漫画家と主夫高校生のD×D   作:カチカチチーズ

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 最近、鬼滅の刃がマイブーム。

 オリジナル呼吸考えるけども意外と漢字一文字は難しいね。
 『毒』『嵐』『鮫』『氷』『鳥』





三十九頁

 

 

 

 

 

 発車の汽笛が鳴り響き、列車が動き始める。

 俺たちグレモリー眷属とシトリー眷属、つまりは部長とソーナ会長を除く俺らはみんな揃って列車の中央の車両に乗っていた。どうやら、主は基本的に一番前の車両で、俺ら眷属悪魔は中央から後方の車両らしい。こういうところはすごく貴族的なしきたりをなんとなく感じさせる。

 ちなみにアザゼル先生はあくまで便乗もとい乗せてもらってるだけだからか、俺たちと同じ車両に乗ってて端っこの方で寝てる。

 聞けば、こうして冥界へ向かうときは各々好きにしてるらしいんだが、今はそんな空気が微塵も感じられない。それもそうだろう。

 俺はなんとも言えない、いや一応警戒してるつもりなんだが、そんな表情で前の車両へ続く扉の方へと視線を向ける。扉、その両脇にいるこの空気を作り出した要因の一部、黒づくめの変な鳥マスクの奴らに。

 

 

 ことの始まりはこの列車に乗車する前に遡る。

 

 

 

 

 

 

──────正体不明の女性が名乗ると同時に女性、アンジェリカさん?の背後の陰からいきなり現れてきた黒いコートに黒いズボン、黒い服、そして特徴的な銀色に鈍く輝く鳥の顔めいたマスクの一団。そこに一切の違いはなく、皆一様に同じ格好をしており、まるで一つの画像をコピーしてひたすら並べたかのように寸分違わぬ姿のそれらの出現に俺たち、両眷属はアザゼル先生に止められたが、警戒をやめることは出来なかった。

 だって、しょうがないだろう。

 見知らぬ人間が明らかに怪しげな存在を連れてきたんだから。

 しかし、それらはそんな俺たちのことなんて興味がないかのようにただただその場で軍隊のように休めの姿勢のまま、突っ立っていた。

 

 

 

「ク、クク、クハハハハハアアぁぁ、ぅごほっぐへ……咽た喉痛……ああ、すまない」

 

 

 それと打って変わって、明確な反応を露にするのはアンジェリカさん。

 整った顔を快活な笑みに歪めて……なんか、咽てるんだが。落ち着いたのか、俯かせていた顔を上げて、軽く笑いながら手をひらひらと振りながら、軽く謝ってくる。

 

 

「さっきも言ったがこっちに敵意はないんだ。なにせ、私の今回の仕事は君たちの護衛だからね」

 

 

 そう言いながら、アンジェリカさんは俺たち、いや正確にいえば部長とソーナ会長を見て笑ってる。

 

 

「それで?総督殿、詳細は伝えてるのかな?」

 

「いんや、こいつ等が知ってんのはあくまで諸事情で今回、別々じゃなくて一緒の列車で冥界に里帰りするってことだけだよ」

 

「─────は?死ねよ、カス……ンン、なら護衛する理由と今回の事情を説明させてもらおうか」

 

 

 なんか、言ったか?今。いや、それよりも、木場がさっき言ってたけども今回の里帰りは異例らしいがその理由って………というか、護衛とかなんとか、言ってるし決していい理由じゃないのは理解できる。

 それをこの場のみんなは理解したのか、息をのみ。

 

 

「リアス・グレモリー嬢、ソーナ・シトリー嬢、貴女方と同じ現四大魔王の身内であるディオドラ・アスタロトが数ヶ月前から眷属諸共行方不明となっていたのですが、つい先日我々『テロ対策特殊部隊EXE』が件のテロ共の拠点の一つから押収した文書にてディオドラ・アスタロト及びその眷属らがテロ共に殺されたことが判明しました」

 

「………ッッ!!??」

 

「アスタロト、ベルゼブブ様の生家……ですね」

 

 

 ‥‥どういう意味だ?

 いや、言ってることはなんとなく理解できる。だが、どういう意味だ?

 

 

「旧魔王派の連中の仕業だったか?」

 

「ええ、それで貴女方も狙われる可能性があるため、護衛というわけですよ」

 

 

 あっけらかんにそう言うアンジェリカさんに俺たちはどこかうすら寒いもの感じながらも彼女とその部下たちによる護衛を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒い猟兵。

 正式名称は別にあるがもっぱら、そう呼ばれているそれらを率いてグレモリー家所有の列車に乗り込んだ『テロ対策特殊部隊EXE』に属する傭兵アンジェリカ・スィエールイ。

 そんな彼女は列車内で何をしているのだろうか。無論、護衛だがしかしそもそもが話、前提条件が真っ赤な嘘であるのだから真面目に護衛する理由などない。そういうパフォーマンスはしているが。

 では、何をしているか。

 

 

「まあ、普通に書類整理だが」

 

 

 持参のカロリーメイト片手に持ってきていた書類に目を通すアンジェリカ。

 正直、学園生徒として潜入している人形の片割れと名前が被ってしまっているがそんなことは元から織り込み済みであり、いちいち気にしていられない。

 アンジェリカの心内を考えるならば何故ゆえにこんな列車内に来てまで書類整理なんぞをしなければならないのかといういら立ちはあるが。

 

 

「閣下」

 

「ン、なんだ」

 

 

 そんなアンジェリカのもとに一体の猟兵が近づき、その手にもっていた端末を手渡してくる。

 それが何なのかを察したアンジェリカはその表情を面倒くさげに歪ませながら、端末を受け取る。

 

 そも冥界というのは一種の国だ。無論、そんなもの正統所有者とも言える冥府の神々からすればふざけたものでしかないが────ともかく、そこに正式に入るには曲がりなりにも手順が必要なわけだ。裏口入界をするわけにもいかず、こうしてリゼヴィムが用意した端末を用いて人間であるアンジェリカは入界の登録を行う。

 

 

「閣下」

 

「ン」

 

 

 端末を戻して別の猟兵が運んできたココアが入ったマグを受け取ってから、視線を前の車両へ続く扉の方へと向ける。

 アンジェリカらが乗っている車両は兵藤一誠らが乗っている車両よりも前、つまりはリアス・グレモリーらの車両側であり前の車両から来る人物はとても限られている。

 そうして、しばらく待てば扉は開いてこの列車の車掌らしき悪魔が入ってくる。彼にアンジェリカは軽く会釈して、猟兵が端末を車掌に手渡してから車掌も会釈を返しそのまま後方車両へと抜けていく。

 お互い仕事であり特に馴れ合う理由もなければ、過度に警戒する理由もなかった。

 

 そのすぐ後に護衛対象が勝手に予定の席を離れて自分らを無視して後ろの車両に行こうとしたのには止めたが。

 

 

「あー、リアス・グレモリー嬢どちらへ?」

 

「私の下僕たちのところへだけど、何か?」

 

「護衛されている身を自覚してほしいんだがね」

 

 

 何故にそんなことを私が気にしなければならないのか。正しくそうとしか思えない反応を見せるリアス・グレモリーにアンジェリカは微笑を保って見せるが、その心内ではもう既にリアス・グレモリーの身体はネゲヴで蜂の巣に何度も何度も変えてはその頭蓋から何度も何度も脳髄を引きずり出して人形に移し返したりしているが、その心中は一切晒さない。

 

 

「この列車は世界と世界を跳ぶのよ?襲撃される可能性なんてそうそうないわ」

 

「可能性があるから護衛してるんですが?」

 

 

 いかに自作自演であるとはいえ本当に襲撃されないという可能性などないのだ。故にこうして護衛対象が無闇に動かれるのはとても困る。正直に言えばリアス・グレモリーの生死などどうでもいいのだが。

 

 

「あなたなんかに護衛されるほど弱くないわ」

 

 

 

 

 

 そう言い残してリアス・グレモリーは後部車両へと向かっていった。

 その背中を見送りながら、アンジェリカはその表情を引きつらせながらその手に握っていた書類を握りしめながら空いた片手でハンドガンを取り出そうとするが流石に猟兵らが止めにかかったため、仕方なしにその手を手持ち無沙汰の様に空を切らせてから、乱暴に席へつく。

 そうしてから、ふとあることに気が付いてから後方車両で待機している猟兵に無線を飛ばしてから、背を椅子にもたれてそのまま中身だけ眠りについた。

 アンジェリカは起きながら、彼は眠る。

 

 





 次回は冥界ですかね。


 

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