ラブライブ!サンシャイン!!~BUILD the Rainbow~   作:白銀るる

19 / 26
龍輝)あれ?戦兎の奴どこ行ったんだ?千歌さん達も今は出れないだろうし……仕方ない。俺一人でやるか。
苦悩の末、遂にPVを完成させた千歌さん達。動画の再生回数は驚異の五万回超と、とんでもないことになっていた。そんな中、Aqoursは東京で開かれるスクールアイドルのイベント、「東京スクールアイドルワールド」に招待される。東京に赴いたみんなは、沼津とは全く違う東京を各々楽しみ、イベントに向けて英気を養った。そして遂に、Aqoursを立ち上げて初めてのイベントが幕を上げたのだった。さあ、どうなる第13話!?


第13話 敗北のゼロ

 俺達は沼津に戻る電車に乗っていた。

 列車が走る音以外に聞こえる音は無く、窓から覗く景色は現実からは程遠い幻想的な眺めだ。

 だが今この空間でこの景色を堪能しているのは誰一人いないだろう。

 千歌さん達は言わずもがな、戦兎までもが俯き床を眺めていた。

 まあ、それも無理も無いのだが。

 

 みんながこんな風になってしまっている理由はただ一つ。

 そう、スクールアイドルワールドだ。

 このイベントでAqoursは、他のスクールアイドルから圧倒的な差を見せつけられた。

 イベントに参加したスクールアイドル達のステージはどれもこれもが“今の”Aqoursとは一線を画すものだった。

 もちろん、Aqoursが全くダメだったわけじゃない。

 千歌さん達のパフォーマンスはこれまでで最高のものだと言えると思う。

 だがそれでも足りないのだ。

 結果、Aqoursの順位は30組中30位。

 そして得票は0だった。

 

『お疲れ様でした。素敵な歌でとてもいいパフォーマンスだと思いました。……でも、もしμ’sのようにラブライブを目指しているのなら、諦めた方がいいかもしれません』

 

 会場で出会ったスクールアイドルの少女、Saint Snowの鹿角聖良からの宣告。

「諦めた方が良い」、そうハッキリと言われてしまった。

 誰だってしょぼくれてしまうだろう。

「泣いてたね、あの子。きっと悔しかったんだ……」

 そしてAqoursに厳しい言葉を放ったSaint Snowもまた、今回のイベントでは入賞すら出来ていなかった。

 

『ラブライブは遊びじゃない』

 

 目尻に涙を浮かべた鹿角理亞が叫んだあのシーンは、今でも鮮明に思い出せる。

 みんなもその時のことを思い出したのか、車内の空気は一層重くなってしまった。

「わたしは……良かったと思うけどな。努力して頑張って東京に呼ばれて、それだけですごいことだと思わない? 胸張って良いと思う。今のわたし達の精一杯が出来たんだから!」

「……なあ、千歌さん。本当にそう思ってるのか?」

「本当だよ。少なくともわたしは満足してる」

 そう答える千歌さんは笑っていた。

 いや、笑顔を作っていたというべきか。

 その姿は見ているだけでやりきれない気持ちになる。

「千歌ちゃんは悔しくないの?」

「それは……」

 そんな千歌さんに対し、曜さんが問いかけた。

 だが千歌さんは俯いて返事をしない。

 

 それ以上は何も言えなかった。

 俺はこれまで色々な千歌さんを見てきた。

 色々な話を聞いてきた。

 その全てがウソであるかのように、今の彼女は弱く見えてしまった。

 

 それは戦兎も同じだった。

 一人離れた席に座り、窓の外を眺める戦兎。

 イベントが終わってからアイツとは一度も話していない。

 顔は見えないが、力強く拳を握るその様は話しかけることすらはばかられる。

 やっぱりアイツは……。

「今はそっとしておこう、龍輝君」

「先生……」

「大丈夫。戦兎君はきっとまた立ち上がる。その時は僕達で彼を支えてあげよう」

「……そうですね」

 そうだ。前にそう決めたじゃないか。

 どんなことがあっても俺は戦兎を信じる。

 今は、アイツが自分の力で立ち直るのを見守ることにした。

 

 沼津駅に着いた時には日はほとんど沈んでいて、さっきまで赤かった空は闇に包まれようとしていた。

 一行の雰囲気は未だ沈んだまま。

 駅から出ると遠くから手を振りながら近づいてくる集団が見えた。

 東京に向かう時に俺達を送り出してくれたクラスメイト達だ。

「おーい! 千歌ー!」

「みんな……」

 笑顔で俺達を出迎えてくれたみんな。

 だが梨子さん達の表情は暗いまま。

 千歌さんは無理やり笑顔を作り、彼女達に見せた。

「どうだった? ちゃんと歌えた?」

「う、うん。今まで最高のパフォーマンスが出来たねってみんなで話してたんだー」

「良かった〜……心配して損した」

「じゃあさじゃあさ! もしかして本当にラブライブ優勝狙えちゃう感じ!?」

「え……」

 作り笑いでのしのごうと策したようだが、むつさんのその一言で千歌さんは固まってしまった。

「当たり前じゃん! 東京のイベントに呼ばれるくらいなんだもん!」

 さらによしみさんがクラスメイト達のテンションに拍車をかけていく。

 それと反比例するように、千歌さんのぎこちない作り笑顔も消えていった。

 

「おかえりなさい」

 

 むつさん達とはまた違う誰かの迎えの声。

 振り返るとそこにはダイヤさんが佇んでいた。

 その表情はこっちでは一度も見たことがない優しい顔をしていた。

 きっとルビィさんを迎えに来たんだ。

「お姉ちゃん……」

 そんなダイヤさんの姿を見て、今まで我慢してきたものが抑えきれなくなったようで、ルビィさんは彼女に抱き着いて泣き崩れた。

「よく頑張ったわね」

 盛り上がっていたクラスメイト達もその姿を見ると、全てを察したようだった。

 静まり、誰もが動かなくなったこの場で、一人戦兎だけがダイヤさん達に歩み寄っていった。

 それからアイツはダイヤさんに何かを告げ、どこかへと姿を消してしまった。

 

 駅にまで迎えに来てくれた彼女達は、気を遣ってくれたのかいつの間にかいなくなっていた。

 残された俺達はダイヤさんに導かれ、東京での出来事を全て話した。

「得票数0……やはりそう言うことになってしまったのですね。最初に言っておきます。あなた達は決してダメだったわけではありません。スクールアイドルとして十分に練習を重ね、見てくれる人を楽しませるのに足りるパフォーマンスをしている。でも、それだけではダメなのです」

「どういうことです?」

「7236……何の数字か分かります?」

「知ってる。去年、ラブライブにエントリーしたグループの総数。そんでもって第一回大会の参加数の十倍以上だったか」

「そうですわ。スクールアイドルは確かに以前から人気がありました。そしてそれはラブライブの大会の開催と二つのグループ、μ’sとA-RISEによって決定的なものとなった。結果、ここ数年でスクールアイドルのレベルは大幅に向上していった……」

 俗に「パワーインフレ」と呼ばれる現象だ。

 競い合う種目・ゲームならば避けては通ることは出来ない道であり、超えることが難しい壁。

 スクールアイドルもその例にもれなかったというわけだ。

「あなた達が誰にも支持されなかったのも、わたし達が歌えなかったのも仕方ないことなのです」

「歌えなかった……? それってどういうことなんですか?」

 ふとダイヤさんがもらした一言を梨子さんは聞き逃さなかった。

 ダイヤさんは嫌がる素振りも見せることなく話を続けた。

「実は二年前から廃校の噂はあったのです。わたくしと果南さんと鞠莉さん、戦兎さんと……もう一人、猿渡海斗さんの五人でスクールアイドル部を立ち上げたのですわ」

「戦兎君と果南ちゃんが!?」

「しかし、先にも言った通りわたくし達は歌えなかったのです。他のグループのパフォーマンスの凄さと巨大な会場の空気に圧倒され……何も歌えなかった」

 なるほど、戦兎も東京へ行くのを渋ったわけだ。

 アイツもそれを直に体験したうちの一人だった。

 だから、あの場所に行きたがらなかったんだ。

「あなた達は歌えただけ立派ですわ」

「じゃあ、今まで反対してたのは……」

「いつかこうなることが分かっていたから……」

 

 ふと脳裏に蘇ったあの時の記憶。

『これは、今までのスクールアイドルの努力と、町の人達の善意があっての成功ですわ! 勘違いしないように!』

 初めてのライブの時にダイヤさんが言ったあの言葉は、千歌さん達に自分達と同じ想いをさせたくないという想いがあったのだ。

 

「随分と後輩想いなんだな」

 

 突然、立ち上がったダイヤさんの向こう側から男の声が聞こえてきた。

 夜の闇の中からこちらへ歩いてくる影。

 その影が声の正体で間違いないだろう。

 それにしてもこの感じ……前にもどこかで……。

 

「よう、ダイヤ。久しぶりだな」

 街灯に照らされ、全容が明らかになった男。

 身長は戦兎や俺と同じくらい。

 ダイヤさんを知っていることから、恐らく同年代と見ていい。

「海斗さん……」

 そしてダイヤさんが男の名前を口にしたおかげで、奴の正体まで辿り着いた。

 いつだったか、戦兎が話していたもう一人の幼なじみ、猿渡海斗だ。

「やはり戻っていたのですね。学校にも来ないで何をしてましたの?」

「お前に答えてやる義理はない。今日はそこの奴らに忠告しに来ただけだ」

「忠告……? 一体何の……?」

 冷たい視線を向けられた千歌さんは、おそるおそる猿渡海斗に問いかける。

 次の瞬間、奴の口から信じられない言葉が飛び出した。

「戦兎とは手を切れ。裏切られる前にな」

「「……ッ!?」」

 ダイヤさんは奴を睨み、俺達は驚愕の声を漏らした。

 どういうことだ、アイツは戦兎の幼なじみじゃないのか!? それにダイヤさんにだけ向けられた明確な敵意……。

「海斗さん! 戦兎さんは裏切ったわけでは……」

「アイツは俺達を裏切った! お前も、果南もだ……!!」

 更に俺達は驚かされる。

 奴は戦兎だけでなく、ダイヤさんや果南さんまで裏切り者と吐き捨てたのだ。

 三人を裏切り者呼ばわりした猿渡海斗は、踵を返して元来た道に消えて行く。

「悪い、ダイヤさん。みんなを頼む!」

「龍輝さん……!」

 追い掛けるのを止めようとしたのか、ダイヤさんは俺の名前を呼ぶ。

 だが俺はその声を振り切り、猿渡海斗をの後を追った。

 

 

 猿渡を追いかけ始めてから数分が経過した。

 複雑な道と暗闇のせいで俺は猿渡を見失ってしまった。

 やっぱり見つからないように尾行した方が良かったか。

 そんな風にあれこれ考えていると、カツンカツン、と足音が聞こえてきた。

 足音はどんどん近付いて来る。

 やがて足音が止むと、俺は背後に何者かの気配を感じた。

「何故俺を追ってくる……なんて、聞くだけ野暮か」

「さっきの話……戦兎達が裏切り者ってどういうことだ!?」

「そのままの意味だ。知りたきゃ教えてやる。ただし、俺に勝てたらな」

「なに!?」

 振り返った瞬間、金色のライダーがツインブレイカーの銃口を俺に向けていた。

 なるほど、戦兎が一方的にやられた挙句、あんなに険しい顔をしていたわけだ。

 幼なじみが仮面ライダーになり、しかも敵として現れたんだからな。

 俺はスクラッシュドライバーを装着し、ドラゴンスクラッシュゼリーを装填してレンチを叩き下ろした。

「ドラゴン イン クローズチャージ! ブラァァァ!!」

 クローズチャージの装備を纏い、金色のライダーグリスと対峙する。

「言っておくぞ。俺は強い、後悔すんなよ!」

「テメエこそ、格下だからってナメてかかると痛い目見るぜ」

 左手にツインブレイカー ビームモードを召喚し、俺とグリスはビームを撃ち合い、お互いの攻撃を防ぎながら駆け寄って肉弾戦へ移っていく。

 衝突する拳と拳。

 その衝撃は拳から腕へと伝わり、全身が震える。

 拳はお互いの体を弾き、それから更に激しい撃ち合いが始まった。

 

 数発の攻撃を受け、やはり並のスマッシュやビルドドライバーで変身するライダーとは、格段に力の差があることを身をもって実感する。

 更に、グリスの動きはどこか師匠達と通じるものがあった。

 それは「本当の戦い」の中で得られる、求められる動き。

 多分、猿渡には俺と同じで師匠のような者がいる。

 対して戦兎はビルドとして戦い始めたのが数ヶ月。それまでは、戦いなどとは無縁だった一般人だ。

 そんな二人が戦えば、あんな結果になっても当然だろう。

 

 だが、戦兎相手には圧勝だったグリスも、俺とは互角……いや、俺の方が少し押している。

 俺が攻撃を浴びせる度にグリスの動きは鈍くなり、打撃の威力も少しずつ落ちていった。

「このまま戦い続けたところで、お前の負けは目に見えてる。悪いことは言わねえ、さっさと降参しろ」

「ちっ……もう勝った気でいやがんのか」

 グリスは苛立った声で舌打ちする。

 だが自分でもそれは理解しているのか、これ以上の反論はなかった。

 それでもグリスは攻撃を止めない。

 俺は奴の腕を掴んで攻撃を妨害し、そのままジャイアントスイングで投げ飛ばした。

 飛ばした先には壁がある。この勢いでぶつかればダメージは相当なものになるはずだ。

 しかし、グリスがその壁に打ち付けられることはなかった。

 空から黄色い影が飛来し、グリスを受け止めたのだ。

「あの姿……善子さんが変身したスマッシュ!?」

 以前善子さんが手に入れた力──ハードスマッシュと呼ばれる存在。

 それが再び目の前に現れたのだ。

 オウルハードスマッシュは、受け止めたグリスを降ろしながら、自らも地上に足をつける。

「ったく、お前はいつも無茶ばかりだな」

「カズ兄!? ……手は出すなって言ったろ!?」

「あの野郎の命令なんだ。仕方ないだろ」

 カズ兄……その名前も前に戦兎が口にしていた。

 その時の口ぶりだと、鞠莉さんと一緒に沼津を離れていたようだが……。

 刹那、嫌な考えが頭を過る。

 まさか鞠莉さんもスマッシュと何らかの形で関わっているのか!? 

 そんな思考を張り巡らせていると、俺の頭のすぐ横をエネルギー弾が過ぎ去る。

「何ボーッとしてんだ。まだ戦いは終わってねえぞ」

「手荒くて悪いな。やめとけって言ったんだけど、コイツ今機嫌悪くてよ。まあ、悪いついでにもう一つ。ここからは俺たち二人を相手にしてもらう」

 グリスとオウルの二人によって、俺の意識は表層へと引き戻された。

「ああ!? マジかよ……」

 ここで新手が来るのは想定外だ。

 疲労とダメージが蓄積しているグリスはともかく、乱入してきたばかりのオウルはダメージは皆無で体力も減っていない。

 だが俺は今の戦いでのダメージも疲労も、グリス程ではないにしろ残っている。

 オウルの参戦によって、俺の勝利は一気に遠のいてしまった。

 

 ……けど、負ける訳には行かねえ! 

 戦兎達に何があったのか、俺には知る必要がある。

 

「上等だ! 意地でも勝ってやる!」

 俺は拳同士を打ち付けて叫び、グリスとオウルに向かって走り出した。

「いい返事だ」

 まずはグリスに攻撃を仕掛ける。

 やはり先の戦いのダメージが響いていて、簡単に攻めることが出来た。

 が、すぐにオウルが対応し、両手のユニットをドローンのように飛ばして俺の攻撃を妨害した。

 オウルの妨害を受けたことで体勢を崩し、大きな隙を作ってしまう。

 そこをグリスのツインブレイカーで撃たれ、仰け反ってさ更に追撃を許してしまった。

 グリスとオウル、二人の連携攻撃が炸裂して形勢は逆転。

 防戦一方どころか、俺は防御すら出来ずに一方的に攻撃を浴びせられ、地に膝を着いて頭を垂れた。

「俺たち二人が相手になった途端にこのザマか」

「とか言って、お前一人で勝てなくて本当は悔しいんだろ?」

 失望したと言わんばかりに罵声を浴びせてくるグリス。

 そのグリスをなだめ、「悪いな」と俺に手を合わせて謝罪するオウル。

 このまま戦い続けても、俺に勝ちはない。

 ついさっきグリスに掛けた言葉が、俺に返ってきた。

 敗北の二文字が俺の中に浮かんできた。

 だが俺はそれをすぐに掻き消した。

 

 俺は負けらんねえんだ……! 

 戦兎や千歌さん達、みんなの為に! 

 

 俺の中で感情が昂る。

 荒ぶる龍の如く、想いを爆発させる。

「俺はまだ……負けちゃいねえ……! 絶対(ゼッテェ)負けねえ!!」

 心の底から闘志が湧き上がってくる。

「おいおい、スターク……こんなの聞いてねえぞ」

「蒼い……ドラゴン……」

 俺の想いに呼応し、クローズチャージから溢れ出た余剰エネルギーは龍の姿になり、鋭い眼光でグリスとオウルを睨む。

 ツインブレイカーにクローズドラゴンをセット。続いてビートクローザーを召喚してドラゴンボトルをセット。

 最後にレンチを叩きおろし、「スクラップブレイク」の音声を鳴らして必殺技の体勢をとる。

「俺の全力の攻撃……受けてみやがれ──ッ!!」

 ビートクローザーをグリスとオウル目掛けて投げ飛ばすと、龍はそれを飲み込んで巨大化する。

 更に俺はツインブレイカーから蒼い炎を発射して龍に纏わせる。

 最後に俺自身がその龍の中に飛び込み、キックでビートクローザーの勢いを加速させた。

 全身全霊のキックはグリスとオウルに炸裂。青い爆炎が起こり、爆煙が立ち上った。

 かなり無理な技を繰り出した為、クローズチャージのボディにスパークが走り、変身が強制解除された。

 まるで電流を浴びたかのように全身が痺れ、再変身は不可能だ。

 これで倒れてなけりゃ、完全にお手上げだな……。

 痛みに耐えながら二人がいた方へ体を向ける。

 

 ……煙の向こう側に一人分の影が見えた。

 マジかよ、今のが俺の最強の技だってのに……。

 煙が晴れて俺が見たのはグリスでもオウルでもない。

 赤い城のような形のスマッシュ、名付けるとしたらキャッスルスマッシュとでも呼ぶか。

「全く……君はとんでもない奴だな」

 キャッスルから発せられた声は、オウルのものと同じ。

 つまりカズ兄と呼ばれた男は二種類のスマッシュに変身出来るということだ。

「アンタに言われたくないな……今のを耐えるなんて……」

「海斗はダウン……この勝負は君の勝ちだ。目が覚めたら、約束通り二年前のことを話すように言っておく。それから……本当はダメなんだが、君が奪ったってことにしておいてくれ」

 キャッスルは二本のフルボトルを俺の方へ投げ飛ばした。

 キャッチした瞬間に手に痛みが走るが、何とか落とさずに掴んだ。

「それじゃ、近いうちにまた会おう」

 キャッスルは気を失った猿渡を背負いながら人離れした跳躍で夜の空に消えていった。

「はあ……今度は俺が千歌さん達に怒られる番だな……」

 その後、俺は女神さまに連絡し家まで送ってもらった。

 ちなみに滅茶苦茶怒られた。

 

 

 ***

 

 

 次の日、俺は朝早くに家を出て十千万に向かった。

 多分、もうみんな揃っているはずだ。

 

 

 十千万に到着すると、戦兎を除いた全員が揃っていた。

 そして何故かみんなずぶ濡れだった。

 さっきまで雨が降ってたから……というのは絶対に違う。

 では何故? 理由は一目瞭然だ。

「何で朝っぱらからみんなして海に入ってんだ? 確かにそろそろ暑くなってきたけどよ」

「別に海に入って涼んでたわけじゃないよ~。わたし達決めたんだ! 0を1に! 0から1に進もうって!」

 そう話す千歌さんとみんなの顔はもう曇っていなかった。

 どうやらみんな立ち直れたようだ。

「龍輝君もこっちに来て! みんなで一緒にやろう!」

「あー……それは無理かな。今海に入ったら絶対傷に染みる」

「傷?」

「よく見たら龍輝君、酷い怪我してる!? 一体何をしたらこんなになるのよ! 戦兎君じゃないんだから!」

(イデ)デ! 梨子さん、そんなに強く掴まないでくれ!」

 海の水で濡れた梨子さんの手が傷口に染みて思わず叫んでしまう。

「ごめんなさい」と謝る梨子さんに、俺達のやり取りを見て笑う千歌さん達。

 

 戦兎、みんなお前を待ってるぞ。

 お前が必ず戻って来ると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 




龍輝)お?次回予告が元に戻ってる?
作者)前回のはちょっと試しに変えてみたんだけど、やっぱりこっちの方が良いかなって思ってさ。決して、本家みたいなテロップでの予告風にしてみたかったけど、コレジャナイ感が凄かったからとかじゃないからね!
梨子)そんなことを言うってことは、そう言うことなのね……。
龍輝)良いんじゃねえか?ま、とりあえず予告いっておこうぜ。
梨子)次回「第14話 猿渡海斗のメモリー」何だか彼、悲しそうな顔してる……?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。