いつまでも、どこまでも(惣主)   作:ミカヅキ&千早

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第8話「サユリが語るもの」(ミカヅキ)

 祐介の目の前に立ちはだかった男は、腕を組んでジッとこちらを見ていた。

 辺りは暗く、その表情は読み取れない。

 しかし、何故動けないのだろう?

 

 と、別の誰かがその男に声を掛け、何やら話し込む。

 俺は……一体?

 

「じゃあ、いただいていこう」

 

 途端、目の前が真っ暗になった。

 そして、寝ていたベッド(?)が激しく揺さぶられる。

 何だ? 地震か!?

 

 やがて揺れは止み、今度は小刻みな振動が全身に伝わってくる。

 それが小一時間ほど続いた後、またも大きな揺れが。

 くっ! 俺は……どこかへ連れてこられたのか!?

 

 ふと、目の前がパッと明るくなる。

 そこは見慣れた場所だった。

 確か、ここでよくコーヒーを飲んだような……。

 そうか! ルブランだ! ルブランの扉近くの席、俺がよく座っていたあの席だ!

 しかし妙だな。

 相変わらず身体は身動き一つ取れない。

 そして、何やらテーブルを少し上の方から見下ろしているような感じだが……。

 

  * * * *

 

「蓮を探すと言っても、はてさてどうしたもんか……」

 

 サユリの願いを聞いてやりたい惣治郎ではあったが、皆目見当が付かない。

 それでも、かつて不思議な現象をいくつも見せられただけに、何とかなりそうな妙な予感はあった。

 そして、その予感は的中する。

 

「こんばんは」

 そこへ入ってきたのは、昨日祐介を運んできてくれた天田青年だった。

「君は……。どうかしたのか?」

「少し気になったもので……。大丈夫ですか?」

「大丈夫……とは言えねぇなあ。正直、ワケの分からないことだらけだ」

 そう言って、惣治郎は頭を抱えて椅子に座り込む。

「何か……力になれれば良いのですが」

「アイツを、探してくれねぇか?」

「アイツ?」

「蓮だ。君が昨日来た時いただろ」

「ああ、あの人ですか。あの人なら、先程駅前で誰かと一緒にいましたが?」

「何だって!?」

 天田の言葉に、思わず立ち上がる惣治郎。

「蓮が……いたのか?」

「はい。確か帽子を被った女性と立ち話していたように見えましたが……」

「そうか。じゃ、スマンが案内してくれるか?」

「分かりました」

 

 天田とともに、惣治郎は四軒茶屋駅前に向かう。

 その道中、惣治郎はサユリの涙について考えた。

 絵が涙を流す。

 その不思議さは、この際横に置いておこう。

 これまで散々不思議なことはあったはずだ。

 今更何が起ころうと、もう驚いている場合ではない。

 それより、『何故泣いていたか?』『何故赤ん坊が消えたか?』を考えるべきだろう。

 絵の女性の涙は、やはり母親としての涙だろう。

 母として、子を奪われたことに対しての悲しみ、そして救済の願い。

 それはやはり、あの祐介という蓮の友人が消えたことと関係があるのだろうか?

 あの絵はまさに祐介が持ってきたもの……だから。

 しかし、あの絵の女は『蓮なら助けられる』と言ってた。

 あれは一体、どういう意味なんだ?

 

 惣治郎の考えがまとまらぬ内に、二人は駅前に到着した。

 そしてそこにいたのは……。

 

「……えっ!?」

 

 

(つづく)

 

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