漫画家と主夫高校生のD×D   作:カチカチチーズ

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 最近、筆の調子がよこざんすなちーずです




五十八頁

 

 

 

 

 城内へと足を踏み入れた、死銃の眼の前に迫ったのは吸血鬼式の術式で組まれた魔術。

 間違いなく、呪詛が孕んだものであろうそれらが先行したManticoreや第三世代(サード)の間を縫って放たれ、そのまま死銃に───

 

 

《ぬかせ》

 

 

 死銃に触れるよりも先に自ら射線上へと身を投げ出した猟兵へと次々に着弾していく。並みの祓魔師(エクソシスト)であれば一発一発が致命傷たりえるのだろうが猟兵らにはまったく効いた様子はなく、次々とその視線を動かし索敵を開始していく。

 無機物であろうと呪詛は呪詛であるが、死銃が認識していない場所で呪詛を受けたのならばともかく、死銃の認識内でありさらにはせいぜい数メートルほどに猟兵らがいるというのならば話は別だ。

 呪詛を受けると同時に神器による簡易メンテが自動発動していきすぐさま呪詛に汚染されたパーツをストックされているパーツに返還され汚染パーツはすぐに処理されていく。故に彼らに呪いは無駄であり、吸血鬼らも呪詛が効かないと理解してしまった。

 呪詛が効かない以上、やれることは二つ。

 逃げるか、向かってくるか。

 

 

 吸血鬼が選ぶとしたら、当然後者だ。

 

 

 索敵に引っかかったのは前方。鎧を着込み、獲物を手にして爛々とその赤い双眸を輝かせている吸血鬼の群れ。

 そんな抵抗に夢想家(ドリーマー)は嘲笑に表情を歪ませ、死銃は呆れたように腕を振るい───それを合図にまるでバネが弾けるように静観を決めていたManticoreがその重厚な見た目とは裏腹な俊敏な動きで次々と吸血鬼らとの距離を詰めていく。

 吸血鬼らもその速度に目を見開いていた。

 それもそうだろう、あんな重厚な見た目でありながらその四肢を動かして迫ってくる金属塊、それが十機。

 はたから見てもその様は恐ろしいというのに、それを正面から見るなど恐怖以外の何物でもないだろう。

 

 

「う、うああああああぁぁぁぁっ!!」

 

 

 そんな迫る恐怖に耐えきれなかったか、吸血鬼の一体が恐慌に陥りながらもその手に構えた獲物で迫りくるManticoreへと迎え撃とうとして、Manticoreに装備されている小銃が一切の容赦なく火を吹いた。

 鎧に穴を空け、肉を抉り吹き飛ばしていく。城下にいた吸血鬼の兵士らと違うのか吹き飛ばしてから数秒で少しずつ再生を始めようとしていた。

 それを見て、死銃はマスクの下で眼を細め

 

 

「死ね」

 

 

 突撃したManticoreに捕まって移動していた猟兵が飛び降りながらその手に携えた手斧の柄を握り伸ばし、長柄の大斧へと変形させそのまま吸血鬼の首へとその刃を叩き込む。そのまま吸血鬼の首は吹き飛ばす。

 それと同時に待機していた人工器(マキナ)が飛び出して、腰部から引き抜いた手斧で首が飛んだ吸血鬼へと追い打ち気味に胸部を横から両断して見せる。手斧は熱を伴っているのかその刃は赤く発熱し、両断された吸血鬼は炎上しそのまま灰に消えていく。

 

 

《全人形、弾倉変換。猟兵は対吸血鬼兵装を人工器(マキナ)はそのまま焼き殺せ。第三世代(サード)は放射器で焼却》

 

 

 その死銃の指示にManticoreはしばし喧騒を起こし、猟兵はその長斧を炎上させ、第三世代は次々とどこから取り出したか、小型タンクのような物を背負いチューブらしいものでタンクに繋がった銃身とはまた違った装備を構えだす。

 そして一瞬の静寂が訪れた、かと思えばその次の瞬間には前衛のManticoreがその小銃を震わせながら銃弾をばら撒き始める。無論、ただの銃弾ではない。

 対吸血鬼様に調整された代物だ。そう、例えば種族としての能力が強化されていようとも確実にその生命を削り取れるように。

 

 ばら撒かれた銃弾は確実に吸血鬼らの身体を削いでいく。

 再生しようとするよりも早くに吸血鬼は吹き飛ばされ、その肉片を尽く第三世代の装備が火を吹き焼却していく。

 その様はまるで駆除か何かか。

 小銃の嵐と焼却から逃れた吸血鬼は死んでいく同胞の姿に恐怖し同時に逃れたことに安堵するもののすぐに猟兵と人工器によって殺しつくされていく。

 その凄惨極まるさまを見ながら死銃はため息をつき、前方に行かなかった第三世代へと視線を向ける。

 

 

《どうだ》

 

「ハッ、ナノマシン散布終了しております。既にデータ取得が始まっており、目的地は離塔にあるようです」

 

《吸血鬼らしく、地下にあると思ったが……いや、掌握したわけではないから移動したわけではないのか……夢想家、お前は猟兵とManticoreを率いて玉座に行け、オレは離塔に向かう》

 

「はぁい」

 

 

 そう指示を飛ばして、死銃は刺剣を携えて駆けだす。既に目的地への進路は頭の中に入っている。

 吸血鬼の兵士らもあらかた処理し終え、第三世代らと人工器がそれを追いかけていく。

 その背を見送りながら、指揮を任された夢想家が笑みを浮かべて指示を飛ばし始める。

 

 

「それじゃ、いっきにいくわよ。予定通り、無抵抗、投降者は放置。あ、ただ、抵抗したら容赦なくぶっ殺すってことで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、いったいこれはどういうことだ!!」

 

 

 広大な室内。床には真っ赤で大きな絨毯が敷かれており、金糸で縫われたのであろう魔物か何かの刺繍が金色に輝いていた。

 そんな室内の最奥、一段高い場に玉座が置かれそこには一人の男が座っていた。男は正しく王というべき意匠の身なりであり周囲にはやはり男と同じく中世的な意匠の貴族らしい身なりをしている者らと兵士らが集まっていた。

 玉座に座している男はツェペシュ派の現当主、すなわちこの国の正真正銘の王であるのだが、その表情は困惑と憤怒に包まれていた。

 

 

「あ、相手は人間とその人形だぞ!?何故、そんな下等な存在が我らが本城にまで侵入しているのだ!!」

 

 

 つい二十分ほど前、突如として都市正面と都市外壁一部から敵が侵入してきたのだ。襲撃の際、彼らは大いに驚愕し、兵士らを向かわせたが容易く殺しつくされる始末。

 そんな事実に困惑し、とある貴族があることを思い出した。

 襲撃者が警告している分の中にあるEXEという言葉と、それを叫んでいる黒い不気味極まりない風体の存在に聞き覚えと見覚えがあったのだ。

 思い出していけばつい一週間ほど近く前か、カーミラ派を通してやってきたEXEと名乗る組織の使者という明らかに怪しい風体の存在。自らを猟兵と称した存在がいくつもの書類を提示してあろうことか自分たちツェペシュ派をテロリストの一味であると告げてきた時のことだ。あまりに不遜な物言いに彼らはその使者とやらを()()()()()

 

 

 そんなことを思い出した貴族に王や他の貴族らも確かにそんな覚えがあった、と頷き、そして同時に追い返した程度で宣戦布告すらなしとは貴様らがテロリストではないか、と怒りを露わにした。

 そうして、さらなる兵士を送り込んだが、この始末である。術式を用いて強固であるはずの城門はたやすく破られ、こうして本城内にまで侵入される始末。

 そうして貴族や王は口々に誰かへ責任を擦り付けようとし始める中、王族の一人である若者──吸血鬼である以上、見た目通りの年齢とは限らないが──は一人、この玉座の間をひっそりとばれぬ様に抜け出していた。

 

 

「.......クソッ、いったいどこでバレた.......いや、そんな事よりもこの場は資料を隠すべきだ.......私の研究をテロリスト共の繋がりと言われて略奪されるのだけは見過ごせない」

 

 

 そう言いながら、自分にとって重要なモノを隠そうと廊下を走る青年、彼の名はマリウス・ツェペシュ。

 現ツェペシュ派の王の息子であるツェペシュ王家王位継承権第五位であるこの男は研究者の気質が強く、ツェペシュ派がテロリストと繋がる以前からとある神器について研究をしていた。

 大っぴらに研究することは不可能であったがもうすぐ一定の結果が出るはずであった。今回の侵入者と対峙している一部の兵士らにはその研究結果を一部利用しており、実地実験でより良いデータを得ることが目的であったが.......その研究を台無しにしかねない存在らが既に本城に侵入しているなどマリウスには認められなかった。

 少なくとも彼らは最初に玉座の間を制圧しに来るだろう、と考えそれから城内の調査を行われる前に資料の隠蔽もしくはそのまま資料等をもってしばらく城外にある研究施設へと隠れる。そんな選択肢を頭の中で張り巡らせながらマリウスは自身の研究室である離塔へと急いだ。

 

 

 






 こんな奴らが主人公勢なんだぜ?……こわ……焼くのかよ

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