*あらすじ、タグを追加修正しました。
ホグワーツ特急は無事到着した。どうやら城のすぐ近くにある魔法使いだけの村に隣接するホグズミード駅が降車駅で、そこからさらに移動して、ホグワーツへと向かうそうだ。
「イッチ年生はこっちだ!イッチ年生はこっち!」
大きな声に目を向けると、ランタンを掲げたハグリッドが、新入生を誘導している。在校生とは移動手段が違うらしい。
案内された先は、湖のほとりで、無数の小舟が浮いていた。複数人で小舟に乗り、湖から入るそうだ。そう聞いて見上げると、荘厳と言う言葉が最も似合いそうな、大きく立派な城が聳え立っていた。ホグワーツ魔法魔術学校だ。
「さあ皆!四人一組でボートに乗れ!出発するぞ!」
ハグリッドの先導のもと、数多のボートが湖上の城へと向かっていく。異国情緒どころではなく、もはや異世界情緒漂うようなその光景に、俺は目を奪われていた。
城へたどり着き、ハグリッドの案内で向かった扉の前にエメラルド色のローブを身に纏った妙齢の女性が立っていた。
「マクゴナガル先生、イッチ年生をお連れしました」
ハグリッドが頭を下げる。ここの先生のようだ。厳格そうな強い眼差しだ。
「ありがとうございますハグリッド。あとは私がやります」
マクゴナガル先生にそう言われると、ハグリッドは奥へと去っていった。
「さて皆さん、ホグワーツ入学おめでとう。私は副校長のミネルバ・マクゴナガルです」
そう名乗ると、マクゴナガルはホグワーツについて説明を始めた。
生徒は四つの寮に別れ、それぞれの寮で卒業まで過ごす。入学の際に組み分けを行い、それ以後の寮の変更はない。
各寮にはそれぞれ得点が配備され、学期中の行いにより得点が上下する。学期末の最終的な得点が最も多い寮には優勝トロフィーが贈られ、その年の最も優良な寮として称される。
大まかにはそんな感じだった。
「それでは、準備がありますので、しばらくここで待っていなさい。今のうちに、身形を整えておくといいでしょう」
そう言うと、扉の奥に去っていく。寮の組み分けの方法は伝えられていない。周囲にもそれがどういったものなのかと言う憶測がそこかしこから飛び交っている。
「僕は試験みたいなものがあるって聞いてるよ」
ロンがそういったのが聞こえた。確か彼には在学中の兄弟がいたはずだ。そして彼以外にもそういった輩はいるはず。なのにそれで納得していないのは、おそらく誰も真実を伝えていないと言うこと。入学の際にここでこうしてやきもきするのは通過儀礼のようなものなのだろう。気付けばすぐ近くにいたハーマイオニーは試験と聞いて、教科書に載っていた様々な呪文を暗唱し始めていた。やはり彼女は真面目だ。
「いや、試験的なものはおそらくないと思う」
俺がそう呟くと、周囲の奴らがこちらに視線を向けるのがわかった。目を向けた先の、見知らぬ東洋顔に片目銀目と言う風貌の俺を見て怪訝な顔をしている。大陸を挟んだ極東の島国と呼ばれているほど、ここからは遠い世界だから、珍しいのだろう。
「入学する人間の中にはマグル生まれもいるはずだし、俺たちはまだ公的に魔法を教わっていない。知識と経験がバラバラなのに、一律で試験はしないだろう。やるのなら、知識も技量も必要ない、適性を見るものではないだろうか」
そんな風に伝えると、周りから納得と感心が感じられた。冷静に考えれば分かりそうなものだが、皆緊張してるのだろう。ハーマイオニーも感心したようにこちらを見ていた。
「すごい、シノって頭いいのね」
「頭の良し悪しではない。落ち着いて冷静に考えれば、ハーマイオニーにだってわかったと思うぞ。無意識のうちに緊張していたのだろう」
「うーん、確かにそうかもね。でも貴方はずいぶんと落ち着いてるわね」
「まあ、色々あったからな」
我ながら、この年でこんなに達観してるのは非常に珍しいと思う。というかハッキリ言って不気味、異常な類なんじゃないかな、うん。
「そう。でもシノ、あなたの言葉遣い、ものすっごく堅苦しいわよ?」
「癖だ、使ってるうちに治るだろうと思って放置してたら定着してしまったのだ、気にするな。必要になれば直す」
そしてハーマイオニーは結構正直に物を言う。
その後、マクゴナガル先生が戻ってきて、扉の奥へと案内された。そこに広がっていたのは、驚くほど広い空間をもつ大広間だった。空中には無数の蝋燭が浮かび、天井には満点の星空が瞬いている。あれも魔法だろうか。
「魔法で天井に星空の景色を映しているのよ。本に書いてあったわ」
やはりハーマイオニーは知っていたか。あれは透過している訳ではなく、星空を映しているのか。
目線を下に戻すと、大きな四つの長テーブルに、在校生達が座っている。それぞれの寮毎にテーブル分けされているのだろう。その奥に、教職員用のテーブルがあり、各教師らしき人達が座っている。
その少し手前に、立派な椅子に何かが置かれている。あちこちがボロボロになった、物凄く年季の入った三角帽子だ。あれは一体なんだろうかと考えていると、その帽子が急に歌い出した。
『わたしはきれいじゃないけれど
人は見かけによらぬもの
わたしをしのぐ賢い帽子
あるならわたしは身を引こう
山高帽子は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
わたしはホグワーツ組分け帽子
わたしは彼等の上をいく
君の頭に隠れたものを
組分け帽子はお見通し
被れば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
勇気ある者が住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう
スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目標遂げる狡猾さ
被ってごらん恐れずに!
興奮せずに、お任せを!
君をわたしの手に委ね
(わたしに手なんかないけれど)
だってわたしは考える帽子!』
帽子の歌が終わると、広間全員から拍手が起こった。なるほど、さっきの歌は各寮の特色を上げていると言うことか。聞いた限りだとそれぞれに優劣はあまりないように思えるな。
「アルファベット順に名前を呼んでいきますから、呼ばれたら前へ出て椅子に座り、帽子をかぶって組分けを受けてください。アボット・ハンナ!」
いよいよ組分けが始まった。始めに金髪おさげの子が前に出た。緊張した面持ちで帽子をかぶると、目元まで隠れた。
『ハッフルパフ!』
少しの間の後に帽子が叫び、呼ばれた寮の生徒から喝采が送られる。ハンナと呼ばれた少女は恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに、その寮のテーブルへとついた。そうやって次々と名前が呼ばれ、組分けがされて行く。
「フジバヤシ・シノ!」
俺の名が呼ばれた。そういえば気にしてなかったが、HではなくFだったか。まあどうでもいいか。俺は前に進み、椅子に座る。なるほど、ここからは大広間の大部分が見える。つまり各寮のテーブルは全て見えると言うことだ。どこのテーブルからも好奇と期待の眼差しが向けられて、緊張しないわけがないわな。
帽子を被ると、頭の中に直接語りかけるように声が響いた。
『ほう、極東の民人か。こりゃ珍しい』
帽子にまで言われるとは。相当珍しいことなのだろう。
『まあな。それはさておき、ふーむ、お主もなかなか難しいのう……忍耐力に長け、聡い思考も持っておる。勇敢な心の持ち主だが、その影に一度狙った獲物は絶対に逃さない蛇のような精神をも宿しておる……ふーむ……』
おお、頭に浮かんだ言葉でやり取りできるのか。だから長い人も居たんだな。にしても意外な評価。つまりはあれですか?どの寮の適性も持っていると言うことですか?なんというかオールラウンダーなんだな、俺は。
『そういうことになるのう。ほう?お主、魔法以外の特殊な能力を身につけておるな。それも異なる二つの能力じゃ。いやはやなんと珍しいことか』
それは、俺の右目の能力と、忍術のことか?
『ニンジュツ……そう呼ぶのか。そうじゃ。その二つで相違ない。なるほどな、君はどの寮に入ってもそれなりに上手くやれる。しかし、お主の心の奥に眠る暗く深い溝。この存在がどう出るか……』
それは多分両親に捨てられた事なのだろう。ありがたいことに師匠という存在に拾われ、それなりに癒しのある生活はできていた。だが、その事実を忘れたことは決してないし、それがなければ今の自分はここにいなかっただろう。
『ううむ、その溝を癒せるところが最も良い所か。ならば………グリフィンドール!!』
熟考の末に叫ばれた寮名はグリフィンドール。勇猛果敢な獅子を象った寮だ。テーブルからは大きな喝采が起こり、俺を歓迎してくれた。
「グレンジャー・ハーマイオニー!」
列ににいたハーマイオニーが駆けて行った。待ちきれんとばかりに椅子に座り、そわそわしているのが遠目からでもわかる。利発そうな彼女のことだ、選ばれるならレイブンクローかグリフィンドールだろう。
『グリフィンドール!』
当たった。まあ四つのうち二つもあげてりゃどっちかが当たるか。
「ハーマイオニー、これからよろしくな」
「ありがとう、こちらこそよろしくね!」
組分けの椅子から駆け寄って来たハーマイオニーと挨拶を交わす。
「ポッター・ハリー!」
いよいよハリーの番か。と思ったら広間中が静まり返った。そして、ざわざわとした会話がなされる。「ポッターって、あのハリー・ポッター?」「例のあの人を打ち取ったっていうあの……?」などとあらゆる場所からそんな話し声が聞こえてきた。少し不安になってハリーの方を見ると、心底苦々しそうな顔をして頭を抱えていた。いや、あれは額か?しかし、頭を振り、帽子のところまで駆けて行く。帽子を被ると、大広間がまた静かになった。ハリーも他より長い時間がかかっていた。よく見るとハリーの口がボソボソと動いていた。何か帽子と会話をしてるのだろうか。幾許かの時間が流れた後に叫ばれた寮名は。
『グリフィンドール!!』
俺たちの寮だ。一瞬の静寂の後、爆発するかの如く喝采が起こった。少し離れたところにいた、顔が瓜二つの赤髪の二人は「ポッターを取った」と腕を組んで小躍りしていた。あれもしかしてロンの兄弟か?
ロンの兄弟と思われる二人組を見てたら、組分けを終えたハリーが俺の方へ駆け寄ってきた。
「シノ!」
「おめでとうハリー。七年間よろしく頼む」
「こちらこそ!よろしくね!」
ハリーは俺の隣に座り、お互いに笑いあった。
その後も組分けは順調に進んでいった。列車内であったカエルの飼い主ネビルは、俺たちと同じグリフィンドール。気障ったらしい白いマルフォイはスリザリンだった。ロンはグリフィンドールだったのだが、彼の場合帽子が頭に触れるより前に、フライング気味に叫ばれていた。あとで話を聞いたところ、成る程彼の家族全員がグリフィンドール出身なのだそうだ。
そうして全員の組分けが終わると、椅子と帽子が片付けられ、教職員のテーブルの中央に座っていた、真っ白な髪と髭を長く伸ばし、半月型のメガネをかけた老人が立ち上がる。あれ?あの人、見覚えがあるな……
「おめでとう!新入生の諸君、おめでとう!私が校長のアルバス・ダンブルドアじゃ」
あ、思い出した。師匠のところに時々来ていた魔法使いじゃないか。確か師匠も校長と友人だとか言っていたな。うちに来てた時はなんだかんだで挨拶できなかったが、あの人が校長だったのか。
「歓迎会を始める前に、一言二言言わせていただきたい。そーれ、わっしょい、こらしょい、どっこらしょい!以上!」
あ?何を言ってるんだあの人は。だが、ポカンとする新入生以外は平然と拍手をしており、あれが通常運転なのだと悟る。
視線を戻すと、テーブルは大皿に盛られた数え切れない料理で満たされていた。これも魔法か。便利でなんでもありなんだな魔法って。
どれもこれも美味い料理だった。掻っ込めるだけ掻っ込んだ。
しっかりとデザートまで食べ終わり、ふうと落ち着いたところで、皿の上の料理が消える。片付けまでやってくれるのか。楽だ。
視界の端でダンブルドアが立ち上がる姿が見えた。一同も雑談をやめ校長に向く。食前と同様に食後にも話があるようだ。ただし食前とは別に学校での注意事項の類だった。
「新入生の諸君。校内の森は立入禁止区域のため近づいてはいかん。今学期のクィディッチ選抜は二週目から始まり、参加希望者はフーチ先生にその旨を伝えると良い。授業の合間に廊下で魔法を使わないように。それと、死にたくなければ四階の右側の廊下には近づかないよう気をつけることじゃ」
最後に物騒なこと言い出しやがった。その廊下には死につながる何かがあるってのか?学校内にそんなもん作るなよ。
「では就寝時間じゃ。諸君、駆け足!」
俺が心と視線で突っ込んだが届かず、宴は散会した。各寮の代表者(監督生と呼ぶらしい)の引率の元、生徒はそれぞれの寮に向かう。グリフィンドールの監督生はパーシー・ウィーズリー。ロンの兄だ。校内は無数の階段が溢れ、中には気まぐれに動くものもあるらしい。あ、一個動いた。そうなるとまた動くまで待つか、遠回りをしなければならないらしい。正直無駄としか思えない。できるだけ多くの階段の位置を確認しながらついて行く。
途中、幽霊のような奴に出会った。他に多々いるゴーストとは少し違うようだが、まあ似たようなもんだろ。ピーブズと呼ばれたそのゴーストは、俺たちをからかうだけからかって去っていった。何だ今の。
そしてたどり着いたのは一枚の婦人の肖像画の前だった。「太った婦人」と呼ばれるこの婦人の肖像画が、グリフィンドール寮の入り口のようだ。
合言葉を伝え、入り口を開けてもらう。深緋色を基調とした、温かみのある談話室が広がる。奥には二つ階段があり、男女それぞれの寝所へ向かっているそうだ。すでに部屋はあてがわれており、疲れの溜まっていた俺たちは、それぞれのベッドに入るとき泥のように眠りにつけた。
補足しておこう。俺も疲れのおかげか、ベッドに違和感を覚えずに眠ることができた。一安心だ。
続く
ここは順当に獅子寮としました。
補足4:他寮にした場合の、原作主人公組との絡ませ方が思いつかなかったんです……