翌日、ルブランに懐かしい風景が甦った。
「れんれん! おっかえり~!」
高校卒業後、荻窪のラーメン屋で修行を始めた竜司が、蓮に抱きつく。
相変わらずストレートな感情表現だ。
竜司としては陸上への未練もあったが、足の状態がやはり芳しくなく、一念発起してラーメン修行に転じたのだ。
まあ、それは母に負担をかけまいとする竜司の優しさもあってのことだろうが。
「おかえり、蓮」
志望通りの大学に進学し、日々勉学に励む真が蓮に微笑みかける。
大学生となって、少しは堅さが取れてきた感じか。
密かに蓮への思いを持ち続けている真だが、今は春と過ごすことが多く、いい親友関係を築いている。
「また一緒にコーヒー飲めるね!」
別の大学だが、春も真と同様に都内の大学へ進学。
無邪気な春の言葉だったが、蓮を慕う皆はそれぞれ敏感に反応したようだ。
もちろん、真の気持ちは知っている春だが、実は春自身も蓮に対して特別な感情があることは否めない。
「よ~~っし! じゃあ今日は鍋パーティーだ!」
そして元気に秀尽学園高校へ通う双葉が、皆の背中をバンバンと叩き歩く。
もう、引き籠もり体質はすっかり影を潜めている。
そんな仲間たちを、カウンターの向こうから惣治郎がにこやかに見つめる。
蓮や双葉同様、他の元・怪盗団のメンバーも惣治郎にとっては家族同様と言っても良かった。
それほど、大きな壁を乗り越えた絆というものは、深く強いものなのだ。
「みんな、久しぶり。……杏は?」
「あ~、高巻は今アメリカだってよ、ア・メ・リ・カ!」
「モデルの仕事?」
「ああ。しばらく帰れねーみたいだから、お前によろしく言っといてくれとさ」
腐れ縁なのか仲睦まじいのか、竜司と杏のホットラインは健在のようだ。
「……ん? 祐介もいないようだが」
「ああ……」
蓮の言葉に、真が少し強張った表情になる。
そして双葉がひと言。
「アイツ、今行方不明だ」
「行方不明?」
怪訝な顔つきになる蓮の肩をポンポンと叩きながら、竜司がフォローする。
「な~んか芸術修行だとか何とか言って、山へ行っちまったんだよ」
「山?」
さらに真が説明を加える。
「少し壁にぶつかったみたいで、山籠りして自分を見つめ直すんだって。……携帯もつながらないんで、一体どこにいるやら」
「でも喜多川君なら、大丈夫じゃない?」
あくまで無邪気に笑う春。
「……全く、変態のやることは分からん!」
ふてくされたように、双葉がカウンターの奥へと入っていく。
「そうか……。じゃあしばらくはこのメンバーってわけだな」
「ん? ああ、そうだな! かつて熱い戦いを繰り広げて世界を救ったヒーローたち、だな」
「いや……、ん、まあいい。よし! 鍋にするか!」
一瞬神妙な表情となった蓮だったが、再び笑顔になって鍋を探す双葉の方へと向かった。
ただ、その一瞬の違和感を真は敏感に察知した。
そして、カウンターの中にいた惣治郎も……。
(つづく)