漫画家と主夫高校生のD×D   作:カチカチチーズ

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なんか、気づいたら書き終わっていた不思議。
 アズレン、ようやくビスマルクをお迎え出来ました。次は彼女とキングジョージ五世の衣装を買わねば……!!まあ、福袋買ってみるのが一番でしょうね。
 UNDEADですが、Twitterでも言いましたが、なんか迷走しているのでいまは主夫高校生を優先させていただきます。



三十頁

 

 

 

 

 

 特にやることはなかった。

 授業参観の日より早数日。

 俺は普通に学校にいって、リゼヴィムはユーグリットとともに何やらホテルの部屋で悪辣なことを考えていた。

 

 

「まあ、ろくなことにはならないだろうな。あちらからすれば……」

 

 

 軽く息をついてから、体の節々を軽く捻りつつ思考を回していく。

 原作主人公や二次創作主人公のように毎度毎度、イベントがあるわけもなく俺にあったのは今回の大仕事のための前準備等々。楽しいこと……AR-15を揶揄って遊んだことでは?

 楽しかった。

 

 

「さて――――」

 

 

 ヴァーリ・ルシファーやカテレア・レヴィアタンに対してどうするかはリゼヴィムに任せるが、それ以外は蹂躙でいいだろう。ついでに何人かを生きたまま回収もしたいがそれは高望みしないでおくとしよう。

 

 

「仕事と行こうか」

 

 

 顔上に上げていたマスクをずり降ろし死銃として切り替える。

 サブはいつも通りのFive-seveNを選び、メインにはAK-12を装備する。ついでにすぐさま切り替えられるように武器庫───神器によって一から作りだすのではなく、あらかじめ作成しストックしている部分。工場に倉庫があるように当たり前のように武器製造にはそういう部分が存在している───にネゲヴやRO635をストックしておこう。

 一応の為にも形状変化しておいたナイフ状の擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を左胸のアーマーに忍び込ませておこう。

 ひとまずはこれでいいはずだが、はて。

 

 

「おんや、用意終わったかい?」

 

〈問題ない〉

 

「りょ。そんじゃま、行くとしますかねぇ」

 

 

 あちらも着替え終わったのか、俺に声をかけてきたリゼヴィムへと視線を移せばそこにいるのは魔王というよりかは貴族的な装いに身を包んだ威厳のある老公がいた。

 まさしく知らぬ者がみてもどこかの名家の御老公と思う事だろう。

 どこか、普段の軽さも交えつつ転移術式をユーグリットに用意させているリゼヴィムの背を見ながら俺は待機していた護衛の人形らに指示を飛ばして、術式が終わるのを待つ。

 

 

「リゼヴィム様。転移術式完了いたしました」

 

 

 本来ならば、学園には転移阻害の一つや二つはあるのだろうが先日の授業参観の際にユーグリットが学園内に直接転移できるように細工を行い、昼頃に手駒を侵入させ確実に転移できるように術式の維持を行わせていた。

 さて、行くか。

 俺たちは転移術式へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間帯は深夜。

 すでに学園全体に強力な結界が張り巡らされ、外部からは簡単に侵入することは不可能になっている。無論、逆もまた然りである。

 結界外には天使、堕天使、悪魔の軍勢が囲んでおり、周囲には一触即発の空気が満ちていた。

 そんな学園の新校舎にある職員会議室。

 そこには特別に用意でもさせたのか、職員会議室にあるわけもないような、豪華絢爛なテーブルが置かれており、それを囲むように四人の人影が椅子に腰かけている。皆一様に真剣な面持ちである。

 

 悪魔側。サーゼクス・グレモリー、セラフォルー・シトリー。給仕担当なのか、茶用の台車の傍らにはグレイフィア・ルキフグスが待機している。

 天使側。金色の翼を生やした天使、ミカエル。その傍らに立つのは名も知れぬ天使の女。

 堕天使側。黒い翼を生やした堕天使、アザゼル。その傍らに立つのはリゼヴィム・リヴァン・ルシファーにどことなく似た風貌の少年、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』ヴァーリ。

 

 そんな彼らとは別に壁側に並べられた席に座るのはソーナ・シトリーとリアス・グレモリー、そしてグレモリー眷属六人。彼らが椅子に腰かけたのをサーゼクス・グレモリーは確認し、口を開く。

 

 

「では全員がそろったところで―――」

 

 

 このまま会談が始まる。

 そう、誰もが思って────────だが、まだ役者はそろい切ってはいない。

 

 

 唐突に静かに、会議室の扉が開いたのだ。

 それを感じ取ったがためにサーゼクス・グレモリーは言葉を止めた。

 

 誰もが開かれた扉へと視線を向け、そして扉の向こう側にいる人物に全員が様々な反応を示した。

 

 

「悪いが、この会談。私も混ぜてはくれないかね?グレモリーの少年」

 

 

 そこにいるのは五人の人物。中央に立ち口を開いた暗銀の老公、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。彼の斜め前にて佇むは死面の男、Sterben(死銃)。リゼヴィムの後ろに立つのは三人、一人は従者であるユーグリット・ルキフグス、そして二体の人形。

 予想外の彼らの登場にサーゼクス・グレモリーもセラフォルー・シトリーもさらにはアザゼルが立ち上がってしまう。無論、グレモリー眷属らも反応するがしかし、それよりも彼らが反応したのはリゼヴィムと共にいる死銃である。

 木場祐斗は以前の戦闘で負ったが治療されたはずの肩口の傷がずきりと痛むことにその顔を歪ませ、他の眷属や主であるリアス・グレモリーは怒りの表情を見せる。だが、その矛先であるはずの死銃はどこ吹く風であり、その意識は彼らグレモリ―眷属とは全くの別人へと向けられていた。

 それにはアザゼルも意識を向けていた。

 端正な顔を激憤に歪ませ、今にもリゼヴィムへと飛び掛かる、否殺さんとする男。

 

 

「おい、ヴァーリ!」

 

 

 だから、当のリゼヴィムもそれに気づいた。

 実の孫であり被虐待者であったヴァーリ・ルシファーへとその視線を向けて彼は、いつもどおりにまるで玩具で遊ぶような無邪気な笑みを浮かべるわけでもなく、謀略を紡ぐ悪魔らしい邪悪な笑みを浮かべるわけでもなく、魔王のような威厳ある表情でもなく、ただただ彼はその頭を下げた。

 

 

「は……?」

 

「ヴァーリ。許せ、などとは言わん。ただ、私にはこの頭を下げねばならない理由がある。自己満足、お前はそういうのだろう、それでいい。私を許さなくてもいい」

 

「な……」

 

 

 そんなリゼヴィムを知るアザゼルも、謝罪の対象であるヴァーリもただ絶句するしかなかった。

 ありえない。そうとしか思えぬその行為にヴァーリは気が削がれたのか、先ほどまでの激憤と殺気はなりを潜め……いや、それでも何かあればすぐにでも殺せるような態度を見せる。

 そんな彼の態度にいつでも迎撃するつもりだった死銃は意識を外しつつ、リゼヴィムの腹の内を察して他者に知られぬようにため息をついた。

 

 

〈(絶対にろくなこと考えてねえなこいつ)〉

 

 

 そんな死銃の内心は誰にも届くことはなく、驚愕からもどったサーゼクス・グレモリーが口を開いた。

 

 

「なぜ、貴方がここにいる。いま、この学園には誰も入られないはずだ」

 

「何事も例外はあるという事だよ。サーゼクスくん」

 

 

 そう言いながら、リゼヴィムらは入室しグレモリー眷属らのいる壁とは反対側であり彼らトップ陣とはやや離れた場所にユーグリットと死銃がテーブルと椅子を用意、リゼヴィムはそこへと腰掛けた。

 

 

「そもそも、この場にコカビエルの事件の渦中にいた人物を呼び出したのならば、彼。件のコカビエル側にいた死銃が来てもおかしくはないだろう?そして、彼のスポンサーである私が来てもなんら問題はないはずだ。私には彼をスポンサーとして保護する責任があるのだから」

 

 

 いや、それは違うだろう。そんな死銃の内心が聞こえてきそうであるが、あまりに堂々とそして威厳すら感じさせるリゼヴィムの物言いにサーゼクス・グレモリーもセラフォルー・シトリーも、納得してしまっている。

 嘘だろ。またもやそんな内心が聞こえてきそうであった。

 いの一番に否定すると思われたアザゼルはさきほどの謝罪でいまだ混乱している為、使い物にならずミカエルに限ってはもともと悪魔の問題であるため、我関せずの態度である。

 

 

「さて、もう追加参加者はいない。サーゼクスくん?会談をはじめてくれ……ああ、前提条件である聖書の神の死亡はこちら側はとうに知っていたことであるから確認は不要だ」

 

 

 主導権を容易くサーゼクスへと放り投げたリゼヴィムはまるで子供の御遊戯会でも見ているような余裕ある表情でそう語った。

 

 

 はたして、出鼻から波乱のあったこの会談はたしてまともに終われるのだろうか。

 そんな風に他人ごとな思考を回しながら、死銃はまた周囲に気づかれぬようにため息をついた。

 

 

 

 

 





 次回から会談開始ですね。
 

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