ラブライブ!サンシャイン!!~BUILD the Rainbow~ 作:白銀るる
……最近ラブライブ欠乏症になりつつある自分が怖い……。
「大丈夫?立てる?」
「は、はい!ありがとうございます……!」
「ここは危険だから、早くお逃げなさい」
仁達と別れ、敵が襲来したと思われるグラウンドへ一人で向かった神子。
彼女は、逃げ遅れてしまった生徒を逃がすと、この騒動の犯人と思しき男を見据えた。
「さてと……この騒ぎを起こしたのはぬしじゃな?他にも色々とやってくれたようじゃが……」
「あ?何だテメー?オレは今、仮面ライダーを探してんだ。邪魔しねーでもらおうか!」
男──タウレーは、神子にタックルを喰らわせようとするが、彼女はそれを片手で難なく受け止める。
「仮面ライダーはわらわの協力者であり、友人じゃ。あやつらには一切の手出しはさせん!」
神子は腕に力を込め、タウレーを押し返す。
予期せぬ反撃を貰ったタウレーは体勢を崩した。
が、彼の顔は悔しさ等の悪感情に歪むことは無かった。
むしろ、タウレーは口角を上げ、笑い始めた。
「……やるじゃねーか。まさかこの力を力を使うことになるとはな!見るがいい!超人としてのこのオレの力を!!」
タウレーは、牡牛の意匠が彫られたボトル──タウラスゾディアックフルボトルを振り、自らの掌に突き刺した。
すると、タウレーの身体の筋肉が膨張し、身体は更に大きくなる。そして頭部には二本の角が生えた、赤い毛並みの牡牛の
「牡牛……なるほど、さしずめタウラスハードスマッシュと言ったところか」
「この姿になったオレは、もう誰にも止められない!」
タウラスは赤いエネルギーを収束し、その身体に纏った。
「やはり戦わねばならぬか……。神としては、人間同士の戦いに干渉したくはないが……友の為、この力を振るおう!!」
神子はベルトを出現させ、水色のパッド──ガシャコンバグヴァイザーⅡをそこに接続する。
「ガッチャーン……!」
「ときめきクライシス!」
バグルドライバーⅡを待機状態にし、さらに取り出したガシャットを起動する。
「変身!!」
「バグルアップ……!ドリーミングガール 恋のシュミレーション 乙女はいつもときめきクライシス!!」
全てのシークエンスを終えると、神子の姿は、ピンクのボブカットに黄色のリボン、青い瞳に女性的なフォルムが特徴的な戦士──仮面ライダーポッピーへと変わっていた。
「ほう……お前も仮面ライダーだったか……。この星の戦士がどれほどのものか、試してやる!」
タウラスは咆哮し、エネルギーを纏ったままポッピーに突撃攻撃を仕掛ける。
地響きを鳴らしながら近づいてくるタウラスに対し、ポッピーはバグヴァイザーⅡを取り外してチェーンソーモードにして構える。
「うおおおおお!!!」
「ふん!!!」
ぶつかり合う両者の攻撃は、衝撃波を生み出し、地面が抉られる。
これが今回の敵の力か。なるほど、龍輝達が敵わぬのも無理は無い。
じゃが……!
ポッピーはバグヴァイザーⅡで攻撃を弾き、タウラスの身体の軸を傾ける。
体勢を崩したタウラスに、ポッピーは回し蹴りを叩き込んだ。
「わらわの敵ではない」
仮面の下で笑みを浮かべる神子。
一方、吹き飛ばされたタウラスは地面に激突し、クレーターを作る。しかし、ダメージはさほど負っておらず、不敵に笑いながら立ち上がった。
「クックックッ……オモシレェ!オモシレェぞ!!このオレの攻撃を弾き飛ばすなんてな!」
「粋がるのも大概にせい。ぬしは、もうわらわには勝てぬ!」
再び突進してくるタウラス。
今度は、ポッピーもタウラスに向かい、チェーンソーを振るう。
チェーンソーの刃はタウラスの脳天を直撃し、彼は地面にめり込む。
タウラスは立ち上がろうとするが、ポッピーはそれすら許さない。
ポッピーはAボタンを押し、バグヴァイザーⅡを必殺技の待機状態へ。
「キメワザ……!」
そしてBボタンを押して技を発動し、タウラスを真一文字に斬り裂いた。
「クリティカルサクリファイス……!」
「ぐわあああああ!!!」
斬撃が直撃し、顔に一の字の切り傷が出来、そこから赤い血が流れ出す。
さらに追撃として、上からの斬撃。
タウラスの身体を斬り付け、更なるダメージを与えた。
「これで分かったであろう。ぬしはわらわには勝てぬということが。分かったら、早くぬしの主の元へ帰れ!!」
不本意ではあるが、ここまで手負いにすれば流石に退散するじゃろう……。
「……クックックッ……フハハハハハハ!!まさか、このオレを……ゲホッゲホッ……ここまで追い詰めてくれるなんてな……」
血溜まりを作るほどの流血をしているにも関わらず、タウラスは笑い続ける。
「それ以上喋れば命に関わるぞ」
「命なぞ、とうの昔に捨てている……。オレ達の中の……誰か一人でも生き残れば……復讐を果たせれば良い……」
傷口を押さえることすらせず、立ち上がるタウラス。
そして神子は、タウラスの両手に二本のフルボトルが握られているのを目にし、彼が何をしようとしているのか気付く。
「待て!そんなことをすればぬしは……!!」
「言ったはずだ……。命などとうに捨てていると!」
タウラスは神子の言葉を跳ね除け、二本のゾディアックフルボトル──ジェミニボトルとリブラボトルを自らの胸に突き刺した。
「グオオオオオオオオオオオオ!!!!」
二本のボトルがタウラスの体内に消えると、彼の身体は更に膨らみ始めた。
肩から開いた傷口から二つ目の首が現れ、二本になった首の大きさは全く釣り合っておらず、人型だった原型がどんどん崩れていく。
やがて、その体躯は完全な四足歩行のものになり、
「グオオオオオオオオオ!!」
もはや、タウラスの理性は消え失せ、彼は本能のままに敵を排除する怪物になってしまった。
ポッピーは、その事実を目の当たりにし、深い悲しみを感じることを禁じ得なかった。
「……この大バカ者が」
静かに言葉を漏らす神子。
それは、彼を追い詰め、異形にさせてしまった自分への罵倒か、あるいは復讐の為に命を投げた彼への叱責か。
彼女は、暴走するだけの獣となった彼を見据え、二本目のガシャットを起動した。
「仮面ライダークロニクル!」
ときめきクライシスのガシャットと入れ替え、そのガシャットをドライバーに装填する。
「バグルアップ……!天を掴めライダー!刻めクロニクル!今こそ時は 極まれり!!」
先程と同様の手順を踏み、ポッピーはその姿を変えた。
時間を表す時計のエフェクトを頭からくぐり、装備は大きく変化。
明るい配色だったアーマーは、黒色へ。
ボブカットのような頭部は、王冠を模したものになった。
ポッピーとは打って変わり、厳格な雰囲気を纏うライダー──仮面ライダークロノスへの変身した。
「せめて苦しまぬよう、一瞬で終わりにしよう」
「ポーズ……」
クロノスは、バグルドライバーⅡのボタンを同時押しにより、固有能力、ポーズを発動する。
その恩恵により、彼女が変身したことにより展開されたゲームエリア内に存在する、彼女以外の全ての時間が停止した。
「キメワザ……!クリティカルクルセイド……!」
停止したタウラスに近づき、必殺技を発動。
動かぬ彼に、クロノスはライダーキックを放った。
HITのエフェクトは、技の命中と共に制止。
「リスタート……」
時間の流れがクロノスの支配から解き放たれると、タウラスはその一撃により、爆発四散した。
クロノスの前に敗れた彼は、元のタウレーの姿に戻る。
しかし、彼の身体は既に消滅し始めていた。
「……オレの敗け、か……」
タウレーの声も既に消え掛け。初めに対峙した時の威勢の良さは、欠片も残っていない。
「……すまねぇ、お袋、親父……。二人の仇、とれそうにねぇや……」
腕で両目を覆い、涙を隠すタウレー。
クロノスは変身を解き、神子の姿に戻る。
そして神子は、彼に一言、言葉をかけた。
「奴らは近いうちに滅びる。愛と平和を守る仮面ライダー達によってな。じゃから、ぬしは安らかに眠るが良い」
タウレーは依然として顔を隠したまま、しかし、その口角は微かに上がり、彼は完全に消え去ったのだった。
神子は、彼が遺した三本のボトルを拾い上げる。
が、その次の瞬間には、ボトルは全て消え失せてしまった。
「回収されたか……」
戦いを通じて探ったタウレーの記憶。
神子は、それを脳裏に刻み込み、
彼の命を奪った罪と想いを背負って。
***
宇宙船のオペレーター室にて、回収された王とサジを加え、彼らはタウレーの戦いを見守っていた。
その展開は、タウレーが追い詰められた場面から急転。
彼は暴走し、敵の技の前に斃れたのだった。
「タウレーの生命反応、ロスト……。消えちゃったよ……」
仲間の死を目の当たりにし、エルジュはいつもの調子をだせず、その落ち込み具合は火を見るより明らかだ。
彼を止めようとしたスコル、そして「心配無い」と彼の出撃を容認したサジもだんまりになってしまう。
「済まぬ王よ……。わたしがもっと強く引き止めていれば、こんなことには……」
「あれ程の戦士がこのような辺境の星にいるのは想定外でした……」
王は、今しがたタウレーを敗ったクロノスを見つめる。
「タウレーのボトルを回収して下さい。彼の形見と共に戦いましょう」
王が命じると、エルジュはコンソールを操作してゾディアックフルボトルを船内に転送。ボトルは王の手に収まった。
「計画を進めましょう。あれ程の戦士が守っていた場所……恐らくパンドラボックスは彼処にある……と言いたいところですが、囮の可能性も捨てきれません。エルジュ、あの施設の周辺で不審な人物がいないか調べてください」
「了解、王サマ!ってあれ!?ガジェット達の反応が!?」
「何だこれは……次々と反応がロストしていく……」
「奴ら、ガジェットの存在に勘づいたか……」
「そんな!?この星の技術では絶対見つけられるはずなのに……!」
仲間を一人失ったばかりか、偵察ガジェットが全て無力化されてしまった。
エルジュ達は渋い顔をするが、王だけは表情を崩さず、冷静さも保っていた。
「なるほど……これは少々予想外。どうやら彼女が破壊したようですね」
「何!?あんな一瞬でどうやって……」
「分かりません。が、これで彼女が囮である可能性が高まりました」
「どうするの、王サマ……」
しかし、それが分かったところで探すことは出来ない。
エルジュは不安げな表情になり、スコルとサジも何も言わず立ち尽くす。
そんな中、王はただ一人笑みを浮かべていた。
彼はエルジュの方へ歩み寄り、彼女の頭を撫でる。
「ならば、彼らを誘き出しましょう」
「誘き出す?」
「ええ。彼らは秩序を乱す者を排除する戦士。それを利用させてもらいます。エルジュ、スコル、
「了解!」
「御意」
エルジュとスコルは立ち上がり、機械兵をメンテナンスする為に格納庫へ向かう。
二人が退室した為、必然的に王とサジは部屋に取り残される。
「サジ、君にはこれを渡しておこう」
サジは、王から差し出された物に目を見開く。
それは、王が戦兎と龍輝から奪ったビルドドライバーの一つだった。
「良いのか?俺だけに……」
「君だからだ。幼馴染であり、親友である君に託したい」
「───分かった」
彼は頷きながらビルドドライバーと黒いフルボトルを受け取る。
そしてサジはその力を使いこなせるよう、訓練室へと向かったのだった。
***
千歌さんや女神様達と別れ、俺・葛城先生・仁の三人は葛城研究所に到着した。
ここまで来る途中、学校の方に巨大な牛の化物が出現したが、数分もせずに消失した。
女神様が倒したのだろう。
彼女がいれば、千歌さん達の心配はいらないだろう。
そう信じて、俺達は自分達がやるべきことを進めていた。
「ラビットタンクスパークリング……パンドラボックスの成分が必要とあったから作成を諦めていたが……まさかこんな形で作ることになるとはね」
「大丈夫ですか、先生」
「ああ、問題無いよ。一日もあれば完成まではこぎつける。まあ、試作はもちろん、起動するかどうかの確認は出来ないから、本当の意味で完成とは言えないけれどね」
つまりぶっつけ本番ってことか……。
葛城先生の立場からすれば、そんなものを教え子には渡したくはないはずだ。
だが、それしかない……。それが分かっているから、先生は自分に出来る全てを出し切って、俺達に託そうとしているんだ。
「俺達に手伝えることは、やっぱり無さそうだな。そうと分かれば……龍輝、ちょっくら付き合え」
「は?え?付き合うって何にだよ?」
「決まってんだろ。お前のハザードレベルを上げるんだよ。ってことで巧さん、龍輝は借りてく」
「了解だ。僕としても、発明品は安全に使ってもらうに越したことは無いからね」
仁は、葛城先生の承諾を得ると、俺の襟首を掴み、研究所から連れ出した。
研究所前にて。
「おらあ!どうした龍輝!そんなんじゃ、死亡フラグ回収しちまうぞ!」
俺は死亡フラグがどうのと叫ぶ仁に一方的に攻撃されていた。
変身はしていないが、フルボトルの力を使っている為、普通に素手で殴るより威力は高い。
ガーディアン程度ならば、容易に粉砕できるだろう。
「分かってねーな。死亡フラグはへし折るもんだ。だから、俺が立てたのは死亡フラグと見せかけた生存フラグだ!」
「いやわけ分かんねーよ」
そんな威力の拳を交え、俺達はハザードレベルを上げていった。
「なあ、龍輝。何でビルドドライバーを残したんだ?」
「戦兎の為以外にあると思うか?」
「いや、そうだけども。俺が言いたいのはそうじゃなくてだな」
「じゃあ何だよ」
今までで一番の威力の拳が、俺の掌に刺さる。
それと同時に仁は言った。
「どうして起きるかどうか分からない奴に託すんだ?俺も場の雰囲気でボトル置いてきちまったけどよ」
「その答えなら簡単だ。俺が戦兎を信じてるからだ。アイツは目を覚ます。そんで、あのふざけた野郎をぶっ飛ばす。アイツは俺の相棒で、ヒーローだからな」
俺が仁の拳を離すと、仁は腕を下ろす。
そして笑いながら俺に言った。
「なら、そのヒーローとやらの為にも、ドライバーを使いこなして道を作らなきゃな!」
「ったりめーだろ!」
交わる拳と交わす言葉。
俺達は力を高めると共に、腹を割って話すことで互いに信頼し得る仲間となっていった。