Fate/Grand Order 劇場版幕間の物語 作:部屋ノ 隅
第一節 序曲 一
藤丸「……レイシフト完了っと」
マリー・アントワネット「ただいま、愛しい私の王国《フランス》! 久々に帰ってきたけれど、やっぱり心地が良いわ!」
アントニオ・サリエリ「……王妃。失礼ながら、この時代は私達がいた十八世紀のフランスとは大きく異なりますし、そもそもここは特異点に近しいそれです」
「あら、そんな小さな事は関係なくてよアントニオ? 過去だろうと、私達の時代だろうと、未来だろうと、フランスの……この国の空気が私は好きだし、好きになれるわ。
それに、あなたは知らないかもしれないけれど、私、一度アマデウスとこの時代に来たことがあるんですもの。マスターやマシュ。ジャンヌと出会ったのもここなのよ? 懐かしさすら感じるわ」
「なっ! ……マスター」
「? なんだよ」
「……この特異点を解決し、カルデアに戻った際にはこの場所で起ったことを詳しく教えて欲しい。主に、アマデウス《あの馬鹿》が王妃並びに他の者にどれだけの迷惑を掛けたかを――」
マシュ・キリエライト『先輩!』
「ええい! すまないが今取り込み中だ! あとに――!!」
『そんなことを言っている場合ではありません!! 周りを、周りを見てください!!』
「本格的なお話し合いを邪魔したくはないのだけれど、どうやらそうもいかないみたいね……!」
『敵影を確認しました! なぞの生命体が多数! カルデアのデータには無いタイプの敵です!』
「全員、戦闘に集中! サリエリは外装を纏ってヒットアンドアウェイ方式の前衛! マリーは中衛でサリエリのサポートをしつつ宝具の準備!」
「了解した。会合に煩わしい音は不要。早々に片づけよう!」
BATTLE ???
「ふぅ……お疲れ様。ごめんなさいねアントニオ。私のお馬さん達が……」
「いえ。意図せぬ事とは言え、あの状況であなたの宝具の動きの邪魔をしてしまったのは私の方です。謝罪こそすれ、王妃が頭を下げることでは……」
「でも何だったんだ、今の奴ら。……ホムンクルス? ゴーレム? 人形でありこそすれ、真っ当な生き物だとは思えなかったけれど……」
『……いえ、先輩。観測結果を見た結果あれは……』
レオナルド・ダヴィンチ『……人だね』
「え?」
『人だよ。「あれはただの人」だ。どれだけ科学的、魔術的に体を弄くられてるかは分からないけれど、あれは、ただの人だよ』
「な……!」
『体中をドロドロの粘液で覆われても、ワイバーンみたいな鱗と牙が生えていても、激痛を伴う強化魔術が神経に張り巡らされて正気を失っていても、あれはただの人だ。
……この異変に巻き込まれてこういう事になってしまっただけの、ただの人なんだよ』
「ただの……人……」
「……そっか。なら時間貰って良いかな? 簡素で良い、この人達の墓を作りたいんだ」
『……先輩……はい。私も賛成です』
「そうね……そうしましょう。せめてそれくらいしなくちゃ。同じフランス国民として、彼らを終らせた者として」
「……サリエリ」
「……何だ」
「鎮魂歌を弾いてやってくれ。簡単なので良い、自分の作った奴じゃなくても構わない。
折角世界的に有名な音楽家の先生がいるんだ。何の音楽もないまま淡々と……ってのも寂しいだろう」
「……ふん。期待はしてくれるな。あの天才ではないんだ。即興の変曲、ましてや鎮魂歌など、荷が重い」
第一節 惨劇への序曲 二
「さて……弔いも無事終ったところで我々がこれからやるべき事、調べるべき事を改めて確認しよう」
『そうですね……大きく二つに分けられます。一つ目はこの『裏特異点』と呼称することにした特殊事象領域の調査。
二つ目は、この場所にレイシフトしたと考えられるサーヴァントの皆さんの探索』
「手がかりとしてはやっぱりさっきの人達かしら。……あんなに可哀想な人達がフランスにいて良いわけがないもの」
『そうだね。特異点の影響で生み出された、あるいは何者かに作られた生物兵器に近しいものと見て間違いないだろう。
問題は彼らが一体どういう存在で、何を目的として造られたのか、だが……まぁ何にせよ、まずは人が集まりそうな場所に行くのが良いんじゃないかな?』
『はい。えっと先輩、まずは町に向かってください。そこから東に十数キロ歩いたところに、中規模の町があるはずです』
「方針は決まったか? ならばさっさと移動することだ。さもなくば……心ない獣共が押し寄せてくるからな」
「気付いてたならもっと早く言えよ!? 兎に角迎撃だ!」
BATTLE 猟犬部隊(魔)
第一節 惨劇への序曲 三
「ふん……改造人間の次は野生化した軍用犬か……喧しく吠え立てるだけで雑音と変わらんな」
「ごめんなさいねお犬さん達……出来ることならもう少し優しく遊んであげたかったんだけど……」
「ただの軍用犬、ですませられる強さじゃなかったんだ、仕方ねぇよ。
でも、なんであれだけ強く教育された軍用犬が当り前のように野生化してるんだ?」
『はい……それにそもそも、この時代にこれほどまでに高度な軍用犬が躾けられるだけの知恵と技術があるわけがありません。
やはりこれも、特異点の影響と考える方が自然だと思います』
『君達に敵わないと見るやいなや、囮の数匹を除いて早々に逃げていったしね。いやいやよく調教されているじゃないか。狂暴化していてもこれとは驚きだな』
「……」
『先輩?』
「いや、改造人間に軍用犬……それ自体は良いんだけど……。特異点でオルレアンとくれば俺的には『肝心なの』が出て来てないなぁと。
まぁ実際に出てこられたら普通に困るんだけど――」
『……あの、先輩。それは俗に言う……』
『いや見事なフラグだったね! お待ちかねのワイバーンの群れだ! 合計九体! 内二匹は群れのリーダー格だから注意したまえ!』
BATTLE ワイバーン
「これで……死ぬがいい!」
「ふぅ……流石に三連戦となると少しばかり疲れるわね。お茶とお菓子が食べたいわ……」
「帰ったらキャット辺りに作って貰えば良い。最近、エミヤに厨房長を奪われてふて腐れ気味だったしなあいつ」
「それは素敵ね! エミヤさんの作るお菓子はとても美味しいけれど、キャットの作るお菓子は面白くて凄く楽しいもの!
なんでお口に入れた途端にクッキーが弾けるのかは分からないけど」
『あはは……キャットさんに依頼しておきますね。それでは改めてそこから東へ十数キロ移動した先にある町へと向かってください。
この特異点についての情報を可能な限り集めましょう、先輩!』
『(人造人間に魔犬化した軍用犬、そしてワイバーン……んー、関連性が今一見えないな。そもそもここが『あの時の特異点の裏』とも呼べる場所ならそれはつまり……
まぁ、確信もないし、今は気にしても仕方がないか。町で何かもっと有力な情報が得られるのを祈るのみだね)』