いつまでも、どこまでも(惣主)   作:ミカヅキ&千早

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第6話「母の記憶」(ミカヅキ)

 その夜、蓮は懐かしい夢を見た。

 子供の頃によく遊んだ公園、友達、そして家族……。

 その中心にいたのは、やはり蓮が最も甘えた人だった。

 

「……おかあ……さん」

 

 ひと筋の涙とともに、蓮は目覚める。

 寝不足の目には、朝陽がとても眩しい。

 ゆっくりと起き上がると、モルガナがいないことに気付く蓮。

「もう、下りたのかな」

 

 着替えを済ませ、顔を洗って一階のカウンター席へと座る蓮。

「おはようございます」

「おお、おはよう。……眠れたか?」

「一応……」

「そうか」

 そう言う惣治郎の目も心なしか赤い。

 やはり、あまり寝ていないようだ。

 蓮は、そんな惣治郎の顔を見るや申し訳なさでいっぱいになり、泣きそうになるのを堪えて立ち上がる。

「俺、コーヒー淹れますよ!」

「ん? 大丈夫なのか?」

「多分……」

 勢いよく言ったものの幾分自信なさげな蓮の頭を、惣治郎が優しく撫でる。

「いいだろ。やってみろ」

「……はい!」

 

 二人が入れ替わり、惣治郎はカウンターの椅子に腰掛ける。

 そして、蓮はコーヒー豆の選別に入る。

 朝陽が、ルブラン一階扉の隙間からも、差し込んできた……。

 

  *

 

「……ここは」

 

 祐介が目を開けると、眼前には大柄の男が立ちはだかっていた。

 しかし、薄暗い部屋でその顔はよく見えない。

 

「だ、誰だ? ここは……どこなんだ?」

 まだ衰弱した身体が思うように動かない祐介。

 その祐介を男はジッと見つめる。

 まるで、その全身を品定めするかのように……。

 

  *

 

 朝食を終え、蓮が四軒茶屋の駅へと歩く。

 細い路地の両脇には、懐かしい店が立ち並ぶ。

 と言っても、僅か一年のブランクだ。

 そうそう変わっているはずもない。

 しかし、何故か蓮の目には何年も前に見た景色のように映る。

 

 そして、角を曲がったところでふと立ち止まる。

「……ん? こんな場所、あったかな」

 目の前に広がった風景は、ぼんやりとしているが暖かい、実に心地良い青だった。

 ゆっくりと歩を進める蓮。

 と、その隣に一人の少女が現れた。

 

「君は……」

 

 そう。

 昨夜ルブランに現れた青い帽子の少女・マリーだった。

 

「私はマリー……だったと思う。多分」

「何それ。自分の名前だろ?」

「私が付けたワケじゃないし、誰かが勝手に呼んでただけかもしれないし……」

「なるほど」

 

 マリーの支離滅裂な言葉を、何故かあっさり受け入れる蓮。

 そして、二人は淡いブルーの小路を抜け、広々とした空間に出た。

 そこは、昔蓮がよく見ていた、近所の公園の景色だった……。

 

  *

 

 ガシャン!

 

「おっと、しまった!」

 惣治郎が手を滑らせ、コーヒーカップを落として割ってしまう。

「あ~あ。コレ、あいつの愛用だったのになあ」

 無念の表情の惣治郎。

 と、入口近くでガタッ!と物音が。

「ん?」

 

 惣治郎が近付くと、サユリの絵が額ごとズレて落ちそうになっていた。

「何だ? 地震でもあったか?」

 訝しげにサユリの額を直す惣治郎。

 と、額の中のサユリが、惣治郎に何かを語りかけてきた。

 

「な……、何だ……!?」

 

 

(つづく)

 

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