奇妙な夢を見た。金髪で何処かの民族衣装の様な物を着た少年が、黒い変な物に追いかけられていると言う夢だ。まったく見覚えの無い少年を夢で見る事があるのかは分からないが、まあ害はないと思う。所詮は夢なのだ。
『おはようございます、マスター。今日の訓練を開始しましょう』
そう、そんな夢よりも大事な事がある。ブラックハートとの毎朝4時スタートの早朝訓練だ。早速ばれない様に必要な物と重りを詰めこんだリュックサックを背負い込み、こそこそと窓から家を出て行く。気分は亀仙流だ。
家から数キロほど走り人気の無い公園に出る。ここは探し当てるまで苦労した絶好の修行場所である。……廃墟と化した団地にある公園という、絶好の肝試しスポットでもあるが。最初は怖かったが、ブラックハートが一緒にいてくれるし、いざ始めれば周りは気にならなくなるので、まあなんとかなっている。
荒い息を整えタオルで汗を拭いたら、
『では、始めましょうマスター』
「わかってるよ」
ブラックハートをセットアップした後、リュックサックの中から十個空き缶を取り出し、空中に放る。
「キューブバインド・ロックッ!」
灰色に近い黒色をした丸い魔法陣を四つ空き缶を囲む様に展開、そこから同色の球体型の拘束魔法が空き缶を包み、その場に固定させる。しかし球体を形成している間に2、3個の空き缶が先に地に落ちてしまう。
「クラッシュッッ!」
球体が急速に縮み、空き缶は粉々となった。
『新しい魔法はどうですか?』
「うーん、隙が大きいね。球体を作っている間に逃げられちゃうし、そもそもこれ人に使えないよね?死んじゃうよ」
『そうですね。形成時間に関しては私の方でプログラムの効率化を計れば、現状より1.2倍は早く形成できるでしょう。しかし、これではいくら非殺傷設定でも重傷は避けられないでしょうね』
この早朝訓練では、たまに僕が考えた魔法をこうして試している。まあ、うまくいく方が珍しい。魔力を使いすぎるとか、ピーキーになりすぎて使い勝手が悪いとか、今回の様に隙が大きかったり、威力が強すぎたりすることもある。でもこうして新しい魔法を考えて試すと言うのは、本当に楽しい。目指すは『ぼくのかんがえたさいきょうのまほう』を世に轟かすことである。とは言っても、
「なんでバインドなんだろうなあ」
『しかたありません。才能は選べるものでは無いのですから。お持ちであるだけよろしいではありませんか』
僕にはバインドの才能がある。それ以外の全てが平均以下値程度の適正しか無いのに、バインドの適正は異常に高いとブラックハートが言っていた。平均的がどれほどのものかは分からないが、神様特製であるブラックハートの言葉だ。信用に値するだろう。
しかし、拘束魔法の才能というのはこう言ってはなんだが、とても地味である。もう少し派手だったら嬉しかったんだけど。ブッラクハートの言う通り、贅沢な悩みであると言う事は分かっているのだが、まあこればかりはね。まだまだ感性は子供なのである。
『では、いつも通りのメニューをこなしてください』
言われて先ほどの様にリュックサックから空き缶を取り出し放り投げ、片っ端から単純なバインドをかける。反応速度と練度をあげるためだ。協力してくれる人がいるのならランダムに投げてもらったりしてもっといいんだけど、贅沢は言っていられない、さて、今日も気合いを入れてがんばらなくちゃね。
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
「将来の夢かあ……」
昼休み、今日はいつもの3人とご飯を食べている。そこで話題に上がったのが、今日の授業で聞かれた将来つきたい仕事と言うものについてだ。
ほかの3人は、アリサちゃんが親御さんの仕事を継ぐ、ないしは手伝いたいということ、すずかちゃんは工学系に進んで専門職につきたいということらしい。一方なのはちゃんはあまり将来のヴィジョンが明確では無いらしく、悩んだ素振りを見せていた。まあまだ小学生なんだから、これが当たり前だと思う。前の二人が小3にあるまじき将来設定だっただけだよ。僕なんて前世中学生のときですら、将来というのはあまり考えてい無かったし。
「あ!でも」
なのはちゃんがこちらをちらちら見ながら、顔を赤くして言う。
「お嫁さんとかいいかなあなんて」
「な!」
「え?」
「可愛らしい夢だね」
おにぎりをもくもく食べながら答える。××もよく言っていたなあ。と、最近感じることの少なくなった懐かしさを、久方ぶりに味わう。
しかしまあ、この発言から鑑みるに、彼女が僕に好意を持っていると言うのは勘違いではなかった様だ。思えば××も僕に好意を持っていたのだろう。前世はまわりから人が去っていったせいで余裕が無く、気がつくことができなかった。前世の話は置いといて、なのはちゃんはいまだ小学3年生、俗にいう恋いに恋している状態なのだろう。こうしてはぐらかして答えていけば、そのうち覚めてしまうと思う。なんせ、僕にとってなのはちゃんは親友で妹分という認識なのだ。どうにも恋愛対象として見る事が出来ない。精神的ロリコンという問題もある。でも正面切って否定するのが怖くて、こんなへたれ戦法を取ってしまう。
「あああああ、あんたは何言ってんのよ!」
「なのはちゃん……?」
さっきの発言に動揺していたアリサちゃんとすずかちゃんがなのはちゃんに迫る。……まさか二人も、なんて事は無いだろうね?
一頻り騒いでいたら、満足したのか二人はなのはちゃんから離れる。
「で、あんたは将来はなんになりたいの?」
「僕?僕は……」
僕はなんになりたいのだろう?そいえば考えた事が無かった。
「考えておくよ」
しばらく悩んだけど、今の僕にはこの答えが精一杯だ。
だからそんな呆れた顔しないでよ。
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今日はあの3人の塾の日なので、これ幸いと廃墟団地に向かう。最近は僕がどこに向かうにも付いてこようとするので、ちょっと大変だ。
はやてちゃんともそんな感じであの3人は出会った。僕が図書館に向かった日にいつの間にか尾行されていて、僕とはやてちゃんが話していると飛び出して来た。あの時は本当にビックリしたなあ。それ以降尾行とかには気をつけている。一応見られちゃ駄目だろうしね、魔法を使う所は。
「さあて、父さんと母さんを心配させたくないし、夕方までがんばろう」
『はい、マスター』
僕はいつもの様にブラックハートをセットアップした。
バインドが得意=相手を捕らえる=ニコポで心を掴んで離さないという意味だったんだよ!!!(キバヤシ風)
嘘です。適当です。あんまりバインド得意なオリ主みないなあと言う理由です。ごめんなさい。
ところでリリカルラディカルグッドスピードってタイトル語呂よくありませんか?そのうちそんな話を始めるかもしれません。