漫画家と主夫高校生のD×D   作:カチカチチーズ

29 / 62
 気が付けば書き終わっていた。
 そういえば、UMP40当基地に無事着任しました。だが、しかしいまだにビスマルクは母港にきてくれない。
 どうして……どうして……
 


二十九頁

 

 

 

 

 

 リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

 初代魔王ルシファーと悪魔の母と呼ばれるリリスとの間に生まれた息子。聖書においてはリリンという名で記されている彼は原作―――本来の歴史ではこんなところにいるはずのないの男であった。

 本来ならば、永遠とも感じられる悪魔生に飽き、生きる目的も見いだせず自堕落に生きる屍同然な暮らしをこの時点ではしている筈なのだが、しかしこの場にいる彼からはそのような気配は微塵も感じられない。

 それもそうだろう。

 いまここにいるのは本来の歴史のような未知の異世界で魔王になりユートピアを作ろうとする外道でも自堕落な生きる屍同然の男でもなく、たった二人のイレギュラーによって別の目的を見出した男なのだから。

 無論、性根が変わったわけではない。

 現にその悪辣さは変わっていない、だがその代わりほんの少しやり方を変えたのだ。テロリズムもとい非合法で行うから面倒なことになる、ならば合法的にやれば?いったいどこに責められる要因があるだろうか。

 例えどれだけ悪辣であろうが合法であるならば、正義でありどうどうと悪魔らしい行為に手を染められる。鴎によるちょっとばかしの甘言は間違いなくサーゼクスら現魔王にとって厄介な存在を作った。

 

 

 と、そんなことは置いておき、サーゼクス・グレモリーらの前に現れたリゼヴィムは嘲笑するような表情を浮かべながら、気さくに彼らへと言葉をかけたと思えば、セラフォルー・シトリーとその妹が去っていった方へと一度視線を向け再び口を開く。

 

 

「シトリー嬢は僭称しているとはいえ、魔王の立場だろう?にも関わらず、公の場で趣味に走るのは正直どうなのかねぇ?」

 

 

 そんな、普段の悪戯小僧めいた雰囲気は鳴りを潜めて紳士然とした態度のまま非難の言葉を投げかける。

 その非難にサーゼクス・グレモリーは歯噛みする。

 それも当たり前のことだろう。そもそもサーゼクス・グレモリーとセラフォルー・シトリーがこの街に来たのは先日コカビエルが引き起こした事件の中心であったこの学園で三大勢力による会談を行うためであり、その名目でこの街にいる以上公務であり、妹の授業参観だから公務ではない。など効くはずがなかろう。

 公務中なのに私事をするのは認められないのはどこの国でもあることだ。

 

 

「……リゼヴィム殿。何故貴方がここに?いや、それよりもそちらの彼はユーグリット・ルキフグスか……死んだはずでは……」

 

 

 だが、サーゼクス・グレモリーは話を逸らすように、逆に問いただし始める。

 そんなサーゼクスの対応にリゼヴィムの従者であるユーグリットは胸中で蔑み、リゼヴィムは呆れる。無論、そんな感情は思亭は一切出さずにサーゼクスの問いに答える。

 

 

「ふぅ……質問に質問で返すんじゃぁない。だが、まあ、許そう。ユーグリットくん、彼は別に死んではいなかったよ、ただ姿を消していただけ」

 

「次に、何故私がここにいるのか」

 

 

 右手の人差し指を立たせながら、まるで出来の悪い生徒に教えるかのようにリゼヴィムは口を開く。

 

 

「簡単な話さ。昔の契約者の子がここに通っていてね、だが契約者は仕事で来れない。代わりに私に行ってきてくれと頼まれたのさ。つまるところ仕事というわけだ」

 

 

 語られた理由にサーゼクス・グレモリーは怪訝そうな表情を浮かべながらもそのリゼヴィムが契約していたという人間について問いただそうと一歩前に足を踏み出し―――――

 

 

「おや、イッセー」

 

 

 リゼヴィムの後方から兵藤一誠やリアス・グレモリーらにとって見知った顔の人物が呼びかけながらやってきた。なんというタイミングだろうか、兵藤一誠と違い何も裏のことについて知らない一般人である兵藤夫妻の登場に兵藤一誠らは顔を青ざめる。

 だが、そんなものは杞憂だ、とでも言わんばかりにリゼヴィムは肩を竦めてから踵を返す。

 

 

「それじゃあ、また会おう。グレモリーの少年」

 

 

 始まりは唐突に。

 そして、終わりもまた唐突に。

 顔を合わせた兵藤夫妻に軽い会釈をしてから、リゼヴィムとユーグリットは来た時に降りてきた階段を昇って行った。

 その後ろ姿が完全に消えるまで、サーゼクス・グレモリーもグレモリー卿もその表情を強張らせたままだった。

 

 

「えっと、お邪魔しちゃいましたか?」

 

 

 そんな、兵藤父の言葉に一同はようやく緊張を収めることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「契約者の娘、か……」

 

「まぁ、あながち間違えじゃないわね」

 

 

 階段を昇り、彼らからそれなりに離れたところ。人気も少ない屋上への階段にてリゼヴィムらは声を拾い上げる。

 

 

「おんや、お二人ちゃん。おいちゃんに何か用かい?」

 

 

 声のする方に顔を向ければ見知った顔が二つ。

 学生服に身を包んだ二人の少女(ドール)

 リゼヴィムがこの学園に訪れた表向きの理由にされた少女らであり、魔王の妹及びその眷属を始末する為に学生を演じる二体の戦術人形が不敵に嗤っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユーグリットから聞いたところ、リゼヴィムはサーゼクス・グレモリーと接触したらしい。

 無論、接触といっても大層なもんではなく本当にちょっと顔を合わせて言葉を交わしただけのようだ。まあ、間違いなく煽ったんだろうが……ユーグリットの表情からして物足りなさそうであるのは窺える。

 

 

「まあ、そんなことはさておき。やりますか」

 

 

 茶の間の液晶テレビの前で並んでパーティーゲームをしている二亜やリゼヴィムらを台所から視界の端に収め、学校帰りに買ったいわしを取り出して下処理を始める。

 

 まず、鱗があるため軽く包丁でこそげ落とし、すぐに頭と尾を落とす。

 その後、腹をやや斜めに内臓ごと軽く切り落とす。そうすると、ため水のなかでも洗いやすく仕上がりもきれいになる。今回は数が数のため、こちらの方法でさっさと下処理する。

 次に、ああ、その前にだ。血合いと内臓は残っていると臭みのもとになってしまうため、そのあたりはきちんと洗い落とそう。洗ったあとは水気をふき取り、一尾につきだいたい二、三等分にしよう。ちなみにこれは別にまんまの状態でも大丈夫だからお好みで。

 

 さて、正真正銘次の工程にはいろう。

 といっても、簡単なもので生姜を千切りにする。

 以上、それだけ。

 

 用意が出来たら、鍋を取り出し鍋底に切ったいわしの身が重ならないよう広げ入れて、そこへひたひたになる程度の水と大さじ3杯ほどの酒を投入。最後にそれらの上にさきほどの千切り生姜を乗せる。

 これで準備は終わりだが火をかける前に落し蓋を乗せる。これは普通に木蓋でいいんだが、木蓋だと青魚の匂いが移るため、クッキングシートを丁度いい大きさに切ってのせてもいいらしい。ちなみに俺はこれを代理人に教えてもらった。

 さて、鍋を中火にかける。沸騰してきたらアクを軽くすくって、火をほんの少し落としてから五分ほど煮よう。ああ、このさい、蓋はそのままだ。

 

 

「メインはこれでいいとして、他なんかあったっけな……」

 

「指揮官。手伝いします」

 

「ン、ありがとうAR-15」

 

 

 手伝いを申し出てくれたAR-15の頭を軽くポンポンと擬音が出る感じに触れて、後ろのハンガーにかけていた桃色のエプロンを装備させる。

 うむ、パーフェクトだ。作った甲斐があったもんだ。

 さて、彼女に五分経つまで鍋の方を任せて、俺は冷蔵庫のほうを開く。

 そういえば、浅漬けにしたかぶがあったな、みそマヨで食べることを考えるといわしの味付けはさっぱりめのがいいな。なら、他には…………うーん。

 野菜か。昨晩つくっておいたおひたしでいいな。

 

 

「指揮官、どうすれば……」

 

「ン、ああ、もう五分か。いわしに火通ってるか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「ン、なら砂糖と醤油を大さじ一杯弱入れて、蓋は外し中弱の間で煮詰めてくれ。煮詰めは……八分で頼む。ああ、それと砂糖と醤油を溶かし込むときは箸で隙間を作ってから溶かしてくれ」

 

「はい、了解しました指揮官」

 

 

 と、みそ汁は…………朝のが残ってるからそれを一回火にかけて……ああ、煮詰まるから少し水を足してからだな。

 みそ汁もAR-15に任せて、俺は冷蔵庫から取り出したかぶの浅漬けとおひたしを皿に盛りつけて、テーブルへと持っていく。

 ちらりと視線を動かせば、二亜の操作するキャラがリぜヴィムのキャラに吹き飛ばされていた。わろす。

 

 

「そろそろ夕飯だから、ゲームやめて手伝え」

 

「「えー」」

 

「爆ぜてしまえばいいのに」

 

 

 二亜とリゼヴィムに中指立てつつ、箸立てをユーグリットに渡して俺は台所へと戻る。

 台所に戻れば、しっかりと火加減を見ているAR-15に軽く笑みを浮かべてしまう。どうやら、まだ時間ではないようだ。

 その間に茶碗に炊き上がった米をよそい、温まったみそ汁をお椀に入れカウンターに置きユーグリットに任せる。

 

 

 ああ、イワシの煮つけだが弁当に入れるのはあまりオススメしない。ものがものだからな。

 

 

 

 

 

 





 ただの休暇で授業参観にくるならともかく公務のついでにくのは正直どうかと思うし、そもそも公務で来てるなら相応のふるまいも必要なわけで……にも関わらず公衆の面前で趣味のコスプレとか……しかも外交担当が……国が国なら批判殺到間違いないね。
 久々の主夫高校生はイワシの煮つけでした。
 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。