Fate/Grand Order 劇場版幕間の物語   作:部屋ノ 隅

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第5章 聖竜 2

第五章 聖竜 二

 

 

 

疑似聖域内部 ワイバーンの背中

 

 

 

「おい! もうちょっと丁寧に飛ばせないのか、乗り心地が最悪だぞ!!」

 

「うるっさいなぁ! このワイバーン、普通は二人乗りなんだぞぉ!? 無理して三人乗せて飛んでもらってるんだからガマンしなよ!」

 

「なぁキルケー。聖域の核になってる「聖遺物」ってのは一体なんなんだ? いや、それ自体がなんなのかは知ってるけど、多分……」

 

「ああ。一般的に言われている神の子や聖母マリア。その他聖人に関わる遺骨や遺品の事じゃあ勿論ないよ。

使われている術式と、それに使う役割が似ているから教会が勝手にそう呼んでいるだけで、実際はただの魔道具さ。……聖杯によって造られた高等な、が付くけど」

 

「……気になるのは、なんでこうも急に、しかもこんな場所に小規模とは言え聖域なんか造ってまで私達を狙ったのか、な方かな。

作戦が漏れていたのは、思い当たる節があるからこの際良いとして……」

 

「良いのかよ!?」

 

「私達が教会に狙われるのは当然だけど、それにしたってやり方が妙ちくりんだ。いるのは聖域で造られた雑多な量産型の聖竜と、魔術回路を弄くられた聖僧兵だけ……」

 

「本格的に脅威を排除しようとするなら私達や、恩讐竜と同盟を結んでいる反教会軍のアジトを探し出して付近で大聖域を展開。

戦力を総動員して一網打尽にするって言うのが一番手っ取り早いし、確実なのに……」

 

「……反教会戦力じゃなくて、恩讐竜だけを始末、もしくは足止めしたかったってのはどうだ」

 

「……? マスター、それはどういう……っと、見えてき……た……」

 

オ、オオオオオオオオォォ……

 

「おい、なんだあれは……!」

 

「白い……白い、泥で出来たゴーレム? いや、ホムンクルス、か? おいキルケー! あれがなんだか――」

 

「……嘘だろう……!」

 

「……キルケー?」

 

「おいおいおいおい! 嘘だろう!? 何でだ!? 幾ら何でも早すぎる! 聖域が出来てからまだ一時間も経ってないんだぞ!?」

 

オ、オオオオオオオオォォ、アァ、アアアアアアア!!

 

「――!? キルケー!!」

 

「――ッツ! 全員このまま飛び降りてくれ!! ワイバーンは可能な限り上空に飛んで待機させておく!!」

 

アァ、アアアアアアア!!

 

「なんだあの化け物は!? まるで無形の落とし子を白くしたような――!」

 

「その説明は後だ! さっきこの聖域を破壊するには聖遺物を壊せば良いって言ったよね? 前言撤回させて貰うよ。こいつが聖遺物を取り込んでいるからね!!」

 

「な!?」

 

「正確には聖遺物が聖域内にあるからこいつが生まれ出でたってのが正しいんだけど……ええい、もうそんな事はどうだって良い!

私が聖遺物を再生出来ないレベルで壊す為の術式を放つまでに、なんとしてもこいつの「ガワ」を剥いでくれ!

聖遺物の位置は胸の右側、私達で言う心臓の位置! クラスは「裁定者(ルーラー)」!! 時間が無い、なんとしても十分以内にケリを付けるんだ!!」

 

「ルーラー!? しかも十分以内って……! クソッ、サリエリ!!」

 

「分かっている! 貴様こそ気を抜くなよ……!!」

 

 

FATAL BATTLE VS ??? (ターン制限10)

 

 

オ、オオオオオオオオォォ、アァ、アアアアアアア!!

 

「『オラァッ!』 『くたばれ!』 『ぶっとべ!!』『オラオラオラ! どうしたどうした!』」

 

「クッ! こいつ、動きがドンドン……!! 活性化し続けているのか?

……本来、クラス相性で言えば我がここまで窮地に追いやられることなど殆ど無いはずなのだが……

ええい! 忌々しい聖域め……!! 我らの存在だけで無く、私の奏でる音までおも拒絶するか……!!」

 

「ちょっ! マスター、マスター前に出すぎ!! ……いや、これ影降ろしてる霊器の影響か。でもなんでよりによってベオウルフにしたのさ!? 君と相性の良い英霊の一人って言うのは分かるけど、時々呑まれるじゃん!! ってか現在進行形でちょっと呑まれてるじゃん!?

バーサーカーにしたってもうちょっとマシな奴が……………………畜生、殆どいねぇ!!」

 

「マスターの方は何時もと変わらずか……! ……何度か見た光景とはいえ、我らサーヴァントがマスターの後ろに回らざるを得ないとはな……!!」

 

「『オ……ラァ!!』」

 

オ、オォオオオオオオ……

 

「!? おお! 良いじゃないか良いじゃないか!! 流石はバーサーカーの霊器だね!」

 

「あと少し……! サリエリ! そっちは!?」

 

「いけるぞマスター! こんな化け物に捧げるには多少もったいないが……公演の始まりだ!!」

 

 

 

 

 

「――疑似再現宝具展開――! ――『覚悟しろよ』――!」

 

「我は死だ……我は神に愛されしものを殺すのだァ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『源 流 闘 争(グレンデル・バスター)!!』

 

『至高の神よ、我を憐れみたまえ(ディオ・サンティシモ・ミゼルコディア・ディ・ミ)!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オ、オオオオオオオオォォ……

 

 

「キルケー! 今だ!!」

 

「ああ! 魔力、解放!

――『天にヘカテの守護輝き、古のティーターンの霊気は我が地脈を巡らん。いざ、大いなる叡智はキルケーの翼となりて羽ばたかん』――!

まったく、主だの神だの……そんなもの! 我が女神ヘカテー一柱だけで十分なんだよってね!!」

 

 

アァ、アアア……アア……ア…ア……

 

 

「よし、これで――!」

 

「……聖域が、晴れていく……」

 

「……どうやらそれだけでは無いようだぞマスター。あれだけ煩わしかったあの聖竜共が、妙に少なくなっている。これは一体……」

 

「よし、邪魔くさい聖域さえ無くなればこっちのもんだ!! 二人とも早くワイバーンに乗って! とっととトンズラを――!」

 

『――輩! 先輩! ああ、良かった、やっと繋がりました!!」

 

「マシュ!」

 

『連絡はつかないのに、戦闘服に供給される魔力は消費し続けていましたから、本当に心配したんですよ……!

今まで一体何が……キルケーさん。良かった……無事に合流出来たんですね……』

 

「悪いけど今忙しいんだ! 後にしてくれ!! こちとら命がけで連戦に連戦を重ねて――!!」

 

『あ~、生きてる? 聖域が消えたんだし、生きてるわよね?』

 

「……貴様か」

 

「はいはい全員五体満足だよボス! どうせそっちもそうでしょ? だから早いところ逃げようよ! あり得ないと思うけど、流石にまた聖域を造られたりなんかしたらこれ以上の連戦はキツいって!!

マスターやフォルテは兎も角、私がね! 大魔女なのにね!! しょうがないだろう? 私にだって限界って物は有るんだよ!」

 

『クロニクル、うっさい。……こっちにも予想外のことがあってね。砦の二人には悪いけど、私達だけ合流場所を変更するわ。

『ニーズホッグの巣』で会いましょう」

 

「『ニーズホッグの巣』……?」

 

「……え? あそこで良いの? ってかマジで言ってる?? なぁボス……君、鬼かい!? 私いま超疲れてるんだけど!? キツいって言ったばかりなんだけど!?

君達の倍以上の時間、ステータスダウンした状態で、ハーメルンと二人っきりで、戦い続けてたんだけど!?」

 

『魔女よ。難所さえ一旦通り抜けちゃえば、後はどうって事無いわよ。それと、なるべく早く来なさい。全部の予定を大幅に早めるから』

 

「はい!? 何言ってんのさボス! 予定じゃあ――」

 

『処刑の日が三日後に早まった』

 

「……(なんだ? アジトでもそうだったけど、ジャンヌ・ダルクの処刑って単語で、オルタは凄く動揺してた。……忠史な筈のジャンヌの処刑を、なんでそこまで……)』

 

「……あ~……マジ? ……マズイね、そりゃ」

 

『あくまで私の予想が合っていたら、だけどね。あの聖女様の、それも贋作かどうかすら曖昧な私だけど、あいつの現状に対しての予想はつく。

それに対してどんな思考をするか、もね。色んな意味で腹立ちますけど』

 

「……はぁ。分かったよ。自分で乗った船だ、最後まで付き合おうじゃないか、ボス」

 

『なに当り前の事言ってんの? あんたら全員、自分の意思で私に乗って来たんだから、行き先が地獄だろうが海の底だろうが、一緒に沈んで貰うわよ。

それが嫌だってんなら、必死に動いて頂戴。じゃあね』

 

「やれやれ……」

 

『あの、一体何の話を……』

 

「んー。少なくとも私から今話せる事は無いかなぁ。まぁ、でも近い内にボスが話してくれると思うよ? 少なくとも、マスターにはさ」

 

「……俺に?」

 

「ああ。まぁ、なんだ。彼女はここまで、マスターを信じて策を立てたらしいんだ。「君は必ずこの特異点に来る」ってね。だからさ」

 

 

 

 

 

「言ってきたら乗ってあげてよ、彼女の話に。――君にとっても悪い話じゃあないみたいだしね」

 

 

 

 

 

 




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