ご意見ありがとうございます。
story1『デートをしよう』
午後の昼下がり。上里ひなたは思い悩んでいた。
カシャリとカメラのシャッターを切る音もいまいちノリが悪い。
その原因は現在進行形で道場にいる人物についてである。
「──はぁ!!」
「おォ!!」
道場内からその外まで響く竹刀の乾いた音と声。
幾度となく打ち合う中で相対する二人の額には大粒の汗が滲み出ていて、竹刀がぶつかると共にそれらは弾くように道場の床に散っていく。
若葉と祐樹。
どちらもひなたにとって掛け替えのない存在であり、若葉に至っては幼少時からの幼馴染という存在だ。
祐樹に関しては若葉と比べたら過ごしてきた時間は違えど、それでもとても良くしてもらっている男の子である。
そんな二人は今日も今日とて訓練に明け暮れていた。
「はぁ……」
上里ひなたは頬に手を当ててため息をつく。
普段ニコニコと笑みを浮かべている彼女に似つかわしくない動作。
その様子を視界の隅に捉えた両者は一度打ち合う手を止めて彼女の下に駆け寄った。
「どうしたのひなた、ため息なんてついて……?」
「らしくないぞ。何か悩み事があるなら私たちに話してくれ」
心配そうに声を掛ける二人に対して、ひなたはというと俯いてその表情は伺えないでいた。
そこに僅かながらの声が漏れる。
「────です」
『うん?』
プルプルと肩を震わせガバッと俯いていた顔を上げると、
「このままではダメですお二人ともっ!」
『……っ!?』
頬を膨らませたひなたに圧され何事かと一歩下がる祐樹と若葉。
心配していた相手が急に膨れっ面になっていたのだ。たじろいでしまうのも無理はない。
「なんですかもう! 来る日も来る日も訓練鍛錬と……! もっとこうお二人にはあるじゃないですかー!?」
「な、なんだ急にどうしたんだひなた? 私たちの稽古は有事に備えてのものだぞ」
「そうなんですけど……っ! 大切なのは分かっているんですがっ!! ………お二人は男女のお付き合いしているんですよね!?」
「改めなくても、僕と若葉は間違いなく付き合っているけど?」
「ああ、そうだな」
ダメだこの二人ー! と心の内で叫びながらひなたは祐樹と若葉の恋愛価値観の致命的なズレに戦慄する。
一般的にお付き合い…『交際』している男女のすることと言えば、休日に一緒にショッピングしたり、映画を見たり、水族館遊園地と選り取り見取りな素敵イベント盛りだくさんなことが外には沢山あるのだ。
(なのに若葉ちゃんと祐樹さんときたら、毎日毎日竹刀を打ち合い汗を流し合うばかり……何処ぞのスポ魂漫画ですかー!)
翌る日も代り映えしない二人の関係性にいい加減に静観していることが出来なくなったひなたはここで意を決した。
そんな彼女の様子を当の二人はおどおどと声を掛けていいものか躊躇っている。
「決めましたっ! お二人がそのような態度を取るなら私にも考えがあります!」
「ゆ、祐樹……ひなたがなんか怖いぞ? お前何かしたのか??」
「僕にもさっぱり……若葉こそなにか思い当たる節があるんじゃないのか?」
「こらー! ちゃんとこっちを向いてくださいお二人ともッ! 今日の私は雛ではなく鬼となります! ふんす!」
『ひっ!?』
ゴゴゴ、と黒い影を浮かばせながら微笑むひなたを二人は小さくなって震えるしかない。
「お二方には世間一般的に行われている『デート』をしてもらいますっ!」
『で、デート!?』
雷打たれたリアクションを取る若葉と祐樹だったが次の瞬間には疑問符が浮かんでいた。
「──デートってどうするんだ若葉? 訓練ばかりでその辺が疎くなってしまったよ僕」
「わ、私に聞くな祐樹! 男と付き合うなんて祐樹が初めてなんだぞ……私が分かるわけがないだろう」
「安心して若葉。僕もキミが初めてだから……」
「祐樹……」
「──なんでその雰囲気を即興で作れるのに、デートの一つや二つしないんですか!?」
お互いが頬を染めて見つめ合う様子をひなたは頭を更に悩ませてしまう。
しかしその手のカメラのシャッターを切るのを忘れずに。彼女も大概であるがそのことを指摘するものはここには一人もいない。
「もうもうもう! 分かりました! 私がプランニングしますのでお二人は汗を流してから待機していてください!」
駆け出したひなたはさっさと道場を後にした。
残ったのは状況をうまく飲み切れていない祐樹と若葉だった。
沈黙の中、二人は顔を見合わせる。
「……だ、そうだ祐樹。とりあえず私は汗を流してくるが」
「僕も行こうかな。なぁ、ひなたを怒らせちゃったかな?」
「……いや、あれはまぁ……そこまで怒ってないだろう」
◇
それからしばらく時間が経った後に二人の端末に連絡が入り、丸亀城入口にて集合するように言われた。
自室に待機していた二人は向かってみるとひなたが仁王立ちで出迎えてくれていた。
今日の彼女はなんだかやる気に満ち溢れているようだ。
「──急ごしらえではありますが一連のプランを立ててみたので、これらを参考にしてデートに行ってきてください♪」
ニッコリと笑みを浮かべながらひなたはそう言った。
「詳しくは端末に送っておきますので、そちらを確認してください。本当はこういうのもお二人自身で考えるものですが、超がつく初心者な二人がやっていてはこの敷地から出ることすらできないかもしれないので」
ひどい言われようである。
だがひなたの口からそう言わせてしまうほどこの二人の有様は酷いものであった。
あまりの無頓着ぶりに皆が心配してしまうほどだ。
「…ひなたの言う通りかもしれないな。少し気を張り過ぎてたのかもしれない……祐樹、すまなかった」
「いいって。僕こそほんとはこういうのは男の役目だから…よし、頑張って若葉をエスコート出来るように精進するよ」
「祐樹……嬉しい」
「若葉…」
「あれれ? お二人さん私がいること忘れてません? …でもこの絵も素敵なのでシャッターチャンスです!」
シャッターを切る音と共にひなたは続けて話す。
「取り敢えず恋仲なのですからまずは手を繋ぎましょう♪ こう、ぎゅ、ぎゅっと」
「て、手を…」
「繋ぐ…?」
ひなたの言葉にピクリと反応する両者は横目でお互いをチラリと確認する。
ばつが悪そうに若葉が口を開く。
「…なぁひなた。今やらないといけないのか?」
「もちろんです若葉ちゃん! ささ、グイッと!」
「…恥ずかしい」
「…っ!? あぁ♪」
ひなたは胸を締め付けられる光景を目にした。もう目をハートにしてキュンキュンである。
(あの若葉ちゃんが…もじもじしてますっ! 可愛いですよー!)
クールビューティな若葉が、あの若葉が両手の指を合わせて赤面しているではないか。
何度か近しい場面は目撃しているひなただが、今日のはまた一味違うと感じとった。
それはやはり異性という存在が多大な影響を及ぼしているおかげだとひなたは理解した。
こればかりは同性であるひなたでは出来ない芸当だ。
隣にいる祐樹も声こそ出していないが表情から察するに緊張と羞恥の色が見て取れる。
男性にしては童顔よりなのでこちらも大変絵になる。一枚写真を収めることにした。
「若葉、僕からいいかな?」
「……っ、あ、あぁこいっ!」
そろそろといった感じで祐樹は若葉の手元に手を伸ばしていく。
若葉も強張った手を伸ばして少しずつ距離を縮めていくと、やがて二人の指先がちょこんと触れた。
『……っ!!? 』
互いに肩を跳ねさせて驚く。そのせいで縮まった距離も再び元の位置に戻ってしまう。
祐樹は喉を鳴らして再度試みる。若葉も頑張って羞恥に耐え忍ぶ。
ジリジリと距離を埋めてまた指先が触れるが、今度は逃げずに済んだようでそのまま指先を絡めてキュッと小さく手を繋いだ。
ホッと肩をなでおろす二人。
「こ、これでどうだひなた!」
若葉が震える声でひなたにしてやったり顔で言い放つ。
(…いじらし過ぎます!! お手手繋ぐのにどれだけ時間かけるんですかー!?)
やはりひなたは悶絶していた。色々な意味で。
もちろんその一枚も忘れずに収める。記念すべき一枚なので逃すことはしない。
「…こほん、まぁいいでしょう。では私はここ辺りで後はカップル同士でごゆっくり過ごしてきてください♪」
「……いくか、祐樹」
「う、うん。いってくるよひなた」
「はい♪」
ひなたが見守る中、祐樹と若葉は指先だけ絡めた手で歩き出していった。
ニッコリと笑みを浮かべながら手を振り二人の姿が見えなくなったところでひなたは懐からある物を取り出して装着する。
「…ふっふっふ。こんなこともあろうかと変装グッズは準備してあるのです! さぁて、お二人の動向をチェックしていきましょう!」
黒いサングラスをかけたひなたは二人の後を追っていく────。
◇
『…………。』
無言のまま祐樹と若葉は道を歩いていた。
ひなたに急かされる形で始まった二人きりの”デート”だが、その始動はとても静かなものだった。
「……っ。どうした若葉?」
「い、いやなんでもない」
「そう?」
チラッと目線がぶつかるとお互いに視線を明後日の方に投げつつ二人は話す。
たがそんな二人ではあるが一度繋いだ手は離さないでいた。
なんだかんだ言って想い人と手を繋げている状況に無意識のうちに堪能していた二人である。
「な、慣れないから照れ臭いねこの状況は」
「同感だ…」
片方が握るともう片方が握り返してくれる。自身の熱とは異なる熱を受けてどうにも落ち着かない。
(鍛錬で若葉の手に触れることなんて何度もあるのに……暖かい。皆を先導する勇者の手じゃなくて、普通の女の子の……手、だな)
(……幾度とも触れている手なのに今日はとても大きく感じる……改めて考えると祐樹もやはり男の手をしてるな…)
言葉に出さず、共にその感触を確かめ合っていた。
だがこのまま一言もないまま過ごすのもどうかと考えて、若葉が思い出したように会話を切り出す。
「そ、そういえばひなたが考えたというプランはどういうものなんだ?」
「え? あぁ、えっと確かこの後は────」
空いた手で祐樹は端末を取り出して確認する。
────まずはお互いの距離を更に縮めるため若葉ちゃんが祐樹さんの腕に抱き着いて散歩すること。
「──んなっ!?」
プランその一を聞いた若葉は沸騰しそうなほど頬を朱に染め上げていた。
かくいう祐樹もその一文を見ただけで恥ずかしくなっている。
「こ、これはいきなり難易度高くないか!? ひなたのやつ何を考えているんだ」
「でもせっかく僕たちのことを考えてやってくれたわけだし、その……」
「祐樹はやられる側だからそんなこと言えるんだ! わ、私はそんなこと一度もやったことはないんだぞっ!?」
「嫌なら無理してやらなくても、いいと思う……ひなたもそう考えてるはずだし。僕はこうして手を繋いでるだけでも嬉しいからさ」
「うっ……卑怯だぞその言い方は」
うぐぐ、と眉間にしわを寄せて若葉は祐樹の腕を見やる。
目を伏せてため息を一つ吐くと、そっと身体を祐樹の腕を中心に預けた。
手は繋いだまま、今度は腕を絡ませて二人の距離はこれまで以上にピッタリと密着状態となった。
ドキマギと心臓の鼓動がうるさく聞こえてくる。
「こ、こうか?」
「……っとと、ちょっとこっちに自重預けすぎじゃないか? 歩きずらい」
「し、仕方ないだろ。勝手が分からないんだ……これぐらいでどう、だ?」
「──うん、これなら大丈夫。なんかさっき以上に緊張するね」
「……私は穴があったら隠れたいぐらいだぞ」
とりあえずひなたの指令通りに出来たところで二人はその状態で歩みを再開した。
(…うぅ。ひなためぇ……こんな状態だとすれ違う人に変な目で見られないだろうか?)
若葉はどちらかと言えば現状とは真逆に位置する少女である。
『私についてこい!』を地で行く彼女からすればこの行為は初めてのこと。するよりされるほうに慣れがある。
なのでこの状況は他人からの視線がとても気になってしまう。
(…若葉とこんなにくっついて歩けることになるなんて……ひなた様様だなぁ)
対して祐樹は腕に伝わる若葉の感触を堪能しつつひなたに感謝する。
思えば訓練、鍛錬続きでこういう普通の男女のすることを疎かにしていたことを今更ながらに後悔していた。
「……で、だ。このままこの周辺を練り歩くだけでいいのか?」
「ちょっと待って……ええっと、次は──」
祐樹は画面に映し出された文面を読み上げる。
「なになに……『充分に距離が縮まったところでショッピングに行きましょう! あ、遊園地でもどこでもおまかせします』だとさ……」
「最後が適当だな……ひなたらしいと言えばらしいが」
「うーん。遊園地とかだと今から行っても大して遊べないだろうし……ショッピング。買い物か……」
「なにか買いたいものでもあるのか?」
「まぁ、ちょっとね。丁度若葉の意見も聞きたいところだったし付き合ってもらっていいかな?」
「構わない、祐樹に任せるぞ」
「ありがとう」
小さく笑みを浮かべてから祐樹は若葉が歩きやすいように歩幅を合わせて歩き出した。
「────行きましたか。おっとカードを取り換えておかないとですね♪」
二人が去った後にひなたがこっそり背後から様子を伺う。
望遠鏡代わりにカメラのレンズをのぞき込んで二人を観察してみると、緊張の色は見え隠れしているがしかし楽しそうに会話を弾ませている姿を捉えた。
(…幸せそうですね若葉ちゃん)
照れながらも祐樹に向ける彼女の目はとても穏やかで、愛し慈しみに富んだものを含んでいた。
戦場に赴き、正義に溢れる眼差しとは真逆の────年相応の女の子の姿にひなたは不覚にもうるっときてしまう。
「…と、感傷に浸っている場合ではありませんね。今この瞬間もカメラに収めておかねば」
カメラをそちらに向けるとどうやら二人はどこか目的地を定めて歩き出したようだ。
その方角に向かう二人にひなたは小首をかしげた。
(あちらにはいくつかお店はありますけど……でもカップルで行くようなものはなかった気が…?)
はて、としばらくついていくことにしたひなたは物の陰に隠れながら二人の行方を見守る。
「……うん? 家電量販店、ですよねここは」
最近オープンした店舗であることはひなたは知っている。
風の噂では中々の品揃えであり少し気になっていたところではあった。
そんな場所に二人は真っ直ぐ店内へと足を運んでいく。
不思議に思いながらもひなたもそれに後をついていくことにした。
◇
「…ひなたと話していたが、結構大きい店なんだな」
「この辺じゃ規模は一番になったんじゃないかな?」
店内に入ると人もかなり来店していた。
祐樹の腕に絡んだままの若葉は目新しいさ故か目を輝かせているように見える。
なぜかこういう場所は無性に興味を惹かれてしまう。
「ところで何を買いに来たんだ祐樹。急な入り用なものでもあるのか?」
「んーとね、確かこっちのコーナーに…」
「そっちは……あぁ、なるほど」
若葉も気がついたようで納得した様子で祐樹に視線を移して薄くと微笑んだ。
「それで私の意見を聞きたいと言っていたのか……祐樹は優しいな」
「なんだかんだ言って色々とお世話になってるからねー。幼馴染の意見も参考にしようかなと」
「そういうことなら私も幾らか出そう。祐樹と同じで私も世話になっているからな」
「いやいや悪いよ。安い買い物でもないんだし。僕のわがままみたいなものだからさ」
「それこそ尚更だぞ。祐樹の胸の内にある感謝も想いも私とて同じなんだ。一緒に選んで買おう」
「…分かった。お願いするよ」
「ああ」
お互いに小さく笑いながら商品を選び始める。
そんな二人の様子を離れたところで確認していたひなたは少し困った顔をしていた。
(──まったくもうお二人とも。今日はお二人のための時間ですのに……らしいと言えばらしいといいますか)
真剣に選ぶ二人の姿を見てひなたは微笑を浮かべる。
先ほどと同等か、それ以上の楽し気な雰囲気を醸し出しているその二人の中にひなた自身が含まれていることが嬉しかった。
(これ以上は野暮でしょうね。ふふ……)
二人がなぜこの場所に来たのか、それが考えずとも解ってしまうのが上里ひなたという少女である。
嬉しさと愛しさを胸に秘めて彼女は踵を返して歩き出した。
後に、三人でのやりとりがまたあるのだがそれはまた別のお話。。
日も沈み、周囲の景色も薄暗くなってきて夜の顔が見え始めた頃。
二つの影が並んで帰路についていた。
「──いい買い物ができたな」
「若葉のおかげだよ。ありがとう」
「気にするな。しかしたまにはああいう店に赴くというのも悪くないな、意外と楽しかった」
「家電とかって買わなくてもついつい見ちゃうよね。さてと、次は──」
端末をポケットから取り出して祐樹がひなたの指令の確認をしていると、若葉が何食わぬ顔でのぞき込んできた。
その際に自然と祐樹の腕にからんでいる辺り、順応性が高いことが伺える。
祐樹は彼女の行動にドキリと脈打つがなるべく平静を保ちながら画面を注視した。
────さて、気分も距離も最高潮に達したところで夜景の綺麗なスポットで二人の甘い時間を……。
『…………、』
二人して無言で端末の画面を眺めていた。
「夜景か…何処か良いところはあるか祐樹?」
「んー……近辺だと丸亀城しか思いつかないな」
「私もだ。せっかくだから天守閣を登ってみるか」
「珍しい…いいの?」
あまり私用目的で城内を利用することに対して反対の意を示していた記憶が彼にはあった。
だからこそ訊ねてみたのだが、若葉は自嘲気味に笑う。
「祐樹と居て、ひなたやみんなと過ごしてきて私の中の考え方も変わってきてるのかしれない。思えばかなり頑固者だな私は」
「そこがキミの魅力の一つだと僕は思うけど?」
「はは。臆面なくそう言ってくれるのは祐樹とひなたぐらいだな」
徐々に見えてくる丸亀城を見ながら若葉は楽し気に笑う。
「……でも、今の自然に笑う若葉の方が僕は好きだな」
「よくもまぁそんなセリフがすぐに出てくるなお前は…いやそうじゃないな……ありがとう、で良いのか」
「あはは。わざわざ言い直さなくても分かってるよー」
「むぅ」
「い、痛い若葉」
小さく頬を膨らませながら若葉は祐樹の脇腹を小突く。
逃れようとするが、腕をがっしりと掴まれているのでされるがままの状態だ。
「…………。」
「む、無言で突かないでよ」
「骨付鳥!」
「わかったわかった! 僕の奢りで食べよう。好きなだけ頼んでいいから!」
「ふふん。なら許してやろう♪」
「むぅ」
腕に密着させる力を強めて若葉はご機嫌にそう言った。
先ほどとは逆に今度は祐樹が小さく頬を膨らませていた。
「さて、彼氏から許可も出たところでさっそく今から行こう祐樹」
「え、でも夜景は……?」
「まだ時間はある。それに二人で見るのもいいが……なんだか今日はひなたとも一緒に見たい気分になった。ダメか?」
「……いや、いい案だと思う。せっかくなら一鶴も一緒が良かったかもね」
「それは問題ないだろう────そこにいるんだろひなた?」
「えっ?」
若葉が徐に振り向くと、電柱に隠れるように体を隠していた人物が一人いた。
声を掛けられた本人はビクッと肩を跳ねさせて、かけていた黒いサングラスがズレてその顔が露になる。
「うわ、ひなただ!? え、ずっとついてきてたの?」
「バレてしまいましたかー、はい祐樹さん。若葉ちゃんは流石ですね」
「そもそもこのプランを発案したのはひなただ。正直、何か裏があるんじゃないかと思っていた」
「さすが幼馴染だけあるね…」
「そういうことだ。ひなた、話は聞いていただろう?」
若干どや顔の若葉は電柱の陰からでてきたひなたに問いかける。
「せっかくのお二人の時間にいいんですか?」
「もちろん。食事はみんなで食べた方がより美味しいからな」
「今回は僕のお金だけどねー」
「そういうことなら遠慮なくご馳走になりましょうか♪」
「即答かい!? っておっとと!!?」
若葉とは反対側の腕にひなたが抱き着いた。
「ひ、ひひひなた!? きゅ、急に何を──っ!」
「ふふ。せっかく殿方がエスコートしてくれるんですもの。これぐらいの役得はあっても罰は当たりませんよ祐樹さん♪」
「両手に華だな祐樹」
「い、いやキミはむしろ怒る側でしょ?!」
「そうか? ひなたなら私は構わないぞ」
「だそうですよ祐樹さん。ささ、お願いします♪」
「キミらはまったく……あぁ、了解した」
観念したのか両腕を掴まれた祐樹は、二人を連れて歩きだした────。
若葉と言えばひなた。
シチュエーション的には『初心カップルがどうやってデートをしていくのか?』をテーマに書いてみた。
まあ若葉当人からはその答えに辿り着きそうになかったのでひなたに頑張ってもらった感じに……。
キャラ的に動かしやすいですね彼女(笑
ご希望に添えた内容になったか分かりませんが、楽しめてくれたなら何よりです。
最後に、ラストの祐樹くんは爆ぜてもいいと思う。