勇者たちをイチャイチャさせたい!   作:紅氷(しょうが味)

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かなり出遅れてしまった……!
だけど書いたのでせっかくだから投稿しちゃいます!!



イベントの章
story─another『勇者部ハロウィン』


ここは勇者部部室。

今日はハロウィンイベントのため、部室内はその飾り付けが行われていた。

 

「友奈そこにこれ飾り付けてね」

「はいはーい! うんしょ……風先輩ここで大丈夫ですか?」

「おっけーよ! 次はこれとこれを────」

「あの、東郷先輩……そのかぼちゃの顔……」

「え? 良い出来でしょ樹ちゃん。我ながら傑作だわ」

「何で顔がリアルに彫られてんのよ! こわっ!? もっとこうあるでしょ可愛い感じのやつが!!」

「ええ~…にぼっしーこのかぼちゃカワイイじゃーん。ね、イっつん?」

「あ、あはは……そ、ソウデスネ」

「ちょ!? 被って近寄るなぁ!!」

「なんだこのカオス空間」

「お! 買い出しお疲れ様、祐」

 

扉を開けてみれば騒がしい一室となっていた。

真面目に飾り付けをやっているのは友奈と風で、残りの面子は東郷が相変わらず暴走気味なのは平常運転として、園子が彼女の彫ったカボチャ(怖)を被り夏凜に迫っていた。

樹はどうしたらいいのか分からず苦笑を浮かべるばかりで、ついには隙をつかれた東郷にカボチャを被らされていた。合掌。

 

僕は頬が引きつるのを自覚してしまうほど、目の前の光景に釘付けになってしまうがそれも近寄ってきた風によって現実に呼び戻された。

 

「ケーキは何処に置いておく?」

「そこのテーブルに置いておいてー! おっ! カワイイお菓子がいっぱいだわ」

「せっかくだからねー。色々買ってみたよ」

「助かったわ。ありがとね祐!」

「うん。風と友奈も飾り付けご苦労さま」

「祐くんもありがと~! はい、ジュース」

 

友奈から紙コップを受け取り中身を飲み干す。

 

「ちょ、ちょっと祐樹! このカボチャたちなんとかしなさいよ!」

『おうおうおう! 悪いにぼっしーはいねーがー!』

『が、がー!』

「ふふ、二人ともはしゃぎすぎだわ」

「……ほい、そこまでにしとけ園子」

 

こちらに走ってきた三人。

僕は近くに来たカボチャの一つを頭から引っこ抜いた。園子はあっ、と残念な声を漏らしていたがそんなに気に入っていたのだろうか。

カボチャを回してその顔を見ると、

 

「──こわ!? なんで般若の顔に彫ってあるんだ……って東郷作かコレ」

「祐樹くんに褒められたわ……嬉しい」

『今のって褒めたのでしょうか?』

「わっしーも今日は脳内ハロウィンだからねぇ……」

「樹ちゃんもぼしゅーします」

「わ!? す、すみません祐樹先輩!」

「助かったわ祐樹…」

「こらー! あたしたちばっかりにやらせてないで作業手伝いなさーい!」

 

風の言葉に皆一様に返事をし、残りの作業に取り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、状況を整理しよう。

場所は変わらず部室の中だ。飾りつけも騒がしながらなんとか終わり、とても雰囲気はそれらしくなった。

さあパーティーの始まりだ、というところで僕は皆に取り押さえられた。

 

────何を言っているかって? いや、僕にも分からない。

 

椅子に座らされ、手を後ろ手に縛られて目隠しをされている。足は縛られてはいないが目元が見えないために不用意に立ち上がると転ぶ可能性があるのでやめておくが、なぜこんな状況になってしまったのだろうか。

僕の意識の外では何やらガサゴソと皆が何かをやっている。風には絶対に目隠しだけは取るなと言われていた。

 

「あのー……みんな何をしてるのかな?」

「ま、まだ駄目よ祐樹! ってこら園子!」

「ゆっきーがこうなってるのってなんか新鮮だぁ。なんかイタズラしちゃおっかな~♪」

「ま、待てなにするつもりだ」

「ん~どうしよっかなぁ。ちゅーしちゃおっかー」

「な、ちょ……マジで!?」

「祐くんお顔真っ赤だ~かわいい」

 

両頬を恐らく園子の手で抑えられているため変に意識してしまう。

あたふたとしているのが伝わってしまったのか、こうして面白おかしく弄られてしまっていた。

耳元で友奈が囁くように言葉を発するせいかこそばゆいし、それぞれの声の距離が近い気がする。

 

 

「ちょっと抜け駆けしないでってば!! 早く園子も着替えなさい」

「私はもう終わったよ~」

「着替える? ちょっと待てキミたち今着替えて──ってうわ!?」

「あ、危ない!」

 

まさかの状況に僕は驚いて椅子からひっくり落ちてしまう。

後ろにいた友奈が僕を抱えるように一緒に倒れこんでしまう。その時に僕の目元にあった目隠し用の布の結び目が解けてしまった。

 

「いてて……ご、ごめん友奈大丈夫……か?」

「わたしは大丈夫だよ! ……あ」

 

視線が合う。タイミングが悪かったのか一部着替え途中の人間と目が合ってしまった。

後ろから抱きしめている友奈は分からないが、目の前の園子はなぜかメイド服で着替えはほとんど終わっている。それでもある意味では目に毒だが…。

更にその後ろが、肩をわなわなと揺らし震えていた。風たちなんて上を着替えている途中だったのか下着が見えてしまっている始末。

 

「ゆ、祐の変態! ばかぁ!!」

「ご、ごめんなさい風……夏凜、く、くるし…!? 東郷たすけ──」

「男の人に……祐樹くんに肌を見せてしまったわ…これはもう契りを交わすしかないわね。うん」

「祐樹ぃ!! 忘れなさい! 今すぐにっ!!」

「ゆっきー…みんなばっかりじゃなくて私もちゃんと見てほしいなぁ」

「あ、園ちゃんずるい! わ、わたしだって祐くんにギュってする!!」

「せ、先輩方ずるいです!! 私も!」

 

もうなにがなんやらもみくちゃである。後ろと前が苦しさと柔らかさといい匂いとさまざまな情報に僕の脳は処理が追いつきそうになかった。

することといったらもう目を固く閉じるしか抵抗出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一先ず収集をどうにかつけてもらい、僕は改めて椅子に座らされた。

変わらず手は縛られたままである。解せない。

 

「こほん。まぁこれでやっと始められるわね」

「風…手のこれ外して…あ、はい黙ります」

 

僕の懇願は彼女の眼差しで黙らされる。気にしているのか、その顔はほんのりと赤みがさしている。

先ほどとは違い僕を囲むようにみんなに立っているためか威圧のようなものがすごいのなんの。

 

「ところで、祐。あたしたちの格好みて感想とかないのかしら?」

「か、格好…」

 

風は少し気恥ずかしげに身じろぎする。

彼女の今の格好はマントに三角帽子を被った魔女スタイル。

胸元が開けているためかセクシーさも兼ね備えたその装いに目線を合わせられない。

 

「に、似合ってます…本当に」

「──あ、ありがとぅ…」

「急にラブコメ始めたわこの二人。まったく…鼻の下のばしちゃって」

「ゆっきー! トリックオアトリートだよ〜。今日の勇者部はみんなお菓子をくれない子を襲いかかるお化けなの」

「だからお菓子をくれないとぉ…」

「…イ、イタズラしちゃいますっ!」

 

園子をセンターに両側の友奈と樹が続けて口上を述べた。

いやほんとどういう趣旨なのか理解が追いつかない。

 

友奈と樹はお揃いの衣装みたいだが、普段よりかなり肌の露出が激しい気がする。

黒をベースで、髪飾りもコウモリのデフォルメした可愛らしいもので、違った印象を抱かせる。つけ牙もつけてこれはドラキュラをイメージしているのだろうか。だとしたら一つ疑問がある。

 

「…なぜ猫耳がついてるの?」

「にゃ? 可愛いからだよね樹ちゃん」

「は、はい! えっと……ヘンじゃにゃいかにゃ?」

「へ、変じゃないというか。うん、可愛いや」

 

だそうだ、うん。二人は僕の言葉に顔を赤くしながらも喜んでいるしいいよね。てかその耳動くんだ…。

園子の隣にいる東郷がグッと親指を立てていた。やはりあの人か。

そのまま二人は僕の両脇に配置すると、それぞれが僕の二の腕に身体を密着させてきた。

秒で僕の頰は熱を持つ。

 

「祐く……いや、我が眷属よ! わたしたちにお菓子をよこすのにゃ!」

「さ、さもにゃくばお主の血を頂こう! さぁせんぱ……いや、眷属よ」

 

二人は役になりきるつもりか口調も変えてきた。

以前に演劇をした成果が無駄に出ているようで複雑な気持ちだ。

…というか待ってほしい。

 

「僕はこの格好じゃお菓子あげられないんだけど?」

「…そうか、お菓子を持ってはおらぬのか」

「にゃらば仕方あるまい…フフフ」

 

それぞれの顔が僕に近づいてくる。お菓子を上げないとイタズラするぞ、という言葉を実行に移すつもりだ。

何をするのかとある種ドギマギしていると息がかかるくらいの距離まで詰められ、僕の首元にその口を当てられた。

 

「うえ!? ちょ、ちょっと友奈、樹ちゃ……んん!!」

「ちぅ……うむ」

「はむ…」

「く、くすぐったい……あ、っく」

 

快楽にも似た感覚に襲われる。なんだこれ、と頭の中はパニック状態に陥っていた。

 

「や、やめ…てくれ二人と…も!? ひは…っ!!」

『……♪』

 

 

反応が楽しくなってきたのか二人は愛おしげに甘噛みをしていく。時折強く吸われこのままじゃ痕がついてしまう。

側から見たらすごい絵面なんだろうなぁと、何処か他人事のように考えながらされるがままでいる。

 

「なんだろう…ゆっきーがエロい」

「二人とも大胆じゃない!? …うわ、うわわ」

「ぐぬう……妹に先を越された!」

「はぁ…はぁ……高画質で録画しておかなくちゃ」

 

各々が反応を示す中、それでもやめる気配がなく数分。ようやく解放される頃には僕はぐったりと息を荒げて倒れるように座りなおした。

 

『ごちそうさまでした!』

「はぁ……本当、に……なにか吸われてしまった気がする……」

「なら次は私だね~。はい、ゆっきーあーん」

「なにを──んぐ!?」

 

園子が有無を言わさず何かを僕の口に差し込んだ。

視線を落とすと、それは棒状のチョコでコーティングされたよくあるお菓子。

 

「ゆっきー食べちゃダメだよ。あーむ……」

「…………!!」

 

片方は僕が咥え、もう一方を園子が咥えた。

そして彼女はそのまま食べ進め始めた。棒が折れないようにゆっくりと。

 

園子の整った顔が迫る。ほんのりと頬を朱に染め、瞳は閉じている。これではまるでこれからキスをするみたいじゃないか。

流石にまずいだろうと口元を離そうとした瞬間、ガっと僕の顔を彼女の両手に掴まれる。

 

に、逃げられない…!

どこからこんな力がでているんだとツッコミを入れたいが口は塞がっているので無理だった。

 

「ん~♪」

 

距離がどんどん縮まっていく。そしてゼロになる────の前にポッキーはパキッと折れてしまった。

 

「あー……あとちょっとだったのに~」

「はいはい! これ以上はダメよ園子」

「ぶーぶー! もっとご主人様にご奉仕するのー」

「あんたそのままやってたら歯止めがなくなるでしょ」

「…………、」

 

僕の気力は果たして保つのだろうか。

 

「──ならば次は私ね」

「東郷……さっきからずっと気になってたんだけど」

「なにかしら祐樹くん? 私もそのっちみたいにく、口移しであげればいいのかしら?」

 

流石に刺激が強いのでやめてください。断ると少しだけ頬を膨らませて不満げの彼女がそこにいた。

じゃない。彼女の顔に貼ってあるあるものが気になっているのだ。

 

「──そのお札、なに? というかその格好はまさか」

「ええ、キョンシー(、、、、)よ! 最初は落ち武者みたいな感じで行こうと思ってたのだけど、夏凜ちゃんと被ったら悪いと思ってやめておいたわ」

「ねえちょっと東郷その件について話があるんだけど……って風! 離しなさい!! 納得がいかないわッ!」

「落ち着きなさい夏凜! どーどー!!」

「うん? 変な夏凜ちゃん……ちなみにお札には『ぼたもち』って書かれているのよ♪」

「いやいや。僕はその単語をこんな書き方しているのは初めてみたよ」

 

誰だこの子にへんな知識を吹き込んだのは。

視線を巡らせてみると、あからさまに目を逸らされた一人のメイドが視界に収まった。

 

────ああ、彼女なら納得した。

 

僕があきれ返っていると、東郷はおもむろにこちらに近づいてきた。

移動方法はあの手をまっすぐ伸ばしながらぴょんぴょんしてくるあの歩行で、だ。

 

ツッコミは山ほどあるが言えなかった。それすらも霞んでしまう光景が目の前に広がっていたためだ。

 

東郷が小さく跳びながらこちらに来る。その度に彼女の象徴たる二つの戦艦が凄いことになっていた。

普段の時もあまり意識しないように心がけていたが、衣装がまずい。身体のラインを象徴してしまう服を着ているから余計にヤバイ。

 

彼女が跳ぶ。メガロポリスが揺れる。僕を含めた全員の首がそれを追うように揺れる。

東郷は役になりきっているためかそのことに気が付いていない。変わらず揺れる、ゆれる、ユレル……。

 

「──あっ」

 

あと数歩、というところで彼女はあろうことか自分の足で躓いてしまった。

そのまま僕の方へとダイブされる。また後ろに倒れてしまう僕。後頭部が痛い……。

 

「ご、ごめんなさい祐樹くん! け、怪我はないかしら」

「う、うん大丈夫だよ東──郷──っ!!!?」

 

僕の上に倒れこんだ彼女のメガポが僕の胸板に押し付けられていた。

想像だにしなかった感触に僕の思考回路は考えるのをやめた。──説明不要、というやつだ。

東郷は知ってか知らずかホッと一安心している様子。

 

「あ、そうだ祐樹くんにハロウィン用のぼたもちを作ってきたのよ。よかったら食べてくれると嬉しいわ」

「ああ……も、もちろん食べるとも。で、それはどこに──」

「うん、それは……ここに」

「──っ!!?!!」

 

ちょっとこの子の暴走誰か止めてください!

東郷は牡丹餅をあろうことか双丘の谷底から引っ張ってきたではないか。信じられない。いや、うん。食べる前からごちそうさまです。

いや、そうじゃなくて…!

 

曰く、キョンシーの演技をしていると両手を動かせないからどこに待機させておいた方がいいのか、と考えたらこうなったらしい。

うん。……うん。

 

「さ、遠慮せずに食べて——」

「流石にやりすぎだァ!!」

 

スパーン、と乾いたイイ音を響かせながら、東郷の頭上にハリセンの一閃が迸った。

東郷、轟沈。

 

「まったく、加減ってものがあるでしょう。祐、大丈夫かしら?」

 

背後から僕を起き上がらせてくれる勇者部部長。

その格好こそアレだが、この時の僕は実に頼もしく見えてしまった。

 

「ったく……祐樹、普通にテーブルで食べましょ」

「そうね。おふざけもこの辺にして元の健全なハロウィンをしましょー」

「……あ、ああ」

 

眩しい。なぜだがその普通の対応が眩しく思えた。まさに曇天に差す一筋の光明の如く。

心身ともに疲弊した僕はよろよろと二人の間の席に腰を落ち着かせる。

 

「疲れたでしょ。食べさせてあげるわ……はいっ」

「うん──あぁ、甘くて美味しい」

「ほら祐樹、こっちも」

「あーん」

 

奇をてらうのも悪くはないが、これも悪くない。

もぐもぐと口を動かし、甘味に舌鼓を打っている中で他のメンバーはしまった、と風と夏凜に戦慄を覚えていた。

 

「ねえ祐樹。誰の奉仕が一番だったかしら?」

「夏凜と風だなぁ……ああ、二人の優しさが身に染みる」

「ふっ……当然よね」

 

弱っている彼に優しくすることによって、好意を抱かさせるという恋愛誌にも記載されているアレをやってのけたのだ。

流石は勇者部部長と完成型勇者。

 

騒がしい一日は過ぎていく。

 

 

 

 

 

 




はちゃめちゃを書きたかったから書けて満足。

祐樹もげてしまえ←
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