祐介の目の前に立ちはだかった男は、腕を組んでジッとこちらを見ていた。
辺りは暗く、その表情は読み取れない。
しかし、何故動けないのだろう?
と、別の誰かがその男に声を掛け、何やら話し込む。
俺は……一体?
「じゃあ、いただいていこう」
途端、目の前が真っ暗になった。
そして、寝ていたベッド(?)が激しく揺さぶられる。
何だ? 地震か!?
やがて揺れは止み、今度は小刻みな振動が全身に伝わってくる。
それが小一時間ほど続いた後、またも大きな揺れが。
くっ! 俺は……どこかへ連れてこられたのか!?
ふと、目の前がパッと明るくなる。
そこは見慣れた場所だった。
確か、ここでよくコーヒーを飲んだような……。
そうか! ルブランだ! ルブランの扉近くの席、俺がよく座っていたあの席だ!
しかし妙だな。
相変わらず身体は身動き一つ取れない。
そして、何やらテーブルを少し上の方から見下ろしているような感じだが……。
* * * *
「蓮を探すと言っても、はてさてどうしたもんか……」
サユリの願いを聞いてやりたい惣治郎ではあったが、皆目見当が付かない。
それでも、かつて不思議な現象をいくつも見せられただけに、何とかなりそうな妙な予感はあった。
そして、その予感は的中する。
「こんばんは」
そこへ入ってきたのは、昨日祐介を運んできてくれた天田青年だった。
「君は……。どうかしたのか?」
「少し気になったもので……。大丈夫ですか?」
「大丈夫……とは言えねぇなあ。正直、ワケの分からないことだらけだ」
そう言って、惣治郎は頭を抱えて椅子に座り込む。
「何か……力になれれば良いのですが」
「アイツを、探してくれねぇか?」
「アイツ?」
「蓮だ。君が昨日来た時いただろ」
「ああ、あの人ですか。あの人なら、先程駅前で誰かと一緒にいましたが?」
「何だって!?」
天田の言葉に、思わず立ち上がる惣治郎。
「蓮が……いたのか?」
「はい。確か帽子を被った女性と立ち話していたように見えましたが……」
「そうか。じゃ、スマンが案内してくれるか?」
「分かりました」
天田とともに、惣治郎は四軒茶屋駅前に向かう。
その道中、惣治郎はサユリの涙について考えた。
絵が涙を流す。
その不思議さは、この際横に置いておこう。
これまで散々不思議なことはあったはずだ。
今更何が起ころうと、もう驚いている場合ではない。
それより、『何故泣いていたか?』『何故赤ん坊が消えたか?』を考えるべきだろう。
絵の女性の涙は、やはり母親としての涙だろう。
母として、子を奪われたことに対しての悲しみ、そして救済の願い。
それはやはり、あの祐介という蓮の友人が消えたことと関係があるのだろうか?
あの絵はまさに祐介が持ってきたもの……だから。
しかし、あの絵の女は『蓮なら助けられる』と言ってた。
あれは一体、どういう意味なんだ?
惣治郎の考えがまとまらぬ内に、二人は駅前に到着した。
そしてそこにいたのは……。
「……えっ!?」
(つづく)