ラブライブ!サンシャイン!!~BUILD the Rainbow~   作:白銀るる

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龍輝)新たなメンバーを加え、新体制となったスクールアイドル部。だが、仲間が増えたという喜びも束の間、浦の星が統廃合になるかもしれないという話が舞い込んできた。
千歌)学校を守る為に行動することに決めたわたし達は、内浦をピーアールする為のPVを撮ることにした。
梨子)出来上がったPVを理事長に見せたが、その評価は厳しいものだった。振出しに戻ってしまったわたし達だったけれど、内浦の人達の温かさこそが内浦の魅力であることに気付き、PVを完成させるのだった。
戦兎)千歌達がくのうする最中、俺は仮面ライダーグリスこと猿渡海斗に襲われた。更に、ナイトローグの仲間のブラッドスタークと邂逅。奴らに秘められた謎はさらに増え、深みを増したのだった。さあ、どうなる第12話?


第12話 Aqours イン TOKYO

『心火を燃やしてお前をぶっ潰す!!』

 

 記憶の中に焼き付いた海斗の姿。

 金色の戦士の前に、おのれの弱さを突きつけられた。

「戦兎、顔が怖いよ?」

 俺の意識を現実に引き戻した果南。

 心配そうな表情をしている原因は、言うまでもない。

「いや、ちょっと考え事をな……」

「もしかして、グリスとかいう仮面ライダーのこと?」

「……まあな」

 俺の悩みの種を瞬時に見抜けるのは、やはり長い間一緒に暮らしているが故なのだろう。

 けれど、これ以上は知って欲しくない。

 そんなエゴが、真実を俺の中に封じ込めた。

「奴は強い。けど、打開策はきっと見つかるはずだ。それを見つけて、次は必ず勝つ。だから、心配すんな」

「……分かった。戦兎がそう言うなら、わたしは信じるよ」

「……サンキューな」

 チクリと針で刺されたような痛みを感じる。

 心を覆う罪悪感は、俺の顔を曇らせようとする。

 そんな顔は見せるわけにはいかない。

「じゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 取り繕った笑顔で家を出る。

 

 これ以上、果南やダイヤを悲しませたくない。

 だから……俺は嘘を吐いた。

 

 

 ***

 

 

「戦兎君!この間のPV見た!?」

 部室に着くなり、千歌が疾風の如き速さと勢いで迫ってきた。

「近い近い。もっと距離感を持ちなさい」

 注意すると、千歌は離れていく。

 部屋の奥に目をやると、既に全員が集まっていて、皆、パソコンのモニターを見て驚いていた。

「この間のPVがどうしたって?」

「えー!戦兎君、見てないの!?」

「これ見て、お兄ちゃん!」

 俺に向けられたモニターに映っていたのは、前に撮影してアップロードしたAqoursと内浦のPV。

 そして、その再生回数が指し示されていた。

「ほう……五万再生突破か」

「ランキングも一気に九十九位まで上がったんだよ!」

「凄くない!?全国にいるスクールアイドルの中で、百位に入ったんだよ!」

 なるほど、確かにこれは大きな一歩だ。

 ここまでのものになれば、SNSでも大きな影響を与え、Aqoursの名前はあっという間に全国に広まる。

 けれど、油断は禁物だ。

「あんまり浮かれてちゃダメよ。もしかしたら、一時的なものかもしれないんだし」

「梨子の言う通りだ。ラブライブを目指すには、練習は今まで以上にこなす必要がある」

「うん!やるよ、ラブライブ!μ'sみたいに輝きたいから!」

 意気揚々と答える千歌。

 他の皆も瞳に強い光を宿している。

「うっし!それじゃあ、今日からはこの練習メニューでどうだ!」

 千歌に続いて声を上げた万丈が、ホワイトボードにメニュー表を貼り付ける。

 素人が考えたものとは、到底思えないメニューに、千歌達はもちろんだが、俺も驚きを禁じ得なかった。

「お前……こんなの作れたのか……」

「こういうのはマネージャーの仕事だ、って言ったのはお前だろ。ちゃーんと考えて作ったから、良い感じに仕上げられるはずだぜ」

「……なあ、一つ聞くが、これってお前一人で作ったわけじゃないよな」

「ま、まあ、細かいことは気にすんなよ。それより、早く練習を……」

 この反応は図星か。

 無理やり話を終わらせようとする万丈に助け舟を出したのは、現在、ルビィ達が見ていたパソコンだった。

 正確には、それに送られてきたメールと言うべきか。

 俺は、目を見開いてその画面を凝視する。

 

 東京スクールアイドルワールド、その招待状のメールが映し出されている。

 メールに記載されたそのイベント名は、苦い思い出をフラッシュバックさせる。

 

 スクールアイドル達が舞うステージ。

 憧れたその場所に立った三人は……動かなかった。

 いや、動けなかったのだ。

 たくさんの人に見られていることで募る緊張、不安、恐怖。

 そして何よりも……。

 

「……と!おい、戦兎!」

 万丈の呼ぶ声が、俺を記憶の中の世界から引き戻した。

「顔色悪いぞ、大丈夫か?」

「あ、ああ……問題無い……」

「それなら良いんだけどよ。トラウマを掘り起こされた父さんみたいな顔してたぞ」

「なんだよその例え……分かりにくいな」

 顔も見たことの無い万丈の親父さんのことはさておき、今のこの状態は二年前によく似ている。もし東京に行けば、あの時と同じような結果になることは目に見えている。

「……一つ聞くが、行かない、っていう選択は無いんだな?」

「無いよ!行くったら行く!わたし達の歌を色んな人に聞いてもらうの!」

 まあ、分かり切っていたことだな。

 昔から「やめる」だの「諦める」といった言葉は、千歌の中には存在していない。

 思わず出てしまう溜め息。

 すると、千歌は「何、その顔は?」とでも言いたげな顔になる。

「分かった。そこまで言うなら何も言わない。あ、でも親にはきちんと断っておくんだぞ」

「「はーい!」」

 

 その後、俺は、東京のイベントの参加の許可と同行を頼む為に、葛城先生のもとをを尋ねた。

 

 

 ***

 

 

 そしてイベントの前日、東京に出発する日がやって来た。

 やって来たのだが……。

「おい、千歌」

「なぁに?」

「『なぁに?』じゃない!お前なぁ……どんな格好で東京に行く気だよ……」

「どんなって、こんな格好だよ!」

 聞いた俺がバカだった……。

 

 今日は、十千万から出発するグループと沼津駅に直接集合する二グループに分かれ、駅で合流するという流れを組んでいたのだが、集まって早々トラブルが発生した。

 千歌、ルビィ、花丸の三人が、奇妙な恰好をしてきたのだ。

 とは言え、ルビィはこの中ではまだ一番マシな方だ。

「花丸……なんで登山にでも行くような格好してるんだ……?」

「渋谷の険しい谷を越える為ずらよ!」

 ふん!じゃないよ……。

 ていうか、ツルハシなんてどっから引っ張り出してきたんだ……。

「ははは……中々楽しいメンツじゃないか……」

 浦の星の先生の中で、もっとも奇人と言われている葛城先生も苦笑する。

「はあ……なんでこんなことに……」

 梨子に至っては、出発前にもかかわらず、既にげんなりしていた。

「お前ら……普通の服に着替えてこい」

「えー!?だって東京に行くんだよ!?思いっきりおしゃれしてかなきゃ!」

「そ、そんな!どうやって過酷な環境の中を生き抜いていくずら!?」

「うゆ……やっぱりこの格好はダメかな……」

 若干一名の上目遣いはかなりくるものがあったが、あんな格好で行かせるわけにはいかないので、全員を十千万に押し込んだ。

 

「はあ……まさかこんなことになるとは……」

「やっぱり、戦兎君の関係者はみんな面白い子達ばかりだね」

 溜め息を漏らす俺や梨子にそう言葉をかけ、葛城先生は笑う。

「葛城先生……こういうのは、本来顧問の仕事なんですよ?」

「僕にあの千歌君達をまとめるのは不可能だよ。やはり、適任は戦兎君しかいないと思うね」

「まあ、確かに葛城先生だと、千歌ちゃんに流されちゃいそうですもんね」

 悲しいことだが、梨子の言うことは正しいだろう。

 葛城先生には失礼だが、千歌達を制御出来るような人だとは思えない。

「それにしても東京か。離れてからもう十七年も経ったんだな」

「え?先生って沼津の出身じゃないんですか?」

「うん。二十歳の頃までは、大学に通いながら東京で最上魁星先生の助手をしていたんだ」

「最上魁星」。彼は、日本……いや、世界で五本の指に入るほどの科学者()()()人だ。

 葛城先生の口から彼の名前が出ると、梨子は顔を曇らせて俯く。

「ごめんなさい、先生……。まさか、先生が最上さんのお知り合いだったなんて……」

 そう、葛城先生の師である最上魁星はもうこの世にはいない。

 十七年前の事故で亡くなっているのだ。

「君は何も悪くないのだから、謝る必要は無いよ。それに、僕は彼が死んだとは思っていないんだ」

「え?」

「最上先生を含めた研究所の所員達の遺体は見つかっていない。だから、先生達はどこかで生きているはずだよ」

「おっ待たせー!」

「それに……」と、葛城先生が言いかけたところで千歌達が戻って来た。

 今度こそ、ちゃんとした普通の服装で。

「あう……結局いつもの服になってしまったずら……」

「あれ……?もしかして……今、すごく大事な話をしてました……?」

 会話を遮ってしまい、俺達の邪魔をしてしまったと思ったのか、ルビィは若干涙目になる。

「だ、大丈夫よ、ルビィちゃん!?」

「そ、そうだよ。ちょっとした世間話をしていただけさ。むしろ、ちょうどいいタイミングで戻って来てくれたよ」

「なんのこと?」と首を傾げる二人だったが、先生が「大丈夫」と言い聞かせると、ルビィは安堵の表情を浮かべた。

「万丈達も待ってるだろうし、そろそろ行くぞ。先生、運転はお願いしますね」

 

 俺達は先生の車に乗り、沼津駅へ向かった。

 ……そして、駅で待っていた三人のうち、一名が飛び抜けてとんでもない格好をしていて、また着替えさせたのだった。

 

 ……これから先、もう不安しかない。

 

 

 ***

 

 

 やっとのことで辿り着いた東京。

 内浦はもちろんのこと、沼津以上に賑わっている。

 流石は都会と言ったところだろう。

「さて、旅館のチェックインまで時間はあるし、各自自由行動にしようか」

「え?良いんですか?」

「ああ。……何人かはもう限界みたいだしね」

 苦笑する葛城先生の視線の先には、今にも制服に飛びかかりそうな曜や「薄い本」の看板に目を奪われている梨子……。

 普段からストッパーとしての役割を担っている反動からか、いつもなら絶対に見せないような顔をしている。

「……そうですね」

 集合時間と場所を決めると、みんな四方八方へと散っていく。

 残されたのは俺と万丈、葛城先生の三人だけ。

 そしてどこへ行くあてもなかった俺と先生も、万丈に引っ張られてメイド喫茶へ連れ込まれたのだった。

 

 

 集合時間が近づき、メイド喫茶から始まったアキバ巡りも終わりを迎えた。

 万丈の両手は本やらグッズやらで塞がれている。

 今回の旅で奴の本性の一つが垣間見えた。

「みんなおせえな」

「僕らは少し早く着いてしまったからね。そろそろ来るんじゃないかな?」

 噂をすればなんとやら。

 俺達が待っていた六人が少し離れた場所に確認出来た。

 徐々に近づいてくるアイツらだったが、明瞭になってくるその姿に「ん?」とならずにはいられなかった。

 主に曜に。

「曜、その格好は何だ?」

「だって神社に行くって言うから。似合いますでしょうか?」

「また凄いものを買ったんだね……」

 葛城先生は苦笑いを浮べる。

 まさか、曜がここまではっちゃけるとは……。

 ともあれ、全員が集合したので俺達は神田明神に向かった。

 

 

 神田明神に足を運んだ俺達は、そこで二人の少女に出会った。

 どこかで見たことのある顔。

 だが、どこで見たのか、誰なのかはついぞ分からなかった。

 それから旅館のチェックインを済ませ、俺達は今、男子部屋で荷物を整理していた。主に万丈がだが。

「これで良しっと……」

 荷物がまとめ終わったらしく、万丈は腕を組んで満足そうに笑う。

 その顔は、どこか果南に通じるものがあった。

 この既視感、初めて万丈と言葉を交わした時にもあった。

 あの時は分からなかったが、確かにコイツは果南に似ている。

 

 ……以前は、果南もこんな顔で笑っていたな。

 ずっとそばで見ていた、俺の一番好きな顔。

 万丈に重なる果南の影は、俺に笑いかけてきた。

 それが幻だと分かっていても、つい口元が緩んでしまう。

 

「お、おい、戦兎……どうしたんだよ。人の顔見てそんな表情して……」

「え?あ、いや、なんでもない……」

「これは果南君のことを考えていたね?」

 悪戯な笑みを浮べ、果南の名前を口にする葛城先生。

 それを聞くや否や、万丈もニヤニヤ笑い始める。

「何を言い出すんですか、先生!からかわないでください!」

「お、図星か」

「ごめんごめん。君達のように青春してる子を見ると、つい羨ましくなってしまうんだ。同時に今は、申し訳なくも思っているんだけどね」

 先生の顔に影が射す。

 十中八九、仮面ライダーのことだろう。

「神子さんから引き受けた君達のことを引き受けたけれど、出来ることなら僕が変わってあげたい、それが本音なんだ」

 けれど、それは叶わない。

 以前、葛城先生は予備のベルトを使って変身を試みたが、アーマーが現れることは無かった。

 それは葛城先生は、ハザードレベル3を超えることが出来ないという非情な答えだった。

「たとえ戦えなくとも、君達は僕の生徒だ。何かあった時は必ず僕が守るよ」

「……ありがとうございます、先生」

 その言葉が、先生の想いがとても嬉しかった。

 大切に想う人達がいて、守ってくれる人達がいて、そんな世界を守りたい。

「頑張らなきゃな、戦兎」

「そうだな」

 負けられない理由がまた一つ増えた。

 海斗にだって、今度は──。

 

 

 ***

 

 

 遂にこの時がやってきた。

 まさか、またこの場所に立つ日が来るとは思ってもみなかったが。

 スクールアイドルワールドのシステムは、投票によりその順位を決めるというシンプルなもの。

 そして最も注目すべきは、スクールアイドルの公式ランキングと今イベントのランキングは完全に乖離しているということ。

 つまり、無名であっても一気に名をあげることも可能なのだ。

「Aqoursの出番は二番ね!みんな、元気にはっちゃけちゃってねー!」

 そう告げて司会進行のお姉さんは去って行った。

「二番目……前座ってことね」

「ま、仕方ねえ。今やれることを全力でやりゃいいさ」

 震える彼女達に声援を贈る万丈。

 だが、そんな奴も小刻みに肩を震わせていた。

 そこへ……

 

 その二人は現れた。

 

 昨日、俺達が神田明神で出会った少女達。

 ステージ衣装を纏った姿を目にし、俺は彼女達の正体を思い出した。

「スクールアイドル、だったんですね……」

「あれ?言ってませんでしたっけ?わたしは鹿角聖良」

「鹿角聖良」と名乗った挑発的な態度の少女。

 そうだ。確か、少し前に読んだ「今、一番熱いスクールアイドル」という記事に彼女と彼女の妹、「鹿角理亞」の名前を目にした。

 ここ最近の騒ぎの所為で、完全に失念していた。

「見ていて。わたし達、Saint Snowのステージを!」

 

 この日、俺達は……俺は自分が井の中の蛙であったことを思い知らされることとなった。

 

 




明かされた真実──。
ダイヤ)わたしく達は歌えなかったのです。
少女達の覚悟。
理亞)ラブライブは……遊びじゃない!
千歌の悲痛な想い。
千歌)やっぱりわたし……くやしいんだよ……!


海斗)戦兎とは手を切れ。裏切られる前にな。
彼の言葉の意味とは……?

次回、「敗北のゼロ」。物語は加速する。戦兎達五人の秘められた過去と共に。

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