出来るんだ。裏技みたいなものだけどね」

「そんな、こと……え? 祐樹くん」

 

理解が追いつかないまま彼の顔が徐々に近づいてきた。顔が瞬間に熱くなるのを自覚した頃には、私の唇は彼の唇で塞がれていた。

 

「んっ、んんっ……ちゅ、ん」

 

接吻を──口吸いを、キスをしている。それも向こうから、だ。直後に『満開』の接続時間が切れて元の姿に戻っていく。強烈な不安が押し寄せる。私はこの次には『何か』を失うのだ。でも、それでもこのままなら不安こそすれ怖くはないと思えた。

私も彼を求める。しかし来るべき瞬間はいつまで経っても訪れず、不思議に思った私はゆっくりと瞼を開けてみる。

 

────祐樹くんの身体が光を帯びていた。

 

視線だけ動かしてみると私の身体も僅かに輝いている。

ほんのり温かみのある、柔らかい光の数々が私から祐樹くんへ、祐樹くんからは私へと流れてお互い吸収されていく。そうしてその輝きも落ち着いてくると、彼は私から唇を離した。

 

口元から伸びる銀糸が名残惜しそうにお互いの橋として掛け合っていた。

 

「……んっ、これで大丈夫、かな。身体に支障はない?」

「え、ええ…大丈夫、みたい。祐樹くん、これは一体……」

「今はそれよりもアイツ……バーテックス・レオをどうにかしないといけない。僕のことはいいから、東郷はみんなと合流して撃退するんだ」

「うっ……み、みんなになんて顔して会えばいいのかな」

「それはもう仕方ない。潔く怒られに行くしかないなー……」

「祐樹くん……その、一緒について来てくれたり…しない?」

「この戦いから戻ったらね。僕も色々と謝りに行かないといけないし……一緒に叱られに、頭を下げに行こうか東郷」

「……祐樹くんが居てくれるなら、頑張れる気がする、わ」

 

二人で顔を見合わせてぎこちなく小さく笑う。祐樹くんの変わらない態度に私も暗い感情が薄らいでいくのが分かった。

 

「さぁ、行って東郷。僕はここでなるべく小型のヤツを減らすから……みんなを頼む」

「り、了解。でも祐樹くん散華の影響は本当に大丈夫なの?」

「まぁ命に別状はないから。さぁ、行って」

「………うん」

 

彼に促され私は心配ながらに友奈ちゃんたちと合流しに向かう。見た感じは疲労以外には不調そうには見えなかったが乃木さんのような例もあるから心のモヤは拭い切れなかった。

 

(うぅ……キス、されちゃった)

 

こんなことは今考えてちゃいけないのは分かるけど、どうしても唇に残る温もりが忘れられない。私と同じ気持ち……と言われ、そういう事なんだという実感が湧いてくる。

嬉しい反面、申し訳ない気持ちが溢れてくる。友達に、親友に酷いことをしてしまった。歩み寄って来てくれたのに、その手を払ってしまったことに私は罪悪感に駆られる。

 

「祐樹くん……」

 

進みながら後ろを気にする。一人で本当に大丈夫なのだろうか。私の『満開』の散華を肩代わり? してくれたおかげで本当に身体は何ともないが、それで彼に不調の類は見られないことが不思議だった。

 

(神樹様に供物として捧げる……じゃあ祐樹くんは何を捧げたの?)

 

疑問は尽きないが戦況は不安に揺らいでいる。私は自分の犯した罪を償うべく、そして一刻も早く彼に会う為に友奈ちゃんたちの元へと急いでいった────。

 

 

 




(夏凜ちゃん友奈ちゃん)出番奪ってごめんよ。

とまあ、壁は壊してしまったけど愛の力で正気に戻させる展開でした。
一部分をピックアップしてるので過程は色々あると思われるがそこは脳内補完で!(投げやり)
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