中央暦1642年9月 神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス
全ては、一冊の本と一本のあずきバーから始まった
帝都の省庁区画の一角に存在する兵器開発局は喧騒に包まれていた。
事の発端は、中央暦1642年8月に発生したバルチスタ沖大海戦での大敗である。
この海戦の結果、ミリシアル帝国の兵器ではグラ・バルカス帝国に対抗は出来ない、と言う事が明らかになった。この事実にミリシアル帝国上層部は震撼した。そして大急ぎで兵器開発局にグラ・バルカス帝国、特に、絶対の自信を持っていた空中戦艦パル・キマイラを撃墜した超大型戦艦グレードアトラスターに対抗出来る兵器の開発を命じた。
しかし、そんなもの直ぐに思い付く訳もなく職員達は連日泊まり込みで議論をしていた。そんな時、職員の一人であるアイス・スキーは最近ハマっている日本のアイスを食べようとしていた。
アイスにかぶりついたアイス・スキーは、その固さに驚愕した。
そのアイスの名は、「あずきバー」世界で最も固いアイスとも言われているアイスである。
アイス・スキーは、食べ物かさえ疑わしい硬さに、何を思ったのか物体の魔力伝導率を計測する装置にあずきバーをセットした。
すると
「馬鹿な?!」
アイス・スキーは叫んでいた、その有り得ない程の魔力伝導率に、その数値はミリシアル帝国の知る、どんな物質の魔力伝導率をも凌駕していた。
その声に驚いた同僚達は様子を見に来たが、計測された数値を見て絶句した。
同僚達が議論を放り出して装置の周りに集まりだした時、アイス・スキーの脳裏にはある一冊の本が浮かんでいた。その本は日本から輸出されたもので、タイトルは「世界の珍兵器大全集」世界中の変な兵器を紹介する本である。
その中の氷山空母ハボクックとあずきバーが組合わさった。
「そうだ、あずきバーで戦艦を作ろう。」
同僚達から、アホを見るような視線を向けられたが構わず熱弁した。要約すると、
アイス・スキー「この硬さと魔力伝導率を誇るあずきバーを使って戦艦を作れば強そうじゃね?」
同僚達「それだ!」
皆疲れていたのだろう、たぶん、恐らく、きっと。
そして、企画書が作られ各部署への交渉が行われ、最終的には、皇帝にまで企画書が届き許可されてしまった。
きっと皆疲れて居たに違いない。
ミリシアル帝国の総力を結集した国家プロジェクトが発足した瞬間だった。
直ぐ様、日本にあずきバーの大量発注が行われた。その数、実に230億個以上!さらに、六機残っている空中戦艦の内、運用出来ない状態の二機の武装を流用などして建造が進められた。
~半年後~
そこには、島と見紛う大きさと、赤紫色に光る、見る者を圧倒する戦艦の姿があった。
あずきバー級超魔導戦艦アズキ・バー
基準排水量:約200万t 全長:約600m 全幅:約100m
最大速力10kt
主要武装:あずきバー製霊式45.1cm三連装魔導砲20基 大半があずきバーで出来ている
15cm三連装魔導砲12基 アトラタテス砲12基
どちらも空中戦艦から流用
冷却魔法で、夏場でも溶けない。しかし、艦内の温度が平均-5度なので、船員は敵より先に寒さと戦わなければならない。
魔力をまとわせることで非常に高い防御力を発揮する。
進め、アズキ・バー、ミリシアル帝国の明日はどっちだ?
※あずきバーは食べ物です。
※あずきバーは食べ物です。