Fate/Grand Order 劇場版幕間の物語   作:部屋ノ 隅

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ジャンヌ・ダルク編

・地の文 要所のみ
・一人称


ジャンヌ・ダルク編
ジャンヌ・ダルク編 序章


 

 

紅い。なにもかもを燃やし尽くす地獄の火が、足下に灯った。

 

 

身動きは出来ない。地面にしっかりと打ち付けられた巨大な杭に体を縛られ、動かせるのは頭と視線のみだ。

 

まったく興味が沸かないものの、それ以外のことが出来ないので退屈しのぎとばかりに辺りを見渡してみる。

 

 

 

 

人が焼き殺されるさまを見て楽しむ者がいた。

 

それを窘める自分の偽善に酔う者がいた。

 

無自覚のまま、この処刑が招く混沌に愉悦を抱く者がいた。

 

淡々と警備をこなしつつも、どこか優越感を抱く兵士がいた。

 

憎悪に侮蔑、悲観や狂喜の視線を向ける者がいた。

 

感情のままに罵詈雑言を浴びせてくる者がいた。

 

 

 

 

それに対して憎悪の感情は無い。あるとは悲観と、自分が信じる主への祈りと願い。

 

そして――自分を信じて力を貸してくれた、祖国の仲間達へむけるお礼と謝罪の言葉だ。

 

 

火が迫る。最初に服が燃え落ち、次に肌が焦げてゆく。焦げているのに、痛みが無い。

自分の肌が熱で溶け落ちてゆくという不快感が、まぁあるくらいだ。

 

――当然だ。この光景は、ここで自分が見たものでは無い。

 

優しい色をした美しい金髪にも火が付き、一瞬で灰になってゆく。

 

――だって、これは夢だ。彼女の記憶がみせる、胡蝶の夢。

 

そして、自分の全てが火に捲かれるより前に、煙で息が出来なくなって。

 

――悲観と祈り、お礼と謝罪の言葉も、当然自分が抱いたそれではない。

全て、全て彼女のものだ。だからどこまで行っても、自分はそれを人ごととしか感じ取ることが出来ない。

 

彼女は、死んだ。自分の全てが灰になる前に、一つの生物として終りを迎えた。

 

 

だから、ここからが……本当の意味で自分の夢。

 

 

その後、彼女の体は文字通り全てが灰になるまで焼かれ続け、最後には墓にも入れられず、灰を川へと捨てられる事になる。

 

それが忠実。それが歴史。それが正史。

 

その全てを見届けてようやく心が帰ってくる。

ようやく一つの感想を抱くことが出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――どうして、彼女一人が死んでしまったのだろうか、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

201○年 ○月×日 人理継続保証機関――フィニス・カルデア――管制室

 

 

 

レオナルド・ダヴィンチ「んー……やっぱり何度考えても不思議だねぇ。大変なことだと分かってはいるけれど、とても興味深い。

 

特異点なら今まで幾らでも解決してきた我々だが、今回みたいな例は初めてだ。仕組み自体は単純なんだろうが……どうしてこういう事になるのか、その理由が見当も付かないよ。

 

あ、ムニエル。彼らが来る前までに纏めておいてって言ったレポートは? 丁度出来たって? OKOK、素晴らしい速さだ、ダヴィンチちゃんスタンプを押してあげよう

 

……お、噂をすればってやつかな。良いタイミングだね」

 

マシュ・キリエライト「はい。マシュ・キリエライトならびにマスター・藤丸(ふじまる)香立(こうた)。ただ今到着しました」

 

藤丸香立「で? 今度はどんな厄介ごと? 姐さ……マルタとの訓練を態々振り替えて貰ったんだから、これで変な用事とかは勘弁願してもらいたいんだけど」

 

「ハハハ、大丈夫大丈夫。ちゃんとした特異点(やっかいごと)だ。

このカルデア唯一のマスターである君に頼らなければいけないほどの、ね。しかし……」

 

「な、なんだよ」

 

「いやなに。君も本当によくやるねぇ、と思ってさ。……昨日は小次郎と剣戟。一昨日は李書文と太極拳の稽古。その前は……」

 

「ゲオルギウスさんと聖人に関しての魔術授業。さらにその前はマルタさんとの実戦訓練ですね。

……正直、見ていてハラハラしてしまいます。加減を知らない方が非常に多いので、先輩がいつも――」

 

「大丈夫だって。ベオウルフなんかも、最近はスゲー手加減が出来るようになったし。凄くねぇか? バーサーカーなのにぶっ飛ばされても「かなり痛い」ですむんだぞ?

 

最初に模擬戦してもらった時は、肋骨四本が一撃で折れたのに。それでもメチャクチャ手加減してくれてるんだろうけど……あ、マシュもコーヒーいるか? 砂糖とミルクは三つずつだったよな」

 

「あ、すみません。いただきます……私がまだ戦える状態であるなら、意地でも先輩の訓練に参加してみなさんがやり過ぎないよう見張るんですが……」

 

「これだけ英霊がいるんだから、なにか力の一つでも得られたら――って思うのは分かるけど、本当に飽きないねぇ。

 

マルタは勿論、みんなからも毎度毎度ボッコボコにされてる癖に」

 

「いやまぁ、他のみんなは兎も角、姐さ……マルタからはボコボコにされ慣れてるし……」

 

「あの、先輩……サーヴァントのみなさんに、以前の問題として、ボコボコにされ慣れるようなこと自体があまり一般的とは……いえ、訓練だと言うことは分かっているんですが……」

 

そうかな? と思った藤丸は、自分が姐と慕うとあるサーヴァントとの訓練を思い浮かべてみる。

 

 

素手でボコボコにされ

十字架(と言う名の武器)で物理的にも魔術的にもボコボコにされ

宝具(タラスク)に追い回され

他のみんながいる場所で姐さんと呼んでボコボコにされ

ありがたいお説教で(主に精神を)ボコボコにされ……

 

 

「……割と普通じゃない?」

「……」

 

「まぁ兎に角、事態を説明しよう。事の発端は今から……あ~……断定は出来ないが「正確な方」から話そうか。

 

一週間ほど前、このカルデアから何名かのサーヴァントの反応が消失したのは知ってるね?」

 

「はい。ルーラー・ジャンヌ・ダルクさんを筆頭に、彼女のオルタさん。デオンさんにアマデウスさん。

サンソンさんにナポレオンさんにファントムさん。巌窟王さんにセイバー・並びにキャスターのジル・ド・レェさん。それと、キルケーさん。以上十名の方々の行方が分からなくなったと」

 

「最初に聞いたときから分かっていたけど、フランス勢多いなぁ。まさかみんなして里帰りでもしてるって訳じゃあないだろうし……」

 

「その通り。ほぼ全員がフランスと関わりがあるサーヴァントさ。

ここまで来ると、流石に全員が全員お役御免と座に帰った訳じゃああるまい。」

 

「故に、私達もカルデアスとシバを使って過去と未来、それから念を入れて今のフランスの歴史を洗い出し続けた。正直、特異点並びにそれに近しい現象を見つけるだけなら楽勝だと思ってたね――けど」

 

「けどなんだよ?」

 

「見つからなかったのさ。特異点はおろか、微弱な異常反応も無し。まさに「世は何の事も無し」って感じだね。

 

もしかして「(ほぼ)フランスのサーヴァント」ってだけで、場所は関係ないのかもしれないとすぐに星全体の検索に切り替えたんだけど……こっちもまるではずれでさ」

 

「……では新宿や、先輩が夢から行った下総国みたいな「この世界に直接影響を与えるような場所では無い」と言うことですか?」

 

「それも考えはしたけど、その場合、我々は本格的に後手に回らざるをえないから放置。もし仮に特異点が観測できたとして、向かう方法が無い以上はどうしようもないからさ。

 

でもな~んか私の天才センサーに妙な感じがしてねぇ。なにせメンツがメンツだろう?」

 

「……確かに露骨、ではありますが」

 

「そう、露骨さ。あまりにも露骨。挑発と行って等しいかもしれないね。いつも通りフラッとカルデアから消えることがある巌窟王とジャンヌ・オルタは別の可能性があるとしても、アガルタの時みたいに「意図的に彼らを呼んだ」と見てまず間違いないだろう。

 

けど異常はどこにも見つからない。正直途方に暮れていたんだけど……でもつい先ほど、意外とも言える場所から、予想もしなかった異常が見つかったんだ。何だと思う?」

 

「……?」

 

「我々にとってのスタート地点。魔神王の企んだ人理焼却を防ぐための記念すべきグランド・オーダー……邪竜百年戦争の時の資料が「バグだらけ」になっていたのさ。電子アナログ問わず、そのほぼ全てがだ」

 

「!? そ、それは一体どういう事でしょうか」

「見てもらった方が早いかな。オルレアンの時の記録、出してくれるかい?」

 

「これは……」

「す、すべての記録媒体がまるで砂嵐のような物に覆われています、先輩!」

 

「察せるだろうけどこれは当然、私達の保存した映像や記録を直接弄くって起こした物じゃあない。君達が特異点で見てきたものが、過去の因果や痕跡が、何らかの要因によって「根本的に」埋め立てられよとしていることで起きたものだ。

 

簡潔言うと、我々が解決した第一特異点。「ファーストオーダー・邪竜百年戦争の時の時間軸」に、なんらかの異常が発生している。……ああ、これじゃ分かりにくいかな? 「特異点となったフランス」じゃなくて「特異点を解決しようと我々がレイシフトした時の」フランスさ

 

……これでも分かりにくければそうだなぁ……過去の特異点に別の特異点を割り込み、上書きするようなものだと思ってくれたまえ。もしくはチラシの裏に別の落書きをしていると思って貰っても良い」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。過去にあった特異点の裏で別の特異点を作る!? ……もしかしてそれを放置しておくと……」

 

「最悪の場合「特異点を解決した」という事実が「無かった事」になる可能性があるね」

 

「ヤバいじゃねーかそれ!? もう一度あの姐さんと戦うとか二度とごめんだぞ!?」

 

「そうです! 今すぐレイシフトを……あれ? そう言えばなんで特異点が見つからないんでしょう。異常はあるんですよね?」

 

「ああ、簡単な話さ。「今現在カルデアスに表示される形では」異常が無いってだけ。

 

だって、特異点となったあの時のオルレアンは、既に我々が解決しているからね。

 

それを上書きしたところで「あの時の特異点は「今は」既に消滅している」異常なんて出るはずがない。人理や概念を完全に書き換えるような異常が発生したら別だろうけど、その時は既に手遅れだろうね」

 

「そんな……では……」

 

「おいおい落ち着きなよマシュ。特異点が見つからなくたってレイシフトは出来るんだぜ?」

 

「ようは「邪竜百年戦争の時の時間軸のレイシフト」に割り込むってこと?

 

「今の俺達」は無理でも「過去の俺達」ならあの時の特異点に行ける……って、事で合ってるか?」

 

「ああ。これは言わば特異点の裏で特異点を作っているような物だ。直接その時代行っても効果が無いなら「あの時の我々」に便乗すれば良い。

 

あの時は「特異点」が確かにあったんだから、隠された……言わば「裏・特異点」へのレイシフトだって当然出来る。それこそ、電車に相乗りするような形でね」

 

「か、過去のレイシフトに割り込む!? 聞いたことがありませんし、どれだけ危険なことかも分かりません!」

 

「そうはいってもなぁ……これ以外に方法が思いつかないし、安全性だけで言えば通常のレイシフトよりも高いんだよ? なにせ「過去」では既に自分がレイシフトを行って、それを成功させているんだから。

 

少なくとも意味消失の可能性はぐっと低くなる。最悪のパターンとしてレイシフトの線と線が混ざって「過去の香立くんと今の香立くんがレイシフト中に溶け合って一つになる」って可能性はあるけど……それを考慮したらそもそもレイシフト自体凄まじく危険な事だしね」

 

「しかし……」

「行こう」

「先輩?」

 

「どうせそっちはダヴィンチちゃん達が全力でなんとかする。

唐突に精神体で異世界に呼ばれたり、監獄塔に閉じ込められたり、冥界に墜ちたり、誰かの精神に割り込んだりするよりは、サポートがある分ずっと安全だろ?」

 

「先輩がそうおっしゃるのでしたら……分かりました。マシュ・キリエライト。今回も全力で先輩をサポートさせていただきます!」

 

「うんうん! ではご期待通り、何とかしようじゃないか。意味消失を防ぐのは勿論のこと、万一の存在融解も無いように全力でレイシフトの調整を行おう!

 

さて、となると次は君の護衛となるサーヴァントなんだけれど……香立くん」

 

「……ゲオルギウスとロビンはエリザベードの料理を食べて二日前から昏倒状態。李書文は戦闘のしすぎでシュミレーターを壊してベオウルフ共々謹慎。パラケルススは工房に籠もってるからああなると一週間は出てこない。

 

小次郎は日系サーヴァントの合同会に出席してるし、マルタは久しぶりに霊器保管庫で休暇を取ってる。ナポレオンとキルケーは行方不明だな」

 

「……んー、謹慎を言い渡した私が言えることじゃないけれど困ったなぁ」

 

「ええ……せめて彼らのうち誰か一人……いえ、二人もいれば先輩も無茶はしすぎないと思うんですが……」

 

「……お前ら、俺のことを何だと思ってんだよ」

 

「頭が回る癖に窮地で激情型になるタイプだから心配してるのさ。仕方がない部分もあるとは言え、変な部分でビックリするような無茶するからねぇ。

 

誰に似たのか君、特大の馬鹿で、凄い愚かだし。嫌いではないけどね」

 

「えっと……先輩は人間でカルデア唯一のマスターなんですから、もう少しサーヴァントの皆さんに無茶をさせても良いかなぁ……と……」

 

「ま、現地で(恐らくいるであろう)ナポレオンやキルケーと合流できることを祈っておこうか。じゃあ護衛だけど……」

 

マリー・アントワネット「それなら私達に任せて」

 

「マリーさん! サリエリさん!」

「ヴィヴ・ラ・フランス! 香立にマシュ。ご機嫌いかが?」

 

「おや、マリー王妃はこっちからお願いしようと思っていたけど、サリエリくんまで同行してくれるのか」

アントニオ・サリエリ「……王妃が行くと言って聞かないから供をするだけだ」

 

「アマデウスを探しに行くんじゃなくてか?」

 

「断じて! 違う!! マスター。前にも言ったが生前の縁でパーティーの組み合わせを考えるのは兎も角、私とあの男をセットするのはやめろ。

 

毎回毎回私がどれだけ自重をしていると思って……!」

 

「私達のフランスで今までに無い異変が起きているのでしょう?

 

それもジャンヌやアマデウス、サンソンにデオンまで巻き込まれてるなら、私だって一緒に行きたいもの」

 

(実際に巻き込まれているかどうか、は定かじゃないけど……ま、良いか)

 

「大丈夫よマシュ、ミスタ……失礼ミス・ダヴィンチ。マスターは私達がしっかりと護るし、無茶しないように見張っておくから」

 

「……はい! よろしくお願いします。マリーさん。サリエリさん」

「ふん……まぁ、努力はするさ」

 

「よし! では話が纏まったところで悪いが、もはや時間がない。今確認したけど、記録やデータのバグがより酷くなり続けている。

 

これを止めるにはかつて我々がレイシフトした15世紀フランスのオルレアンに赴き、原因を調査、。これを排除するしか無いだろう。……香立くん」

 

「いつでも良いぞ。ダヴィンチちゃん」

 

「よし! では久々のレイシフトだ! 派手に行こうじゃないか!」

 

 

 

アンサモンプログラムスタート 霊子変換を開始 します

 

レイシフト開始まで あと3、2、1、……

 

全行程 完了 アナライズ・リターン・オーダー

 

人理補正作業 検証を 開始 します。

 

 

 

 

 

 

 

 第一特異点―R A:D 1431年 聖邪竜王大戦オルレアン~ドンレミの村娘~

 

 

 

 

 

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