笑わないニコポ持ち   作:佐甲斐

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図書館の少女

 アリサちゃんとすずかちゃんの喧嘩と和解からまた数ヶ月経つ。今ではすっかり仲良しさんのようで、なのはちゃんと女の子3人、学校ではいつも一緒にいる。僕も3人と過ごす時間は多い。まあ男友達も作りたいからいつも一緒と言う訳には行かないけどね。お昼とかも、給食制でなくお弁当制ということもあって一緒に食べよう、と誘ってくれるけど、僕が男友達とお昼を取る時に残念そうな顔をするのはやめて欲しい。罪悪感に飲まれる。

 

 さて、今日は全くの暇な日だ。する事が無い。まあ夏休みだからね今。一ヶ月もあればこういう暇な日も出来る。さあて、どうしようかな?お母さんとお父さんの教育方針で十歳まではゲーム禁止だからゲーム機ないし、宿題も絵日記以外は終わらせた。家にある本は読み飽きたしなあ…………。本、本かあ。うん、そうだ図書館に行こう。

 

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

 

 ああ、暑かった。道中何回か後悔したが、冷房のきいた図書館の中に入ったらそんな後悔も失せてしまった。よし、目指すは児童文学のコーナーだ。前世はあまり児童文学は読まなかったけれど、今世ではどはまりしてしまった。やはり僕も男の子、冒険ものが面白い。

 

 児童文学のコーナーにて、何を読もうか迷っていると、車椅子に乗った茶髪の少女がやって来た。彼女は既に何冊か本をその手に持っているが、まだ借りるのか。すずかちゃん並の読書家だな。

 

 あんまりじろじろ見るのもあまり人道的にいい事ではないので、本棚に視線を戻す。ああどーれーにーしようかな。こう言うのは一度悩みだすとなかなか抜ける事が出来ない。前世でも××がそのことでよくからかってきたなあ。懐かしい。

 

 ふと一冊の本に眼が留まった。なかなか心引かれるタイトルである。よし決めたとその本に手を伸ばしたら先ほどの彼女と手が重なってしまった。

 

「あ、ご、ごめん」

 

「い、いえ」

 

 とっさに手を引いてしまう。なんとなく気恥ずかしさを感じる。思春期の中学生か僕は、いや前世は中学生だったろ、と脳内一人漫才をかます。

 

 女の子は僕と同じ奴が読みたいようで、けれども同じだからためらっているらしい。ここは先を譲るというのが精神的年長者の役目というものである。というかこれで取っていくのは何と言うか大人げない。

 

「どうぞ、先に読みなよ」

 

 字面だけではなんだか急かしている嫌な奴、みたいな感じがするので、にっこり笑顔を加えてみる。女の子は僕と同じような恥ずかしさを感じたのか顔を赤くしながらも、首をぶんぶん左右に振って、

 

「さ、さきに手ぇだしたんはそっちやし……」

 

 言葉だけ聞いたら不良の喧嘩みたいだ、と思ったのは内緒。しかし謙虚な子だ。この位の年頃の子はあげると言えば一部例外を除き、あまり深く考えずに持っていってしまうという子がほとんどなのに。前世のこの年齢の僕でもそうだったと思うぞ。ちなみにぱっと思いつく例外はあの3人娘だ。あの子達は本当に精神年齢が高い。そしてこの子も例外に含まれる子なのだろう。

 

 しかしどうやって説得しようかな?

 

「えーと、僕読むのがすごく遅いんだ。だから先に読みなよ」

 

 うん、我ながらよく分からない変ないい訳だ。読むのが遅かろうが速かろうが、一週間後の返却日に返すと言うのならば同じである。女の子の持つ本の冊数を見るに、借りて帰るのは分かりきった事なので、この言い訳は通用しないだろう。女の子も一瞬ぽかんとした後くすくす笑って、

 

「そういうことならしょうがないな。おおきに」

 

 と楽しげに言うと一礼して、カウンターへと向かっていった。こっちの意を汲む能力まで持っていたらしい。まあとにかく、これで僕の小さな見栄は守られたと言うことだ。

 

 さて、僕は何を読もうかな?まあ時間は有り余っているんだ。ゆっくり決めよう。

 

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

 

 一週間後、僕は前に借りた本数冊を返しに、また図書館へと訪れた。

 

 夏休みももうすぐ終わりだなあとか考えながらカウンターのお姉さんに本を返して、ぶらぶらとまた児童文学のコーナーへと足を向かわせる。すると今度は一週間前とは逆に、先に児童文学のコーナーに車椅子の少女がいた。

 

「こんにちは」

 

 微笑みながら挨拶をしてみる。彼女は気がついた様で、眼をぱちくりさせた後何故か顔を赤くさせ微笑んで、

 

「こんにちは。この前はほんまにありがとな」

 

「本を譲ったくらいだよ。そんな感謝されることじゃないよ」

 

 お互いうるさくならない程度に小さく笑い合う。

 

「せ、せや、よければ、その、名前、教えてもらえへんか?あ、私は八神はやてや」

 

「うん、いいよ。僕は藤木健太。よろしくね、はやてちゃん」

 

「こちらこそ、よろしゅう」

 

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

 

 自己紹介後におもしろそうな本を片手にテーブルに着いた後、世間話をしていたらいつの間にやらはやてちゃんの境遇の話になって、愕然としてしまった。なんせ、こんな小さい子が一軒家に一人暮らしをしているのだと言う。まったく常識では考えられないことだ。

 

 とりあえず、僕の家の電話番号と住所を教えておいた。僕に出来る事なんてほとんどないけど、いざと言う時に何かあったときに、些細な事でも助けになれたらと思って。ただ教えた時に小さくガッツポーズをしたのは何故なんだい?




言い訳のしようがないほどに似非関西弁です。ごめんなさい。

お気に入りが50を越えました。思わずガッツポーズしましたよ。このような作品を読んでいただきありがとうございます。

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