漫画家と主夫高校生のD×D   作:カチカチチーズ

22 / 62
木場対鴎ファイっ!

焼き鳥と豚骨ラーメン食べたい!


二十二頁

 

 

 

 

 

 その手に握るのは一挺の銃剣銃。

 本体である銃の種類はスプリングフィールドM1903と呼ばれるボルトアクションライフル。六十年程昔に生産を終了したある意味骨董品とも言うべきライフルであるがしかし、無意味に死銃は持ち出すことは無い。

 事実、死銃にとってライフルという区分の中ではこのスプリングフィールドに大きく信頼を寄せている。それはこのライフルを元とした戦術人形との関係にも現れており────いや、そんな事よりも彼ら悪魔にとってこのスプリングフィールドは先程から寒気を起こさせる何かだった。

 

 

「……っ」

 

《聖魔剣、カッコイイな。どうした遊ぼうぜ?》

 

 

 髑髏の死面で木場祐斗を挑発するようにせせら笑いながら、死銃はスプリングフィールドに銃弾を装填する。

 選んだのは対人外用に用意した堕天使から得た技術を使用した汞弾ではなく、対重装甲魔獣用に作成したナショナルマッチ徹甲弾。またの名を特殊な技術で作成したタングステン合金を使用した呪装徹甲弾(カースドアーマーピアシング)

 明らかに過剰武装であるそれを装填し、軽く数歩進んで────

 

 

《―――》

 

 

 躊躇い無くその引き金を引いた。

 揶揄う様な仕草からの俊敏な構えへの移行に加えて、それなりに近めの距離からの射撃。

 それは『騎士(ナイト)』である木場祐斗だからこそ辛うじて反応出来るモノでギリギリのタイミングに放たれた銃弾を聖魔剣で弾く。

 だが、その成功に代価は高くついた。

 僅かながらに反応が遅れた為か、弾いた聖魔剣はその刀身が見事に砕け散り、木場祐斗の腕に反動を残した。

 そんな結果に木場祐斗は表情を曇らせながら、両の手で新たな聖魔剣を作成し、死銃へと駆ける。距離は『騎士』という駒の性能からして二、三歩で詰められる程度のもの。

 そんな木場祐斗に対して、死銃は素早いリロードとバックステップを数度行いながら射撃し牽制する。

 今度こそは、と木場祐斗は弾くのではなく上手くいなす事を決め、剣先で微妙に銃弾の先端をずらす事で回避するがいなした際の衝撃は刀身を通してその両腕へと走り抜ける。

 

 

「……まだ、だ」

 

 

 加速する。

 それにより木場祐斗は死銃の目前へと迫る。スプリングフィールドを構えて引き金を引くには距離はやや足りず、木場祐斗の聖魔剣を振るうには丁度いい距離。

 逃げるには速度が違う。故に回避は不能、そう判断した木場祐斗は聖魔剣を振るい────

 

 

「なっ……!?」

 

《馬鹿が》

 

 

 聖魔剣と身体の隙間にスプリングフィールドを横に構えた状態で差し込み左からの攻撃を防御、右からの攻撃は素早く引き金を引く事でそのまま刀身を破壊する。

 木場祐斗は銃というものを使った経験が無い。

 だから、銃の強度というものは知らない。だがしかし、だからといって禁手に至った神器で作成した聖魔剣を弾く様な銃があるのだろうか?

 その答えは簡単だ。

 年季が違う。

 

 

《歩ける様になった赤子が競えると思うな!》

 

 

 スプリングフィールドをそのまま押すことで、木場祐斗の体勢を崩しすぐさま軽く跳び上がって蹴りを木場祐斗の側頭部へと叩き込む。

 

 

「っぅ……!!」

 

 

 瞬時に聖魔剣を間に入れたからか直撃はしていない、だがその代償に聖魔剣は砕け飛び散る破片。それによって木場祐斗は傷つく。

 思わず片目を瞑ってしまった木場祐斗に死銃は嗤い、蹴りの反動を利用しそのまま宙へと浮き上がる。

 その際に片足を木場祐斗の顎へと引っかけにかかる。

 

 

「私を忘れるな!」

 

《ッ》

 

 

 しかし、足は引っかけること無く横合いから突き出された大剣に触れる前に引っ込め、その腹を蹴りつけて木場祐斗から距離を取り直す。

 剣のリーチから外れ、銃のリーチへと佇みながら、即座に新たな銃弾を装填する。

 その流れるような動きは一分の隙もなく、例え本気で木場祐斗が突貫したとしても斬りかかる頃には装填は終わっているだろう。

 

 そんな死銃を睨みながらゼノヴィアは二振りの聖剣の内、『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』をデュランダルを引き抜いた空間の歪みへと放り込み両手でデュランダルを握り直した。それは手数ではなく堅実さを求めたが故の判断なのだろう。

 

 

「どうした、そんな所で止まってないで突っ込んでこいチキン」

 

《剣相手に突っ込むとでも?》

 

 

 ゼノヴィアの挑発に対して死銃はそう返し、すぐさまスプリングフィールドを構え引き金を引く。

 放たれるのは三つの銃弾。それをゼノヴィアはデュランダルで受け止める。流石はデュランダルと言うべきだろうか、聖魔剣を砕く銃撃を三度受け止めても傷一つ付かず、だが威力は殺せなかったかゼノヴィアは顔を顰める。

 そんな彼女に死銃は嗤い、更に続けて引き金をを引こうとしてその場を飛び退いた。

 

 

「魔剣よ!」

 

 

 その言葉と共に死銃目掛けて地面から無数の魔剣が生え出てきたからだ。

 視線の先にいるのは木場祐斗。間違いなくこの現象は彼の神器(セイクリッド・ギア)である『魔剣創造(ソード・バース)』のそれだろう。

 例え禁手に至っていてもすぐには聖魔剣をこの魔剣のように生やす事は出来ないようだ。と言ってもあくまでそれは大量にという言葉が頭にくるだけであり、実際は所々聖魔剣が混じっているのが確認出来た。

 

 

《使えるようになったから、となかなか大判ぶるまいだな。ほら、折ってやる》

 

 

 地面に着地したと同時に死銃は迫り来る魔剣群の方向へと軽い踏み込みをすれば、それと同時に木場祐斗の魔剣のように地面から無数の武器が生え出て魔剣群とぶつかり合う。

 無数の多種多様な武器は魔剣のような特殊な力は備えていない。だが、それらは間違いなく神器『武器製造(ウェポン・ワークス)』によって作成された普通ではない武器である。

 創造系神器において被造物は神器の格と練度、所有者のポテンシャルといった諸々によってその性能が大きく変わる。例えば創造系神器の頂点に位置する『魔獣創造』など所有者のポテンシャルもとい想像力が未熟では如何に格が高かろうとも大した力は振るえない。

 さて、ここで『魔剣創造』と『武器製造』を比較してみよう。片や魔剣、片や武器。

 先も言ったように後者は特にこれと言った特殊な力は備えていない、だがこの場において練度もポテンシャルも圧倒的に死銃の『武器製造』が上だ。

 何せ一度に数百を超える人形や武器を製造する事が多いのだから練度など比べる事などそもそも不可能だ。故に、生え出た武器群とぶつかり合った魔剣群は容易く破壊されていく。

 

 

「くっ……」

 

「やはり、あちらの方が上か……」

 

 

 砕け散っていく魔剣に表情を曇らせる木場祐斗に対し、やはりと予想していたゼノヴィアはどう動くべきかを思案する。

 そんな二人を見ながら死銃はスプリングフィールドの銃口を木場祐斗へと向ける。

 そうして引き金を引く。

 

 放つのは二発の弾。それに反応して、木場祐斗は二本の魔剣を創り出し銃弾を迎撃する為に放つ。

 銃弾は魔剣を砕いて、そのまま地面へと落ちる。それを確認する前に死銃は再度銃弾を装填しようとして────目前にまで迫った三本目の魔剣に身体を大きく背面に反らすことで回避した。

 何故目前に迫るまで気が付かなかったのか。それを死銃は心中で考えるが反らす際に視界の端に見えた三本目の魔剣を見て理解した。

 それは暗色、限りなく暗い魔剣だった。

 つまるところこの夜闇に混じるような色合いの魔剣を放つ事で不意を打って見せたのだろう。そして、目論見通りかどうかは分からないが作る事の出来た生じたその隙に木場祐斗は駆ける。

 

 

「聖剣も倒してみせた、僕の、僕らの聖魔剣ならば例えキミの様な奴にだって―――」

 

《負けるわけがないとでも言うつもりか》

 

 

 背面に反った身体が戻る前に木場祐斗がその手の聖魔剣を叩きつけるように振るう。

 それに対して、死銃はスプリングフィールドを振るって対応する。ライフルの銃身に銃剣が備わっている事でその刀身が聖魔剣とぶつかり合う。

 しかし、死銃の体勢が体勢だ。上から叩きつけるように振るう木場祐斗の方が力が伝わりやすい。そして、銃というのは存外に繊細だ。聖魔剣という特異な武器と打ち合えるわけがなく────

 

 

 

 

 

 

 だが、そんな道理をその剣は覆す。

 聖魔剣の刀身を銃剣が切り裂き、そのまま木場祐斗の肩を僅かに裂く。

 

 

「がぁッッ!!??」

 

 

 瞬間、そんなナイフでちょっと斬った程度でしかない傷がまるで焼き鏝でも押し付けられたかのように激痛と熱を木場祐斗へと叩きつけた。

 そのあまりの痛みに木場祐斗はその場で膝をついてしまい、体勢を戻した死銃がその傷口へと銃剣を突き刺しそのまま銃を固定する。

 それにより再び、先ほど以上の熱と激痛が木場祐斗を襲う。

 

 

「ァァァアアアアッッッ!!??」

 

 

 そのあまりの絶叫に、戦闘中でありながらリアス・グレモリーらは木場祐斗へと視線をやってしまうほどに。

 

 

「祐斗ッ!?」

 

《―――死ね》

 

 

 ゆったりと装填される銃弾。

 しかし、激痛には木場祐斗は動く事が出来ず、それを止められない。

 リアス・グレモリーらも止めに入るには間に合わない。

 で、あれば

 

 

「だから、私を忘れるなと言っただろうが!!」

 

 

 

 もう一人が来るしかない。

 木場祐斗の背後より飛び上がり空中から落下するデュランダルとゼノヴィア。

 木場祐斗をそのまま撃ち抜いたとしても間違いなくそれを回避する事は不可能。ならば対処するには木場祐斗への射撃を止めねばならない。

 しかし、だとしてもデュランダルを防げるかと言われればギリギリ間に合わないというのが答えであり、結局の所手傷を負うことは確定している。

 

 

 

《当たり前だ》

 

「―――!!」

 

 

 木場祐斗が声にならない悲鳴をあげる。

 撃ち抜いたのではない、そのまま銃剣が肩を斬り上げたのだ。

 そして、その勢いのまま銃剣はまるで鞭のようにその刀身をしならせ、伸ばしてデュランダルではなく空中のゼノヴィアへと襲撃した。

 

 

「何!?」

 

 

 驚愕の声と共に何とかゼノヴィアは身体を捻り、ギリギリの所で回避するが完全に回避する事は出来ず、浅くだがその肌を斬られた。

 

 

《悪いな》

 

 

 死銃は木場祐斗の襟首を掴んでゼノヴィアへと投げつけながら、死銃はスプリングフィールドから銃弾を排出する。

 装填した五発全て、排出しスプリングフィールドを無造作に振るう。繊細な銃器をぞんざいに振るうのは他者から小言を言われかねないがしかし、それはまったくもって問題がなかった。

 銃剣の刀身が、銃の銃身が、その形状をまるで粘土でも捏ねているかのようにぐにゃりと歪んで一振りの剣に変わった。

 ゼノヴィアはそれを知っている。

 木場祐斗はそれを知っている。

 

 

 

「何故、お前がそれを持っている」

 

「…………それ、は……」

 

 

 何度も鍛錬でぶつかり合い、何度も指令で振るわれるのを見ている。

 つい先日振るわれたのを見ている、同じモノとついさっき戦った。

 

 死銃、Sterbenがその手に握っているのは一振りの剣。

 

 悪魔を殺す聖なるオーラを纏う剣、すなわちは聖剣。

 

 その名を────

 

 

擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)。ああ、やっぱり使いやすくて、手に馴染む》

 

 




今回は戦闘オンリーでしたね。
まさか、これだけで四千超えるとは……
ちなみに好きなライフルはWA2000です!スプリングフィールドも普通に好きだけどね……あ、あくまで銃としての話ですよ?戦術人形云々なら、普通にスプリングフィールドの方が好きです。ツンデレもいいけどお姉さんの方がもっと好き……え?アサルトは魔境ですよ


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。