勇者たちをイチャイチャさせたい!   作:紅氷(しょうが味)

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おいっちにーさんしー(準備体操

さて、行くか……( ˙-˙ )(白い砂山を見ながら


story2『お茶会』

◾️

 

 

 

丸亀城内に併設してある寮の一室。ぼうっと窓の外を眺める祐樹は特に何かするわけもなく暇を持て余していた。

 

「……雨だと何もすることないな」

 

呟くその先には曇天に覆われた空から止めどなく雨が降り注がれていた。天候はこのまま一日中変わることがないらしく、せっかくの休日が生憎の雨天となれば気分も幾らか落ち込んでしまう。千景とたまにやる狩猟ゲームも今日は友奈が部屋に遊びにきているらしくオフライン。他の面子も室内で有意義に時間を使っているに違いない。

 

「はぁ、何かないか……ん?」

 

何度目かのぼやきの果てに遂ぞ彼の部屋にも来客者が現れたようだ。コンコン、とノックされた扉に向かって「どうぞー」と促す。そこに現れたのは、

 

「…あれ、ひなた?」

「はい、祐樹さん。遊びに来ちゃいました♪」

 

ひょこっと顔を覗かせたのは上里ひなただった。はて、と小首を傾げて祐樹は疑問を投げかける。

 

「今日は若葉といるんじゃなかったの? ……って、すごい荷物だね。持つよ」

「少々予定を変更しまして。ありがとうございます」

 

ガサっとビニール袋やら紙袋やらと大荷物の彼女を招いて座布団に座らせてから、祐樹はお茶を用意する。

ニコニコと外の天気とは真逆な陽だまりのような笑顔を向けてくれてお礼を述べるひなたはそのままもらったお茶を啜った。

 

「…ふぅ、美味しい。祐樹さんの淹れてくれたお茶は格別ですね」

「出しておいて何だけど、よくある市販のやつだから味とか変わらないと思うけど?」

「そこはほら、気持ちの問題ですよ。祐樹さんが私の作ったお弁当を美味しく食べてもらっているのと同じ感覚ですね」

「いや、比べる対象が……んや、言いたいことは分かったけど。それで、何か用事でもあったっけ?」

「恋人に逢うのに大きな理由は必要ありません。祐樹さんに会いたくなっちゃったので遊びに来たんですよ♪」

「……そ、そう。僕もひなたが遊びに来てくれてとっても嬉しいよ。ありがとう」

「ふふっ……じゃあ両想いですね」

「両想いだね」

 

テーブルの上でお互いに空いた手をすすーっと伸ばした二人は指をちょこんと当ててから絡めあった。何かを確認するようにゆっくりと絡みつかせて指から手の平まで感じる温もりを噛みしめるように触れ合った。

 

「ひなたの手、ちょっと冷たいね」

「外が雨で気温も下がってますから。祐樹さんの手は私と違って暖かいですね」

「僕は今まで部屋の中に篭ってたからねー……それとひなたの手を握っているから心臓がドキドキして血流が良くなってるのもあるかも」

「えー、それは本当ですか〜? 祐樹さん言葉巧みに私を騙そうとするときがあるから信じられませんよー??」

「そんなことないから。ほら、もう片方の手でも確かめてみてよ」

「むむ、それは確かめないといけないですね。握ってみてください」

「もちろん」

 

本当はお互いに分かっていても、あえて分からないフリをしてその余韻を楽しむ。彼女が部屋に入ってきて数分と経たないうちに両手を握り合いながら会話をする二人の姿がそこにはあった。

にぎにぎ、と軽く握っては強めにしてみたり。自分がそうすれば相手も同じ動きで応えてくれる。それが楽しくて、それだけでも心が暖かくなって二人はクスリと微笑む。

 

「……そういえばこの袋たちの中身はなんなの?」

「はい、実はですね。あ、ちょっと片手だけ失礼して──じゃじゃん!」

 

絡めた両手の内の片方を名残惜しそうに離すと、ひなたは袋の中身をテーブルの上に並べていった。彩り豊かなカラフルな箱たち。それは様々な種類の『お菓子』たちだった。

 

「わー…凄い量だねまた。どうしたのコレ?」

「頂き物なんです。先日『大社』に出向いた時にお裾分けをもらいまして……これでも若葉ちゃんたちにもあげたんですよ?」

 

テーブルを埋め尽くしそうなほどのお菓子たち。祐樹はそのうちの一つを手に取る。

 

「へぇ……どれも美味しそうだね。じゃあ今日来た理由の一つはお茶会的な?」

「……迷惑だったでしょうか?」

 

不安げに祐樹を見つめるひなたに、首を横に振ってみせる。

 

「まさかそんなことない。こういうお菓子は久々に食べるから楽しみだよ。じゃあ飲み物もこれに合わせて用意しようか」

「私も手伝います」

「うん、よろしく」

 

こうして、何もすることがなかった一日は二人きりの『お茶会』に早変わりしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

備蓄していた炭酸飲料やジュースを用意して二人は隣り合わせに座布団に腰掛けてテーブルに向き合う。お皿にいくつか開封して中身を出してそれらを摘み、談笑に耽っていた。

 

「はい祐樹さん、バタークッキーですよ。あーん♪」

「あーん……うま。このクッキー好きかも。ひなたも一口食べてみなよ──あーん」

「あーん」

 

小さく開けたひなたの口に一口サイズのクッキーを運ばせる。サクサクと咀嚼しながら美味しそうに顔を綻ばせる二人は既に独自の世界を形成していた。

 

「祐樹さんはクッキーを食べるときリスさんみたいで可愛いですね」

「いやいやひなたには負けるって。ほら、こんなにもかわいーハムスターが僕の目の前にいるぞ?」

「はーむ……はむはむはむ。んふふ〜♪」

「もー…それダメ。ひなた可愛すぎるって」

 

祐樹の持つチョコスティックをモノマネしながら端から食べ進める姿に悶える。ひなたも楽しいのかノリノリで食べていくと反対側を持っていた祐樹の指先を咥えて更にはむはむしていた。

 

「ちょ、こらー。指は食べ物じゃないぞハムひなた」

「はむ。あむー……ちゅ」

「ちょ、指舐めちゃ……くすぐったいって。ほーれ、こっちにトンガリしたスナックがあるぞー?」

 

ふりふりと誘うようにスナック菓子を見せつけるとひなたはすぐさまそちらのお菓子を食べる。密着が増えて彼女の柔らかい身体が押し付けられて祐樹は更に心臓を高鳴らせていた。

 

「はは、ひなたって偶に甘えんぼになるよね」

「……私にだってそういうときはありますよ? 祐樹さんと一緒にいるとそうなってしまうことが多いですね。嫌じゃないですか?」

「嫌どころか大歓迎だよ。そのかわりじゃないけど、僕もひなたに甘えてもいいかな?」

「もちろんです。どうぞ♪」

 

抱きついていた祐樹から離れて今度はひなたが手を広げて迎え入れてくれる。こんな誘惑に抗えるわけなく祐樹は彼女の胸に身体を預けた。

 

「ふふ♪ 祐樹さんもやっぱり男の子ですね」

「だってこんなの卑怯だって……重くないか?」

「全然へっちゃらです。はい、じゃあお返しにチョコスティックを……あーん」

「あー……ん」

 

彼女の豊かな胸の中で食べさせてくれるお菓子は何倍にも甘く感じられた。此処は人をダメにしてしまう場所なのかもしれない。ひなたもどことなく嬉しそうにはにかんでいる。

 

「祐樹さんは私にメロメロのようです」

「ひなたが魅力的というか抱擁力が高すぎるから」

「あら、私は普段通りにしてるだけですよ?」

「でもそれだと他の人にひなたの魅力を知られちゃうのは…嫌だな」

「……じゃあ、この私は祐樹さんの前だけにしておきましょうか──はむ、んっ」

 

慈愛の瞳を向けてひなたはチョコスティックの端を咥えて祐樹に近づいた。言わずとして意図を察した祐樹はそのままひなたとは反対の端っこを咥えてゆっくりと食べ進めていく。

 

『…………、』

 

目を閉じてゆっくり──とはいかず、お互いに見つめあったまま折れないように、されど早る気持ちを唇に乗せて食べ進めていくといよいよ間隔はゼロに近づいてきた。

そして……、

 

「ん、ちゅ……」

「ちゅ、んむ……んっ、んん」

 

止まることはなく重なり合う唇。甘さと熱さがとろけて混ざって、一つになっていると知覚できてしまうほど、二人の気持ちは情熱に揺らめいでいた。

啄むようなキスはどちらかというまでもなく、ほぼ同時に離れる。

 

「…お味はいかがでしょうか?」

「…うん。甘くて溶けちゃいそう」

「なら、お口直しにビターなチョコレートを……はむ。んっ…」

 

箱に入っている一口サイズのビターチョコレートをひなたは半分口にして再び胸の中にいる祐樹の顔に近づけた。祐樹は餌を求める雛のようにそのもう半分を口に含んでその先に進んだ。

 

「ちゅ、ん……ん」

 

唇の間に重なるチョコは溶けて今度はほろ苦くコーティングしていく。けれど不思議なことに感じる味はとても『甘かった』。

 

「ふっ、ちゅぅ……ぷぁ。どうですか…祐樹さん?」

「おかしいな。どうしても甘く感じちゃう……それにもっと欲しくなっちゃう味がするよ」

「ふふ、私もです…だから、ね? 祐樹さん……まだまだお菓子は沢山ありますよ」

 

まるでそこに広がる光景は御伽話に出てくるお菓子の家のような、夢見心地の空間が広がっているように錯覚してしまう。抗うことなく、躊躇うことなく彼は甘味の渦に呑まれていく。それはひなたも同じ。

親友といる時とは異なる気持ちの心地よさ。それはチョコレートよりも全然甘くて、ひたすらに甘くてたまらない。故に求めてしまう。彼のことを。彼女のことを。

 

「今度は僕のところにおいで、ひなた」

「はいっ♪」

 

時折体勢を変えて、祐樹の腕の中にひなたはすっぽりと収まってみたりする。後ろから抱きしめられて彼の温もりを感じながら美味しいお菓子を食べさせてくれた。他の誰にも見せない二人だけの時間。この時間だけは親友にさえ……と思ってしまうほどに。この空間に限っては普段の大人びた二つの姿はなく、年相応の、無邪気に楽しむ男女の笑い声が確かに存在していた。

 

外の雨音をかき消して、鬱屈とした天気を晴らすように楽しむ。

 

「こうして上からひなたを見るのは新鮮だね」

「男の人の膝枕というのも、これはこれでアリかもしれませんねー。いえ、これも祐樹さんだからこそ……というのもあるでしょうが」

「今度は晴れた日に外でこうしてみるのも悪くないかもね」

「確かに! そのときは腕によりをかけて美味しい料理いっぱい作っちゃいますよ〜」

 

今回みたいなお茶会も良いが、外でのピクニックもまた楽しくなるだろう。ひなたの頰に手を添えながら祐樹は笑う。

 

「楽しみがいっぱいできるなーひなたと一緒にいると」

「いいではありませんか。でも祐樹さんに構いすぎてると若葉ちゃんに嫉妬されてしまうかもしれないですね」

「若葉は子どもっぽいところあるからな」

「そこが可愛いところなんですよ。そのときは祐樹さんがちょっぴり大変かもしれないですけどね……くすっ♪」

 

ひなたは添えてある祐樹の手を重ねて更に自分の頰に密着させながら微笑みを咲かせる。

 

「気持ちは分からなくないかな。ひなたが目の前で若葉にばっかり構ってたら嫉妬しちゃうと思うぞ」

「ある意味似たもの同士ですもんねお二人は」

「否定したいところだけど……って、きっとこう考えるのもおんなじなんだろーなぁ」

「はなまる大正解です」

 

指先で丸を作りながらひなたは眩しい笑顔を向けてくれる。それがからかわれている内でも祐樹にとってそれが大切なものであるというのは変わりはない。

 

ひなたは下から祐樹を見つめては口角を緩ませ、それを見た祐樹もまた彼女と同じような表情を作り出す。

 

「お菓子はもう食べないの?」

「沢山食べちゃいましたからお腹もいい感じなんですよね。今は祐樹さんと触れ合いたい気分です」

「じゃああっちに行こうか──ちょっと失礼して」

 

膝枕中のひなたの体勢を変えて今度は彼女をお姫様抱っこの要領で抱き上げた。ひなたも嬉しそうに彼の首元に腕を回している。そっと下ろした先にはいつも祐樹が使用しているベッドの上だ。スプリングが軽く軋み、ひなたの頰は僅かに色を帯びていた。

 

「ここなら沢山触れ合える」

「もう……今度は私が食べられちゃうんですか?」

「そうだなぁ……ひなたはそうして欲しい?」

「私はあなたをずっと一人占めしたいですよ。祐樹さんは違いますか…?」

「僕もずっと…若葉よりもたくさんひなたを一人占めしたい。独占したい」

「………いいですよ、祐樹さん──」

 

色香を漂わせながらひなたは祐樹の首に再び手を回して自身に引き合わせる。

仰向けに寝そべるひなたに跨った祐樹はそのまま二つの影を重ね合わせていった────。

 




ひなタンの霊峰に挑みたい。いや、包まれたい(願望

お菓子を食べていたらふと思いついたお話。ただそれだけや…。
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