勇者たちをイチャイチャさせたい!   作:紅氷(しょうが味)

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story7-2『■■祐樹は■■である』

『御役目』を果たした翌日。

昨日は戦闘の後にそのまま現実世界に帰還をした流れで連絡先を交換し、僕たちは別れた。

多少の危ない場面もあったが、割とスムーズにいった今回の御役目に興奮が収まらなかったのか三人の会話は結構弾んでいたようだ。

 

僕もなんとか無事に『勇者』として力を発揮出来て良かったと安堵した。変身時の自身の変化には驚いたが。

終わって変身を解くと、元の自分の姿に戻ってこちらもまた一安心する。

 

『…なるほど。それはこちらで調べてみます。引き続きよろしくお願い致します』

 

と、そのことを時間前に『大赦』で訊ねてみたがやはり問題が解決することはなかった。

これもやはり男性勇者故なのか。

 

後は初戦での出来事を簡単に報告をすると僕はその場を後にする。

 

 

謎も謎めいたまま僕は次に集合場所に指定された『イネス』へと足を運ぶ。

三人は放課後そのままに集まっているようで、そこに後から僕が合流するという流れになっていた。

 

フードコートに赴くと見知った姿を視界に捉えた。

近づいていくとその内の一人がこちらの存在に気づいたようで、手を振って招いてくれた。

 

「あっ、ゆっきーだ!」

「おまたせ。またせちゃったかな?」

「高嶋さん! 昨日はお疲れ様でっす!」

「うん、銀もお疲れ様。須美も」

「は、はい。お疲れ様でした」

「ゆっきーわたしはー?」

「…おつかれさまー。はい、タッチ」

「タッチ~」

 

四つ席の一つに座って各々に挨拶を交わす。

三人の手にはある物が握られていた。

 

「それはアイス?」

「いえ、これはジェラートですよ高嶋さん。ウマイですよ」

「へぇ美味しそうだね。僕も買ってこようかな」

「はいはいゆっきー! あーん」

『!?』

 

園子の行動に一同が驚く。

銀はスプーンを口に咥えたまま目を丸くして、隣の須美は口をあんぐりと開けていた。

素知らぬ顔で園子はニコニコと差し出してきたのだ。

僕も面食らってしまうが、いち早く復帰して彼女に問いかける。

 

「え? もらっていいの園子?」

「もちろんだよ〜どうぞ♪」

「せっかくだからじゃあ……あむ」

 

一口いただくとメロンの風味が鼻腔を通り抜ける。

少し急ぎ足できたために丁度いいクールダウンだ。

美味しいよ、とお礼を言って二人で笑い合う。

 

「大胆だな園子は…」

「は、破廉恥だわ!? も、もう少し二人とも慎みを持ってもらわないと…」

「いやいやそれは言い過ぎでしょ須美さんや」

「で、でも三ノ輪さん!」

「ミノさん、わっしーどうどう」

「もとはといえば乃木さんあなたが!」

「まぁまぁ。そういえば銀は名前呼びにしたんだね」

「へ? あはは……はいっ! この方が親しみやすいかなーって」

 

なるほど。確かにこういった小さなところから親睦を深め合うのは悪い事じゃない。

園子も僕を含めてあだ名で呼んでいるようだ。

いや、それは元からか。

 

「…須美は二人のことは名前で呼ばないの?」

「え、えと…ちょっと恥ずかしいのでまだ」

「なに言ってるんだよ須美っ! 銀さんも園子もいつでもウェルカムだぞー」

「だぞ~」

「う、うぅ…まだ私には難しいわ!!」

「とまぁこんな感じなんすよ高嶋さん」

「まあそのうちに自然と呼べるようになるから、あんまり弄ってやらないように」

『はーい』

 

顔を赤くしている須美とその両隣で笑う銀と園子。その光景を見ているとこれからもうまくやっていけそうだな、と思う。

僕もジェラートを購入してから改めて席につく。その時に園子から一口頂戴とねだられたりして、そこから飛び火するように全員食べさせあいっこが始まったりするのだが割愛させてもらう。

 

「さて。腹ごなしも済んだところで少し報告したいことがあるんだ」

 

僕は呼んでもらったついでに報告をしておくことにした。

先日の戦闘について。

 

「昨日は初戦にかかわらず、ほとんど怪我というものもせずに終わらせることができた。流石神樹様に選ばれた勇者三人だね」

「へへ、照れますよ高嶋さん」

「それは祐樹さんの助けもあってです。まだお互いの連携に穴が見受けられるのでこれから要特訓ね」

「でもちょっと周りを気にしないで戦いすぎちゃったよね~」

 

園子の言葉に一同の視線が集まる。

 

 

「…園子は気がついてたか」

「どゆこと園子?」

「…あ」

 

次いで須美がハッと何かに気がついたようだ。

僕は鞄から資料を数枚取り出してテーブルに並べる。

 

「今回の戦闘による被害をまとめた資料だ。ここに来る前に大赦の人からもらったんだけど、家屋の倒壊が一件。規模が小さいけれど数カ所の山から土砂崩れがあった。幸いどこも人命に関わる被害は確認できなかったからそこはよかったと思う」

「そんな…」

 

驚きを一番に露わにしたのは須美だった。

お国のことを重きにおいている彼女にとってこの被害にはショックを受けたであろう。

銀も資料を手にとって読んでいくうちに目を見開いていく。

園子はとくに表情の変化は見受けられなかった。

 

 

「これは『樹海』にダメージが及んだ結果だと大赦の人たちは言ってた」

「…バーテックスの攻撃。水球処理が甘かった。私たちの武器による戦闘余波で『樹海』が傷ついちゃったんだよね」

 

園子が続けて言う。

 

「『樹海』でのダメージはそのまま現実世界で災いとなって降りかかる…誰もわたしたちを責めているわけじゃないけど、これを反省して次に活かしていくのも大事だと思うんよ」

「園子…見かけによらずちゃんと考えてたんだな」

「乃木さん…いつもほわほわしてて大丈夫かしらと思ってたけどそんなことなかったわね。ごめんなさい」

「んんー? 乃木さんちの園子さんは色々考えてますよ〜?」

 

ぽわー、とすぐにいつもの調子に戻る園子。二人もその様子で毒気が抜かれたかの如く固くなった表情が和らいだようだ。

僕はその一連のやり取りを見て驚き以上に関心する他なかった。

 

「…まぁ園子の言う通り。これをマイナスと捉えずに次に繋げていこうというわけで、僕たちはステップアップするためにも『特訓』することにした!」

「と、特訓…!」

「ですか?」

「おぉ〜」

 

一人目をキラキラ。一人納得、一人ほへーっといった感じ。

 

「場所その他は大赦が準備を進めてくれてる。早速明日の放課後からやっていくつもりだけど異論はない?」

 

僕の言葉に三人は頷いてみせる。

 

 

「じゃあ今日は英気を養うためにもイネスで遊びまくりましょー高嶋さんっ!」

「お、いいね! 賛成! そういえばあまりここには来たことないから色々案内してくれると嬉しいよ」

「任せてください! このイネスマスターこと三ノ輪銀さんが隅から隅まで案内してあげます!!」

「二人とも羽目を外しすぎないように。御役目人としての立ち振る舞いを……」

「いえーいっ!」

「乃木さんまで…はぁ。私がおかしいのかしら」

 

一人頭を悩ます須美だが、楽しめる時に楽しまなきゃ損だと僕は彼女に言う。

本来ならばこれが当たり前のはずなのだから。

フードコートを後にした僕たちは銀に案内されて様々な場所を見て回る。

 

「どうゆっきー? 似合うかなぁ?」

「フリルとか女の子らしくていいと思う。こっちのやつも良いんじゃない?」

「お〜。じゃあー着てみるー!」

「ちょ、ちょっと三ノ輪さん。私はあんまりこういう服は──」

「えーいいじゃん! 絶対似合うって!! 高嶋さんもそう思いますよね?」

「ん? ふむ、新鮮味があっていいかも…ならこの服も中々須美にも似合うんじゃないかな」

「ふぇ!? ゆ、祐樹さんまで何でノリノリなの!」

「あはは! いいっすねー!」

「それと銀にはこの服が可愛いと思うので試着してみたらいいと僕は思います」

「か、かわ!? てかこっちにまで矛先がっ!?」

 

服屋で擬似ファッションショーをしてみたり。

 

 

「…お! これは弟がテレビで見てたやつのオモチャだ!」

「へぇ…最近のは結構凝った作りしてるんだなー。変身ベルトか」

「高嶋さんはこういうのきょーみあったりします?」

「低学年の時とかにやってたやつならハマってたなー。勇者の変身するときもこういうやつでもカッコいいんじゃない?」

「あーたしかに! ポーズはこんな感じで!」

「いいねー」

「こ、これは…っ!? 瑞鶴の模型! かなり細密に造られてるわ…あっ! こっちは長門の──!」

「わぁー新しいサンチョの抱き枕だ〜♪ どれどれー…Z z z」

「ん? ちょっ!? 園子こんなところで寝るな!」

「須美っ! ちょっと園子を運ぶの手伝ってくれー!」

 

オモチャ屋で思いのほか盛り上がったり。

 

「──三ノ輪さんはもう少し本を読んだ方がいいんじゃないかしら? ほら、最近はこの月刊『日ノ本』なんておすすめよ」

「えー、歴史より漫画のがたのしーよ須美。高嶋さぁーん!」

「戦艦図鑑か…中々カッコいいな」

「えぇー高嶋さんが既に洗脳されてるだとー!」

「さっきの玩具屋で須美が見てて悪くないかなーって」

「…にやり。さぁ! 三ノ輪さんも祐樹さんを見習ってこの本をー! あっそれとも同じように戦艦モノがいいかしら」

「ひぃっ!? そ、園子! たすけ…っていないっ!?」

「乃木さんなら向こうの棚を見にいったわよ?」

「逃げたなー!」

 

本屋でそれぞれの好みの本を選んだりしてみたり。

 

「今日の記念に一枚どうっすか?」

「プリクラかー。うん、撮ろう」

「…こんなハイカラな機械に入るのは初めてだわ」

「マジで?」

「じゃあわっしーの初めてだね~! さっそく中に入ろー!」

 

ゲームセンターの傍らに設置してある機体の中に四人は入る。

照明に照らされた白い室内。須美はそわそわと落ち着かない様子だった。

 

「み、みんなは慣れてるわね」

「まー結構撮りに来てるよ。弟たちと撮ったり、クラスの人たちと色々」

「…流石三ノ輪さんね」

「ねえねえゆっきーフレームどれにしようか」

「このおすすめのやつは?」

「じゃあこれとー…」

 

須美と銀が後ろで話している間に、僕と園子が設定を進めていく。

どうやら須美は初めてのようだし絆を深めていく手段としては悪くないだろう。

 

「さて設定も終わったから始まるぞー」

「え? え? わたしはどうすれば」

「須美は初めてなんだから中央だな!」

「じゃあわたしはわっしーの横もーらい!」

「ちょ、ちょっと乃木さん! そ、そんなにくっつかれると恥ずかしいわ! み、三ノ輪さんまで!?」

「へっへー須美ってば結構抱き心地いいな。高嶋さんもどーっすか?」

「僕は男だし遠慮──って園子!?」

「みんなでわっしーをぎゅー!!」

「きゃあ!?」

 

三人が身を寄せ合っているところで後ろに並ぼうとしたところで園子に腕を引っ張られた。

つんのめって須美の肩にもたれかかるようになってしまったため、お互いの顔が近づいてしまう。

 

「祐樹さん……」

「ご、ごめん須美。すぐに退くから」

「い、いえこのままでも大丈夫です……はい。うぅ」

「そ、そう?」

「ほーら始めるぞー。須美、目の前のカメラに向かって笑顔笑顔っ!」

「ぴーすぴーす!!」

 

両脇の二人に煽られ須美は慌てながらもカメラのレンズに顔を向ける。

カウントダウンが始まり、そして────

 

 

 

 

「──はい。これが須美の分な」

「え、ええ。ありがとう」

 

無事に撮影も終わり、あれこれ済ませて印刷される。

それを銀が須美に手渡して彼女はその写真を見つめる。

 

四人でくっついた写真の他に、各々がポーズを決めていたりと様々なモノが一枚に収められている。

 

「これはシールになってるから端末に貼ってくれてもいいんだぞ?」

「そ、そうなの? でもなんだか気恥ずかしいわね」

「みんなお揃い~」

「だな」

 

僕や銀、園子は互いに顔を見合わせて笑い合う。

最後にみんなで須美に視線を集めると、彼女は頬を染めながらも小さく口角を上げた。

きっとこのチームならやっていける。そんなことを想いながら僕たちは今日という日を終える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後のある日。バーテックスが再び侵攻してきた。

須美、銀、園子は学校の授業中に『樹海化』が起こり三人はすぐに瀬戸の大橋に赴く。

 

するとそこには既に祐樹が待っており三人に気が付くと歩み寄ってきた。

 

「祐樹さん! バーテックスは?」

「まだ来てない────いや、ちょうど来たみたいだ」

 

『樹海化』した橋の向こうからゆらゆらと現れる。

以前に相手したやつとは異なるその姿に一同は意識を集中させる。

 

四人は端末を取り出し『起動』させた。

それぞれが勇者服に身を包む中、やはり彼の存在は少し違った。

 

「相変わらず高嶋さんは結構様変わりしますね」

「そうね…なんて表現したらいいのかしら?」

「ゆっきー女の子みたい~」

 

少女たちが感想を述べる中で、バツの悪そうな表情で祐樹は自身の様子を確かめる。

 

「か、からかわないでよ。僕自身も驚いてるんだからさ」

 

黒い髪は綺麗に赤く染まり、瞳の色も赤く変化している。

三人の『変身』とは毛色の異なるその姿に疑問が尽きない。

 

「…ほら! 僕ばっかりじゃなくてお出ましだぞ」

「おー、なんだか振り子みたいだねー」

「一体どんな攻撃をしてくるのかしら」

 

以前の敵と同じように浮遊しながらこちらに進んでくる。

 

「じゃあまずは手始めに僕と銀が──」

「先陣切って確かめてやる!」

 

銀の斧の持ち手と祐樹の小手をカチンと合わせて双方は走り出す。

園子と須美はその後を追随していく。

 

バーテックスは勇者たちの存在に気が付いたのか、速度は変わらぬままにこちらに近づいてきた。

先を行く祐樹と銀は二つに分かれて左右から挟み込むように接敵していく。

 

『おぉ!!』

 

根を蹴り飛び込んで一気に距離を詰めようとしたその時────

 

「ぐっ!?」

「うわっ!!?」

 

祐樹と銀はほぼ同時にバーテックスとは逆方向に吹き飛ばされた(、、、、、、、)

直後に吹き荒れる突風に後衛に居た園子と須美は顔をしかめる。

 

「祐樹さんっ! 三ノ輪さん大丈夫!!? …くっ、なんて風なの!!」

「……わっしー!!」

「え? きゃあ!?」

 

園子の呼び声で我に返った須美は園子に抱きかかえられていた。

その理由もすぐに自分たちの居たところに重石のようなものが通り過ぎていくのを肉眼でとらえたからだ。

今のを避けていなかったら直撃していたところを想像するにぞっとしてしまう。

 

「ありがとう乃木さん」

「どういたしましてー。でも…どうしようか」

「…ええ。まるで吹き荒れる嵐のようだわ」

 

距離を取ってもなおこの強風。近づくにつれてその風力は計り知れないものだろう。

これでは近づくことさえできない。しかしこのまま何もしないでいるわけにもいかない。

 

「……んー。嵐、いや台風かな?」

「乃木さん?」

「──ぴっかーんと閃いたぁ!」

「え?」

 

何か思いついたのか園子の表情はぱあ、となっていた。

 

「あのバーテックスを中心に回ってるならー…真上はほぼほぼ無風状態なんじゃないかな~?」

「あ! 確かに。あり得るわね……真上からならわたしの矢も届くはず…! でも、問題はどうやって近づけば──」

「それは私に任せてよ~。わっしーを無事に送り届けてみせよう! ──すう」

 

ニッコリと笑みを浮かべて園子は大きく息を吸い込んで、一気に吐き出す。

 

「──ミノさーんっ!! ゆっきー!!! あの重石を止めてぇ!!」

「……おぉ!! 任せろォ! 高嶋さんー!」

「銀ーー! 気張れよぉ!!」

 

吹き飛ばされた先から二つの影が雄たけびを上げ、二つの重石が回る軌道上に降り立った。

祐樹は拳を、銀は二丁の斧を構えて迫りくるその一撃とぶつかると重音が『樹海』内で響き渡った。

 

「ぐっ! おおァ!! 重いぃ……」

「ぐ、ぎぎ……勇者はぁぁ……っ!」

『──根性ォォ!!』

 

 

武具と重石の間に火花が飛び散り、強烈な遠心力による力に対して二人は気迫で迫る。

回転していた振り子はその瞬間動きを止めて嵐のような突風が弱まっていく。

それを見逃さなかった園子は須美を抱えて槍を逆手に構えその柄をを伸ばしてバーテックスの元へ向かう。

 

その間にも振り子は少しずつ動き始めた。

どうにか頑張っている二人だが、長くは保たないらしい。

 

「わっしー! 行ってっ!!」

「ええっ! ……南無八幡大菩薩ッ!!」

 

弓を構えその先に花の文様が浮かび上がる。

一矢は数百に分かれ、雨のようにバーテックスへと降り注いだ。

園子の推察通りに真上は無風に近い状態だったために矢は余すことなく敵の体を貫いていく。

 

「これで────仕上げだよ!」

 

斜めに一閃。完全に隙となったバーテックスに園子はその槍を振りかざす。

それで完全に敵であるバーテックスは停止した。

 

「わっしー受け止めて~」

「わ、わわ……っと! もう、危ないじゃない」

「えへへー♪」

 

先に着地した須美のもとに園子は彼女に身体を預ける。

慌てながらも無事に抱えてもらえた園子の表情は緩み切っていた。

 

(でも凄いわ。状況把握に作戦の思い切りのよさ……乃木さんは指揮官に向いているのかもしれない)

 

須美は内心で園子の評価を改める。普段の彼女とは想像つかないその一面に須美は感心するばかりだ。

 

「おーい! 須美、園子ー!」

「無事かー!」

 

遠くから二人がこちらに近づいてくる。

 

「みんなー!」

 

園子を降ろして須美は手を振って迎え入れる。

戦闘直後のためか、はたまた無事に終わったせいかその表情は晴れやかな気がした。

横にいた園子はそんな彼女の変化に笑みを浮かべて見つめていた。

 

全身ボロボロな二人のおかげでこうして比較的安全に敵の懐に飛び込めたのだ。

一人では決して出来なかった。だけどこうして仲間がいればその苦難も乗り越えていける。

 

「高嶋さん服、ボロボロっすね」

「キミこそ。盛大に吹っ飛ばされたもんな~」

「なっ! それはお互い様っすよー」

「だな。ははっ…!」

「あははっ!」

 

拳をぶつけあって勝利をかみしめる。

 

「二人とも! 帰ったらきちんと手当しないとダメよ!」

『はーい!』

「二人とも息ピッタリだね~。妬けちゃうなー」

 

にやにやと園子がからかう。祐樹は小さく笑って流すが、隣の銀は一瞬呆けたと思ったらその頬がわずかに赤みを帯びた。

 

「か、からかうなよ園子ー! 悪さするのはその口か~!」

「ひゃーー!」

「むぅ。なんでだろう……胸の中がもやもやするわ」

「……お、帰還するみたいだぞ」

 

二人のじゃれ合いを眺めながら、世界が花びらに包まれていく。

今回も無事に御役目を果たすことができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初夏の兆しが見え始めた頃。

日の入り時間も伸びて夕焼けが紅く綺麗に町を照らしている。

そんな風景を神社の階段から見下ろすように眺めていた。

 

「──ここに居たのね。高嶋君」

 

ぼうっと眺めていると不意に声を掛けられた。

 

「…先生。どうしてここに? よく僕がここにいるなんて分かりましたね」

「──探す手段はいくらでもあるのよ。それよりこれまでの戦闘は大丈夫だったかしら?」

「ええ。おかげさまで無事に御役目、できてると思います。まあ三人に助けられてる部分も多いですけど……本当は僕がみんなを引っ張っていかないといけないんですけどねー。そこだけは不甲斐ないかな、と思ってます」

「本来は選ばれるはずのなかったものと考えれば十二分にやっていると私は思うわ」

「ありがとうございます」

 

同じ横に並んだ彼女はそのまま階段に座り込む。

 

「本当は──」

「え?」

「本当はこんな『御役目』なんてあなたたち子供にやらせたくはない。大人たちで解決できるならそうしたかった。ただの先生と生徒で、君たちの成長していく様子を見ていたかった……」

「僕はともかくとして、あの子たちはそうですね……常に命の危険と隣り合わせなこの状況は彼女たちには酷だ」

「君もその中に入っている自覚は持ちなさいね」

「あいた!?」

 

額を軽くつつかれる。

 

「他の生徒たちのように気兼ねなく笑って、泣いて、喜んでいてほしいのよ先生からすれば」

「──僕たちは僕たちでちゃんと楽しんでますよ」

「…ええ。確かにあなたたちは仲良くやっているわね。だから私たち大人は精一杯サポートさせてもらうつもりよ。ご家族の方もそう思ってるわ」

「──両親とあったんですか?」

 

『家族』という単語に祐樹はわずかに反応を示した。

 

「──いえ。いつものように(、、、、、、、)電話でお話させてもらったわ。『息子はよくやっている』って褒めてたわよ」

「そう、ですか……他には何か言ってましたか?」

「…特には。『引き続き励みなさい』と、ご両親は言っていたわ」

「…………、」

 

それ以上は追及して来ずに祐樹は立ち上がって階段を一つ、二つと降りていく。

 

「ねえ高嶋君」

「…はい」

「何かあれば相談に乗るから。先生を……大人たちを頼りなさい」

「──ええ。もちろんですよ安芸先生ー。その時はよろしくお願いします!」

 

振り返ると先ほどの雰囲気は何処かへ消え失せて元の様子に戻っていた。

それでは、と祐樹は会釈するとこの場を後にしていく。

安芸は彼の背中を見守ることしかできない。

 

「そういう育ち方はあまり良くなんだけど……ね」

 

誰に聞こえるまでもなく虚空に消えていく。

 

(そういえば、高嶋君……なにか雰囲気が違っていた気が)

 

ふと、先ほどの彼の姿にどこかしら違和感を覚えたことを思い出す。

なんだったか、と数分の記憶を辿っていく。

 

夕日に照らされていたからか。はたまた別の事情故か、確かに違和感を覚えた。

気にかけていた教え子のことである。この感覚は間違っていないはずだ。

 

「……あの子。あんなに髪の毛赤かった(、、、、、、、)かしら?」

 

呟くように言葉にしたそれはまたしても誰に届くことはなかった────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ところどころオリジナル混ぜつつ進行していきます。(今更

ここで捕捉。

祐樹────少しづつ実践を交えて成長中。しかし何やら体に変化が…?

銀────祐樹と一緒に近接を担当。波長が合うのか中々の連携をする。たまにみんなから弄られるもまんざらではなさそうである。

須美────三人に手を引かれて、色々と連れまわされている様子。面食らう場面も多々あるようだが、親交を深めるために頑張っている。まだ名前予備は難しいようだ。

園子────陰の立役者。ほわほわの彼女も実は色々と考えているのだ—というのは本人の弁。三人と楽しく過ごせていてこの頃の機嫌は大変よろしいらしい。
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