ラブライブ!サンシャイン!!~BUILD the Rainbow~ 作:白銀るる
女神)自称とは何じゃ!わらわは正真正銘、本物の女神じゃ!
戦兎)ちょっと!前回のあらすじを説明してるんだから、割って入って邪魔しないでよ。はあ……。あー……しかし、そこでスマッシュの正体が、ネビュラガスと呼ばれるガスを体に注入され、変異を起こしてしまった人間であることを知らされる。
果南)そして何故かスマッシュの成分を浄化し、フルボトルにすることが出来た戦兎だったが、彼は突然眠気に襲われてしまう。
巧)そして彼らの知らない所で、僕はライダーシステムの秘密を知り、戦兎くんたちのことを守って欲しいと頼まれるのだった。さあ、どうなる第3話?
春休みが明け、今日から新学期が始まる。
が、俺と果南はちょっとした理由で現在休学中の身だ。
「本当に良かったの?戦兎だけでも復学しても良かったんだよ?」
「良いんだよ。勉強は時間さえあればいくらでも取り返せる。俺は
ここで言う父さんとは、果南の実の父親のことだ。
ま、色々あって果南の両親は俺の育ての親でもある為、俺自身も本当の親のように接しているのだが、それはまた別の機会に。
ともかく、俺たち二人は揃って家の手伝いをしているってわけだ。
「せーんとくん、かーなんちゃん!」
手に入れたばかりのハリネズミフルボトルを、空と海に透かしながら見ていると、その向こう側に二人の少女の姿が映った。
「うん?千歌の曜か」
二人にちょっとしたもてなしをし、俺は再びボトルを調べ始めた。
「今日は随分遅かったね。入学式だけだったんでしょう?」
時は既に夕刻。
陽も傾き、空は茜色に染まっていた。
今日は学校はどこも午前中で終わりのはず。
果南が疑問に思うのは当然だった。
「うん、ちょっと色々あってね」
「はい、これ。回覧板とお母さんからの差し入れ」
みかんと回覧板入りのビニール袋を差し出す千歌。
この差し入れは毎度変わらない。
「どうせ、またみかんでしょ」
「文句ならお母さんに言ってよね」
「二人は新学期から学校に来れそう?」
「まだ無理そうかなぁ」
「俺にもやらきゃいけないことが出来たしなー」
「そっか……二人も誘おうと思ってたんだけどな……」
「誘うって何にだ?」
ボトルを振りながら、千歌に聞き返す。
千歌の口から出てきた言葉は、全くの予想外で……俺にとってもあまりいい思い出の無いものだった。
「スクールアイドルだよ!すっごいキラキラしてるんだ!」
「へえ……でも私たちは三年だしね」
さらに話を続けようとする千歌。そんな彼女の口を、果南は干物を押し付けて閉じさせた。
「はい、これみかんのお返し」
「また干物~……」
「文句なら母さんに言ってよね」
何事もなかったように千歌とのやり取りを進めていく果南。
表向きは平然としているように見えるが、果南は平気で嘘を吐けるような人間ではない。
それに止めを刺すかのようにヘリのプロペラ音が聞こえてきた。
「何だろう?」
「小原家でしょ」
小原家、またしてもあまり聞きたくはない言葉だ。
何も知らない千歌と曜は「ただヘリが飛んできた」という認識で終わらせてしまうだろう。
だけど、俺と果南の心中は穏やかではなかった。
まるで苦い味が口の中に広がっていくように、二年前に起きたあの出来事を思い出していた。
***
その日の夜。
俺は神子さんにパソコンにインプットしてもらったビルドのデータを見ていた。
それによれば、フルボトルは全部で六十本も存在し、各々が「ベストマッチ」という特殊な組み合わせを持ち合わせているらしい。
しかも、それ以外にも特殊なボトルやアイテムがあるようだ。
もっとも、データは厳重なパスワードで守られていて、その全てを閲覧することは出来なかったが。
不意に部屋のドアをノックされる。
「入って良い?」
果南か。アイツになら、これを見られても問題はないだろう。
「良いぞ」
ドアが開き、果南が部屋に入って来た。
その顔はどこか浮かない表情をしていた。
何故そんな顔をしているのか、すぐに理解出来た。
「またそれ見てるの?」
「
「……流石戦兎だね」
いつもの果南らしくない。
随分としおらしい声だ。
そんな果南を見ていると、どうも調子が狂ってしまう。
「千歌たちのこと、心配でさ……」
「スクールアイドルやるって言ってたことか。その気持ちは分からなくはないけどな。でも、アイツは人に言われて素直に
「うん。だから戦兎にお願いがあるの」
「お願い?」
ただお願いをする、というより
「千歌のこと、見ていて欲しいの」
やっぱりな。そんなことだろうとは、薄々思っていた。
これから、とんでもない無茶をしようとする幼なじみを心配するのは、俺も同じではあるからな。
「……分かったよ。んじゃあ復学届出さなきゃな」
「ありがとう、戦兎。それと、このことは内緒にしておいて」
そうやって礼を言われるのも何だかむず痒い。
俺は、果南が葛城先生から貰ったという復学届を書き上げ、ビルドのデータ閲覧に戻った。
***
翌日、春休みも含めて数週間ぶりの制服を身につけ、俺は学校に登校した。
そして到着して間もなく、設立届なる書類を持った千歌と曜と出会った。
「戦兎くん!?まだ来れないんじゃなかったの!?」
「大人の事情ってやつだ。ま、とにかく俺も学校に通うから。あと、それ貸してみ」
「え?う、うん……」
スクールアイドル部と書かれた書類。
所属部員の欄には、千歌と曜の二人の名前が書かれていた。
「ってびしょびしょじゃん!?」
「あー……さっき水たまりに落としちゃって……てへっ」
「『てへっ』じゃねーよ……これじゃあ名前、書けないじゃんか」
「戦兎くん、もしかして入ってくれるの!?」
「ああ。と言ってもまだ三人しかいないし、こんなの
今までいたはずの千歌の姿はそこにはなく、曜だけが苦笑しながら立っていた。
「ったく……どうなっても知らないぞ……」
「ははは……」
一旦俺は曜と別れ、職員室までやって来た。
要件は復学届の提出だ。
担任の先生にそれを渡し、教室に戻ろうとすると、二人の生徒とすれ違った。一人は女子で、もう一人は男子。どちらもここではあまり見ない顔だった。
多分、別な地域から来た転校生だろう。
『三年─組、桐生戦兎さん。至急、生徒会室まで来てください。繰り返します──』
復学して早々、呼び出しの放送が流された。
それも、呼び出したのは俺のよく知る人物。
そしてその声には、怒りと呆れが含まれていた。
新学期になってから学校に来たのは、今日が初めてなので、何かやらかした記憶は無いんだが……。いや、一つあったな。
生徒会室まで行くと、案の定千歌と俺を呼び出した人物──黒澤ダイヤが対面していた。
「久しぶり……っていう雰囲気じゃないよな、間違いなく」
「ええ、察しがいいようで何よりですわ。単刀直入にお聞きします。これはどういうことですか?」
ダイヤは乾いたあとが残った、パリパリの設立届を見せてきた。俺の名前入りの。
「どういうことって言われてもなあ。つまりはそういうこと、としか言いようがねーよ」
忘れた訳では無いだろう、言葉にせずとも目がそう訴えてくる。
無論、あの日のことは一日たりとも忘れたことは無い。
「本気ですの?」
「ああ、本気だよ」
睨み合う……というよりは、お互いの目を見つめあって意志を確かめる。
やがてダイヤは目を閉じて溜め息を吐いた。
「……どうやら本当に本気のようですわね」
「言っただろ、本気だって」
「そういうことならば仕方ありません。わたくしも本気で言わせていただきます!わたくしが生徒会長である以上、スクールアイドル部の設立は絶対に認めません!!」
何がどうしてああなったのか、俺はその一部始終を曜から聞いた。
まあ、ダイヤがああ言ったのは至極当然の理由だった。
曰く、「部として設立する為の条件を満たしていない」だそうだ。
「戦兎くんって、生徒会長と知り合いだったんだね」
「知り合いっつーか、まあ……幼なじみつーか」
「そっか。戦兎くんは、わたし達より一個上だもんね」
雰囲気自体は険悪であったが、話がわりとスピーディにすんだことに疑問を持った曜だったが、そう説明すると、うんうんと頷いて納得してくれた。
「そういうことだ。で、スクールアイドル部の方はどうする、千歌?諦める気は無いんだろ?」
「無い!絶対諦めない!」
ダイヤもダイヤだが、千歌も千歌で意志が堅い。
どちらも引く気は無いだろう。
だがしかし、スクールアイドル部が設立条件を満たしていないのは、火を見るより明らかであり、ダイヤの言っていることは間違いではない。
「残り二人のメンバーはどうするんだ?」
「これから考える!」
「最悪だ……」
「大丈夫だよ……多分」
行き当たりばったりもいいところな発言に加え、妙な間のある曜のフォロー。
俺は頭を抱えざるを得ない。
先が思いやられるよ……。
***
始業式が終わり、今日も午後になるのとほぼ同時に放課後。
部活動に勤しむ生徒たちがいる中、俺たちはメンバーの勧誘をすることになったのだが……。
「で、そいつは?」
俺、千歌、曜の三人に加えて、見たことの無い奴が一人、ここにいた。
いや、この顔には見覚えがある。職員室から出た時に一瞬だけ見えた顔だ。
だが妙だ。その時は本当に一瞬しか見ていなかったのに、何故かいつも見ているような……。
「紹介するね。わたしたちのクラスに来た転校生の一人、
「m……じゃなくて……万丈龍輝だ。好きなものはサンドイッチとプロテイン!アンタが千歌さんの言ってた桐生戦兎だろ?これからよろしくな、戦兎!」
「……とりあえず、ツッコミたいことは色々あるけど、よろしくな万丈」
かくして、俺達は万丈を含めた四人でメンバー集めをすることになった。
が、思った通り勧誘は難航した。話を少し聞いてもらえればいい方。ほとんどは出会い頭で断られる。当たり前と言えば当たり前なんだけどな。
そして何故か、決めていた集合時間になっても千歌だけ現れない。
一体何をしているのかと思った直後だった。
「きゃあああああああああ!!!」
「「っ!?」」
部活に取り組んでいた生徒たちの悲鳴が響き渡る。そして次に流れたのは、お決まりのスマッシュ警報だ。
「何だこれ?」
「はあああ!?何だこれって、スマッシュ警報だろ!お前知らないのかよ!」
「あー……俺が住んでた所はスマッシュは出なかったからな」
「と、とりあえず建物の中に避難しないと……って戦兎くん!?どこに行くの!?」
「悪い。曜、万丈、二人で一緒に先に隠れててくれ!流石に千歌も避難してるだろ」
俺は三人に背を向け、悲鳴がした方向に走り出した。
スマッシュは思ったよりも近くで暴れていた。岩を拳で握り潰しているような姿のスマッシュは、見た限りだとパワータイプのようだ。
『またスマッシュが現れたの。今回で二回目か』
「っ!?この声……神子さんか。しかも何かテレパシーっぽい……」
『ごちゃごちゃ言うな。さっさと変身せんと、学校を破壊されてしまうぞ』
「んなもん見てれば分かる!」
「ラビット!タンク!ベストマッチ!」
ビルドドライバーを装着して、ボトルを振ってから挿し込んでレバーを回した。
「変身!」
「鋼のムーンサルト!ラビットタンク!!イエーイ!!」
俺は、再び仮面ライダービルドに変身し、スマッシュと対峙した。
『あれはストロングスマッシュ。あのごつい腕での攻撃には注意しろ!』
「了解!」
ラビットのスピードを利用し、スマッシュの懐に素早く潜り込む。
そしてタンク側の足──タンクローラーシューズで無限軌道装置を回転させながら蹴りを食らわせた。だが、後ろによろめく程度で、あまりダメージが負っていないようだ。
パンチと蹴りを何発か与えるが、やはり攻撃はノックバックするだけにとどまっている。
そして俺の攻撃が途切れてしまったことで、スマッシュの反撃が始まってしまう。何とか猛撃に耐えることが出来たが、奴の攻撃は以前のスマッシュとは段違いだ。このまま受け続ければ、負けてしまうだろう。
『戦兎、前にぬしが浄化したハリネズミフルボトルがあるじゃろう。ラビットと入れ替えるんじゃ。その時に「ビルドアップ」のセリフも忘れるなよ』
「思ってたんだけど、それ言う必要ある?」
『ある!言った方がカッコいい!』
子供染みた返答に飽きれた溜め息を漏らすが、アドバイスしてくれたことには感謝しよう。
神子さんの言われた通り、ラビットとハリネズミのボトルを入れ替え、レバーを回す。
「ハリネズミ!タンク!」
「ビルドアップ!」
ベストマッチ!の音声は無く、ボトルの名前を読み上げた後で音楽だけが流れる。
ラビットハーフボディがハリネズミハーフボディに組み替えられ、トライアルフォームである、ハリネズミタンクに変身した。
右手に装備されたのは、モーニングスターのような形状をした武器、BLDスパインバックル。そのナックルでスマッシュに打撃を加える。一撃に留まらず、二撃、三撃、まだまだ打ち続ける。
そして最後に全力を乗せた一撃をスマッシュに浴びせる。
「これでトドメだ!」
スパインナックルにエネルギーを集め、トゲを伸ばして思い切り叩き伏せた。
スマッシュは動かなくなり、戦闘不能。
あとは成分を抜き取るだけだ。
エンプティボトルを取り出し、スマッシュから成分を採取する。
そして俺は、ここであることを思い出した。
「あ……ヤバい……」
エンプティボトルだったものが浄化され、その形状を変えていく。
それと同時に、とてつもない眠気がやって来る。
せめて、変身は解いておかないと……。
ベルトからボトルを抜き取り、変身を解除。
俺は深い眠りの中に意識を落としたのだった。
戦兎)ZZZ……
曜)戦兎くん、どうしたんだろう?倒れてたって言うから、来てみたら寝てるだけみたいだし……。
龍輝)ま、それだけで無事ならいいんじゃねーの?
曜)……うん、そうだよね。
龍輝)そんじゃ次回予告だな。次回「転校生と龍のライダー」
曜)そう言えば、千歌ちゃんは?
龍輝)まだ誰かさんを追ってるんじゃないのか?
曜)あー……そうかもしれないね。