最弱と名高い手甲武器を、最強にする【凍結中】 作:ベクセルmk. 5
――――――――――――――――あの日の事はいつでも思い出せる。
それは1年と3か月前。その日は雪が降っているにも関わらず3人で外食をした。
今考えてみれば両親の仲は良くなく、柳の教育方針をめぐって対立していた。"今日から他人になるのだから今日くらいは仲良く過ごそう”。そう思っていたのかもしれない。
父が母にプロポーズした思い出のレストラン。歩いて行けるくらいには近く、しかし冬になってまで行くには向かないその場所。
食事を終え、家へと帰るその直後。一台の乗用車が自分よりも前を行く両親を撥ねた――――――――――――――――
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朝、目を覚ますとキッチンで物音がした。
葛城 柳は現在両親が暮らしていたマンションで一人で暮らしている。最初は母方の祖母の実家で暮らす話もあったのだが、現在通っている高校と遠い事や、住み慣れた場所を離れたくないという理由からこの家に一人で住んでいる。
「あ、やっと起きた」
先程までキッチンにいた人物がこちらまで向かってくる。
「何やってるんですか、柚葉先輩」
彼女の名前は田原 柚葉。母の妹の娘・・・・・・いわゆる従姉というものだ。
「む、なんで家に来てまで先輩呼びなの?」
「それより、鍵どうやって開けたんですか?」
このマンションの鍵を持っているのは現在柳しかいない。なのにもかかわらず柚葉は柳の住んでいるマンションの一室にどうやって潜入したのか。
「え?お母さんから合鍵貰ってるけど?」
訂正、もう一人存在した。
「由貴子おば様・・・で、先輩は何しに来たんですか?」
「せっかくのゴールデンウイークなのにいつまでも部屋に閉じこもってたら、頭からキノコ生えちゃうよ?出かけよようよ~!」
ニコニコと笑顔を浮かべながら話しかけてくるが、柳は無視して自室に戻り制服に着替える。
「自分、今日部活なんで。後抗真菌剤買ってきます」
着替え終わるや否や学校へ向かう。途中柚葉が何か言っていたと思うが気にしないことにした。
――――――――――――――――由貴子は昔から男が欲しかったらしい。柳を産んだ美佳を随分と羨ましがっていたと聞いたこともあるし、由貴子が遊びに来たときは可愛がって貰った。しかし産まれた柚葉は女で、あまり愛されていなかったらしい。
(そんな事情一切知らずに柚葉に甘えた結果が、これか)
昔から柚葉と柳は仲が良かったが、今ではそこまで仲は良くない。というよりも柳が一方的に避けている節すらある。
「俺みたいな
そう思っている内に学校につく。ここまでの所要時間は約30分。近いとかそういう問題ではないが中学の時は逆に遠かった。
途中購買で飲み物と朝食を買ってから旧校舎へと向かう。
「相変わらず、不気味な見た目をしている」
築100年のぼろい木造校舎。地震や台風が来ればひとたまりもない建造物だった。
柳の所属する部活は第二文化部。基本的に暇人の集まであり、旧校舎を根城とし、たいした功績も挙げず、学校にも貢献しない部活。なのにも関わらずいまだに存続し続けている。
実際には部長が生徒会役員を兼任したり、学校行事を率先して手伝ったりしている。
ドアの前まで来ると一つ下の男子生徒、横手が部室のドアの前で聞き耳を立てているのが見えた。
『ちょっ!やめてください!』
『いいじゃないですか・・・』
『ひゃっ!あ、だめ――――――――』
――――――――――――――――柳は遠い目をしながらドアを開ける。横手が顔を青ざめるが関係ない。
「ちょ、ちょっちょ!何してるんですか先輩!今いいところだったのに!」
横手が入るとそこには黒い髪に赤い目の女子生徒が赤面しながらソファーに寝そべっており、その上から染めてもいないのに銀色の髪をした少女が背中から肩にかけての部分を押していた。
「横手少年。うちはいっつもこんな感じだぞ」
「な、なんですか!それではいつも私がセクハラされてるみたいじゃないですか!」
「事実でしょう。男子からは敬遠されるほど美人なのに・・・」
彼女の名前は琴霧 奈那。第二文化部部長兼生徒会副会長を務める少女だ。女子の割には身長が高く見た目では“凛々しい”印象を与えるのに対し、中身は何処か抜けたおっとりとしたお嬢様なのだ。
「だ、だいたい鮎川さんが強引に・・・」
「鮎川に抵抗できずにマッサージのフリしたセクハラ受けてた貴方がそれ言います?」
「そーだ、そーだ!あたしばっかり悪役にするなぁ」
「お前は少しくらい反省しろ」
和ゴスにコスプレした少女を半目で睨みながら購買でも有名な“胸やけ必須フレンチトーストサンド”を頬張る柳。口全体に広がる甘さに満足しながらボリュームのあるフレンチトーストを飲み込む。
「倉木と笹葉は。来てないんですか?」
いつもテレビとその前のソファーを占拠してゲームをしている笹葉と、八人用の長机と椅子の一つに座って音楽を聴いている柳の悪友たちを探す。
「まだ来てないだけですよ。それより、レイドイベント参加するんですか?」
――――――――――――――――だったら、手伝ってほしいことがあるんですよ。
十月は仕事しかないのでこの一話だけかもしれません。
ああ、槍田(うつだ)