ラブライブ!サンシャイン!!~BUILD the Rainbow~ 作:白銀るる
龍輝)そんな中、部室に猿渡海斗が現れ、俺達は奴から戦兎達の過去を教えられる。戦兎達を裏切り者と罵る猿渡。だが、奴自身も戦兎達との思い出は捨てきれず、複雑な想いを抱えていたのだった。さあ、どうなる第15話!?
次回のサブタイトルを変更しました。
スクールアイドルワールドが終わり、俺達は内浦に戻った。
イベントに参加したAqoursの順位は30組中30位。得票は0と、最低の結果を残すこととなったのだ。
他のグループのパフォーマンスを見た時、そして結果を告げられた時のみんなの顔は、嫌でも脳裏に焼き付いて残っている。
特に、無理をして笑っていた千歌を見た俺は、胸が締め付けられるような痛みを感じた。
だけど、俺は千歌達に何も言葉をかけてやれなかった。
悔しくてたまらなくなった。
アイツらは俺を立ち直らせてくれたのに。
スクールアイドルが最高だって思い出させてくれたのに。
俺はなんて弱いんだ。
俺はアイツらを支えてやれない。
俺はアイツらを守ってやることも出来ない。
もっと力が欲しい。
誰も悲しませない力が。
誰かを守れる力が。
「よお、戦兎」
誰かが俺の名前を呼ぶ。
どこか無機質で、感情を感じ取れないようなその声は、前に一度だけ聞いたことがある。
「ブラッドスターク……!」
「そう警戒するなって。今日は良いもん持ってきてやったんだから」
「何……?」
俺が向ける敵意などものともせず、スタークは歩み寄ってきた。
そしてスタークは俺の右手を開き、メーターとセーフティカバーのようなものが着いたデバイスを握らせた。
「それはハザードトリガーだ。ソイツを使って変身すると、強化剤が身体に浸透してハザードレベルがグンと上げられる」
「ハザードレベルを……」
「そうだ。それを使えば猿渡海斗にも勝てる」
「海斗に勝てる……!? 本当か!?」
「ああ。ただし、問題が一つある。ハザードトリガーを長時間使い続ければ、脳がその刺激に耐えられずに理性を失い、その瞬間にビルドは暴走しちまう。諸刃の剣ってやつだな」
暴走というスタークの言葉が俺の中の恐怖を煽る。
もし暴走してしまったらどうなってしまうのか、想像もつかない。
だが、今の俺には力が必要なんだ。
誰も負けない力が。誰かを守れる力が。
強い力が……!
「待ちなさい、戦兎。その男の口車に乗せられてはダメよ」
またしても誰かが俺を呼んだ。
スタークとは対照的に、今度の声は普段からよく聞いている人物のもの。
振り返った先にいたのは、これまでにないくらいに険しい表情を浮かべている神子さんだった。
「おっと、今回はこの辺で引き上げさせてもらおうか。こっちとしてもアンタとはあまり関わりたくないんでね」
彼女の姿を見るや否や、スタークは銃で煙幕を巻いてこの場から姿を消した。
しかし、奴の姿が見えなくなったにもかかわらず、神子さんの表情は依然として険しいままだ。
原因は十中八九このハザードトリガーだ。
「もう奴の気配はないか……。戦兎、それは使ってはならん。ハザードトリガーは確かに強力じゃ。じゃが、それを使えば周りの人間に危害が及ぶ。戦いに身を置く龍輝だけではない。千歌や果南達にもじゃ」
「じゃあどうすれば良いんだよ!? このままじゃ俺は……今までと何も変わらないんだ……。誰かの悲しむ顔は……もう見たくないんだよ……」
果南や千歌。俺は、大事な人達の悲しむ顔を嫌という程見てきた。
その顔を見る度、胸が締め付けられるような思いをしてきた。
そんな思いはもうたくさんなんだ……。
「だから……俺は強くなるんだ……!!」
「……何を言っても無駄なようじゃな。良かろう、ぬしの未熟さを思い知らせてやる」
神子さんの右手が手のひらをかざすと、俺の手に握られていたハザードトリガーが引っ張られるように彼女の手に収まった。
「やってやる……。力を手に入れる為に……!」
言われるがまま俺はビルドに変身し、神子さんからハザードトリガーを取り返す戦いが始まった。
***
戦兎が帰って来てから数日が経った。
落ち込んだ様子で戻って来た戦兎は、「一人にしてくれ」と言って家から出て行った。
そして再び帰って来た戦兎は、全身傷だらけで服もボロボロ。
何かあったのかと聞いても、「何でもない」と部屋に閉じこもってしまう。
次の日も、学校に行ったのかと思えば傷を増やして帰ってくる。
それが何日も続き、父さんも母さんも学校で何かあったんじゃないか、戦兎のことをとても心配していた。
学校での戦兎の様子を知る為、わたしはダイヤに連絡しようとすると、ダイヤの方から電話がかかってきた。
そしてダイヤの口から驚くべき事実を伝えられた。
「えっ!? 戦兎、学校に行ってないの!?」
『ええ、そうなんです。わたくしも戦兎さんのことについて聞こうとしたのですけど、その様子だと貴女も知らないみたいですわね……』
「まさか学校に行ってなかったなんて思わないよ……。今日もいつもと同じ時間に出かけて行ったんだから……。一体どこで何を……」
『ひとまず、わたくしの方から葛城先生や千歌さん達に伝えておきます。果南さんは
「分かった……。千歌達のこと、お願いね」
それから、わたしは戦兎を探しに家を出た。
***
ダイヤと連絡を取ってから一時間程が経った。
「島の奥の方に包帯だらけの男の子が入っていくのを見た」という話を聞き、わたしはその場所を探し出した。
そこで見たのは、ビルドに変身した戦兎と神子さんの二人。
何故か二人は戦っていて、神子さんは戦兎に対して厳しい言葉をぶつけていた。
「この数日間でハザードレベルは格段に上昇している。じゃが、その程度ではこれを使いこなすことは出来ん!」
「ガッ……! ……クソッ!!」
生身であるにもかかわらず、神子さんはビルドを圧倒していた。
ビルドは一方的に攻撃を浴びせられていて、反撃をしても逆にカウンターを当てられ、吹き飛ばされてしまった。
「フェニックス! ロボット! ベストマッチ!!」
「不死身の兵器! フェニックスロボ!! イエーイ!!」
ビルドは赤と黒の姿に変わり、更に炎の鳥に変身して神子さんを覆い尽くす。
けれど一瞬のうちに炎は霧散させられて、ビルドはラビットタンクに戻されてしまった。
「これで分かったじゃろう。ハザードトリガーはもう諦めて……」
何かを諦めるように言いかけた神子さんだったが、ビルドの右手を見て声が止まった。
「取ったぞ……ハザードトリガー……!」
「まさか本当に……! よせ、戦兎! 使うでない!」
いつになく狼狽した様子の神子さん。
だが彼女の忠告を振り切り、ビルドはそれを起動させた。
「ハザードオン!」
「ラビット! タンク! スーパーベスマッチ!!」
ビルドは赤いデバイスをビルドドライバーに接続させ、レバーを回転させていく。
ビルドの前後に黒い鋳型のようなものが生成され、そのボディはビルドを押しつぶした。
「アンコントロールスイッチ! ブラックハザード! ヤベーイ!!」
青と赤のツートーンだったボディは黒一色に統一され、元の色は顔の部分のみ。
これまでのビルドとは全く違った雰囲気を放ち、その姿を見たわたしは震えが止まらなくなってしまった。
黒いビルドは神子さんへ攻撃を始め、数分前まで防戦一方だったのが嘘のように攻めることが出来ている。
「力が漲ってくる! これなら海斗にだって勝てる!」
……今、戦兎はなんて言った?
海斗にだって勝てる?
一体どういうこと?
そんな疑問達が頭を過ぎる。しかしそれも束の間、次の瞬間にビルドに異変が生じた。
頭を抱えて苦しみ始めたんだ。
「やはりまだ無理じゃったか……」
神子さんは右手をかざし、気合いのようなものでビルドのベルトに付けられたデバイスを吹き飛ばした。
そしてビルドのボディにスパークが走り、変身が解けて戦兎の姿に戻った。
「今のでわかったじゃろ。ぬしにハザードトリガーはまだ早い」
「でも……俺は強くならなきゃ……!」
「このたわけ! わらわがいなければ、ぬしは果南を殺めておったのじゃぞ!!」
「え──」
どうやら、神子さんはわたしがいることに気づいていたようだ。
激昴する神子さんは、隠れていたわたしを見て戦兎を怒鳴る。
「もう出てきても平気じゃ」と神子さんに促され、わたしは二人の元へ歩み寄った。
「そのハザードトリガーは、長く使えば使用している者は暴走し、目に映るもの全てを破壊する兵器と化す。ましてや、今のぬしのハザードレベルでも一分も自我は保てぬ。そんな状態で戦いに挑めば、確実にぬしは猿渡海斗を殺める」
「海斗を殺めるって……どういうことなんですか? 『海斗に勝てる』って……」
「以前戦兎を敗った金色のライダーが猿渡海斗なんじゃ」
神子さんからそう告げられ、わたし葉言葉を失った。
海斗が仮面ライダーで、そして敵。
戦兎や龍輝君以外に仮面ライダーがいて、敵であると言うだけでも驚いたのに、それが自分達の幼なじみなのだ。
わたしの心にショックを与えるのには、十分過ぎる要素だった。
「……俺は……誰かを守る力が欲しいだけなのに……」
戦兎は泣いていた。
地面に手を付いて震えているその姿は、酷く弱々しく思えた。
彼は、海斗が敵だという真実をずっと隠してきたんだ。
きっと、わたし達が傷付かないように。
「ごめんね……戦兎。ごめんね、辛かったよね……」
わたしは、戦兎に色々なものを背負わせてしまっていた。
戦兎の抱える想いを何も知らずに、ただ自分が傷付きたくないという身勝手な理由で、戦兎一人に押し付けてしまっていた。
戦兎に対する申し訳ない気持ちと自分に対する怒り、情けない気持ちが湧き上がってきた。
「戦兎、ぬしは一人じゃない。ぬしの側には、こんなにもぬしを想ってくれている人間がいる。一人で抱え込むんじゃない。ぬしの持つ力、ビルドの力は人を傷付ける為にあるものではない。ぬしも含め、人間達を笑顔にする為の力じゃ。それを忘れるな」
「……最悪だ。前に俺が善子に言ったことじゃないか……」
さっきとは打って変わって、神子さんは静かに戦兎に語りかけた。
そして戦兎は、涙を拭ってゆっくりと立ち上がった。
涙で潤んだ戦兎の瞳には、強い意志と覚悟が見えた。
わたしも変わるんだ。
戦兎の後ろで怖がっているのはもう終わり。
今度はわたしが戦兎を支えるんだ。彼と同じ場所に立って。
***
海斗に負け、千歌達を哀しませてしまった俺自身がとても情けなかった。
俺は強さを渇望した。誰も哀しませることの無い力。
誰かを守れる力を。海斗に勝つ力を。
だが、それを追い求めた先にあったのは、俺が最も望まない力だった。
力を求めるあまり、俺は危険な力に手を染めそうになった。
最悪の兵器と化する直前に、神子さんは俺を止めてくれた。
俺に思い出させてくれたんだ。
果南を守る為にビルドになったこと、そして誰かの笑顔を守る為に戦っていたことを。
俺はハザードトリガーを神子さんに返却し、また立ち上がった。
兵器ではなく、平和を守るヒーローのビルドとして。
明日、学校で万丈達に謝ろう。そう考えながら明日の準備していると、ドアがノックされた。
「入っていい?」
「ああ、いいぞ」
一言断りを入れてから、果南は扉を開いて部屋に入ってベッドに腰掛けた。
俺を見る果南の顔はいつになく真剣なもので、その瞳はしっかりと俺の顔を捉え、何か重大なことを話そうとしているのがすぐに分かった。
何を話そうとしているのか、心当たりは二つほどあった。
グリスの正体が海斗だということを隠していたこと。
そして、一週間も学校をサボって神子さんとハザードトリガーをかけて戦っていたこと。
このどちらか、あるいはその両方を咎めに来たんだろう。
なんと言われようが、俺にはそれを受け止める義務がある。
俺の行いは、彼女との約束を反故にしたも同然のことなのだから。
「ごめんね、戦兎」
だが……果南の口から出た言葉は、俺の予想にかすりもしないものだった。
突然の謝罪の言葉に、俺は目を見開いた。
「い、いきなりどうしたんだよ……。謝んなきゃならないのは俺の方なのに……」
「ううん、本当に謝らなきゃいけないのはわたしの方。千歌達のことも海斗のことも、わたしだって向き合わなくちゃいけないのに、戦兎一人だけに背負わせてきた。危険な力に縋らせてしまうくらいに、戦兎の心を傷付けた……。本当にごめんなさい」
果南の瞳には涙が浮かんでいた。
俺に対する罪悪感と自らへの嫌悪がこめられているであろう雫は、彼女の頬を伝って落ちた。
「……俺の方こそ済まなかった。俺も、果南を含めたみんなの気持ちを考えてなかった。余計な心配をかけたくなかったんだが、逆効果だったみたいだな。本当に悪かった」
俺は、俺自身が抱いていたものを果南に吐き出した。
もちろん、これが全部ではない。
全てを贖うには、言葉も時間も足りない。
けれど、今の俺に出来る精一杯の謝罪だ。
「今度は一緒に歩こう」
「ああ……」
俺は独りじゃなかった。果南がいる。万丈も、千歌達だっているんだ。
さあ、反撃開始だ!
龍輝)やっと戦兎の復活か!……ってあり?戦兎はどこだ?
梨子)向こうで神子さんと話してたわよ。ハザードなんとかがどうのって。
龍輝)あー……マジか。じゃあ今回も俺達だけか……。
梨子)……わたし的にはそれでも問題ないけど。
龍輝)なんか言ったか、梨子さん?
梨子)な、何でもないわ!早く予告しちゃいましょう!
龍輝)お、おう……。イベントの一件から立ち直った戦兎と復学することを決めた果南さん。二人と再会を果たした俺達だったが、そこへ猿渡が現れる。
梨子)鞠莉さんやダイヤさんもやって来て、海斗さんと戦兎君の睨み合いはヒートアップ。五人の溝は更に深くなり、その裏で手を引いている誰かの姿が浮かび上がる。次回「第16話 小原に潜むイビル」一体、どうしてこんなことに……。