笑わないニコポ持ち   作:佐甲斐

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喋る宝石

『やあ!元気にしているかな』

 

 8歳の誕生日、楽しかったお誕生日会も終わり、お風呂にも入ってさあ寝よう、と自分の部屋に入ると、どこからか何故か懐かしさを感じる声が聞こえて来た。

 

『ああ、君の勉強机の上見てご覧。宝石があるだろう?』

 

 あまりにも不審きわまりなく、今にも逃げ出したい。幽霊でも出て来たらどうしてくれると言うのか。しかし、どうしてか逆らえず、声に促されるまま勉強机の上を見る。

 

 整った机の上に、ちょこんと丸くて澄んだ黒さをもつ、宝石の様な石が置かれていた。

 

『そうそうそれそれ、と、所で僕は覚えているよね?』

 

 声は宝石から発せられているようだ。とんだファンタジーである。まあ転生と喋る宝石、どっちもファンタジーさではどっこいどっこいか。で、覚えているかどうかと聞かれても、僕に宝石の知り合いはいない。

 

『いや僕は宝石じゃないから。今はこの子を媒介にして君と話してるだけだから』

 

 あれ?この心読まれる感じは…………。

 

『そうご明察、神様だよ』

 

 なんと8年ぶりの神様でした。神様が出て来たと言う事は僕につけられたなんとか、とか言う能力の説明に来てくれたのかな。あれ?でもそれは9歳の時の話じゃなかったけ?

 

『うん。今回は能力の説明はないよ。ただ君に誕生日プレゼントと、君が巻き込まれるであろう物語を、ネタばらしにならない程度に話そうかなと思ってね』

 

 巻き込まれる物語?この転生人生以上に僕は何に巻き込まれると言うのか。冒険の旅にでも出るとでも?

 

『いや、物語の舞台は君の今住んでいる街海鳴市だよ』

 

 そうなのか。冒険では無いとしたらどんなお話が始まると言うのだろう。ホラーの類いは嫌だな。転生してから、幽霊が本当にいるかは確認をとれていないけれど、死んだ後はどうなるか分からない以上、それらの存在がいる可能性は決してゼロでは無いと知り、必要以上の苦手となってしまっている。お化け屋敷に入ったのなら絶対に腰を抜かす事となるだろう。

 

『まあ安心しなよ。確かに幽霊はそこら中にいるけどさ。君と関わり合う事はないし、この話もオカルトの類いと言えなくもない話だけど、幽霊は出ない変わりに魔法が出てくるのさ』

 

 いや安心できないよ。そこら中にいるとか今たまたま見えてないだけじゃん。それに魔法?そんなものまであるの?もうなんでもありじゃないかそこまできたらさ。いや神様がいる時点でなんでもありだけど、そんなほいほい世界中にファンタジーが溢れているとは思わなかったよ。

 

『ははは、実は君の前世の世界も裏では色々あったんだよ、とまあ無駄話はおしまい。本題に入ろうじゃない』

 

 あくまでゆるい調子のままで話を続ける神様。

 

『来年の春にね。君と仲良しの女の子、確かなのはちゃんって子がいるでしょ?あの子がとある事件に巻き込まれるんだよ。それが魔法関連の事件だったてわけさ』

 

 なのはちゃんそんなファンタジーの住人に仲間入りするのか。大丈夫かな?まあ僕も一緒にというのならフォロー位はできるかな?で、それで?

 

『これ以上は駄目だよ。ネタばらしになりそうだし』

 

 なんというか、それだけの話ならばわざわざ話さないでよかったと思うんだけど。あとネタばらししても別にいいんじゃないかな。別にアニメや漫画や映画やらじゃないんだし。

 

『僕の娯楽のためだね。何も知らない人が巻き込まれる方が面白いと思うんだよ。そもそも君を転成させたのも娯楽だしさ。まあドラマでも見ている気分で楽しませてもらっているよ』

 

 勝手に転生させられた時から思っていた事ではあるけれど、ここまではた迷惑だとは思わなかったよ。

 

『まま、落ち着いて落ち着いて。それに今回は話だけじゃなくてプレゼントもあるって言ったでしょ?それがあれば来年の対策にもなるよ。僕はそろそろ帰らせてもらうけど、僕の声が聴こえなくなったらこの宝石に触ってごらん』

 

 なんか釈然としないけど、どちらにせよ僕では神様に逆らうとかそんな大それたことはできないし、結局はおとなしく従うしか無いのだ。

 

『うん、あきらめがよくてよろしい!じゃまたね』

 

 という声が聞こるとともに宝石が心なしか先ほどより黒くなった気がする。しばらく待ってももう声は聴こえてこないので、言われた通りに触ってみる。

 

『ブラックハート起動しました。おはようございます。マスター』

 

 おお、今度は機械的な女性の声が宝石から聴こえて来たぞ。もはやこの程度は驚かなくなっている自分が嫌だ。まあそんなことは置いといて、話せると言うのならば聴きたい事がある

 

「君は、えーとなんなんだい?」

 

『私はインテリジェントデバイスと言われる、有り体に言えば魔法使いの杖ですね』

 

 おお、最近の魔法使いの杖と言うのは宝石なのか。それに喋ることもできるとは、なんだかハイスペックだなあ。

 

「へー、魔法使いの杖ってことは、僕も魔法を使えたりするのかい?」

 

『はい。魔力総量AAクラス相当、なかなかですね』

 

「よく分からないけど、そうなんだ」

 

 なんというか、さっきもで神様の勝手さに腹が立っていたけど、なんかわくわくしてきた。自分でも現金な奴だなと思う。しかし男に生まれたのならば、不思議な力と言うものに胸を高鳴らせるということは必然と言っていい。

 

『ではマスター。起動に際し、登録するバリアジャケットのデザインをお決めください』

 

「…………バリアジャケットってなに?」

 

『バリアジャケットとは魔法使いがその身に身につける防護服のことです。デザインが決まりましたら、頭の中で思い浮かべながら私を持ち、ブラックハートセットアップ、と唱えてください』

 

 どうしようかな、やっぱりかっこいいのがいいよね。でもごちゃごちゃしてたら動きにくそうだし、ある程度スッキリさせておきたい。

 

「よーし、決めた!ブラックハート、セットアップ!!」

 

 変化は一瞬であった。一瞬のうちに僕の服装はパジャマから、黒いマントを羽織、その下に軽い胸当ての着いた服を着て脛当ての着いたズボンを履いた姿になった。思ったよりダサい。まあいいや。あこがれのマントを身につけることができたし。それよりいつの間にやら手に持っていた、3本のかぎ爪のようなものと、そのかぎ爪に守られる様に包まれた黒い宝石が先端に着いている杖はなに?

 

『この杖が私です、マスター』

 

 おお、まさしく魔法使いの杖といった感じで興奮して来た。

 

『マスター、バリアジャケットの登録が完了しました。次回よりこの形態を展開します。では、明日より魔法の訓練を開始します。今日はもうお休みになってください』

 

 ブラックハートの言葉に平静を保ちつつ、念じれば解除されると言うので、念じてもとの姿に戻る。もういい時間だ、速く寝よう。いそいそと布団に潜り込む。

 

 ああでも、興奮で眠れる気がしないなあ。




マントは男の子のロマン。ゲッターウィングとか大好きです。

次回には無印に入れると思います。主人公の誕生日は無印終了と同時期です。ちょっと長いですが、もう少しお待ちください。ああはやく皆病ませたいなあ。

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