まあ、単純にレベリングが足らんのか。あとSG欲しい。
あと、アーキテクトとゲーガーいいね。そして、あちらのネタバレを見た事でとある人形が作れなくなった……残念。
聖堂内に残された紫藤イリナは思考の片隅で分断されたゼノヴィアの事を心配していた。
無論、目の前の五体もの難敵と戦いながらだが。
『Aegis』が三体、雀蜂が二体。機動力のあるタンクが三体その脚裏の車輪を唸らせながら三方向からイリナへと迫る。そして、それらの間を縫う様に雀蜂らがその手のサブマシンガンを吹かせる。
それは常に動かざるを得ない布陣であり、それはターゲットのスタミナを奪う為のものなのだとイリナは理解していた。だがまあ、それが理解出来ているからといってどうにか出来るわけでもなく、イリナはその手の
「もう!反撃が出来ない────!」
まるで無限に銃弾があるかのようにばらまく雀蜂、多少の味方撃ちですらまったく問題ではない『Aegis』らによるシールドアタックやメイスによる乱打。
明らかに攻撃力、防御力、手数に差がありすぎる。もしもここにいるのが自分ではなくゼノヴィアならば、とそこまでイリナは考えて歯噛みし納得する。
「だから、ゼノヴィアと私を分断したのね!」
破壊力重視の
『Aegis』はともかく雀蜂ならばある程度のゴリ押しさえすれば間違いなく確実にゼノヴィアは倒せるだろう。それさえすれば後は『Aegis』らだけ。
少なくとも逆転の目は生まれるわけだが、あくまでそれはゼノヴィアならばの話。今ここで五体もの人形と戦っているのはイリナである。
彼女では決め手がない。彼女ではこの状況を打開する為の火力が足りなさすぎる。
故に彼女はこの聖堂という名の虫かごを蝶のようにではなくバッタのように無様に飛び跳ねねばならない。雀蜂らに食いつかれないように、ゼノヴィアが救援に来てくれるその時を待つしかない。
無論、この聖堂から逃げるという手もなくはないが、間違いなくそれをすれば出る前に狙い撃ちにされるか、仮に出れても聖堂という閉所から解放された『Aegis』がその機動力を最大限に引き出して仕留めにかかるだろう。イリナは抜けてるところはあるが決して馬鹿ではない、その程度の事は理解しているのだから。
「ゼノヴィア……!」
だから、ここにはいない相方の身を案じて言葉が漏れた。
────────────────────
瞬間、林にて大きな振動と物音が響いた。
それは重たい何かが倒れた際に生じた様なモノで、事実木が倒れた。
どうして?そんなのは決まっている。
「ハアァッ!!!」
《脳筋め……!》
意気軒昂と、大剣を振るいゼノヴィアはこの林の木ごと死銃を叩っ切らんと言わんばかりに動き、それに対して先程までの受け流しでは面倒だと判断した死銃は木を蹴りつけながら回避に専念し始めている。
そうして、避ける度に木が砕かれ倒木しその上を死銃が跳ね、さらに木が粉砕されるという伐採場もかくやと言わんばかりの有様がこの場に広がっていた。
《ッ、予測外だ。ここまで、脳筋とは……》
「誰が脳筋だ!」
切り上げを寸での所で回避し、刺剣を捨てその手にショットガンを手にする。
KSGの引き金を引き、銃弾をばら撒きつつ後退────だが、やはり、ゼノヴィアはその大剣を振るう事でKSGの銃弾を弾き落とす。
死銃は軽く舌を打ち、倒木の足場を軽々とステップを踏みながら銃弾をばら撒いていく。
当たるものを大剣で弾きながらゼノヴィアはそんな死銃へと距離を詰めていく。パワーに頼った戦い方、決してイリナでは不可能なその戦い方をもってゼノヴィアは死銃へと迫る。
「死銃ッ!」
《やはり、Aegisらよりオレが相手で正解か》
そう呟いて死銃は腰元に付けている武装のトリガーを引く。そうすればその武装よりワイヤーが勢い良く射出され、ワイヤー先端部の楔が数メートル上の木の幹へと突き刺さり、その場を蹴り跳ぶ。
なお、その際にKSGはその先端を切断され使い物にならなくなった。
「なっ!?」
《さて、どうするか》
正直に言おう。
死銃もとい鴎はある意味勢いで彼女らの元へ来たわけで、その本心としては決してこの時点で聖剣を奪うつもりはほとんどなかった。鴎としては六割ほど冗談または退屈しのぎのつもりであった。残りの四割はともかく
さて、それではどうするか。そう、幹に寄りかかりながら眼下のゼノヴィアを見下ろしつつ死銃は考える。
いっその事ここでゼノヴィアを脱落させる────そんな考えが一瞬、死銃の脳裏に過ぎるがしかしそんな考えを心の中で嘲笑い一蹴する。そんな事すれば面倒になると死銃は理解している。いまさら、原作と違う展開になることに対して文句などありはしないが、別に現状のゼノヴィアは悪魔などではない。
故にわざわざ、ここで脱落させるつもりもない。
では、どうするか。そこまで考えて────不意に死銃の視界に光が迸った。
《ッ……!》
「ちょこまか、と……!!」
回していた思考より戻り、ゼノヴィアを改めて見る。
光は彼女の手に……いや、彼女が握る大剣に。
そう、灰色の大剣、『破壊の聖剣』がその刀身に聖なるオーラを滾らせている。戦闘時に考え事をしていたのが、大きな仇となった。内心で死銃は自身を叱責し、どうするかを反射的に考えていく。
既に止めることは不可能。
破壊の聖剣はその名の通り、与えられたその属性を発揮するべくその力を収縮している。
「動くな。吹き飛ばしてやる」
《動くな、と言われて動かん馬鹿が何処にいる……!》
身体を捻りながらもその視線は死銃へと向けて、ゼノヴィアは薄く笑う。
そもそも死銃がAegisらではなく自分自身でゼノヴィアに当たったのか、その大きな理由は手数の問題だった。
今のような聖剣の溜めを行わう時間を奪う為に手数を求めた、Aegisらではなるほど聖剣の溜めの時間はないだろう。しかし、ゼノヴィアという脳筋のゴリ押しであれば
故にこうして死銃がゼノヴィアにあたったわけだが
《(余裕ぶっこいて聖剣使われるとか、馬鹿丸出しだろうが)》
「『
瞬間、聖剣が地面に叩きつけられた。
そうして解放されるのは破壊の光。ゼノヴィアと聖剣を中心に半径数十メートルもの破壊の光によるドーム状の爆発、否嵐が巻き起こる。
死銃はそのドームより逃れようとしたが、ああ、悲しいかな木々を破壊しながら膨れる為に破壊された木々に巻き込まれ邪魔されながら、死銃は鴎はドームへと呑まれていった。
教会勢力における切り札の一つとも言える
無論、そこには死銃の姿などどこにも無く。
「はぁ……はぁ……」
林の中でゼノヴィアの荒い息づかいばかりがやけに響く。
思いのほか、聖剣の力を使うのに体力を消費したのだろう。肩で息をしながら大剣を下ろして、ゼノヴィアは息を整え始める。
「奴は…………逃げられた感覚はない、間違いなく巻き込んだ筈だ……」
間違いなく、死銃は破壊のドームに呑み込まれた。
そして、塵一つ死銃の痕跡がないとなれば、それはすなわち死銃が塵一つ残さず『破壊』されたということに他ならない。
知己の人間が死ぬ、それは彼女らの世界では有り触れた────とは言えないがそれでも有り得ること────である以上、気分が良いものでは無い。それが自分の手でやった事ならば尚更だろう。
故にゼノヴィアはせめてこれぐらいは、と言わんばかりに胸の前で十字を切って────
一瞬、空間が歪んだ。
「ッ…………がァッ!?」
その歪んだ空間にゼノヴィアが違和感を覚えれば、その一拍後にゼノヴィアはくの字に身体を曲げてその場から吹き飛ばされた。
「ぅぁ……いっ、たい……」
痛む鳩尾を抑えながら、ゼノヴィアは先程まで自分が立っていた場所を睨みつける。そうしていると、その場で空間が再び歪み、そこよりそれが現れた。
それは
茶っ気の全身装甲の戦術人形すなわちは『Aegis』
どうしてここに。そんな考えがゼノヴィアに過ぎった。いや、それ以前に何故に唐突にそこへ現れたのかそれが理解出来ない。
メタマテリアル光歪曲迷彩。それこそが『Aegis』の姿を隠していた真実であり、そして……
《────
『Aegis』の盾の内側より身体を出す死銃。
その姿はほぼ無傷。
そう、なぜならばあのドームへと呑まれた瞬間に死銃は自身の神器の力を使い自分を盾というシェルターに押し込む形で戦術人形を召喚したのだ。
故に無傷。
そして、仕留めた瞬間という大きな隙をついて『Aegis』のメイスがゼノヴィアを殴りつけたのだ。
吹き飛び鳩尾を抑えるゼノヴィアは当たり所が悪かったか、その場で気絶。
だがしかし、死銃はそんな彼女に背を向けて、指示を飛ばしていく。
《帰る。お前達はそのまま撤退。オレは迎えで帰る》
そう言って『Aegis』を下がらせ、死銃はそのまま林の外へと向かって歩いていく。
ちょうど良かった。
そんなふうに考えながら、林の外にて止まっているモノを見つける。
「よう、指揮官。迎えに来たぞ」
《M16》
眼帯に黒い長髪を三つ編みにした少女。
名をM16A1。死銃の指揮下にある
《見られてないだろうな》
「監視カメラも使い魔も覗き見も何も無いさ」
《ならいい》
そう言って、死銃はM16の乗るバイクの後部に座りこの場から離れていく。
「なあ、指揮官。ラーメンでも食いに行かないか?」
《…………お前なぁ……》
はい、結果ゼノヴィアは思いっきりメイスで殴って気絶させました。
きちんとこの後、イリナに回収されたました。
次は少しUNDEADを進めるのでまた時間がかかりそうです。