漫画家と主夫高校生のD×D   作:カチカチチーズ

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ひゃっはぁ!筆がノリに乗ってるぜぇ!
聖剣の中で一番有能なのは擬態だと思うよ!だって、剣以外の形になるやろ?暗殺とかに使えるやん。わんちゃんホルマジオみたいなのが出来そう。

ところでKSG出ないんですが。


十三頁

 

 

 

 

 

───ギャリィィイ

 

 

 甲高い金属の嘶きが響く。

 ぶつかり合うのは剛と柔。

 人気の無い林の中で彼らは互いの剣を振るい合う。

 片や無骨極まりない灰色の大剣で相手を押し潰さんと振るい、片や細くそこまで長くはない刺剣によりその大剣をいなしながら刺し殺さんと振るう。

 

 

「くっ……!!」

 

《ン、どうした切り姫。その程度か?》

 

 

 灰色の大剣を振るう青髪に緑のメッシュを入れた少女は苛立ち気な表情を顕にしながら、刺剣を振るう黒衣骨面の男、すなわちは死銃へと切りかかっていく。

 歳頃の少女が持てるような見た目では無い灰色の大剣を軽々と振るい怒涛の乱撃を行うがしかし死銃は軽々とその乱撃を受け流していく。

 それはさながら覚の様に彼女の心内を無遠慮に読んでいるかのようで、その骨面の赤い眼光も相まって彼女に僅かばかりの恐怖を抱かせていた。

 

 右からの薙ぎ払い、そこからやや下げつつ返し刃の切り上げからの兜割り。

 大剣というリーチと重みを利用しての連撃に対してやはり死銃は冷静に冷徹に対応してみせる。薙ぎ払いを跳躍により躱し、切り上げに対して大剣の腹に刺剣を合わせる事により力を加え回避、兜割りなど身体を半歩分横にズラす事で回避してみせた。

 それに彼女は軽く舌を打ち、いったいどのようにして、この目の前の存在に大剣を叩き込むかを思考を巡らしそんな彼女に死銃は嗤う。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖書に記された堕天使、コカビエルによる聖剣強奪事件。

 聖剣を強奪したコカビエルが向かった先は魔王の妹が二人もいる日本の地方都市であるここ駒王町。

 そして、今回聖剣をコカビエルより奪還する為に二人の聖剣使いがこの街へとやってきた。

 破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を与えられたカトリック教会所属の聖剣使いの少女、ゼノヴィア・クォルタ。

 擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を与えられたプロテスタント教会所属の聖剣使いの少女、紫藤イリナ。

 見目麗しい戦乙女が二人、白のローブを纏って夕暮れの街を歩いていく。全身を隠す純白のローブであるが傍から見ればなんとも怪しさ極まりない風体である。

 さて、そんな彼女らだがつい先程まで犬猿の仲、討つべき存在とも言える悪魔らの巣窟に足を運んでいた。しかし、それは決して悪魔らを滅ぼす為に足を運んだのではなく今回任務における不可侵条約に近しいものを結ぶ為に足を運んだのだ。

 教会上層部の不安の種。魔王の妹を通じて悪魔と堕天使による共謀。その確認も兼ねての不可侵の取り付けを行い分かったことは悪魔と堕天使は共謀してはいない事とプライドしか能のない紅い魔王の妹君は駆け引きというものを知らずそして自らの下僕の手綱も握れないという事であった。

 なんとも役立つ情報は得なかったがしかし、赤い竜の事が知れただけでも上々であろうか。

 

 ふと、二人の戦乙女その片割れゼノヴィアはつい先程の事を思い出す。

 魔王の妹の眷属との戦いを。自分たちの先輩にあたるという少年との剣戟、憎しみか何かで本来の能力を発揮出来ずに敗北した彼や相方の幼馴染であるという赤い竜を宿した少年。

 何か思うところがないというわけではないが、次関わるとしたら敵対してだろうと思いその時は確実に倒そうと考えて────

 

 

「ん?」

 

 

 その足を止めた。

 自分たちは今日のところはホテルへと戻る為に都心へと足を運んでいた、筈なのに。気がつけば自分たちがいるのは都心ではなく住宅街しかもそれの外れであった。

 明らかにおかしい、そして妙に静か過ぎる、そこまで思考が回ったところで相方が口を開いた。

 

 

「ゼノヴィア」

 

「どうした、イリナ」

 

 

 相方の小さな呟くようなしかし隣にいる自分に伝わるような声量の言葉に視線をやれば、イリナは前方を睨む。

 

 

「多分、そうなんだろうけどさ」

 

「あぁ、そういうことなんだろうな」

 

 

 短く詳しく言わずに伝わる程度にはコンビとしてやっている二人は前方にある廃教会に視線を合わせる。

 つまるところ、この異常事態を起こしている張本人がそこにいるのだ、と二人は理解した。嘗て幼い時分にこの街で暮らしていたイリナは知っている前方の廃教会は嘗て父と共に祈りを捧げていた教会の末路なのだ、とだからこそその胸の内で怒りを滾らせている。

 幼き頃の思い出の地に陣取る何者かに。

 故にイリナは紐のようなものを引き抜く、そうすれば紐は独りでにうねりそしてその姿形を全くの別物へと変貌させてみせた。

 不定形。否、自由自在あらゆる存在に自らを擬態する教会と天界が創り出した彼の騎士王が振るったという聖剣その贋作物。銘を擬態の聖剣。

 そして、ゼノヴィアもまたその背に背負っていた布で覆われた大荷物を晒す。

 無骨極まりない灰色の大剣、しかしそれに込められたるは破壊の意思。イリナのそれと同じ聖剣(エクスカリバー)シリーズの一振り、その銘を破壊の聖剣。

 

 教会より与えられた聖剣を手にして二人は廃教会へと疾駆する。

 罠?無論、理解してるとも。

 だが、それがどうした。罠如き一切合切乗り越えて見せよう、正しく若く経験不足としか思えぬ判断で廃教会という明らかな罠へと二人の戦乙女は乗り込んだ。

 

 

 

「…………っ」

 

「これは……」

 

 

 乗り込んだ先に広がるのはボロボロの内装、カーペットはほとんど剥げ、長椅子は無残にも砕かれ、聖像はそのクビ所か胴から上は見事にどこかへ消え去りステンドガラスなどはほとんど割れている。もはや、紫藤イリナの思い出は何某かにより無残に踏み躙られた後である。

 なんと悲惨、なんと憐れ。さしもの誰かもこれには些か同情を覚えるであろうがしかし────瞬間、彼女らの背後つまり聖堂の扉は勢いよく閉められた。

 

 

「っ!?」

 

「くっ、閉じ込められたわけか」

 

 

 扉に触れるまでもない。

 こんな状況なのだ、閉じ込められたのは簡単に理解出来る。無論、窓があるわけでやろうと思えば簡単に外へ出れるわけなのだが……二人とも敬虔な信徒である為か、聖堂の窓を割るというのは少し気遅れするのだろう。

 だが、敵はそんな彼女らの心内など別に興味は無くて……

 

 

 次の瞬間には二人の側面、つまりは壁側が盛大に吹き飛んだ。

 

 

「なっ!!??」「何!?」

 

 

 土埃を撒き散らしながら、何かの駆動音を響かせて吹き飛んだ壁側から一体の何かが飛び出してくる。

 全体的に茶っ気の装甲に所々黒いパーツがはめられた大柄の全身装甲。1メートル近くはある装甲盾とメイスを持った装甲兵すなわちは、『Aegis』敵対者を棺桶へと沈める者である。

 

 

「何これ!?」

 

「コイツは……まさかっ!!」

 

 

 『Aegis』がその脚裏に備え付けられている駆動輪を動かして、まるで氷上を滑るようにそして暴走車輌が如く二人へと突っ込んでいく。

 それに対してイリナは驚きつつも跳躍し、ゼノヴィアは『Aegis』を知っているのか何やらイリナとは違う意味での驚愕を見せてイリナとは別方向へと避ける。

 だが、その判断は失敗だったのだろう。

 イリナが飛び退いた側の壁が吹き飛びそこよりもう一体の『Aegis』が現れたのだから。

 

 

「嘘っ、二体目!?」

 

《いや、三体だ》

 

「っぁ……!」

 

 

 二体目の『Aegis』にイリナが驚くと同時にゼノヴィアへとそれが現れた。

 天井より落下し、そのままゼノヴィアの首を掴み窓へと投げ飛ばすのは黒い外套に髑髏の面を付けた男。ああ、つまるところ死銃『Sterben』である。

 死銃はそのまま投げ飛ばされ窓を割り、廃教会の隣にある林の方へと飛ばされたゼノヴィアを追う為に窓から聖堂より姿を消した。

 聖堂内に残るのは二体の『Aegis』にイリナ。そして、『Aegis』が崩して出来た穴より侵入する三体目の『Aegis』とサブマシンガンを所持した二体の雀蜂。

 此処に五対一という場が作られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木を蹴りつける。

 その手に握るのは刺剣。

 聖剣使いの片割れにして筋力振りのゼノヴィアへと迫りながら、どうするかを考える。

 擬態の聖剣欲しいな、と突っ込んだはいいがしかしこのタイミングで擬態の聖剣を奪った所でコカビエルからあの腐れジャム野郎へと渡すように言われるのは目に見えている。

 それを考えるとこのタイミングでの強奪は不味い。色々と不味い。

 では、どうするか。それは後で考えよう。

 

 と、何度か木を蹴りつければ正面から大剣、破壊の聖剣を構えたゼノヴィアが突っ込んでくる。俺は刺剣を構えて、それを迎え撃つ。

 

 

「死銃────!!」

 

《ン、久しいな。切り姫》

 

 

 放たれる突きに対して、大剣の腹を転がる様にして回避し刺剣をその首筋へと突き付ける。

 が、しかし、それを咄嗟の蹴り上げで邪魔される。

 しょうがなく、俺は大剣の腹を蹴って距離を作り地面へと着地する。

 あちらも着地し、大剣を構えてこちらを睨む。

 

 

「何故、とは聞かん。傭兵だからな、貴様は」

 

《ン。そちらの方が助かる切り姫》

 

「だから、斬る」

 

 

 相変わらずな言葉に軽く肩を竦め、俺は刺剣を構え直す。

 うん、決めた。流石に殺しはしないが腕の一、二本は貰う。

 そうして、俺とゼノヴィア。どちらかともなく地面を蹴りつけ、目前の敵へとその刃を振るった。

 

 

 

────そして、冒頭へと至る。

 




ゼノヴィアと死銃は知り合い……まあ、仕事上関わる可能性もあるもんね

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