Fate/Grand Order 劇場版幕間の物語   作:部屋ノ 隅

6 / 8
第4章 恩讐竜の砦 その2

第四節 恩讐竜の砦 四

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

『あの……』

 

「あ? なによ」

 

『いえ、あの……』

 

『マシュ、素直に言っちゃいなよ「反教会組織のアジトがファンシーグッズで埋め尽くされてるなんて思わなかった」ってね!』

 

「あ、言っちまうんだそれ」

 

『ち、ちが……いませんけど、私はそういう趣味を否定する訳じゃなくて、むしろ一人の人間としては好ましい趣味だと思って――』

 

「……勘違いしないよう言っておくけど、私が置いたんじゃ無いからね、これ」

 

「「『『え?』』」」

 

「オーケー。まずその「え?」がどういう意味なのか詳しく聞きましょうか。どんな返答をしようが燃やす気しか無いけど」

 

『じゃあなに? キラッキラお姫様スタイルの格好をさせられて顔を伏せてるデオンの事? それともそれを見て吹き出した結果、マリー、サリエリ、デオンの三人にボッコボコにされたアマデウスのこと? そうじゃなければ――さっきの茶番のこと、気になってるかい?』

 

『ツッ!』

 

「……茶番? 俺とジャンヌ・オルタの戦闘ならちゃんとした理由があるって――」

 

『いやいや、そうじゃなくてさ。さっきの――』

 

アマデウス「君がマリーを助けた時の事さ、マスター」

 

 

 

 

 回想

 

 

 

 

「……」

 

「以外だな……廃砦というからどの程度の問題物件かと思ったが……かなりしっかりしているように見える。魔術による補強か?」

 

『襲撃を受けた時の事を考えた防御用の仕掛け、出入り口の隠蔽、隠し通路まであると。まぁサーヴァントが複数いればこの程度は出来て当然かな』

 

「はい、ここが私達「恩讐竜」の拠点の一つ。隠れ家としても霊脈のポイントとしても申し分無し。オマケに――」

 

『待って下さいオルタさん。あなた達の拠点に歓迎してくれたことは感謝しますが、まずは――』

 

「情報寄越せーってんでしょ? ああ、回復や休憩させろとかそういう話? あんたの事だし、後者かしら。悪いけど、回復物資は心許ないからクロニクルが帰ってくるまで」

 

「ちっげぇよ! そんな事どうだって良い!」

 

『そうです! まずは先輩に……!』

 

「マリーはどこにいるんだ。まず最初にそれだろうが!」

 

『……』

 

『……藤丸くん、君ねぇ……』

 

「そっちにも事情があるんだろうってのは分かるけど、まず最初にマリーの安否を確認させてくれ。一応、あいつを取り戻す為にここまで来たんだからな俺達」

 

「……はぁ……。あいつならこの先にある囚獄室にいるわ。だから――お願いだから、とっととあの王妃を引き取って頂戴」

 

『……? それは、どういう――』

 

 

 

 

 キャァアアアアアアアアア!

 

 

 

 

「マリー!?」

 

「王妃!?」

 

『今の悲鳴は――!? オルタさん! まさかあなたはマリーさんに拷問を――!?』

 

「あのね。あの王妃はその程度であんな悲鳴を上げるタマじゃないでしょうが!」

 

 

 

 

廃砦の囚獄室

 

 

 

 

「マスター! 音の反共的に恐らく……!!」

 

「ああ、ここだ! マリー!!」

 

 

 

 

 

 

「キャァアアアアアアアアア! デオン、やっぱり凄くすごーく可愛いわ!!」

 

「……ハイ」

 

「アガルタの時に着たっていうメイド衣装もマスターにねだってライブラリで何度も何度も見せてもらったけど、やっぱりデオンはキリッとした服よりもこういうキラキラした服の方が似合うと思うの!」

 

「…………ハイ」

 

「あ、別にカッコいいデオンが嫌な訳じゃないのよ? ただね? 私はデオン自身がこういう服が好きだからこそ、自然と似合うと思うの! 生前も、もっと早く気付いていれば色んな可愛い服を着てもらって、一緒に舞踏会に出たのに!」

 

「……………………ハイ」

 

 

 

 

 

 

『えっと……』

 

「……錯覚かな、攫われた筈のマリーがデオ……フルールを着せ替え人形にしてる光景が目に入るんだけど。と言うか囚獄って言う割には部屋が綺麗すぎるんだけど。なんか普通に絨毯とか敷いてあるし、ベットは天井付きだし、本棚まであるし」

 

『うーん、ものの見事な箱入りお姫様スタイルだねぇ……それはさておきサリエリくん、この状況を見て何か一言あればどうぞ』

 

「……悪いが、これほどまでに言語という物がこの世に無ければ良いと思ったことはない。……何も言えん。言いたくない」

 

「あら、マスターにアントニオも来たのね! ようこそ……って言って良いのかしら? 私、一応囚われの身だし……」

 

「ま、マスター!? サリエリ!? い、いや予定通りではあるんだがどうしてこのタイミングでここに……! ええいクソッ! 王妃!! すみませんがボスやみんな、それからお客人方との会談の予定が控えていますので、失礼させていただきます!」

 

「あ! デオ……じゃなかったフルール! ……もう、恥ずかしがっちゃって。仕事の時はどんな衣装を着ても、何を言っても言われても動揺しないのに。オフの時はこれなんだから、本当に可愛いわ」

 

『あの……例えオフの時であれ、デオンさんをあそこまで動揺させることが出来る人は酷く限られていると思うのですが……と、言うよりその代表がマリーさんなのでは……?』

 

「あら、そんな事ないわよ。あの子あれでも……」

 

「ちょっと待った。まずジッとしててくれ……治療用巻子本展開。霊子情報を転送……ダヴィンチちゃん、どう?」

 

『問題無いね。霊子の調子、魔力量、おおむね完全にグリーンさ!』

 

「あら? 態々そんな物まで用意してくれてたの? デオンのサインに気付いて一芝居打った私が言うのも何だけれど、マスター達だってデオン達が正気を保っている上、カルデアの記録と記憶をキチンと持っている味方だって事は分かっているんでしょう? 心配しなくても――」

 

「あのな。例えマリーと同じタイミングであいつらの茶番に気付いたとして、デオンのサインの意味を俺達が知っていたとして――目の前で仲間が攫われたら普通心配するから」

 

「……」

 

「デオン達が正気かどうかなんて関係ねーよ。「そういうシーン」を目の前で見せられたら嫌な気分になるに決まってる。茶番だって分かっててもな。だから助けたかったし、助けに来た。文句あるか」

 

「……はぁ……王妃、失礼ながら申し上げます。おおむね、私もマスターと同意見です。加えて、私は察しが悪いので茶番に気付かず……その……余計に御身のご心配をしてしまいました。ご無事でなによりです」

 

「……ふふっ、そうよね。あなたはいつだってそう。正しい感情のまま、正しい激情を力にして、正しく誰かの為に。みんなの力を借りて、大切なことを成し遂げられる人だもの。……ちょーっと自分の為になる行動をしなさすぎたり、その割には無茶しすぎたりすることがあるけれど……でも」

 

ちゅっ♪

 

「……!!?」

 

『!?』

 

「とても嬉しいわ! まるで物語のお姫様になったみたい!! ありがとう、香立!」

 

「……あの、そりゃ嬉しいけどさ。お前そもそも本物のお姫様じゃないか。それと、前にも言ったけどむやみやたらにキスをしない方が――」

 

「王妃! もしやとは思っていましたが、あなたまさかサーヴァントとなった今でも口吻癖が治ってないのですか!?」

 

「うーん。むしろサーヴァントになったからこそ、じゃあないかしら。私の行動や伝説を模した影霊が今の私なら、それ一つで派閥を作りあげたって、我ながら凄い逸話だと思うし」

 

「と言うかそんな驚くことか? マリーが自分のお気に入りにキスするなんてしょっちゅうだぞ? デオンとか、ジャンヌとか、マシュとか……俺にも結構してくるし、その度にアマデウスやサンソン、デオンに注意されてるけど、治りそうにないしなぁ」

 

「んな……!?」

 

『(ここだけの話、マリーの口吻対象で男性はほぼほぼ藤丸くんだけなんだけど……黙っておこうか)』

 

『そういう問題では無いと思います! マリーさんと合流できたなら早く次の……恩讐竜に所属しているサーヴァントの皆さんにお話を伺うべきです! 早く!!』

 

「? マシュ、お前もしかして怒ってるか?」

 

『怒ってません!』

 

「あ、ああ……」

 

「ふふっ。こうしてる分には本当にただの男の子なのにねぇ。それじゃあ行きましょうか。フルールが会議の準備があるって言ってたから、きっと会議室ね。

多分、アジトにいる人はみんなそこに揃ってるでしょうし、私達も向かいましょう!」

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

「ああ……あれか。なんで話を先に進めたマシュが気にしてるのかは分からないけど……」

 

『ほら、あれだよ。囚われの身とは言え、女性の部屋へ強引に押し入った君達に苦言の一つでも言いたいんだろうさ』

 

「あ、そっか。考えてみれば……悪い、マリー、デオン。マシュもな」

 

「そうねぇ。もしあれがお着替え中だったら、デオンとBATTLEに入っていたかもしれないし、次からはちゃんとノックして貰えると助かるわ」

 

「いえ、決してそんなことは……事情があるとはいえ、マスター達の目の前で王妃を攫ったのは私達だ。例えそういう事になっていたとしても、刃は向けなかったさ」

 

「いやまったくだね! 僕達みたいな野郎の感覚で女の子の部屋に入ったらダメだよ。マスターは聖女(拳)のせいで感覚が狂ってるんだろうけれど、サリエリ。紳士たる君がそれじゃあねぇ……?」

 

「「貴様が言うな!」と全力で言いたいが……申し訳ありません王妃」

 

『ですからそうではなくて……!』

 

『はいはい。楽しそうな所悪いけど、雑談はそろそろ終りにしてもらってだ。いい加減話を聞かせて貰って良いかな? 流石にここまで来て何も情報提供が無いって言われるとちょーっとダヴィンチちゃん怒っちゃうぞー?』

 

「分かってるわよ、聞かせればいいんでしょ? でもその前に、あんた達がこの特異点についてどれだけ知っているかを先に聞かせて。話を繰り返したくないし、やってもらう事にも差が出てくるから」

 

「ああ、分かった。まず俺たちは……」

 

 

 

 

 

「……こんな所だな」

 

「……呆れた、ほぼ上部の情報だけか。本当にほぼ真っ直ぐこいつを助けに来たのね……あんた、RPGとかで仲間が拐われたらサブイベやらないで即メインクエやりに行くタイプだから予想はしてたけど」

 

「ま、良いわ。で? まず何から知りたいの?」

 

 

select :教会と恩讐竜について

 

 

「はい? 敵対関係以外の何に見えるのよ。……ああ、理由? 私達がこんな七面倒なことしてる時点で察しはつくでしょうに。この特異点を作った奴が、教会の上層部の一人だからよ。十中八九、聖杯を持っているでしょうね」

 

『ふむ……根拠はなにか聞かせてもらっても良いかな? まぁ予想はつくけど一応ね』

 

「私は直接見た訳ではないが……やはりオルレアンに降臨したという主、だろうね。ちょっとした用があって、スパイらしくブラッドルートと一緒にオルレアン……今は「聖主後光層園オルレアン」だったか、に乗り込んだんだけど……」

 

「お、おい待ってくれデオン。そもそもブラッドルートって誰の事だよ」

 

「……あ……」

 

「あははは! なんだいフルール。あんなこと言ってた割に、君もなんだかんだで仇名で呼んでくれるじゃないか! もしかして、あんがい悪くないな、なんて思ってたりする?」

 

「……マスター。君に負担を掛けるのは非常に心苦しいけど、ちょっと後で剣の鍛錬に付き合ってくれないかな? 大丈夫さ、丁度良い的ならそこにある。どうやら殴られ足りないらしいからね……!」

 

「やるというなら私も付き合うぞ。先ほどのではまっったく足りん」

 

「ああ、別に良いけど本格的にやるなら外でやんなさい。ついでに私も加わるから」

 

「あっれ、いきなり四面楚歌か? と言うかボスまで何言ってるんだい!? 恩讐竜は基本的に私闘禁止な筈だろう!?」

 

「「私闘」はね。「鍛錬」だから問題なしよ」

 

「そういう問題なんだ!?」

 

「んー、私はその仇名は素敵だと思うし、やめておくわ」

 

「マリー……! ああ、やっぱり君はフランスの」

 

「あ、止めはしないけど」

 

「……」

 

「……サンソンだよ。シャルル・アンリ・サンソンだ。彼も恩讐竜の仲間で、今は単独でオルレアンに潜入してもらってる。

 

……最初は僕も一緒に潜入してたからよく分かるけど、今のオルレアンは異常だ。まさに特異点そのものと言っても良い。マスター達にも簡単に伝わるようにいうと、第六特異点にあったキャメロットと、禁忌降臨庭園セイレムがごちゃ混ぜになったような感じさ」

 

『キャメロットとセイレムが……?』

 

「ああ……あとで映像を見せる。それでよく分かるさ」

 

「要するに、教会側の誰かが聖杯の力でこの特異点を作り出しているのはもう分りきってるって事。はい、じゃあ次の質問は?」

 

 

Select:今まで何をしていたんだ?

 

 

「そりゃ色々よ。本当はこんな事する義理なんて欠片もないんだけど……民草が教会連中に絆されすぎないように普及活動をしたり、仲間を募ったり、教会の戦闘、補給部隊にゲリラ戦を仕掛けたり」

 

「一番忙しかったのが自作自演の演奏会を事前に潰すことだよなぁ。いや、醜悪な演劇を見る趣味は無いから潰すのには賛成なんだけど、本当に疲れた……三日に一回はやってくるんだもん。ホント、飽きない奴らだよ」

 

「自作自演の演奏会だと……?」

 

「あんた達にも覚えがあるんじゃ無いの? 町に襲来したワイバーンに、数十分後、都合良く訪れた教会の巡礼兵とかね」

 

『……あ』

 

『自分達で飼い慣らしたか、聖杯の力で操っているか。いずれにせよ、魔物に町を襲わせてピンチになった所を都合良く自分達で助けると。

いやぁ何だっけ? 『この町を襲ったのも魔女で、この町を救ったのも魔女なのだ』だっけ? よく言えたもんだね!』

 

「……あの時はちょっとしたトラブルがあって、魔物の襲撃に間に合わなかったんだけど……マスター達が町を守ってくれて助かったよ」

 

「なるほどな。町の人達が教会に仇なしている恩讐竜にそれほど恐れを抱いていなかったのはそういう事か。地道に皆の好感度を上げ続けていたと」

 

「教会の連中が来る前に魔物を潰して回れば恩讐竜の名を売れて、町の人達は肝心な時に助けに来なかった教会に不信と不満、さらには恩讐竜に対する風評をまき散らす教会に疑念を募らせる、という寸法か……即席にしては効果的だな」

 

「まぁそんなところよ」

 

「あとは、敵の本拠地、オルレアンに潜り込んだりね……最初は僕とサンソンの二人でオルレアンに潜入。情報を集めてみんなに連絡、何をするべきか作戦を立てる……って計画だったんだけど……その……」

 

「?」

 

「……ボスが「アンタは一番目立つ私達の花形、象徴なんだから戻ってこい」って……いや、理屈は分かるんだが、私などがその役目を担っても良いものかと……」

 

「花形?」

 

「ようはこっちの志気を高めるためだよ。フランスの救国主たるあの聖女様と同じ、つまり「恩讐竜の象徴」さ。「この方に付いていけば良い!」って思える奴を積極的にゲリラ戦に参加させて勝利をもぎ取り続ければ、当然こっちの勢いは増す。その姿が様になっていれば完璧だね」

 

『確かに、一度スイッチが入ったデオンさんは凄くカッコイイですし、皆さんを纏めるのにも向いてはいるでしょうけれど……』

 

「まぁ、本当はボスが出るのが一番手っ取り早いんだけど、ジャンヌ・ダルクが捕われているってのは完全に広まっちゃってるしなぁ……ここでボスが出て行ったら色々と面倒臭いことになりそうだし、何か考えがあるみたいだしさ」

 

「その「考え」は私も未だに聞けてないのよね……アマデウスもデオンもキルケーさんも。他のみんなも聞かされていないみたいだから」

 

『……しかし、意外でした。大変失礼だと理解してはいるんですが、あのジャンヌ・オルタさんがわざわざフランスの民草の配慮をしてくださるなんて……』

 

「……」

 

「ん~、ちょっと違うねマシュ。子供達を預かっている事を含め、彼女はただそれだけで動く奴じゃないよ。そういう音を奏でるような女じゃ無い。良くも悪くもね」

 

『え?』

 

「ま、今はそこの辺りは良いかな。少なくとも君ら迷惑がかかるようなことじゃ無さそうだしさ。はい、じゃあ次だ。聞きたいことはあるかい?」

 

 

Select:他の仲間って誰だ。っていうかファントムとキルケーはどこに?

 

 

「あの二人ならサンソンから送られてきた情報を元に、魔物の襲撃地点を予想してゲリラ攻撃をしてもらいに行ってるわ。……組み合わせ的に正直不安だけど、まぁエンブレムさえ壊してくれれば最低限の役割は果たしてるし」

 

「エンブレム……?」

 

「司教が渡していたあの趣味の悪い置物の事か。あれがどうした」

 

「さぁ? 詳しいことはキルケーに聞いて。なんでも、奴らの小細工をぶっ壊すにはこれが一番手っ取り早い、とか言ってたからやってるだけだし」

 

『大魔女であるキルケーさんのお墨付きなら、まぁ壊しておいて損は無いんでしょうけれど……』

 

「それと、他の仲間についても予想は付いてるんじゃないの? ジルと巌窟王よ。剣も術もいるわ。三人とはほぼ完全に別行動をしてるけど、連絡は取り合ってる。

ジル……剣の方にやってもらっているのは、決戦に備えての反教会勢力の纏め。術の方にやってもらっているのは、教会が放ったワイバーンの鹵獲」

 

『あ、そうそう! それ気になってたんだけど、君らどうやってワイバーンを飼い慣らしてるんだい? キルケーに術ジルにアマデウス。キャスターが三人。それも一人は神代の大魔女とは言え、あれだけの数を使役するのはかなり大変な筈なんだけどなぁ』

 

「ああ、そんなことですか。忘れたの? 第一特異点でルーラーとしてのジャンヌ・オルタ(わたし)は何百何千ってワイバーンを当り前のように操っていたでしょうが。あいつに出来て私に出来ない道理がある訳ないじゃない」

 

『それはあくまで聖杯の力を……いや、待てよ。もしかしてそういう事なのかい? 確かにここが第一特異点の「裏」なら……!』

 

「おい待て、何の話だ。すまないが私には訳が分らんのだが」

 

『……彼女、いや、第一特異点で術の方のジル・ド・レェに聖杯で造られたルーラーとしてのジャンヌ・オルタはフランスを滅ぼすべく、聖杯の力を使って数え切れないほどのワイバーンと、邪竜ファヴニールを使役していたんだ。

……良いかい? ジャンヌ・オルタはこの特異点の裏で、今まさにワイバーンを指揮しているんだよ?』

 

「……同じサーヴァント・ジャンヌ・オルタとしての力の因果が、特異点の表と裏で繋がった……?」

 

『……あり得ないって話じゃあない。サーヴァントを介してマスターが見る夢だったり、特異な状況や場所においてはサーヴァントとしての自分の反面が、その力が、そのまま互いに影響を及ぼすことがある。

 

ほら、香立くんにも覚えがあるだろう? 夢の中で一緒にそのサーヴァントの反面を倒した結果、その力に感化されてスキルや宝具がより強くなったりさ。

第一特異点のジャンヌ・オルタが異常に強かったのも、今ここにいるジャンヌ・オルタの影響を受けたと考えれば納得がいく。相乗効果って奴だね』

 

『つ、つまり今のジャンヌ・オルタさんはあの時のワイバーン達を……!』

 

「あ、それは無理」

 

『……』

 

「無理なのかよ!?」

 

「あのね。幾ら表と裏でラインが繋がっているとは言え、聖杯を持ってるのは向こうで、しかも正式な所有者はジルで、私は今現在ただのサーヴァントよ? 精々一日に5,6匹生み出すのが精一杯なの。鹵獲したワイバーンを従順にさせる方が何倍も簡単だし、手っ取り早いのよ」

 

「直接造るのは大変でも、造られた奴を従順にさせるのなら表にある聖杯の力の余波で簡単に出来るらしいよ? 一旦弱らせる必要があるし、彼女の感覚だから僕は詳しく知らないけどね」

 

「(弱らせて従順にさせる……要は姐さんがタラスクを従わせた時みたいなもんか)」

 

「……なーんか今絶対に一緒にされたくない奴と一緒の扱いをされた気がするんだけど」

 

「ちなみに、剣の方のジル・ド・レェは「リードマン」術の方のジル・ド・レェは「インスマス」巌窟王は……あれ? そう言えばボス。巌窟王に仇名って付けてたっけ? 防音魔術を張ってまでコソコソ話し合ってるのは最初の頃に何度か見たけど、彼の姿は最近全く見てないし……」

 

「……長期の特別任務よ。上手くやってくれているみたいだから、気にしないで」

 

「……ふーん。ま、良いか」

 

「二人のジル・ド・レェに巌窟王に……あ? ちょっと待て、その三人だけか? ジャンヌとナポレオンは?」

 

「……あいつは兎も角、ナポレオン……? 知らないけど。なに、あいつまでカルデアからいなくなってんの?」

 

「知らなかったのか。我らはてっきりあの皇帝も貴様らと一緒に行動しているとばかり思っていたのだがね」

 

『と、言うことは単独で動いているか、既に消滅してしまっているか、もしくは本当にこの特異点とは関係が無いか、だけど……』

 

「んー、今度皆から連絡が来た時に知らないか聞いてみようか。多分無駄足だとは思うけど……」

 

『あの、さっきの口ぶりだとつまり、ジャンヌさんの事は知っているんですよね? ジャンヌさんは今どこに……』

 

「……悪いけど、こっちはこっちで大体の予想がついてるってだけで、話す事は出来ないわ。あの探偵も言ってるでしょ? 確信に至らないことは話すべきでは無い。ってね。悪いけど、もう少し待って頂戴」

 

『ですが……!』

 

「っと、ボス。そろそろ……」

 

「……ああ、もうそんな時間? 仕方ないわね……」

 

「おい待ってくれ、どこ行くんだよ」

 

「言ったでしょ? 私達は忙しいの。やらなきゃ行けないことが沢山あるのよ。しかも肝心なところは教会(向こう)の出方次第だから、タイミングは逃せないの。

「オルレアンは今どうなっている」とか「サーヴァントが役に立たないってどういう事だ」とか、聞きたいことはまだあるでしょうけど、詳しい話は後で……」

 

「いやそうじゃなくてさ、何か手伝えることは無いかって話。折角合流できたし、事情も分かったんだからこれからは俺達も……」

 

 

 

ビビビビビビビビビビビビビ!!

 

 

 

「これは……!?」

 

「緊急連絡ですって……? 誰から?」

 

「えっと、ブラッドルー……サンソンからだね。我はフルール。我はフルール」

 

『フルールか! よし、やっと繋がった!! ……マスターにムッシュ・サリエリ。そうか、上手く合流できたんだな……って、それどころじゃ無い!』

 

『まずいぞ! ジャンヌ・ダルクの火刑が三日後に決まった!!』

 

「な……!?」

 

『ジャンヌさんの火刑……!? いえ、でもそれにしては……』

 

「早すぎるでしょう……! 情報源と執行時間は!?」

 

『教会の異端審問官達から直接盗み聞きした物だ、間違いない。執行時間は三日後の午後12時ピッタリだ!』

 

「三日後の午後12時……」

 

「……ここまで早いとなると本格的に……ああもう! あのクソ野郎!! 何考えてんだか知らないけど、いつまでもあいつと私を……!!」

 

『どうする、君の予想通りなら多少強引にでも決戦の準備を始めないと間に合わな――』

 

 

 

ビビビビビビビビビビビビビ!!

 

 

 

「だぁ! もう何なのさっきから!! また緊急連絡ですって!?」

 

「……今度はクロニクルからだね。え~、こちらエクセレント。こちらエクセレント。一体何が――」

 

 

 

 

『助ぁああああああああすけてぇええええええええええええええええええええええ!!』

 

 

 

 

「うるっさ!?」

 

『き、キルケーさん。その、声が……!!』

 

『マズイマズイマズイって! あいつらいきなり本気出しすぎでしょう!? いや、これは巡り合わせが悪かったのかな? 兎に角マズイって! 助けて!!」

 

「うるっさい! 何があったのかをとっとと報告!!」

 

 

 

『「聖竜」だ! 教会の奴ら、私らの息が掛かった町一つ消すためだけに聖竜を入れて来やがった!!』

 

 

 

「……!?」

 

「聖竜……?」

 

『とうとう本腰を入れて私達を消しに来たみたいだね……! いやなんでこんなタイミングで、それも聖竜まで入

れてとは思うけど、兎に角大ピンチでさ!! SOS! SOS!! 救援を要求します!!』

 

「馬鹿! 救助なんて求める前にとっとと逃げなさい!! 最悪ワイバーンが潰されてもあんた達なら……!!」

 

『無理だ! 簡易聖域まで用意されてるし、取り巻きの数も多い!! 解除するにしたってこれだけの数を捌きながら出来る訳がないだろう!? いくら私が神代の大魔女でも限度ってもんがあるんだよ!!』

 

「ああもうっ! 四の五の言ってる場合じゃ無いか……! 場所は!?」

 

『私達の予定していた襲撃ポイントから五㎞ほど東に進んだ場所にある草原地帯! なるべく早く頼む! 防戦に徹してなんとか持たせてみせるからさ! このままじゃ私もハーメルンも仲良く座に帰んなきゃいけなくなるよ!!』

 

「ちっ! あんた! 私と一緒に来なさい!! いつでも戦闘が出来る状態にしておいて!」

 

『戦闘って……! あ、あの!! 先輩の戦闘技能はあくまでも……!!』

 

「ごちゃごちゃ言ってる場合じゃ無いの! 王妃とエクセレントは万が一のことを考えてここに残る! インスマスにも連絡を入れときなさい!!

フルールはこの根暗音楽家をつれて一緒に出撃!! ワイバーンを全速力で飛ばすわよ!!」

 

「了解した! マスター。急な要請で本当に申し訳ないが……ボスの言う通り、この特異点では君こそが切り札たり得る存在だ……

何時も君を護り、窘めている身からすればこんな事を言えるはずも無いんだが……どうか頼む!!」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。