ラブライブ!サンシャイン!!~BUILD the Rainbow~   作:白銀るる

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龍輝)よっしゃあ!いよいよこの俺、仮面ライダークローズが登場したぜー!!
戦兎)ちょっと静かにしろよ!てか、お前登場しただけでまだ活躍はしてないだろ!
龍輝)今回するから良いんだよ。
戦兎)そんなこと言って、無様な姿晒しても知らないからな。……ゴホン。浦の星一の天才、桐生戦兎は、千歌達のスクールアイドル活動に協力することになるが、その行く手を阻む、様々な脅威が待ち受けていた。幼なじみ、黒澤ダイヤとの激突に、時と場所を考えずに現れるスマッシュ。ピンチに陥ってしまった俺の前に現れたのはなんと……。
龍輝)この俺!m……万丈龍輝!
戦兎)……お前さ、自分の名前間違え過ぎじゃね?てか自分の名前を間違えるって何だよ。
龍輝)べ、別に間違えてねーし!噛んだだけだし!
戦兎)いや、噛んだってレベルじゃないと思うんだが……。
龍輝)うっさいな!さあ、どうなる第5話!?



第5話 再会とファーストライブ

「今の俺は……負ける気がしねぇっ!!」

 

 万丈が変身したライダー──クローズは、高らかにそう叫び、スマッシュ目指して走り出す。

 クローズを新たな敵と認識したスマッシュ達は、剣を構え直してクローズに斬りかかった。

 クローズはスマッシュの剣を一本ずつ受止めて奪い取り、それで反撃を仕掛ける。

 一閃、また一閃と剣を振り、スマッシュの装甲を削り取る。

「こいつは返すぞ!」

 剣をスマッシュに投げつけ、投げられた剣はスマッシュの体に突き刺さる。

「思った通り、あんまり大したことないな」

 二体同時に相手して、その両方を手玉に取るクローズ。

 俺は、仮面の下で口を開けたまま唖然としていた。

「戦兎くん……なんだよね?大丈夫?」

「あ、ああ……俺は平気だけど……」

 心配してくれるのは素直に嬉しい。

 が、俺は視線を千歌達にではなく、クローズ──万丈に向けていた。

 圧倒的過ぎる。俺が苦戦していたのがバカみたいに、アイツはスマッシュを追い込んでいく。

 そして……。

「Ready?Go!ドラゴニックフィニッシュ!」

「うおおおおりゃああああ!!」

 クローズがレバーを回し、必殺技の体勢に入ると、その背後に蒼炎のドラゴンが現れ、ブレスを吐き出す。

 そのブレスの勢いに乗り、クローズはスマッシュにキックを炸裂させた。

 技が命中したスマッシュは、分身は消滅し、本体は爆発して倒れた。

「これで終わりっと」

 それからクローズは、エンプティボトルをスマッシュに向けて成分を摂取し、スマッシュを元の人間に戻した。

「えええええ!?スマッシュが人になった!?」

 スマッシュが人間であることを知らない千歌達は、驚きの声をあげる。

「逆だ逆。人間がスマッシュになってた……いや、されてたんだよ。な、戦兎」

「え?あ、ああ……。ていうか万丈、お前仮面ライダーだったのか……」

「え?めが……神子さんから聞いてねーの?」

「聞いてない」

 今言い直したのは、彼女の存在を知らない千歌達がいるからだろう。

 というか、神子さんの正体を知っているということは、万丈もあの人に頼まれて仮面ライダーになったのか?

「マジか……じゃあ俺達がしなきゃいけないこととかは?」

「スマッシュにされた人を助けるんじゃないのか?」

 万丈は、「あー……そうかー……」と頭を掻く。

「戦兎くん!龍輝くん!二人だけで話さないで、わたし達にも教えてよ!」

 三人を蚊帳の外にして話が進むのを阻止するように、千歌が俺達の間に入ってくる。

「分かったからちょっと待て。万丈、お前もちゃんと教えろよ」

「ああ、良いぞ。本当はあの人が話してくれるはずだったんだけどな」

「「あの人?」」

 三人揃って首を傾げる千歌達。

 スマッシュは既に倒したとはいえ、警報が出ている中、外を彷徨(うろつ)いているのを見られるのは流石にまずいので、俺達は一旦十千万に戻った。

 

 ***

 

「まず話をする前に、一つ約束してくれ。今から話すことは、絶対に誰もに言わないこと。良いな?」

「分かった!」

 元気の良い返事で答える千歌と「うん」と頷く曜と梨子。

 俺は、全てが始まったあの日のことを思い出し、口を開いた。

 果南とともにスマッシュに襲われたこと。

 神子と名乗った女性に助けられたこと。

 果南を守る為に、仮面ライダービルドに変身したこと。

 そしてスマッシュが、ネビュラガスと呼ばれる成分を注入された人間であること。

 四つ目を教えた時、やはり三人も俺達と同じように信じられないという顔になった。

「そうだったんだ……」

「じゃあ今までガーディアンに倒されたスマッシュは……」

 怪人に変えられ、その命を奪われた。

 見えてきた真実は、千歌達に歳不相応の表情をさせてしまう。

「それはそうと万丈、お前が知ってることも教えろよ」

 落ち込んでしまった雰囲気を脱する為、俺は次の話題へ移ろうと、万丈に問いかける。

「俺が知ってるのは二つ。そのどちらも、俺達仮面ライダーがやらなきゃいけないことだ。まず一つは、今まで通りスマッシュにされた人を助けてフルボトルを集めること。そして二つ目はパンドラボックスを開けさせないことだ」

 万丈の口から意外な単語が出てきた。

 パンドラボックス、それは十年前に火星で発見されたアーティファクトだ。

 パンドラボックスを開けさせない……というのは、恐らくその中身が理由だろう。どんな原理なのかは分かっていないが、あの箱には、途轍もない量のエネルギーが秘められているという。

 それはこの国……いや、この世界に住んでいる者なら誰でも知っていることだ。だが、万丈が続けた話は、俺も含む四人の想像を遥かに超えるものだった。

「パンドラボックスが開かれれば、世界は滅びる」

「え……」

「世界が……滅びる?」

「そうだ。パンドラボックスは火星で発見されただろ?そしてその火星には、高度な知的生命体が住んでいたことが、その建造物跡から分かってる。これがどういうことか分かるだろ?」

「じゃあ火星はパンドラボックスが開けられた所為で滅んだってこと?」

「そういうことになる」

 曜の言葉に頷く万丈。

 名前の通り、決して開けてはいけない禁忌の箱ってことか……。

 現在、パンドラボックスは政府で保管されているが、今の話とここ最近のスマッシュの出現を考えると、安全とは言えない。

「パンドラボックスを開けない為にはどうすれば良いの?」

「俺や戦兎が持ってるコレ、フルボトルをパンドラボックスを持っている人間に渡さないのが確実だな。ただ……」

「ただ?」

「ボトルの存在を嗅ぎつけているのは俺達だけじゃないらしい。ソイツがパンドラボックスを持ってるかは知らないけどな」

「俺達以外にも……。じゃあ、その誰かより先にボトルを集めなきゃいけないんだな」

「ああ」

 話が随分とスケールアップしちまったな……。最初は果南を守るってだけの話だったのに、スマッシュにされた人を助けるってことになって、今は世界を守る為に。

 でも、この力を手に入れちまった以上、やるしかないか。

「それじゃあ、戦兎くん達はスクールアイドル活動する暇は無いね……」

 今の話を聞き、千歌は落ち込んだ声でそう呟く。

 まあ、普通はそう思うだろうな。

「何言ってんだよ。手伝うに決まってるだろ」

「でも、二人は仮面ライダーの方もやらなきゃいけないのに……」

「そっちは相手の方から出て来てくれないと、どうしようもねーよ。だから俺も千歌さん達のこと、ちゃんと手伝うぜ!」

「二人とも……」

「それじゃあ、まずは歌詞を完成させなきゃね!」

「そうだな」

「あ、さっきの話の続きだけどな……」

 こうして俺達は、再び中断していた歌詞作りに戻るのだった。

 

 その夜。

『へぇ、二人目の仮面ライダー、クローズか』

「はい。万丈が変身するライダーです。ドラゴンフルボトルを……」

『クローズドラゴンという龍型のガジェットにセットするんだろう?』

「え!?どうしてそれを!?」

 今日あったことを葛城先生に報告をしていると、彼から予想だにしなかった返事が返ってきた。

『神子さんから貰ったビルドのデータ、あの中にロックされてるものがいくつもあっただろう?その中にクローズのデータがあったんだ』

「どうやってロックを解除したんですか?」

『島村さんに教えて貰ったんだよ。戦兎くんの助っ人が来るから、その為にクローズのデータを(ひら)けるようにするってね』

「そういうことでしたか」

 俺も葛城先生にパスを教えてもらい、自分の持っているデータに入力する。

 つか、パスワードに「筋肉バカ」ってどうなのよ……。

「へえ、クローズドラゴンには、ドラゴンボトルの力を二本分にする機能が備わってるのか」

 しかし、ビルドのようなフォームチェンジは出来ず、今のところはこの状態で完結しているようだ。

 まあ、ロックされているデータはまだまだあるので、強化アイテムのようなものがある可能性もあるが。

『しかし、これで戦兎くんにかかる負担が減ったわけだね』

「ええ。でも万丈の奴……」

『龍輝くんがどうかしたのかい?』

「ええと、何だかアイツの戦いを見て、俺とは何かが違うなって思ったんです。その……()()()()()()というかなんというか」

『戦い慣れてる……か。恐らく彼にも何らかの事情があるんだろう。彼の方から話してくれるまで、触れないでおくのが良いと思うよ』

「そうですね……」

 パンドラボックスは世界を滅ぼす、その言葉も相まって、深く踏み込めない。

 いずれ万丈の方から話してくれるだろうと、この日の報告は終了。

 万丈から受け取った成分入りエンプティボトルを浄化、同じく譲渡されたライオンボトル、掃除機ボトルと共に片付けたのだった。

 

 ***

 

 早朝、ダンスの練習をしているであろう千歌達を訪れると、意外な光景が目に入った。

「梨子、お前スクールアイドルはやらないって言ってなかったか?」

「うん。……だけど、今の自分を変えたくて……。それに少し興味が湧いて来たから」

「そうか。なら俺達も全力でサポートしなきゃな」

「おう!それにこれで部員の数が揃ったんだ!あとはライブでもして、生徒会長に認めさせようぜ!」

「でもあの生徒会長相手だと、一筋縄ではいかなそうだよね……」

「そんなに怖い人なの?」

「怖いって言うより厳しい感じだな」

 一人疑問符を浮かべていた梨子。

 そういや、ダイヤの所に行った時は梨子はいなかったっけな。

「黒澤ダイヤ。俺と果南の幼なじみなんだ。一見するとクールな感じなんだけど、すっげえ頑固な奴だ。でも……すっげえ友達想いな奴なんだ」

「戦兎さん?」

「い、いや、何でもない。早く練習の続きを……」

 俺も話を遮るようにヘリのプロペラ音が近づいて来る。

 空を見上げれば、もちろんヘリが飛んでいるのだが、様子がおかしいというかこちらに近づいているというか……。

「ね、ねえ戦兎くん。あのヘリ、わたし達に近づいて来てない?」

「あ、ああ。気のせいだろって思いたいけど……」

 やはりヘリは俺達目掛けて飛来し、地面スレスレとまではいかないが、頭のすぐ上を通過。

 そしてある一定の高さで停止し、ホバリングを始めたヘリから現れたのは、

「チャオ!」

 果南、ダイヤに次ぐ俺の幼なじみ。

 二年前に日本を発ったはずの小原鞠莉、その人だった。

 

 衝撃の再会の(のち)、俺達はヘリで浦の星まで連行……もとい登校した。

 そして鞠莉の案内のもと、訪れた浦の星の理事長室で、更なる衝撃の事実を告げられた。

「新理事長?」

「イエース!だけど、気軽にマリーって呼んでね!」

 わけ分かんねえ……曜や梨子、あの千歌でさえ、俺と同じことを思っていることだろう。

 何故か万丈だけは、まるで「当たり前だろ」とでも言いたげな顔をしているが。

 だが俺にはそんなことより、もっと気がかりなことがあった。

「えっと、新理事長?」

「だからマリー!戦兎も何か言ってよ」

「俺に話を振るな。ていうか鞠莉が戻って来たってことは、カズ(にい)とカイトも戻ってきてるのか?」

「ええ。今は何か用があるみたいで来れないみたいだけど。何か話したいことでもあったの?それならわたしから伝えておくけど」

「いや、大丈夫だ。ただ戻ってきてるのか知りたかっただけだし。それより、この状況についてこれてないヤツがもう一人いるみたいだから、ちゃんと説明してやれ」

 親しげに会話する俺と鞠莉をポカンと眺める三人。

 そこに加えてもう一人、こちらは般若のような形相で俺を人睨みし、視線を鞠莉へと向けた。

「オー!久しぶりね、ダイヤー!随分大きくなっちゃって」

 そのもう一人──ダイヤを見るや否や、抱き着いて頬擦りする鞠莉。

 ダイヤは振りほどこうとするが、鞠莉は離れるどころか、むしろ手を彼女の胸部に忍ばせる。

「ここはあまり変わらないけど」

「やかましい!!……ですわ。全く……どういうつもりですの?一年生の時にいなくなったと思ったら、三年生のこんな時期にも戻って来るなんて」

「シャイニー!」

 ダイヤそっちのけでカーテンをオープンする鞠莉。

 とうのダイヤは鞠莉のリボンを胸ぐらを掴むようにして引っ張り、引き攣った笑顔を浮かべる。

「人の話を聞かないクセは相変わらずのようですわね」

「イッツジョーク」

「とにかく、高校三年生が理事長なんて冗談にも程がありますわ」

「俺には、鞠莉さんが冗談を言ってるようには見えないけどな」

「「は?」」

 二人の会話に万丈が首を突っ込む。

 予想外の乱入者に、俺とダイヤは思わず声をハモらせた。

「彼の言う通りよ。わたしのホーム、小原家のこの学校への寄付は相当な額なの!」

 鞠莉が取り出した紙には、「任命状」の文字が確かに刻まれていて、彼女を理事長にするという旨の内容も書かれていた。

「そんな……!一体どうして!?」

「実は、この浦の星学院にスクールアイドルが誕生したという噂を聞いてね」

「まさかその為に?」

「そう、ダイヤに邪魔されちゃ可哀想だと思って応援しに来たのです!」

「本当ですか!?」

「イエス。このマリーが来たからには心配ありません。デビューライブには、アキバドームを用意してみました!」

 小さな端末を開いて千歌達にそれを見せる。

 千歌は目を輝かせてモニターを見ているが……。

「イッツジョーク」

「ジョークの為にこんな物用意しないでください」

 デビューがドームライブとかスクールアイドルじゃ普通あり得ないだろ……。

「本当は……」

 

 またもや鞠莉の案内で場所を変えることに。

 そしてやって来たのは、浦の星(この学校)の体育館だった。

「ここでライブをして、満員に出来たら人数にかかわらず部の設立を認めます!」

「「ッ!?」」

 この場所を満員に……。

 ふとある疑問が頭の中に浮かび上がるが、それを知るはずもない万丈達は、どんどん話を進めていってしまう。

「部を設立出来るってことは、部費とかも使えるようになるってことか?」

「オフコース!」

「でも、満員に出来なかったら?」

「その時は諦めて解散してもらう他ありません」

 先程とは打って変わって厳しい条件を付けてきた鞠莉。

 言うなれば、試練のようなものだ。

「どうしますか?嫌ならやめてもらっても構いませんよ?」

 鞠莉はまるで挑発するような物言いをする。

 実際、千歌を焚きつける為にそんな言い方をしているのだろう。

「どうすんだ千歌さん?」

「やめる?」

「やる!やるしかないよ!」

 どうやら事は鞠莉の思惑通りに運んだようだ。

 怪しい笑みで、

「オーケイ、それじゃあ行うということで」

 と体育館を出て行ってしまった。

 そして梨子が、ハッと重大なことに気付いたような顔をする。

 いや、「ような」ではなく気付いたのだ。

「ねえ二人とも、この学校の全校生徒って何人?」

「全校生徒?えっと確か……」

 次いで曜、そして千歌もその事実に気付くのだった。

「どうしたんだよ、三人揃って困ったような顔して」

 ……そしてそれに気付いていないのか、万丈は一人のんきな顔をしている。

「お前……本気で言ってるのか?」

「何が?」

「あのね龍輝くん、浦の星に通ってる生徒は全員合わせても百人にもならないんだよ」

「つまりこの体育館を満員にするのは……」

 無理。その二文字が今俺達の思考を支配していた。

 が、万丈だけはそうではなかったらしい。

「出来るだろ。何も鞠莉さんは生徒だけで満員にしろとは言ってないだろ?」

「それはそうだけど……」

「確かに学校外の人達に来てもらえれば、満員にすることは可能だ。けど、無名のスクールアイドルのライブに来ると思うか?」

「来るさ」

「どうしてそう思うの?」

 梨子が尋ねると、万丈は自信に満ちた声と表情で告げた。

 

「この町の人は(あった)かいからな」

 

 と。

 

 ***

 

 体育館を満員にするには浦の星の生徒だけでなく、校外からも人を集める必要がある。

 というわけで、今日は沼津まで足を運んだのだが……。

「それにしてもだ、万丈」

「何だよ、戦兎?」

「お前……なんでソイツ連れてきたんだよ……」

 陽気なメロディーを鳴らしながら浮遊するクローズドラゴン。

 そのサイズ感も相まって、彼(?)は注目と人気を集めていた。

「いつスマッシュが現れても良いように備えておくんだよ」

「いや、ドラゴンの周りに人が集まるのはむしろ危険だろ!?」

「……あ」

 ようやく気付いたか……。

 万丈はクローズドラゴンを呼び戻し、その手に収めた。

「それでチラシの方はどうだ?」

「おう!クローズドラゴンのおかげで配り終わったぞ!」

 変身用のガジェットに何をさせてるんだコイツは……。

「そう言う戦兎はどうなんだ?」

「こんなのすぐ終わるに決まってるだろ。ていうか、終わったんならもう一束くらい配れよ」

「へいへーい」

 軽い口調で返事をした万丈は、俺が手渡したチラシを持ってクローズドラゴンと共に、チラシ配りを再開した。

 さてと、他の三人はどうなってるかな。

 おっと……これは思ったより重症だな……。

 俺が見つけたのは、ポスターに向かってチラシを渡そうとしている梨子だった。

「何してんだ梨子……」

「せ、戦兎さん……。ちょっと練習を……」

「練習って……」

 ビラ配りの練習なんて聞いたことねえよ……。

「曜ちゃんも龍輝くんも凄いなあ……」

「万丈の方は、本当に凄いのはクローズドラゴンだけどな」

「ううん、そんなことないよ。大勢の人とあんなふうに笑えるなんて……」

 羨望の眼差しが、万丈と曜の二人に向けられる。

 曜は元々人と仲良くなりやすい性格だし、見たところ万丈もコミュニケーション力は高い。

 そんな二人を羨ましいと思うのは、俺も同じだ。

「まあ、人にはその人にしか出来ないことってものがある。お前にだってさ、ほら、あそこにいるぞ」

「え?あ、ちょ!?」

 俺は、サングラスにマスク、コートという不審者コーデの女の子を見つけ、その子目掛けて梨子の背中を押した。

「え、ええと、あの……ライブ、来てください!」

 梨子がチラシを差し出すと、女の子はまるで奪うようにしてチラシを取り、走り去っていった。

「やった!」

 受け取ってもらえたことを、梨子は嬉しそうに笑う。

 そんな梨子に、「昔のアイツら」の姿を重ねてしまう。

 果南、ダイヤ、鞠莉。そして一番の親友だった海斗……。

「どうした戦兎、浮かない顔して」

「い、いや……何でもない。つうか、お前またクローズドラゴンに配らせてんのかよ……危ないって言ったばっかりだろ」

「いや、よく考えたよ、もしスマッシュが現れたとしても、俺とお前でぶっ倒しゃあいいんだし、平気だろ」

「お前なあ……」

 なんでそんな「コンビニ行ってくる」みたいな感覚でスマッシュと戦うつもりでいるんだよ……。

 直後、もはやお決まりの展開なのか、スマッシュ警報が鳴り響いた。

「はあ……最悪だ。お前が変な事言うから……」

「はあ!?人の所為にするな!(わり)いのはスマッシュを生み出してる奴だろ!?」

 愚痴をこぼす俺と反論する万丈。

 それぞれドライバーを取り出して装着し、変身のステップを踏む。

「鋼のムーンサルト!ラビットタンク!!イエーイ!!」

「ウェイクアップ バーニング!ゲット クローズドラゴン!!イエーイ!!」

 同時に変身を完了させ、俺と万丈は、四角い頭のスマッシュに先制攻撃を仕掛ける。

 ダブルパンチがヒットし、スマッシュは後方に退く。

「オラ!オラオラオラオラオラァッ!!」

 さらにクローズは、連続で打撃を打ち込んでスマッシュを吹っ飛ばした。

「ったく!もう少し静かに戦えないのか!?」

 クローズに続いて、俺も攻撃を加える。

 拳による打撃と蹴撃。次いでドリルクラッシャーを取り出し、剣撃を与える。

「お前が剣使うなら俺も!」

「ビートクローザー!」

 彼も蒼い剣を召喚し、スマッシュを斬りつける。

 あれはデータにあったクローズの専用武器、ビートクローザーか。

 クローズは、数回に渡ってスマッシュを斬り、さらにグリップエンドを引いて刃に蒼い炎を纏わせる。

「スマッシュヒット!」

「うおらああああ!!」

 威勢のいい叫びと共にスマッシュに攻撃を繰り出したクローズ。

 だが、蒼い斬撃がスマッシュに届くことは無かった。

「何!?」

 黒い戦士。それがクローズの攻撃を防いだのだ。

 戦士は剣を弾いて反撃を食らわせ、クローズを吹き飛ばす。

「万丈!お前……何者だ!?」

「……」

 問いかけるも、彼、あるいは彼女は何も答える素振りを見せない。

 それどころか、ブレードとは別に持っている銃を俺に向けてきた。

「喋る気は無しか……!」

 ドリルクラッシャーをガンモードに組み替え、黒い戦士に向けて銃撃を仕掛ける。

 しかし、奴もそれに合わせて銃を撃ち、弾丸は撃ち落とされた。

「コイツでも食らいやがれえええ!!」

「Ready?Go!ドラゴニックフィニッシュ!」

 瓦礫から這い出てきたクローズは、エネルギー体の龍を出現させ、炎のブレスに乗って、戦士目掛けてキックを放った。

 流石にアレを食らえばひとたまりもないだろう。

 これで決まりだと思った直後、奴は信じられない行動に出た。

「なっ……!?」

「ウソだろ……」

 一度は庇ったスマッシュを盾にして、クローズの攻撃から自身の身を守った。

 スマッシュは爆発し、倒れ伏した。

「てめぇ……!」

 怒りを孕んだ怒号をあげ、クローズは黒い戦士に剣を向けるが、戦士は彼の足下に銃弾を飛ばしてそれを阻止する。

 そして銃から煙を発生させ、それが晴れた時にはその姿は消えていた。

「クソッ!」

「落ち着け、万丈。今はスマッシュの成分を抜き取るのが先だ」

「……そうだな」

 冷静さを取り戻した万丈は、エンプティボトルをスマッシュに向けて、その成分を採取した。

 スマッシュは人間の姿に戻り、誰かが病院に連絡したのか、到着した救急車に運ばれていった。

「二人とも、大丈夫だった……?」

「千歌。……ああ、俺達は問題ない」

 不安そうな顔で俺達に近寄って来た千歌達。

 俺はそんな彼女を安心させるように頭を撫でた。

「戦兎……お前マジか……」

「あ、いや、これは昔からのクセで……」

 そんな様子を見てにやける万丈。

「昔からのクセ……ねぇ」

 そんな万丈を殴りたい衝動に駆られるも、何とか抑え込むことに成功した。

 それにしても、あの黒い戦士は一体……。

 

 ***

 

 砂浜で柔軟運動をする千歌達からとある問題が出来たと告げられた。

 それは……。

「グループ名か……」

 まだ非公認であるとはいえ、ライブやその他の活動をするのにグループ名は必要不可欠であると言って良い。

「っていうか、スクールアイドルするのにそれを考えてなかったのかよ。ま、それがお前らしいというかなんというか」

「むぅ……それどういう意味!?仕方ないじゃん!人を集めなきゃって必死だったんだから!」

「そうだぜ戦兎。それに、そこまで頭が回ってなかったのはお前も一緒だろ?」

 万丈にそんなことを言われるとは思わなかった。

 だが、確かに最近は、スマッシュ絡みの事件で忙しかったからな……。

「そうだな。少しきつく言い過ぎた。悪い」

「分かればよろしい」

「で、こんな名前にしたいとかあるのか?」

「えっとそれは……梨子ちゃんはどう?」

「わ、わたしっ!?」

 千歌から突然話を振られ、梨子は動揺した様子を見せる。

 が、彼女は即興で答えを返してみせた。

「えっと、わたし達三人とも海で出会ったから、スリーマーメイド……とか?」

 センスの有無は別として。

「無いかな」

「そうだね」

 分からなくはないが、その名前よりも千歌と曜のリアクションに若干引いてしまう。

 どストレート過ぎるだろ……。

「曜ちゃんは何かある?」

「制服少女隊!」

 敬礼しながら自信満々に答えるが、それもどうかと思う。

「千歌さんはどうなんだ?」

「そうだなあ……浦の星スクールガールズ……は普通過ぎるよね……」

「普通っていうか、ネーミングは三人共変わらないような気がするな……」

「じゃあ戦兎くんは何かあるの?」

「俺?そうだな……」

 ふと思い浮かんだのは、アイツらの考えたグループ名だ。

 それと同時に、やはり二年前のあの情景が思い出される。

「戦兎?まーたその顔か。本当に大丈夫かよ」

「あ、当たり前だろ。少し昔のことを思い出してただけだ。少し……な」

「本当にそれだけならいいんだけどな」

 深い意味を持つように聞こえる万丈の言葉。

 コイツは本当に何を知ってるんだ……。

 

 その後、俺達は練習しながらグループ名を考え続けた。

 が、やはりいい案なんて出てこなかった。

 当然と言えば当然かもしれない。

 覚えてもらえ易く、かつセンスのいい名前なんてもう出尽くしている。

 おまけに、ここにいるのは、最近までスクールアイドルなんて興味もなかった奴らがほとんどだ。

 良いアイディアなんて出てこないだろう。

 砂浜に書いては没、書いては没を繰り返していると、いつの間にか日は傾き、昼間は青かった空と海も赤く染まり始めていた。

「ああ!もう分かんないよー!」

「考えてみれば、今までわたし達って、そんなの気にしたことなかったしね。こういうのが良いっていうのが思いつかないのは当然かも」

「ねえ、こういうのってやっぱり言い出しっぺが決めるべきじゃない?」

「戻ってきたー?!」

 千歌、梨子、曜……と繰り返し、最後はまた千歌に逆戻り。

 これいつまで続くんだよ、と思ったのも束の間、千歌は何かを見つけたようで、水際の方に目をやる。

 その様子に気が付いた梨子と曜、そして万丈もそちらに注目した。

 そこにかかれていたのは、たった一つの「名前」。

 俺達の運命を大きく変えた「あの」名前だ。

Aq(エイキュー)……ours(アワーズ)?」

「アキュア?」

 的外れな読み方をする梨子達。

 何故この名前が?

 そう思った矢先、またしても驚くべき事態が発生した。

Aqours(アクア)だよ」

「アクア……?」

 なんと、万丈がその名前を正しく読んでみせたのだ。

「そう、Aqours」

「アクア……Aqours……この名前凄く良い!」

「ちょっと待って!本当にこの名前にするの?誰が考えたかも分からないのに」

「だから良いんだよ!名前決めようとしている時に、この名前に出会った──。それって凄く大切なことじゃない!?」

「うん、そうかも!」

「……そうね。このままじゃ、いつになっても決まりそうにないし」

「じゃあ決まりだな」

「うん!この出会いに感謝を込めて……今からわたし達は──Aqoursだ!」

 

 ***

 

 そしてライブ当日。

 千歌達のクラスメイトの協力を得て、照明や音響などの設備は準備万端。

 前日までビラ配りや町内放送もし、出来るだけ多くの人に知ってもらえるように告知もした。

 やれるだけのことはやった。

 それでもどうにも出来ないものもある。

「すげえ雨だな、戦兎」

「ああ……」

 そう、天気だ。

 強い雨、強い風。しまいには落雷注意報まで出たときた。

「最悪だ……」

 体育館に集まっている観客は、数えられるほどしかいない。

「戦兎」

 不意に名前を呼ばれ、俺は咄嗟に振り向く。

 視線の先、すぐそこにいたのは傘をさした果南だ。

「果南か、来てたんだな」

「うん、ちょっと気になってね」

「ま、あんまり心配すんなって。あの三人なら……この町の人達ならきっと大丈夫さ!」

「お前な……その自信はどこから湧いて来るんだよ……」

 なんともまあ輝かしい表情で告げる万丈に、俺は呆れ半分で尋ねた。

「ここだよ、ここ」

 万丈は自分の胸を拳で叩きながら答える。

 ……つまり、ハートだとか心だとか言いたいのだろう。

 そうこうしているうちに、ライブ開始の時間はやって来た。

 観客の人数は先程と変わらず。

 減ってはいないが、増えてもいない。

 ダメだった、叶わなかった。

 千歌達のそんな気持ちが、表情から見て取れてしまう。

 それでも彼女達はステージの上から降りることは無かった。

「わたし達は、スクールアイドル、せーの……」

「「Aqoursです!!!」」

「わたし達はその輝きと!」

「諦めない気持ちと!」

「信じる力に憧れ、スクールアイドルを始めました。目標は、スクールアイドル──μ'sです!聞いてください!!」

 流れ出した楽曲。

 千歌が歌詞を考え、梨子が作曲した曲。

 練習期間の短さや経験の浅さもあり、その振り付けは他のスクールアイドルと比べれば、見劣りしてしまう。

 しかし、それでもゼロから始めたことを考えれば、よく出来ている方だ。

 その証拠に、見に来てくれた生徒達は、千歌達のパフォーマンスに魅入られ始めていた。

 けれど、世の中というのは本当に理不尽なものだ。

 サビに入る直前、照明は落ち、曲の再生もストップしてしまった。

 外で雷の音が聞こえた。近くに落雷したのだ。

 このままでは、電気が復旧するまで続けることが出来ない。

「……確か非常電源があったはず。いや、でも……」

 電気がついたところで、今の千歌達は歌い続けることが出来るだろうか。

 答えを出すのに、そう時間はかからなかった。もちろん、ノーだ。

 だが、そんな俺の予想を彼女達は裏切った。

 

「……気持ちが繋がりそうなんだ……」

「知らないことばかり なにもかもが……」

「それでも期待で足が軽いよ……」

「温度差なんていつか消しちゃえってね……元気だよ……元気をだしていくよ……」

 

 その声も次第に涙声になっていく。

 最悪だ……。ここまで来たことが、全て水の泡になる。

 アイツらが必死になって頑張って来た、あの努力が。

 

 覆い被さる無力感。

 これで何もかもおしまい。

 そこで、俺はやっと気付いた。

 俺はまた、スクールアイドルに本気になっていたんだと。

 あの時と……二年前と同じように。

 またどうすることも出来ないまま終わる悔しさが、心の底から湧き出てくる。

 

「戦兎」

 

 強く拳を握りしめた俺の名前を呼んだ万丈。

 千歌達を見つめる万丈は、俺と同じような悔しさに歪んだ顔はしていなかった。

 それどころか、アイツは笑っていた。

「まだ諦めるのは早いぜ」

 万丈がそう言った直後だった。

 突然体育館の扉が開かれた。

「バカチカー!アンタ、開始時間間違えたでしょー!!」

 美渡姉がその声を体育館に響かせる。

 そして体育館に光が戻ると、たくさんの人が千歌達の立つステージを観ているなんていう、キセキのような光景が目の前に広がっていた。

「何だよこれ……」

「だから言っただろ?この町の人は温かいって」

 こうなることは分かっていたと言わんばかりに、万丈はどや顔で俺にそう告げる。

 しかし、その言葉は俺の耳には入ってこなかった。

「みんな……最っっ高じゃないか!!」

 

 ステージは再開し、無事に最後までやり遂げることが出来た。

 ガラガラだった会場を満員にした人達の拍手喝采が鳴り響く。

「彼女達は言いました!」

「スクールアイドルは、これからも広がっていく!どこまでだって行ける!どんな夢だって叶えられると!」

 かつて、μ'sのリーダーである高坂穂乃果が残したとされる言葉。

 それを遮るように、ダイヤが観客達の前に現れる。

「これは、今までのスクールアイドルの努力と、町の人達の善意があっての成功ですわ!勘違いしないように!」

 厳しい言葉と共に千歌達に鋭い眼光を向けるダイヤ。

 そんなダイヤも、千歌の言葉に表情を揺るがせた。

「分かってます!でも……でも、ただ見てるだけじゃ始まらないって……うまく言えないけど……今しかない……瞬間だから!だから……」

 

 輝きたい!!!

 

 それは彼女達の心からの叫び。

 それまで普通の女の子だった彼女達が見つけた……憧れたもの。

 

 俺は今日の日を忘れない。

 とうに諦めてしまったスクールアイドルを……また、最高だと思ったこの瞬間を。

 

 

 




戦兎)万丈……お前とことんおかしいよな。
龍輝)はあ?何言ってんだよ。俺は普通の高校生だぞ!
戦兎)普通の高校生は、あんな戦い慣れしてねーよ!
龍輝)いやいや、仮面ライダーたる者、あれくらいやらねーと。
戦兎)はあ……まあいいや。次回「第6話 小さな二人とエンターテイナー」
龍輝)それはそうと作者。
作者)何?
龍輝)これ計画では「原作9話までに東都のボトル20本コンプ」ってあるけど、集まるのか?
作者)頑張って考えます……。
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