1:始まり
80年代後半、ドットから始まったゲームは、30年後人の脳をも支配する存在となる。
そのゲームは総称として、『VirtualRealityGame』と言われている。
つまり、VRゲームだ。
このゲームは、機器を通して人の電気信号を脳幹と延髄から全て読取り、ゲーム内の操作に組み込み遊ぶことができる。
そう、彼らは仮想でありながら、もう一つの現実と表現した。
そんなVRの黎明期の騒乱として、こんな事件が発生した。
『ソードアート・オンライン』、SAOと呼ばれるVR専用ゲームがある。
このゲームソフトは限定発売もので、第一陣は9000個のソフトを売り出した。
購入した人達は、休暇等を取り幼児から寝たきりのお年寄りまでこのゲームにログインした。
彼等は楽しくこのSAOの世界を楽しむ。
そんな中、世界中に鐘の音が鳴り響き、最初の街である『始まりの街』に皆が転送される。
黄昏に染まる街の広場に、全てのプレイヤーが転移完了する。
この広場から誰も出ていけない。ログアウトも不可能な中、GMである運営を待つ。
後に来た人ほど、混乱してしまっているが周囲の冷静さにより落ち着きを取り戻していく。
そしてその時が来た。
天井いっぱいに広がる六角形の結界。
そのポリゴンの塊には、『warning』と描かれている。
結界が天を覆った後、ポリゴンの隙間から流体が出てくる。まるで血の様だ。
<ようこそ、我が世界『ソードアート・オンライン』へ。
私は茅場昌彦。この世界を統べるゲームマスター兼プロデューサーだ。
この場に私直々来たのはほかでもない。
何者かによりプログラムが変更させられた。
その為、ログアウトすることができなくなっている。
外世界では、万が一の為全てのメディアを通して、保護してもらうように病院へ搬送してもらっている。
いつ直るのかは不透明である。しかし、こちらから外部アクセスし、情報の譲渡は可能である。
また、心して聴いてほしいが、この世界でHP0となると電子レンジの要領で頭が焼かれる事になる。
つまり死んでしまう。
君たちには、基本コルの増額と上位回復アイテム・自分の造形を忘れぬためのアイテムを送ってある。
ストレージに手鏡があるだろう、それを見てみたまえ>
この場に居る全員が手鏡を見る。
すると全ての人間の容姿が、現実のものと大差なくなる。
これにより怨嗟の声が鳴り響く。
<現実と仮想のギャップを少なくすることが、最善の精神治癒に繋がると信じている。
私……から――は―――>
ピーーーッ
紅いローブを着る巨大な造形が、砂嵐を含んで消えてしまう。
その代わり茅場昌彦が、この世界に落とされてしまう。
「何……?」
<グフフ、グハハハハハハ!!!
この世界は我々の創造主、マスターハンド様のものである!>
おぞましい聲がそこいらじゅうに広がる。
この音源はどこから出ているのか。
それは結界の外だ。
結界は透明度を0にする。これにより、外部情報を読み取れる。
外部には空飛ぶ木造戦艦が多数飛んでいる。
編隊を組んでいるようで組んでいない、ただ数多である。
その数多のプロペラが付く戦艦には、必ず一つ以上の旗がある。
その旗は黒く、中央には白い何かを描いている。
<ガハハハハハハ!
ワガハイはクッパ。キノコ王国一の大魔導士なり!
マスターハンド様より、脆弱な舞台で躍る人形に助言がある!
この世界には英雄がいる。ヤツラと手を取り会えない限り、貴様らは死ぬしかないとな!
この電子世界は、我々の生きる世界とする!
人間[都合]に支配される世界[物語]とはおさらばだ!>
木造戦艦は、突如彼等の上に出現したUFOに吸い込まれて消えた。
UFOも一瞬でテレポートして消える。
この時、結界がほどける。
いや崩れ落ちて行ったと表現する方がいいだろう。
暫くの間静寂が続く。
そして発生する喧噪。
怒鳴り散らす人達は、実に俯瞰から見ると醜い。
ただの協力して脱出するだけではなくなった。
明確な目的を見失い、途方に暮れる者が多くなる。
しかし、GM権限を一部使える茅場は、より多くの命を救うため行動を起こす。
そう、マスターハンドを100階で倒すという、明確な目標をクエストとして繰り出す。
報酬は、プレイヤーその者の命と心である。
―――
35層で思い思いに明日を過ごし、二日後表に出てくる。
転移門をくぐり、一層へ集まる彼ら。
彼らは第一層の『はじまりの街』の北門に降り立つ。
予想以上の繁栄と変化した仕様に、最初の一か月以外でここに来なくなったプレイヤーたちは感嘆を零す。
その感嘆は喧噪の波に漏れ、消えていった。
「来たな、アスナ」
「ええ」
街へのハンコを貰っていても、部外者が一人でもいる集団転移で来た場合北の転移門広場に転移する。
個人であれば街への転移やほかの転移門広場へ、転移させられていただろう。
二人は展望台へ上り、そこから一番最初に得た感動の記憶を呼び覚ます。
一呼吸ついて周辺を見渡す。
数時間後に引き起こされる裏ボスとの闘いの場になり、ここが生死の境界であり正念場となる。
ある意味最初で最後となる因縁のある場所だ。
緩急の激しい現実離れした世界。理想と夢を叶え、現実と絶望を突き付けた最初の場所。
彼らプレイヤーにどれだけの感動と絶望を与えたのだろうか。
それはわからない。
「裏ボス戦に参加するギルドのギルド長・副長、ソロプレイヤーは、こちらで最終作戦会議を行う!
ついてきてください!」
最も奥に見える迷宮区を見ていたキリトとアスナは、お互いにうなずいて
軍の手の者についていく。
「ユイ。俺たちは今から作戦会議に行ってくる。皆を頼む」
「はい!この私に任せてください!」
そういって諸葛亮と話していたユイに、離席中のギルド員の事を任せる。
さらにキリトはサトシとシリカが話しているところへ行く。
二人は『やぶれたせかい』からどれだけポケモンを出撃させるかどうかのことで、
色々会議をしているようだ。
「サトシ、シリカ。諸葛亮とユイを監視していてくれないか?」
「よくわからないけど、任せろ!」
「わかりました。何かあればメールで伝えます」
ユイと諸葛亮がオブジェクトの影で、話しているのを視認。
諸葛亮はオブジェクトに、背中を預けているように見えるが本当にそうなのだろうか?
深夜の密会を見てしまったキリトにとって、彼らの会話と行動は非常に不審である。
またその隠匿性を増そうとしている行為を利用して、キリトはサトシとシリカに話しを通す。
これのおかげで、ギルド内が少々ギスギスすることになるが今知ったことではない。
空気感の問題で、実際にそうなっているわけではないのだから。
「キリト君。漂白剤で洗われた位に真っ白だね」
「ああ。今は欠けているから仕方ないさ」
今はダークが居ない。
あの密会を聞いてしまったため、本来なら心配するところを戦力低下という問題だけを抱え込むことになる。
故に少々心持が軽くなっている。
しかし独り言や愚痴る相手がいないとなると、キリトにとって不都合しか生まない模様。
ストレスが発散できない、胸の内をさらけ出すことができない。
こういう制限を掛けられることで、戦闘中内外からの圧力に耐えられるのだろうか。
「さあ、行こう」
「ええ」
キリトはアスナの手のひらに触れ、そのまま握らず『はじまりの街』へ入っていき誘導員のところへ向かっていった。
さてキリト達が離れたところで、諸葛亮とユイはその場から早々に立ち去ろうとする。
そのそそくさと立ち去ろうとすることに、不信感を覚えたサトシは彼らに話しかける。
「孔明、どこに行く気だ?」
「ユイちゃんも、ギルドの皆を置いてどこにいくつもりですか?」
「グルル」
「サトシ殿、シリカ殿。そんなに威圧的に接しないでください。
どこにといわれても、戦場となる場所の下見ですよ」
実際諸葛亮が此処に来るのは初めてだ。
「私は孔明さんの補佐のため、一緒に行こうとしていたところです」
ユイは諸葛亮の言葉を利用して、自身の正当性を告げる。
しかしそれはあまりにも不自然だ。
第一層はキリトを含め、プレイヤーなら知っている場所だ。
そして一番長くいた階層だ。
だから情報不足なんてこともないし、ましてや土地の形なんぞ忘れたくても忘れられないだろう。
それに指揮系統は孔明が持っているわけがなく、『采配』スキルで操作できる兵士のみが指揮下に置かれている。
だから命令外の事をやっても意味がない。
この諸葛亮らの行動は、団体行動をする手前許されない勝手な行動として認識される。
許すか否かの判断はともかく、裏ボスとの戦闘前に遊ぶのは当事者としてどうかと思う。
「孔明、ユイ。おとなしく待機しておいたほうがいいぜ」
「そうですよ?でなければ、誅罰もあるかもしれません。
キリトさんは甘いですが、限度があると思いますよ?」
諸葛亮とユイは、この完全包囲に逃げ道はないとしておとなしくしておくことにした。
本物である諸葛亮ならば、やすやすと切り抜けられるだろう。
ユイも同じく。しかし彼らは、経験のないただのAIだ。そう、設定だけの。
だから普通のプレイヤーとプレイヤーと長らくともに行動してきた英雄らに、
言論で舌戦でどうにかしようというのができない。
「よお!久しぶりだな!って、なんだよこの空気は!もっと明るくいこうずぇ!?」
辛気臭い空気の中、やってきた彼ら。
それは『風林火山』のギルド長がクラインの仲間、孫策など魏と呉の猛将達だ。
ちょうど彼らは孔明達が行こうとしていた道をふさぐように展開している。
実際陸遜と荀彧は、口角を上げている。
「『風林火山』の……」
「よお、サトシ! で、なかなか内部分裂してんだな!」
「絆の確かめ合いですよ」
孫策の指摘に、孔明は表情を変えず言い切る。
「嘘をつかずとも分かっています。策を弄する前に、見つかってしまったのでしょう?」
「やっぱり!そうだったんですね、孔明さん」
「誰に、とは言ってませんよ、シリカ殿」
荀彧は静かに笑い、事を告げる。
シリカはそれを聞いて、よからぬことをしようとしていたことに若干苛立つ。
しかし諸葛亮は荀彧の言葉に、対象が入っていないのでシリカへ自己解釈はやめるよう願う。
「全く。こんなところまで来て、何やっているんだお前達」
女性の声が上空から聞こえる。
ガチャリと装備の音を鳴らして、上空から降り立つ。
「アーロイさん!」
「アーロイ!」
「全く……キリトとアスナが居ないと、途端にコレか。情けないぞ?」
機龍から飛び降りた彼女は、諸葛亮やサトシらに目配せをして意識を纏める。
「皆、元の配置場所に戻るぞ。『風林火山』の皆も、こっちに来て一緒に話そう。
近況報告といこうじゃないか!」
「いいですね。お互いに華を咲かせましょう」
陸遜はそういって、先行する。
ぞろぞろと元の待機場所に戻っていく。
リズベット・月英、趙雲・エギルがいる場所に、団体様のご到着。
団体様の先頭はアーロイ。サトシ達は孔明が、ほかの事をやらかさないように監視している。
その厳重な警戒に諸葛亮は呆れ、何やらソワソワしているユイの肩に触れる。
ユイは孔明の顔を見るため、その場で見上げる。
その時羽扇で口元を隠し周囲からみられないようにした諸葛亮は、ユイだけに口パクを見せた。
<無理です>
「……」
ユイはそれを見て、頭を横に振る。
諸葛亮は拒否の反応をされても、何も反応を示さず肩から手をのける。
なぜユイや諸葛亮がこんなに必死になっているのか。
それはダークゼロである影キリトを、偵察目的で行こうとしたフィールドに待機させてあるからだ。
そして機を見て出撃させる。
その確認を行おうとしたのだが、見事に防がれた。
本来ならば先にSAOに詳しいユイとともに、地形やそこらの仕様の照らし合わせとして
先行偵察をキリトか仲間たちに言っておけばよかった。
だがキリトは既に全てというわけではないが、思惑を知ってしまっているため易々と行かせるわけがない。
そのように宣告をしてもいいが、今更の偵察は戦略的に見て遅すぎる。
それにそこらへんの事情は第一層にいる『軍』が、常日頃第一層の全土を巡回し探索しているので
ほぼ網羅している。ましてやマップがあるので、地形を含め情報が熟成されているわけだ。
よって今更な申し出だったりするので、もしもキリトにそう言っても却下されていた。
トイレというそんなものは、このゲーム仕様にはない。
アイテムや武器の選定というのも、既に35層で整えている。
そう、抜ける事は不可能なのだ。
抜けたとしても不審に思った『風林火山』の面々が、彼らを捕まえただろう。
そして偵察となれば、軍師の設定がある荀彧と陸遜がついてきている筈だ。
もしもそれを断れば、よからぬことまたは隠し事があると確定しギルド長へメールが向かっていただろう。
遂にはクラインからキリトやアスナに情報が流れ、彼らのメールが団員に届き諸葛亮らに全体的な監視と不信感に塗れるだろう。
別に内部分裂ではない。へんな暴走なんて今まで結構あった。
だから今更の監視だったりするが、一気に抜けられる可能性は0になる。
そういう意味では諸葛亮達は、無難な現状に収まったのだ。
「なあ、荀彧。私たちはこの展望台眼前の場所で戦うんだが、君たちはどこで戦うんだ?」
「私達はアーロイ殿…あなたたちの左、西側で戦闘を行います。区別は違うので、貴方達と共に戦う事はできません」
「それは残念だ。君らの闘いを間近で見たかったのだが……」
「我々は個人を超越した攻撃方法を兼ね備えておりますので、誤爆しかねません。
ですのでこれが妥当だと思われます」
基本的に真・三國無双な彼らは、ナンバリングで言えば”7”が主体になっている。
一部そうでない者もいるが、見た目だけである。
よって戦闘による技がいろいろ派手で、攻撃範囲が広く攻撃力も高いので少数精鋭になる。
そのおかげで『風林火山』は、ギルド単体で真正面に立つことになる。
もちろん『黒の英傑連盟団』も、彼らと同じく真正面から受け立つ。
「そういえば、リズベットとエギルが提供した武器装備は役立ってるか?」
「ええ。周泰と曹仁が、難攻不落の要塞と化しました。これは今回の会戦で、示すことができます。
ところで今回の裏ボスの情報源は、貴方と副団長様のようですが……勝算はありますか?」
「中央にあるコアを物理的にぶっ壊せられればどうにかなる。
どんなに再生能力があろうと、再生を幇助するコアを貫けばどうにかなるよ」
この一層に蔓延る全ての機械獣は、コアを壊せば内部崩壊を漸増して故障する。
未来の機械獣がこうであれば、過去の行動停止した機械獣がそうである可能性が高い。
だからこれは賭けでもなく、確かな情報として確定している。
一応『フォーカス』でホルス級の機械獣等、全ての裏ボスとなりうるそれらを撮影保存している。
そしてそれを空中へ投射したり、ほかのデバイスを使って壁に投影し説明することができる。
この機能は第一層の裏ボスの存在を、『軍』や『蒼龍同盟』に伝達するために使われたことがある。
「なるほど。それとカオス級や皇帝級は、ホルス級とは少々違う戦闘隊形を取らなければならないようですね」
「ああ、そうだ。奴らはホルス級と同じく蜘蛛のような高機動性でありながら、内部構造が迷路のようになっている。一筋縄ではいかないぞ」
「わかりました、伝えておきましょう。あ、それとですね―――」
アーロイと荀彧は、この後のことについて話を繰り広げる。
その最中、リズベットやエギル、月英らが話し込んでいた。
「ねえねえ、周泰。その太刀どうよ!」
「ああ…非常に良い出来だ」
「でしょう?そりゃあ、趙雲が山ん中突っ走って取ってきてくれたものだから、すっごい強いわよ!」
「そして、俺が集めた資金に物言わせたからな。そんじょそこらでは、手に入らねぇ丈夫な奴だ。
これで機械獣共をぶっつぶしてくれよ!」
「ああ、感謝する……」
寡黙といわれる周泰だが、ただ単に話すのが苦手な印象だ。
その為鍛冶関係で武器に付与される能力値の調整のため、いろいろ周泰と話す機会が二人にあった。
忘れてはいけないのは、二人だけでなく月英や趙雲ともよく話す相手である。
周泰が求めたのは、仲間を守るための攻撃力はもちろん攻撃範囲の増加、ダメージ吸収のスキルだ。
無双OROCHI的に言えば、『風』『斬』『伸長』『天撃』『吸生』『勇猛』『誘爆』『地撃』だ。
ちなみに趙雲は真・三國無双5仕様なので、
『雷』『一閃』『吸奪』『精霊印』『真空波』。
それぞれ武将に特色がある。
そう、バージョンによって、戦闘に大きく幅が出る。
ダウンすれば体力が回復、特殊アイテムにレベル、多くの護衛兵とレベル11武器、護衛将と護衛獣・覚醒、
乱舞システムと殺陣、武器切り替えによる縦横無尽な戦闘、覚醒乱舞と武器の一新、奇襲と隠密・ステートコンボシステム。
真・三國無双~真・三國無双8まで、どれもこれも特徴的な長所と短所を備えている。
そのため選ぶに選べられないことが多くある。ただ、インタラクティブアクションは、共通で行える。
「それで、仁ダム……曹仁殿は私が施した機械仕掛けの武器は、お気に召しましたか?」
「む。うむ、この武器は中近の戦況に、如何なく発揮できている故非常に良いと思っている。
自分的に、もう少し取り回しが良くなってほしいものだ」
「分かりました。今すぐに、改良してきましょう!」
「い、いや、今は――」
「曹仁、月英の奴行っちゃったわよ?」
月英は曹仁と武器に関して話していた。
しかし曹仁の改善点を聞くやいなや、早急に35階へ曹仁の武器を借りて転移していった。
彼は今はいいと言おうとしたが、月英の行動が意外と速く声をかける前に消えてしまった。
あっけにとられる曹仁に、リズベットは苦笑いを浮かべる。
「陸遜殿は”7”方式ですか」
「ええ。そのほうが、攻撃手段が増しますので。寧ろ真・三國無双7にしないのですか?
護衛武将が付きますし、何より装備型スキル・武器スキル・護衛獣スキルが役立ちます」
「そうですね。軍団戦だとその方がいいでしょうが、私はよく独りで狩りに行っています。
5仕様の殺陣システムは、多対個において非常に有利な状況にしてくれます。
それに変えるのでしたら、無双OROCHIにしますね。
チャージ3や6に誘爆が乗りますし、属性も向こうの方が有用度が高いです」
「でしたら、今すぐにでも変えたらどうでしょう?」
「いいえ。有用性が高いほど、武器やスキル付与にお金が多くかかります。
なので、今はやらないつもりです」
趙雲と陸遜は、真・三國無双シリーズの仕様に関して談義を熱くかわしている。
実際シリーズが最新になるほど、武器制作などに尋常じゃないほど資金がかかってしまう。
だから武器制作を他人に任せることはないが、クラインがキリトとゲーム開始直後からの知り合いということで、
深く関係を作り上げお互いに、信頼関係を作り上げることができた。
この戦闘後、趙雲は無双OROCHIへ転籍する。
まあまだ先の話だけれども。
「それで?どこに行こうとしていたんだ?いくら何でも、今更過ぎるだろ?」
結構前までキリトとアスナがいた展望台に、サトシや孔明といった離脱作戦にかかわった人物が集結。
サトシは孔明に詰め寄る。
「ここでは話せませんね。それに、いくらサトシ殿でも内輪揉めは面倒でしょう?」
「そこらへんはよくわからない。でも、あのいつも笑っているキリトが、意気消沈しているんだ。
これは絶対なにかあるぞって。身近に困っている人がいれば、助けるのが普通だろ?」
「しかしこれは我々、ギルドの沽券と名誉のための情報封鎖です。
障子の奥に潜む目や耳があるかもしれません」
諸葛亮は言外でなくとも、普通に不可能という。
そうここで話すのは不可能なだけだ。理由は上記の様な誇りと情報だ。
こんな腹の探り合いが一部行われている最中、こんな純粋に心情と真情をさらすのは得策ではない。
「なんだよ!俺たちに言えない事なのか!?俺たちは仲間として友達として、そんなに信頼が置けないのかよ!」
「サトシさん、サトシさん」
情報を隠匿する諸葛亮に、サトシは感情に任せ激昂する。
しかしサトシの服の袖を、シリカが引っ張り意識を自分に向ける。
そしてシリカはサトシに、周囲から聞き耳や興味の目線を向けられていることをささやく。
「少し落ち着いてください。孔明さん、ユイちゃん、これでいいですか?」
「ええ。私は問題ありません」
「ありがとうございます、シリカさん」
さすがにこのままでは問題があるので、メールを使って情報を流した。
サトシとシリカは諸葛亮からのメール内容に、驚きを隠せないようだ。
サトシはダークという存在とその存在が、キリトの清涼剤になっていた事を知る。
シリカはダークの存在は既知であったが、まさかキリトに憑依していたことは夢にも思わなかったようだ。
しかもキリトの心のよりどころになっていることに、少々嫉妬してしまった。
(む。あの時のダークゼロ!冗談が本当になってしまうなんて……。ダメ…排除しないと……。
でも、キリトさんが必要って思っているのなら、仕方ないかな……)
ギリッと奥歯を噛む。その行為は隣にいるサトシからしてみれば、怪訝に価するものである。
なんというか…サトシは、一部データが少年のままの心情だから人の心の機微に疎いままでもあるんだ。
だから今回のように直情的になってしまう。
今までは波長の合う仲間とともに来たのだが、最近になって少々精神がくるってきているようで接し方や話し方等、
扱いが変化してきていて特徴を掴めない。
こういうこともあって、サトシはシリカやよく知るアーロイらとしか行動していない。
まあレベル上げに、趙雲と外遊していることもあるが。
「とにかく、よろしくお願いしますよサトシ殿、シリカ殿」
今後の『黒の英傑連盟団』の行く末は、私達の采配にかかっています、と諸葛亮は追撃する。
ユイからも威圧するような黒い笑みを向けられ、とんでもないことに巻き込まれたと二人は引いてしまった。
「お、おう!任せとけ!」
「お任せを。何かあれば、ユニゾンしますので」
「ガルッ!」
いつの間にかいたピナと二人は、諸葛亮とユイの策略に乗ることにした。
作戦は他者に知られないよう、内密に行われる。
基本的にメール系は、他人に見られないが文字を打つという動作は見えてしまう。
更に一年以上もSAOを体験している第三者からは、指の動きだけで何を選択しているのかという事がわかってしまう。
だから会話とメールを合わせた密会を、『風林火山』の孫策を巻き込んで執り行う。
「孫策殿も隣の戦場からお願いしますね」
「ああ、わかったぜ…!だけどな、さすがにこっちがヤベェ時は、手を貸せねぇかもしれねぇからな?」
「それで構いません」
諸葛亮とそばにいるユイの笑みは、ますます深くなる。
その様子を見て、サトシとシリカは若干引く。
なにせこの作戦は、行き当たりばったりでキリトの心情の裁量できまるのだ。
・・・
さて諸葛亮とユイがもたもたして計画を阻止され、『風林火山』の面々と邂逅している彼らが談笑している間、
『はじまりの街』内部の転移碑先の本部では『軍』主導の作戦会議が行われている。
いや作戦会議自体は終わっているので、それの最終確認のようなものだ。
「では確認しよう」
『軍』と呼ばれている『アインクラッド解放軍』の内政責任者であるシンカー。
彼がこの作戦会議を取り締まっている。
この場にはソロからギルド長が集まっており、皆が皆歴戦の猛者であるということを醸し出している。
そのおかげか、会議は滞りなく進み最終確認が行われる。
今回の裏ボスの最終確認は、一つのMAPを使うだけあって結構な手順があって混乱するものだった。
1:ボス出現後、プレイヤーは宣告通りの位置で待機する。
2:近代・現代兵器で、殲滅。
3:遠距離武器・未来兵器で殲滅。
4:ポケモンの遠距離攻撃の後、量産可能なキャラを突撃させる。
5:会敵すれば、後は任せる。
ただシンカーの簡易的な纏めのおかげで、ぐちゃぐちゃだった会議中の結論がわかりやすくなった。
「作戦区域は、西・中央・東・南と分けられる。また、戦闘の指揮は以下の者に任せようと思う。
西部は蒼龍同盟のギルド長、ディアベル・中央は黒の英傑連盟団の副長、アスナ。
東はアインクラッド解放軍の外交責任者、キバオウ・南はアインクラッド解放軍の内政責任者、俺ことシンカーに一任する!
もしも指揮系統が維持できなくなった場合、個別に戦闘というのも手だ。
さてみんな、生き残る覚悟はできたかな?」
シンカーは立ち台から皆の顔を見渡す。殆どの面子の表情は、今まで通り決意に満ちている。
ただこれまで大規模なものがなかったので、慣れていないプレイヤーもいるようだ。
顔面蒼白している。
その様子をみた彼は、彼らを元気づけるための餌を考えた。
そしてその餌は容易に考え付く。そう、今回のクリアボーナスの手段だ。
今回は25層が初、最近では48層の一部ボスで見かけたレートランキング形式だ。
レートランキングは、何か行動をするたびにポイントが加算されそれに見合ったアイテムがもらえるという物。
一応ランキングなので、一位という位置づけがある。
もちろんそれ以外の順位でも、アイテムがもらえる。
そのためレートという数値の加算の総計とランキングという総計による比較が、今回のクリアボーナスとなる。
シンカーはこの辺の仕様を、今まで知らなかったプレイヤーたちに語り掛けるように言う。
彼はもともとゲーム紹介実況のような仕事をしていたためか、話術に関しては心得がある。
そのおかげで、未知に怯えるプレイヤーの顔に光が差した。
ただ慎重なプレイヤーの不安は、全くぬぐえなかった。
まあ、そこまでして全てを拭うことはできないので、そこは頑張ってもらうしかない。
「色々積もる話もあるし、今日はここで解散だ。 えーととある協力者によって、裏ボスの目覚めが30分前になったと分かったら、
こちらからシステムで呼びかけるよ」
そういってこの場は一時解散する。
さて、この場は一応主戦闘区域に所属する主要プレイヤー達を見ていこうと思う。
「しっかし、すげぇよなぁ、キリト」
「何が?」
中央区域の最有力ギルドの長二人が、その場に邂逅する。
「約一万人とその他大勢のNPCが、一堂に会するんだぜ? 敵性資料によるとバカでかいロボットと来た。
さらにあのアーロイさんの機械獣が、NPCを狩っては仲間にして徐々にこちらに送り込んできている。
なのに全然落ちねぇ」
「嗚呼。確かにそうだよな。どんなに情報伝達が光量子だろうと、計算はそこまで早くないはずだ。
ぶっちゃけ、俺でもよくわからねぇな。 そういえば、このゲームとナーヴギアって、どこで開発していたんだっけ?」
二人が考えていると、そこに一人が割って入る。
「私の会社が大元ね」
「え、アスナって『レクト』のお嬢なのか?」
「えぇっと、開発に関係してるってだけなんだけどね?」
変に解釈させてしまって、頬を掻くアスナ。
この後長期戦になるわけであるし、このように身内の内輪ネタは委細忘れてしまうだろう。
彼女が下した大きな爆弾は、中々大きな爆発を生み出すわけだがこの場で聞いているのは二人だけ。
故にそれほど波紋は生まれなかった。
「まさかまさか、誕生秘話とかあんのか!?」
ゲームオタクなキリトは、アスナに詰め寄る。
更にクラインもそのマル秘情報を入手しようと、土下座してまでお願いする。
その光景にほかのプレイヤーの視線を集めてしまった。
流石にこのままではまずいので、アスナは人気の少ない場所に移動しようと二人に持ち掛け移動する。
「こんな展開、予想してなかったけど…まあ、減るもんじゃないし、いいかなぁって」
というわけで、アスナによる暴露と苦労話が出てきた。
茅場のプロジェクトへの投資金やら、有名な御曹司とのお見合い、初めてのVRの試み等色々聞かされる。
その中でキリトとクラインが興味を持ったのは、VRの体験者で最も貢献した人物に関してだ。
「義理の妹?」
「そうよ。私が妹がほしい!って強請ったら、お父さんと茅場さんが協力してVR開発協力と称した妹探しになっちゃってね。
それで孤児の一人を受け持つことになったのよ」
「へえ、どんな子なんだ?」
「凄く明るい子よ。名前はユウキっていうの」
なんでもVRに関して全ての事に興味が行き、わかりやすい体験の様子を語る様子は開発者に大好評。
おかげで数年も進んだと言われている。
また脳波と機器の一致がすさまじく、茅場よりユウキとか後に入って来るドナーの方がいいと言わしめるほど。
「まじかよ。すげぇな、アスナさんの家庭」
「まあ、無茶苦茶なのは、今も昔も変わらないんだけどね? あー、久々に話したけど、帰りたいなー」
そういうとクラインも少し現実の事を話す。
キリトも義理の妹がいて、向こうに置いてきたことを話して現実にさっさと帰らないといけない事を伝える。
流石にここまで順調にクリアしてきた。
これまで通り、NPCの皆と力を合わせていけば必ずクリアすることができると確信している。
ただ殺人ギルドが最近音沙汰無いことに、一抹の不安を抱えているキリト。
あとでユイと共に、捜索に出ようと決心した。
キリトやアスナ・クラインは、いつも通りの調子でボス戦に臨む準備ができた。
「俺たちは航空近接支援のあと、多脚生物兵器であるホルス級を電撃的に攻略する。
その際に関羽達に露払いしてもらって、俺たちプレイヤーはコア破壊のために駆け抜ける!
そしてルート攻略スキルを持った奴を中心に据え、コアを物理的に破壊する。
これが攻略手順だ」
『蒼龍同盟』のギルド長ディアベルは、三國無双の武将を含めた仲間たちと共に外の本戦闘区域にて、作戦会議や概要を伝える。
この事前計略の立案は、全体の思考や思惑を一定の方向に向けさせるのにうってつけだ。
もしもそれが疎かになれば、それぞれの思惑で動いてしまい状況についていけなくなる。
つまり何も知らないバイトに、仕事をさせるのと同じだ。
そんな右往左往させ、無駄に戦力を消費させないよう、今まで通りやってきたことをしている。
彼、ディアベルも、劉備達と出会って先頭に立つ者として君臨してきた。
そしてそれの真価が此処に問われている。
ディアベルの演説レベルの説明は、周囲の西部戦闘区域にいるプレイヤー達を湧きあがらせる。
「ディアベル殿も大きくなったものだな」
「ああ、こうやってみると、あれほど死ぬのが怖かった民が武器を手に取って戦うようになったあの時に似てるぜ」
「あの時は少々不甲斐なかった。皆を恐怖と絶望に追い落としてしまった。しかし、有れなくして、私の思いを実現することはなかっただろう」
「その通り。兄者はやるべき事をやったまで。そして犠牲以上の幸福や希望を、民たちに与え続けた」
「いや……私よりディアベル殿のほうが、うまくやっている。今後、共にありたいたいものだ」
劉備・張飛・関羽は、西部戦闘区域の司令部として配下リンドを含む皆に号令を下すディアベルに、己の過去を投影して懐かしんだ。
西部戦域は、ディアベルの演説で『蒼龍同盟』を中心に戦意が沸き上がっていた。
キリトが何故、恐怖心を持っているのか。
俺は黒鉄宮に送ったと思ったラフコフメンバーに、冒険している仲間を拉致られた。
そして、捕縛されている奴らの根城に来た。
「キリト君は、一人で何でもできると思ったの!?」
「あ、アスナ?」
「自分だけが生き残れればいいと、本気でそう思ってんのか?」
「クライン?」
「キリト、なんで一人できたんだ!」
「アーロイ、俺は皆が心配だから急いで……」
「確かにキリトさんは、私達を置いて一人でボス討伐に行けるほど強いです」
「シリカ!」
「なんで他の奴らを呼んでこなかったんだ! キリトは、そんなに俺たちを
仲間だと思ってないのか!」
「お、おい。エギル?」
「私達を必要としないのならば、私達はいりませんね。幻滅しました」
「趙雲!?」
「おいおいおい、嫌われたみてぇじゃねぇか、クロの剣士さんよぉ」
「……うそだろ……? な、なんでサトシと孔明が、ラフコフに……」
「信じられないんだよ、キリトが」
「キリト殿は、よく嘘を付かれます。そんな人物、信用足るわけがありません」
上記みたいのが、電子ドラッグで判断不明瞭な中見せられた幻覚。
更にボス戦でも、演出を用いてキリトを一人にして行き、自分が死んだのはキリトのせいだ!、といって敵側の死霊として出現するイベントも発生。
ほかにも美人局やハニートラップ、ネズハがおこなった鍛冶詐称等詐欺も行ったうえで、キリトの心をバッキバキにおりまくったからです。