高町なのはとの出会い
変なおじさんに転生と言い渡されてから5年経つ。結論を言えば夢では無かったと言う事だ。
まさかあのおじさんの話が本当だったとは、今でもあんまり信じられない。しかしこれは夢だと逃避してみても、五年も覚めぬ夢ならば、もはや現実といっていいものなんだろう。できれば夢であって欲しいという思いは今でも胸の奥に燻っているけれど。
今世に生まれてからの自分はあまり思い出したくない。みっともなく騒ぎ立ててしまっていたからね。まあ、あの頃の僕が騒いだ所でよく泣く子だ程度にしか思われなっかたんだけども、精神的にはそれなりの年齢だった訳で、それが雷の様な声で騒ぎ立てていたというのはやはり恥ずかしいものがある。ああ思い出しただけで顔から火が出てきそうだ。
まあ今はある程度割り切って、今世をそれなりに楽しく過ごしていきたいとは思えるようになった。とりあえず今世では友達を沢山作りたい。切実な願いである。あのおじさんからもらった能力というのも気になりはするけども、まあもう名前も思い出せないし、それに確かあと四年だったか経過すれば教えてもらえると言うのだから、そんな気にしなくても構わないだろう。今の僕に必要なのは友達だ。前世のような寂しい生活はもうご遠慮願いたい。それに今世には××もいない訳だし、よけいにそう思う訳だ。
という訳で公園にゴーだ。公園ならば友達が出来るはず。××と最初にあったのも公園だ。その後家が近所だと言う事が判明し前世の関係に至ったのだ。だからこの時期の僕には公園=友達というのは成り立つ筈である。こうしてはいられない。時は金なりとか言うし、急がなくっちゃ。
「いってきまーす!」
「気をつけるのよー」
母さんののんびりした声をバックに、僕は近所の公園に向かい走った。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
「うすうすとだけど、こうなるとは思っていたよ…………」
いざ公園についてみると、そこに同年代の子供の姿がなく、ベビーカーを揺らすお母様方と、僕の肉体年齢より幼いお子さんばかりだった。
「そうだよね、ポケモン出たばかりだもんね……」
はあ、と重いため息を吐き、とぼとぼと公園の中に入っていく。どうせここまで来たのなら、少し遊んでいかないとなんだかもったいないという思考にとらわれ、じゃあ独りで遊ぶならとしばし悩み、ブランコを漕ぐことにした。今世になってから感性がこの肉体に引っ張られている気がする。つまるところ公園の遊具がすごく楽しい。それだけでなく甘いものとか前世より美味しく感じられるし、それに人参とピーマンが苦手になっている。本当に子供だな僕。まあこの感性の変化が物事の切り替えの早さをも僕にもたらせてくれたから、割り切る事が出来たのだろうとも思う。この変化もそう悪いものじゃあない。
とはいえ、今回は存外ダメージがでかかったらしく、ブランコに向かう足は重たい。のたのたと足を引きずるように、なめくじが如くうすのろい歩みでブランコに向かうと、そこに待望の同年代ぽい女の子がいた。独り寂しげにブランコを漕いでいる。話しかけるべきなのかと一瞬考えるが、もはやそんな元気は無いので、隣の空いているブランコをぎいこぎいこ揺らす。こいうところが友達の出来ない要因なのかな、とか考えるが、今は目先の娯楽を楽しむ。ああ、楽しい。段々勢いがつき速くなり、揺れ幅も大きくなる。うは速い。地面と平行になるのでは無いかと言う勢いでさらに漕ぐ。
しばらく漕いだら疲れてしまった。さすがにこの年齢で前世と同じ感覚で身体を動かすのは無理があった様だ。当たり前とも言える。
ふう、と一息ついたらブランコを今度はゆっくりと揺らす。余裕が出来たので、少し気になる隣の少女を、ちらりと見てみる。うむ、何とも暗い雰囲気を漂わせた子だ。それにブランコに乗っているのに全然漕いでいない。体調でも悪いのかな?そうだとしたら大変だ。ここは声をかけた方がいいのではないか?よけいなお節介かもしれないが、倒れでもしたら大変だ。様子を見るに親御さんはこの公園に来ていないみたいだしね。
「大丈夫?」
出来るだけ優しい声音で声をかける。女の子は突然声をかけられた事にきょとんとして、その後小首をかしげる。ああ、大丈夫かの言葉だけでは何に対してかが分からないか。
「あ、えとなんか元気なさそうだったから、それで大丈夫なのかなって……思って…………」
すこし気恥ずかしくなり、声が少し慌てた調子になる。その僕の様子がおかしかったのか、女の子がくすりと笑う。うん、まあ結果オーライと言う奴だ。
「大丈夫だよ」
その声には確かに無理をしている感じは見られない。なら何故こんなに暗い雰囲気を漂わせているのだろうか。
「じゃあ、なんで暗いの?」
中の人が見た目の数倍年を取っているとは思えないものの聞き方である。しょうがないじゃん、人と話すのは慣れていないんだ。
ほら。たちまち女の子の顔が不機嫌になっていく。
「君には関係ないよ」
ぷいと女の子がそっぽ向く。込み入った事なのだろう。それを他人が無遠慮に踏み込もうとしたら幼心に腹をたてるのも無理から無いことだ。こういったときは謝った方がいいのだろう。
「……ごめんね」
「…………いいよ」
どうやら許してもらえた様だ。優しい心の持ち主なのだろう。このまま優しい心につけ込んで、友達になって貰おうか?なんだか下種い思考だけど、まあ気にしない。
「僕、藤木健太っていうんだ。君は?」
「高町……高町なのは」
にこりと微笑みながら自己紹介。女の子の頬に僅かに朱で染まる。
「あの、できれば友達になってくれないかなーって」
なんだか恥ずかしくなり頬をぽりぽり掻く。彼女はにこりと微笑み、
「いいよ」
と答えてくれた。
本文に出せませんでしたが、主人公転生前は中学生でした。何年生かは明確に決めていませんが。
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